チャールストン・ガゼット 2012年4月16日
特別委員会
C8と腎臓・睾丸がんを関連付ける


情報源:The Charleston Gazette, April 16, 2012
Special panel links C8 to kidney, testicular cancer
By Ken Ward Jr.
http://www.wvgazette.com/News/201204160035

訳:野口知美 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2012年5月29日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kaigai/kaigai_12/120416_Gazette_panel_links_C8_cancers.html


 【ヴィエナ, ウェストバージニア州】―専門家チームは月曜日、C8(訳注:過フッ素化合物PFOA)とヒトがんとの「可能性のある関連」を発見したことを明らかにし、この化学物質への曝露は無害であるというデュポン社の長年の主張を退けた。

 3人からなるC8科学委員会は、C8に曝露したミッド・オハイオ・バレーの住人の腎臓・睾丸がん罹患リスクが「5割を超える確率で」高くなっていると述べた。

 同委員会は6年間にわたりデュポンの排出する化学物質の研究を行っており、2番目に出された重要な研究結果の中でこのような結論を導き出している。

 これまでも、同委員会はC8への曝露と妊婦の危険な高血圧との間に「可能性のある関連」があると指摘していた。また、曝露と先天性異常などの不良な妊娠結果、成人発症の糖尿病、十数種類のがんといった疾患との間には関連が見られなかったという。

 しかし、科学委員会が設立されることになった和解案に従えば、何らかの可能性のある関連が発見されたのだから、デュポン社は最大2億3500万ドルの資金を提供して、地域住民の医療検査を将来にわたり行わなければならない。これは、地域住民が近くの同社ワシントン工場プラントからのC8への曝露に関連した病気を早期発見できるよう促すためのものである。

 「少なくとも今、われわれは知っているんだ」と、C8訴訟の原告のひとりであるウッド郡在住のJoe Kigerは言った。「問題があるということが分かって良かった。今こそ何らかの手を打つことができるかもしれない。」

 先週、デュポンと住民の弁護団は、医療専門家3人からなる独立した委員会を組織すると発表した。この委員会は、画期的な和解の一部として求められている適切なモニタリング・プログラムを作成することになる。

 C8はペルフルオロオクタン酸、つまりPFOAの別名である。ウェストバージニア州においてデュポンは、テフロンなどの焦げ付き防止製品、耐油性紙容器、防汚繊維製品を製造するための助剤としてC8を1950年代から使用していた。

 デュポンをはじめとする企業は、C8の排出を削減し、この化学物質の自主的な段階的廃止に合意していたが、研究者たちは潜在的な健康影響が増えていることや、この化学物質が消費者製品中に存在していること、廃棄物処理による汚染が続いていることに対していまだ懸念を抱いている。

 がんに関する月曜日の発表において、科学委員会はデュポンの労働者に関する過去の研究と、何千人ものミッド・オハイオ・バレーの住人の健康データに関する同委員会の未公表の分析結果を引用した。同委員会は入手可能な他の研究者の科学論文を調査し、主に7万人のパーカーズバーグ地域の住民から得たデータに基づき独自の追跡調査を行っている。その資金は、訴訟和解金より拠出されたものであった。

 「われわれは全ての証拠をまとめ上げ、何らかの結論を見出さなければならない」と、同委員会の委員であり、アトランタのエモリー大学で環境・労働衛生問題を研究しているKyle Steenlandは述べた。

 科学委員会は、高いレベルのC8に曝露した住民の腎臓がん罹患率は、低いレベルの曝露をした住民よりも、化学的濃度によって20%から60%高くなることを明らかにした。睾丸がんに関しては、高曝露の住民の罹患率は80%から170%高くなったという。

 同委員会がこの最新の研究結果を発表したのは、パーカーズバーグのすぐそばのホテルで行われた記者会見においてであった。この研究結果がウッド巡回判事のJ.D. Beaneに公的に提出され、これに合わせてイベントが開始された。

 12月、科学委員会は可能性のある関連についての最初の研究結果を発表し、1年に及ぶ研究の結果、C8への曝露が妊婦の高血圧を引き起こす可能性があることを科学的証拠によって明らかにしたと報告している。

 こうした委員会の研究は、ミッド・オハイオ・バレーの住人が近くのデュポン・ワシントン工場プラントの排出するC8により飲料水を汚染され、デュポンに対して訴訟を起こし、2005年に和解した際に行われることになったものである。

 科学委員会がC8への曝露とヒトの何らかの病気が関連している可能性があると判断した時点で、デュポンは最大2億3500万ドルの資金を提供して、地域住民の医療モニタリングを将来にわたり行うという責任を負うことになった。

 「可能性のある関連」という用語は、有害化学物質への曝露を研究している科学者にとって標準的な用語ではない。これはデュポンの和解案において、「利用可能な科学的証拠の重要性に基づき、C8への曝露と」訴訟に参加したミッド・オハイオ・バレーの住人の「特定の病気とが関連している可能性が高い」かどうかということ、と定義されている。

 デュポンは月曜日に声明を発表し、次のように述べている。「可能性のある関連についての報告が意味しているのは、PFOAへの曝露が原因となってワシントン工場の従業員も含む集団訴訟の原告全員もしくは個人が何らかの病気に罹患し、また将来も罹患するであろうと科学委員会が結論付けたということではない。」

 しかし、住民の弁護団は独自の声明を発表し、科学委員会の最新の研究結果は「PFOAは無害とするデュポンの主張を退けるものである」と述べた。

 「今日の科学研究の結果と12月の科学委員会の関連研究結果によって、PFOAと、ヒトの健康に対する何らかの重大な有害影響との関連に関する長年の論争がようやく終わりを迎えた」と、住民の弁護団は言った。「PFOAへのヒト曝露が、ヒトの最も深刻な病気のひとつであるがんに関連しているということがついに立証されたのだ。」

 科学委員会は7月に、可能性のある関連に関するその他の判断を発表する予定である。

関連資料


化学物質問題市民研究会
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