米国立環境健康科学研究所ジャーナル
EHP 2009年6月号 サイエンス・セレクション
若者への遺産
パーフルオロアルキル酸(PFAAs)とヒトの精子


情報源:Environmental Health Perspectives Volume 117, Number 6, June 2009
Science Selections
Legacy for Young Men
PFAAs and Human Sperm
http://www.ehponline.org/docs/2009/117-6/ss.html#lega

関連論文:Environmental Health Perspectives Volume 117, Number 6, June 2009
Do Perfluoroalkyl Compounds Impair Human Semen Quality?
Ulla Nordstrom Joensen,1 Rossana Bossi,2 Henrik Leffers,1 Allan Astrup Jensen,3 Niels E. Skakkebak,1 and Niels Jorgensen1
http://www.ehponline.org/docs/2009/0800517/abstract.html

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2009年6月3日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/ehp/09_06_ehp_PFAAs_Human_Sperm.html


高いPFAAを持つ男性はまた形態学的に異常な精子の割合と数が高い
image: Daniel Cooper
 最近の研究は男性の精子製造能力は、胎児期及び出生後の有害物質への暴露により損なわれているかもしれないことを示唆している。可能性ある化学物質犯人のひとつがパーフルオロアルキル酸(PFAAs)、焦げ付き防止鍋やカーペット、衣類、その他布製品の防水加工などの製品中にある過フッ素化合物の残留性分解物である。
 新たなデンマークの研究は、PFAAsへの暴露は今日多くの若い男性に観察される他では説明のつかない精子の質の低下を説明するのに役立つかもしれないことを示唆している [EHP 117:923・27; Joensen et al.]。

 1990年代の研究は、PFAAs が雄ラットのテストステロン(訳注:男性ホルモンの一種)のレベルを低下させ、エストラジオール(訳注:女性ホルモンの一種)を高めることを見出した。ヒト研究では、男性は女性より血清中のPFAA濃度が高く、若者は年寄りに比べて高いレベルの PFAAs を持っているように見える。従って若い男性はこれらの化学物質によって及ぼされるどのような潜在的な有害影響に対してもより高いリスクがあるかもしれない。

 そのような観察に触発されて、デンマークチームは、彼等が信じるところの PFAAs のヒト精子の質への影響の最初の研究を設計した。彼等の研究は、パーフルオロオクタン酸(PFOA)とパーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)に焦点を当てたが、その理由はこれらの化学物質が環境中に広く存在していること、半減期が長いこと、それらが内分泌かく乱物質として作用するという証拠があることである。研究対象はデンマークの義務的徴兵検査の一部として2003年に提供された105人の若者の精液サンプルを含んでいた。これらの男たちは、検討された546人の潜在的対象者の中で最高及び最低のテストステロンを持っていた。これらのスコアは、対象者をPFAAレベルの低、中、高グループに分類するために利用された。

 精子の質は3つの全てのグループ間で明らかに違いがあった。低及び中PFAAレベルに比べて、高PFAAレベルでは正常の精子は形態学的にパーセンテージ及び総数が著しく劣ることを示した。低PFAAグループの男性の正常な精子数の中央値は1,550万であったが、中、高PFAAグループではそれぞれ、1,000万及び620万であった。平均精子濃度及び運動性もまた高PFAAグループでは低かったがそれほど顕著ではなかった。PFAAsはテストステロンのレベルと逆比例の関係ではなく、以前の動物研究に基づく予想に反した。

 研究者らはヒトと野生生物は今後長年、残留性の高いPFFAsに暴露するであろうと認めている。彼等はPFAAsへの高い暴露は他の研究で報告されているように精液の質低下と受精力低下に影響を与えているかもしれないと推測している。しかし、彼等は、この予備的研究の結果はもっと大規模な研究で確認されるべきであると警告している。

シンシア・ワッシャム(Cynthia Washam)


訳注:関連情報


化学物質問題市民研究会
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