トラベル望遠鏡  その3
BORG 125SD Bino

  公開:2013年4月9日〜
更新:2014年1月8日 * 双望会での光学テスト結果をリンク。

 
借金しても、今作らなければならない1台

 どんな優秀な機材があっても、結局は“空”だ。オーストラリアに2011年2012年に行き、その思いは決定的となった。2011年はAPM-Bino/屈折双眼での遠征、2012年はHofheim-Instruments RD-300DX/ドブソニアンでの遠征だったが、 やはり双眼望遠鏡での素晴らしい見え味が強烈に脳裏に焼きついている。まるで擬似宇宙旅行、とでも言うべき体験の記憶は、双眼ならではではないか。

 口径は大きい方が良い。しかし、まず口径13cm程度の屈折双眼が焦点距離の点でも外せない。何といっても、散開星団や二重星が美しい。これ以上の口径なら、私の場合はObsession 18UC (45cm) という大口径で、さらに双眼装置も併用。常に、この2台で遠征できれば理想的だが、海外への遠征は、まず不可能。機動力抜群のハイランダーもあるが、最高の空ならもっと口径が欲しい。

 APM-Bino を分解して海外遠征の道もあるが、架台も含めると梱包の箱が4つになり、おいそれとは行けない。超軽量Binoの計画は、APM-Bino をオーダーする時からあった。軽量で優れた鏡筒、といったらBORG 125SD しかない。口径125mm、F6 (焦点距離:750mm)、対物レンズはペンタックスオプトテック製で、オハラ社製のSDガラスを利用した2群2枚構成のアポクロマート。今はアポクロマートは3枚玉ばかりだが、この鏡筒は2枚なので、鏡筒重量は、たった3.5sしかない。まさにトラベル双眼望遠鏡にはうってつけの鏡筒で、2008年に双眼望遠鏡をオーダー した時も候補鏡筒の一つだった。

 いつもBORG 125SD の事が気になっていたが、同口径の双眼望遠鏡があるし、何よりも高価で、ちょっと手が出なかった。時折B級品として安く放出される時もあるが、それでも2台となると、踏み切れなかった。しかし、よくよく考えてみると、 この鏡筒は実質限定生産品で、BORG にあるストックが無くなれば終わり(?)、もう、こんな鏡筒は二度と作れないのではないか。借金しても、今作っておくべき双眼望遠鏡ではなかろうか。と考えが煮詰まっていた時に、とあるルートから、超格安で入手できる事となった。

 BORG 125SD を利用した超軽量Binoのアイディアはずっとあったし、2011年秋に立ち上げた「トラベル望遠鏡 その1」でも、真っ先にこの事を述べている。だから、今回の松本さんへのリクエストに迷いは無かった。使う時に眼視ユニットの筒を引き出し、運搬時は極力短縮できるようにする、架台を含め可能な限りシンプルに( 遠征は目幅が同じ家内とが多いので、目幅64mm固定でも良い)、エンコーダー搭載(空の良い所では導入装置は不要だが、SkySafari があまりに素晴らしく、二重星の同定にも便利なので、搭載する事にした)。また、銀行マークで鏡筒固定(鏡筒バンド無し)、これにハイランダーのような架台で接続、というものを考えていたが、ここは松本さんに一切を任せた。彼の素晴らしい点は、依頼者のイメージを超越し、さらに完成度の高いものを製作してくれる点だ。

 APM-Bino  + Nikon NAV-HW 17mm で見る、46倍、実視野2.2°の南天の空の世界が絶妙で、大口径では、決してこの極上の世界は体験できない。BORG 125SD だと焦点距離が30mm短いだけなので、その点でもバッチリだ。

 

架台・三脚の選定

 双眼望遠鏡の製作をお願いしたが、沢山のバック・オーダーがあるので、当分の間、待たなくてはならない。その間、架台の三脚部分を調達した。12年程前に購入した私の中型カーボン三脚は、Gitzo G1349(G1348+G1318) だが、本体重量2.6sで、耐荷重12s。双眼望遠鏡には、ちょっと厳しそうだ。そこで、とある鏡筒+架台との兼用のため、新たに三脚を調達する事にした。

