EHP 2007年11月号 サイエンス・セレクション
人体中の PFOS と PFOA
新たな研究が胎児期の曝露と出生時低体重との関連を示す


情報源:Environmental Health Perspectives Volume 115, Number 11, November 2007
Science Selections
PFOS and PFOA in Humans
New Study Links Prenatal Exposure to Lower Birth Weight
http://www.ehponline.org/docs/2007/115-11/ss.html#pfos

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2007年11月4日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/ehp/07_11_ehp_PFOS_PFOA.html


 科学者らは、パーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)及びパーフルオロオクタン酸(PFOA)が環境中や人体中に蓄積していることを示す多くの証拠を持っている。動物実験ではこれらの化合物が、出生時サイズの低下や幼児の死亡率を含む様々な健康影響を引き起こすことを示している。今回、ジョーンズ・ホプキンズ大学の研究者らは、これらの化学物質へのヒトの曝露が出生時体重の低下に関連することを示唆する最初の証拠を発表したE[EHP 115:1670?1676; Apelberg et al.]。

 PFOS、PFOA及び環境中でこれらの化学物質に変換することができる関連ポリフオロアルカリ化合物(PFCs)は、織物や衣類、じゅうたん等の撥油・撥水剤、及びファースト・フードの容器・包装紙などの紙コーティングを含む広範な消費者製品中で使用されている。これらの化学物質は世界中で人々の血液中に見いだされる。

 この新たな研究は、臍帯血中のPFOS及び/又はPFOAの濃度(研究者らは胎内曝露のマーカーとして使用した測定値)が高い新生児は出時体重が低いことを示している。著者らはその低下をPFOSで-69g、PFOAで-104gと計算している。調査対象集団は2004年と2005年にメリーランド州ボルティモアで生まれた293人の幼児である。以前の研究では、PFOAはこれらの幼児全てから、PFOSはその98%からで見いだしていた。PFOSとPFOAのレベルが高い幼児はまた、出生時の頭周が短く、Ponderal Index(胎児の体重の指標)のスコアが低かった。この研究は将来の追跡が可能なようには設計されていなかった。

 この結果は、PFOSとPFOAへの曝露と出生時低体重とが関連するというマウスとラットで行われた毒性学的研究と一致していたが、その用量はボルティモアの幼児でみられたよりもはるかに高い体内負荷であった。どちらの化合物もまた、動物実験で発達の遅れと関連していた。以前のヒトでの研究では、出生時低体重は、成人してからの肥満、糖尿、及び心臓血管系疾患と関連づけられた。

 研究者らはその影響は小さいが統計的に有意であることを強調している。彼らはまた、幼児の血中のPFOS、PFOA、及びその他のPFCsは他の研究でテストされたレベルに比べて相対的に低かったということを指摘している。

 これらの結果は、母親の喫煙、糖尿病、高血圧のような出生体重に影響を与える潜在的な他の要因を考慮して統計的に調整されている。この新たな研究は、以前の研究で見られたこれらの化合物のレベルと社会経済的状況との関連は見いださなかった。研究者らはまた、幼児のこれらの化学物質への曝露とコレストロール又はとトリグリセリドのレベルとの関係を示す証拠は見いださなかったが、以前のヒトと動物の研究ではこれらの血液脂質が特にPFC曝露に敏感であることを示唆していた。

ケリン・ベッツ(Kellyn Betts)


訳注(関連記事):



化学物質問題市民研究会
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