 

 選んだのは、Gitzo システマティックカーボンGT4552TS。5段三脚で、重さは2.15sだが、耐加重は何と25s! 写真左上のようにコンパクトなのに、伸ばせば、写真右上の通り。凄い世の中になったものである。これに、Velbon ネオストーン・バッグを付けた。これがあると、何かと便利。ファスナー付きなので、キャップ類等、紛失を免れる。

 

製作過程

 鏡筒が入荷して何ヶ月か経った時、今後の双眼望遠鏡の基本スタイルになるかもしれない、との事で、通常より早く製作に着手してもらう事になった。始めは、対物レンズを固定するメガネ・プレート(2013年1月6日)。徐々に不思議な形となって行き、架台との連結は、片持ちになっている(2月21日)。これで剛性は大丈夫かな?と心配にもなったが、ここは松本さんに安心して任せているので、ひたすら完成を待った。

  
松本氏のwebsite製作日誌から引用

 驚いたのは、3月20日の製作日誌。たったこれだけの部品で、双眼望遠鏡+架台が成り立っている。それだけシンプル、軽量になっているという証明でもある。これって凄くないですか!? 2013年3月末に完成。

  

鏡筒

 

 鏡筒の長さは、短縮状態で66cm、使用状態で73cm。伸び縮みする所に連結プレートがあるので剛性感は抜群でガタツキ皆無。このプレートを保持しての伸縮操作は、 いかにも精度が高い金属同士が滑らかに擦れ合うシュー、という音も伴ってそうとう快感だ。重さは10.6s。片手でもらくらく持ち運びができる。口径10cmクラスでも、この軽さは達成できないのではないか。 ちなみに、鏡筒の重さが3.5s、眼視ユニットが500g、フェザータッチ・フォーカサーが550gだから、フレームとEMSユニットの重さの合計は1.5sという事になる。ファインダー・ブラケットとファインダーは、いつものBaader Planetarium のスタンダード・クランプ 2457000ASky Surfer III

  

マウント・架台

  マウント・架台の重さは2.1s。天頂を向けた時、接眼部が三脚と干渉するのを避けるため、システマティックカーボンラピッドセンターポール3型:GS3512S を入れ、高さ可変とした。架台部分の総重量は、ストーンバッグも含め、4.9sとなった。円形の垂直軸回転部の下側に見えるステンレスのネジは、フリクション調整用。当初はこのネジが無く、六角レンチでの調整だった。しかし、鏡筒の重量バランスが取れていて快適な取り回しができていても、アイピースの交換の時に、鏡筒が上を向いてしまう時もあるので、いつでもフリクションが自在に可変できるようにしてもらった。


松本氏のwebsite製作日誌から引用 (アルマイト加工前)

  鏡筒とマウントの接合部は前後にスライドできるので、ここで鏡筒の重量バランスが取れるようになっている。また完成品には、ミゾにストッパーが付いているので、スライドしている内に抜け落ちてしまう事も無い。このマウントは、対物のメガネ型フレームで 片持ち固定となっていて、剛性が心配になってしまうが、実際に鏡筒を手にしてみて、これは全くの杞憂だった。ここもガタツキ皆無。何も言わなければ、方持ち固定とは誰も気付かないだろう。

 エンコーダー・ケーブルの所は耐久性が心配なので、 とりあえずツヤ消しビニール・テープで保護した。

  ちなみに、このマウントの水平軸は一番根元・下の所が回転する。従って、円筒形の支柱とエンコーダー、さらに鏡筒は一体化して回るので、ケーブルに負担がかからない。理に適ったメカニズムだ。

 

iPad mini の固定

 接眼部の連結プレートがiPad mini の下の支えとなり、あとはAPM-Binoでの固定法と同じ。天頂付近でも問題無い。これが最強の電子ファインダーとして働き、一晩に100数十も導入できる。南天の天体の同定もばっちりだ。

 

専用ケース

 当初、所有しているRIMOWA の軽量トランクに入れて運搬しようと考えていたが、実際に鏡筒が届いて見ると、無駄なスペースが多い。ネットで検索していたら、アド・トランクという会社が目に留まった。ここのプラ段ケースが良さそうだし、相当応用が効きそうだ。そこで、埼玉の工場に鏡筒持参で相談に行った。siteを見ていて勘が働いた通り、嬉しい位に次々と提案、アイディアが提示される。一も二も無く、安心して専用ケースの製作を依頼した。それが、これ。

 青い板状のものは、硬めのウレタンで、黒い所は柔らかいウレタン。青いウレタンは、鏡筒のフレームを中心に支えるようになっていて、EMSの所は囲むように隙間が空いていて、ここには圧力がかからないようになっている。硬いウレタンは、鏡筒の重さを面で受け止め、柔らかい ウレタンでショックを吸収する。ただ柔らかいクッションだけだと、一点に圧力が集中するので、相当厚みが必要になってしまう。ここの仕組みだけでも優秀さが光り輝く。 ちなみに、今のウレタンは昔のような劣化(10年でボロボロ)は無い、との事だった。

 ケースには、国際共通表示の取り扱い注意のマークと“FRAGILE”の文字を入れてもらった。ベルトが付属し、持っても肩にかけても持ち運びができる。また、四隅にゴム足が付いていて、置いた時のショックが少ない。ケース背面には、ワンタッチで着脱ができるキャスターが付属。

 キャスターが固定だと、これでゴロゴロ運搬される事になり、常時微振動を与える事になってしまう。だから、これは着脱式にして、私自身が大丈夫、と判断した路面では、このキャスターで運ぶ。立てた時には重い対物レンズが下を向き、EMSユニットに力は加わらないようになっている。 外寸は、81(幅)×44(奥行)×29(高さ)cm、重量はちょうど7sで、双眼望遠鏡を入れた総重量は17.6sだった。飛行機の通常の重量制限23s以下なので、余裕でクリアできた。

 素晴らしいアイディアと製作技術で感嘆してしまったが、さらに驚いたのは、わずか3日で完成し、届いた事だ。今後も末永くお世話になる事、間違いなし! 価格は\42000だった。

 この双眼望遠鏡は、対物レンズが外れるし、EMSユニットを外して収納する事もできるが、「出して、すぐ見れる」事が重要なので、一体型収納にこだわった。また、アイピースや架台を一緒に収納する事も考えたが、少しでもトランクの大きさ、重量を小さくしたかった事、空港で荷物を預けた後にセキュリティー等で開封チェックされた時に、アイピースが盗まれる可能性もあるので、これは避けた。

  

アイピースと倍率、実視界等 (*2013年12月更新)

 

焦点距離

  倍率 実視界  見掛視界 アイ・レリーフ 射出瞳径
BORG 125SD 750mm          
EWO 40mm 19 3.68° 69° 20mm 6.7mm
EWV 32mm 23 3.63° 85° 20mm 5.3mm
NAV-HW 17mm 44 2.3° 102° 16mm 2.8mm
NAV-HW with EiC 14mm 54 1.9° 102° 16mm 2.3mm
Docter UWA 12.5mm 60 1.4° 84° 18mm 2.1mm
Ethos 8mm 94 1.1° 100° 15mm 1.3mm
Nagler Type 6 5mm 150 0.55° 82° 12mm 0.8mm
Pentax XW 5mm 150 0.47° 70° 20mm 0.8mm
Pentax XO 5mm 150 0.29° 4 3.6mm 0.8mm
Zeiss Abbe II 4mm 188 0.23° 4   0.7mm
Ethos 3.7mm 203 0.54° 110° 15mm 0.6mm
Pentax XW 3.5mm 214 0.33° 7 20mm 0.6mm

海外遠征の場合は、太字の3本(+EiC)。

 これを期に、アイピースの焦点を合わせる事にした。以下、ここに掲載

 

とりあえず、見てみた


APM鏡筒のバフリング(APM のsiteより)

 まず手にして見て、真っ先に驚いたのは、光軸の正確さである。高倍率で光軸を合わせた後は、アイピースを交換しても一切光軸調整ノブに触れることが無い。双眼鏡の扱いと同じである。新しい支持フレーム 構造は凄いと実感した。
 肝腎の見え方だが、ヌケの良い、シャープな像。これはこれで一級品だ。APM-Bino とも比較してみたが、コントラストも色収差も地上風景での像の歪でも、APM-Bino の優秀さを再認識した次第。もっとも、片や3枚玉でバフリングが丁寧に行われているので、当然といえば当然なのだけれど、125SD APM-Bino の半分以下の重さなのだから、文句無し! 今まで車での遠征の場合、観望テーマによって、APM-Bino にしたり、Obsession にしたりしていたが、これからはObsession にも御伴し、相当活躍する事になるだろう。

 月末(2012年のGW)には、これで遠征予定。

   

機材の住み分け (2013年4月11日)

 こんなに機材ばかりあって、どうするの? という声も聞こえてきそうなので、ここで釈明。

 東の横綱は、APM-Bino。あらゆる点でバランスが取れていて、低倍率の美しい散開星団から高倍率の惑星までオールマイティにこなす。温度順応も迅速で空の状態にもあまり影響を受けないので、いつでも最高の像を届けてくれる。西の横綱は、Obsession 18"UC。454mmもの口径があり、系外銀河や惑星のディテイル等、これでなくては見えない世界がある。特に、1001 Celestial Wonders to see Before You DieDEEP-SKY WONDERSに掲載されている天体は、これでないと見えないものも多い。ただし、中〜高倍率専用。

 お手軽中口径としてORION 300 f4.5。ちょっと月や惑星を見たい、という時に出動。また、音楽関係の友人が訪ねてきた時に、双眼装置で月を見せると、一様に驚愕する。一般向けとして便利だ。30cmもの口径があるのに、出して、すぐに見れる。

 トラベル望遠鏡として、ハイランダーが大活躍。口径82mmの双眼なのに5sしかなく、機動性抜群。単眼10cmならハイランダーに負ける(と私は思っている)。2009年の皆既日食や2012年の金環日食金星の太陽面通過2011年の恵山遠征2011年の皆既月食、といった特別なイベントだけでなく、日頃のちょい見でも、大変重宝している。ついこの前も、パンスターズ彗星を美しく見せてくれた。さらに軽量ならKowa Prominar TSN-88388mmもの口径があって、しかもフローライト・クリスタルレンズ、本体1.5s 、正立像、架台込みでも総重量わずか3.2s。片手でラクラク、トート・バッグに入れて持ち歩ける。 ドブソニアンにファインダーとして使えば、最強。

 さらに、トラベル望遠鏡として口径を求めた結果がHofheim-Instruments RD-300DX。とにかく良くできている望遠鏡で、2012年の夏はこれでオーストラリアへ遠征。でも、やっぱり双眼望遠鏡の世界が好きなので、125SD を求めてしまった。今後は125SD 主体だが、口径が必要な場合(春等)はRD-300X での遠征になるだろう。 また、Obsession で遠征の時、APM-Bino を一緒に持って行くのは大変だったが(両方を積み込むのは、超立体パズルになる)、今後は125SD がお供できる。 また、このBinoなら雪が積もっている南会津だって、電車で行けちゃうのだ。

 

南会津に遠征 (2013年4月15日)

 14日(土)は、東日本は快晴。南会津も快晴なら、ここに行くしかない。天城も考えたが、春霞より冬の快晴(まだ雪が沢山残っていた)を選択。Obsession とで遠征。春の銀河団を横目で見ながら、かに座の二重星からスタート。二重星STF1245 (5.9/7.2等、10.3")だってNAV-HW17mm(44倍)で分離し、光学系は優秀。この鏡筒だけで一晩一緒に過ごしたかったが、夜半には夜露に襲われ、それが凍って失神。車で遠征ならヒーターが使えるが、海外の遠征はそうはいかない。巻き付け式のフードを製作しなければならないようだ。

 あそこは仲間との団欒が楽しくて、せっかく暗く快晴なのに話が尽きなくて困ってしまう。晴れても晴れなくても素晴らしい時が流れて行く。

 ここで問題が3つ発生した。一つは水平回転軸の動き。普段は粘性があって良かったのだが、-3℃の中では動きがけっこう硬くなり、水平回転が大変だった。これは近日中に対応予定。また、アイピースに眼が触れると、び〜ん、という感じで微振動がすぐには収まらない。このBinoはの字型の左下と左上の2点で支持している形なので、テコの作用で力が加わってしまうためのようだ。これはスタビライザーを追加し、近日中に対応予定。それから、NAV-HW17mm を使っていると、角度によって重心の位置が変わり、例えば、30°でスムーズに動いていたBinoが、70°になると、自然と上を向いてしまう。これも重心の位置を変更して対処予定。松本さんの所には、このアイピースを1本だけ送って製作してもらったが、やはりこういう時は2本送っておくべきだった。

 ちなみに、このBinoのメンテナンスが必要な場合は、専用ケースで宅急便で送る。という事は、車の乗り入れ禁止の場所にある宿や、ヘリで移動しなければならないような島でも、宅急便で送って遠征できる、という事だ。行動範囲も一気に広がるのだ。

   

問題の解決 (2013年4月22日)

 上記、3つの問題について、松本さんに対応してもらった。

   1. 水平回転軸の動き: 回転軸の接触面積を減らし、グリースを柔らかいものにして解決。指1本で、滑らかに動くようになった。
   2. 重心の位置の変更: ハンドル下にスペーサーを入れ、垂直回転ユニットの位置を手前にして、実用レヴェルとなった。
   3. 微振動: 当初スタビライザーを追加する予定だったが、微振動はここではない、との事で却下された。
      重い三脚で使用しても微振動に変化は無く、三脚のセンター・アームの高さ、鏡筒の前後のバランス、垂直回転軸のフリクションで、振動が大きく
      なるポジションと最小となるポジションを発見した。最小ポジションでは、全くの実用レヴェルで、NAV-HW17mm TeleVue 製アイカップに眼を着けて
      覗いても、問題無い。ようするに共振を外すようにして十分実用レヴェルとなった。

 以上により、私は大変強力な遠征用兵器を手に入れたのである。

 

ハーシェル・プリズム (2013年4月25日)

 出してすぐに見れるし、フォーカサーが2”なので、そのままハーシェル・プリズムを差し込んで見れる。便利! 詳細は、こちらへ。

  

 

マウナ・ケアに行って来た!(2013年5月4日)


すばる望遠鏡が眼下に!(本年4月から、すばる望遠鏡の見学ツアーは団体のみの扱いになってしまった)

 世界の望遠鏡が集結するマウナ・ケア山。北半球では最高の条件が揃っているので、ここで星が見れたら最高だ。一般観光客相手に、サンセット&星空ツアー、サンライズ&星空ツアーがあるが、ほとんどのツアーの星見は、マウナ・ケア山頂の中腹:標高2800mにある、オニヅカ・ビジター・センターで行われる。唯一、マサシ・ネイチャー・スクールのツアーだけ、3600〜3900m(通常は3600m、雲がかかった時だけ3900mとの事)で観望させてくれる。ただし、ツアーに随行する望遠鏡は小型シュミカセで、見れるのは惑星程度、あとは星空解説なので、天文ファンとしては、最高のディナーの前菜の味見程度のようなものだ。ツアーに連れて行ってくれるバンに荷物を積載するスペースは無いので、もし機材を持参するなら、各自の足元か膝上スペースのみとなる。で、これで行って来た! 


鏡筒はオーストラリアで活躍したトート・バッグに入れ 、プチプチで補強、両足の間に挟んで乗車。架台と三脚は、Gitzoのキャンペーンでもらったケースにちょうどすっぽり入る。
満席の場合、これ以上の機材の持ち込みは無理だ。

 ちなみに、レンタカーで山頂まで行く事も出来ない訳ではないけれど、日没30分後にはライト禁止で山頂からは退去しなければならないし、パンク等(途中砂利道で、相当道が悪い)トラブルが生じてもJAFのような組織はすぐには来てくれないし、もし、レッカー等になったら20万円以上かかるし、レンタカーの規約には、あそこには行くな、と書かれているらしく、自分で行くには、あまりにリスクが高すぎる。

 ハワイ島滞在は、最も晴天率の高い北西部の海岸。ここには、何もしない事に高いお金を支払うリゾートが沢山ある。しかし、昼も夜もぼ〜っと海を見、波の音を聞いて寝ていると、日頃の疲労もストレスも波と共に連れ去って行ってくれて、「ああ〜、癒される〜〜」が実感できる。ここでも星見をしたが、あいにく空の状態は今一つだった。観光で最もインパクトがあったのは、ヘリでのハワイ島一周。ハワイの大自然が満喫できるだけでなく、噴火口や海岸に流れる溶岩も見れるので、大興奮の連続だった。


溶岩が海に流れ込み、水蒸気煙が上がっている。

 
空から見た噴火口(溶岩がぐつぐつと波を打っていた!)と溶岩台地。原始地球の姿を目の当たりにした。
また、広大なマカダミアン・ナッツ畑や牧場大きさに圧倒された。TPP参加もまもなくのようだが、農業は、そのままだと5L/V8と660cc軽との戦いのようなものかもしれない。
政治家は人のお金でくだらない視察旅行をやっているが、自分で飛行機を予約し、ビザを取り、自分の足で歩き、泊まり、食べ、そしてその国に触れれば、
もう少し発言や行動はマトモになると思うが。特に北方領土を口にするなら、一度は自分でロシアに行ってみなさい。

 ちなみに、今はANA ハワイ便は23Kg、2個まで無料だが、2013年6月からは1個までに変更されるようで、ラッキーだった。もちろん、ビジネス・クラス以上なら関係無し - 季節によっては、エコノミーと大差無い料金のビジネス・クラスが出る時もある。また、マウイ島→ハワイ島の便(ハワイ航空)には、全ての預け荷物に料金がかかるので、ファーストクラス -  といっても+5000円程度、荷物は国際線同様の条件で無料 - にした方が良い場合もある。



雲海に沈んでいく太陽。緯度が低いので、日没のスピードは速い。日没後には、太陽柱状となった。

 さて、マウナ・ケア山頂でのサンセット。ベテランのツアー・ガイド、マサシさん(社長のマサシさんではない)の高山病予防の諸注意は極めて的確で、その通りに行動すればOK。日本国内では富士山・新五合目が最高で、それ以上は経験が無い。ただし、以前、ラス・ヴェガスで最高高度5000mからスカイ・ダイビングをした事が一度だけあった(これは本当に物凄い体験だった)が、やはり4200mはちょっと緊張する。実際に行ってみたら、標高2800mのオニヅカ・ビジター・センターや観望した3600mと山頂の4205mでは別世界。山頂では、少し動いただけでも立ち眩みのような感覚と息切れが生じる。 坂井三郎の名著「大空のラムライ」に、“戦闘機乗りの6割頭”という 言葉が出てくる。高高度の低酸素状態では、簡単な計算すらできなくなり、しかもそれを認識しなくなる、という。無防備な零戦とはいえ、一応、電熱服と酸素は装備されていたが、彼は一度電熱服の故障で火傷を負ってからはこれを使わず、酸素の重要性を説きながら、それでも数千mまでは無酸素で氷点下(時に-30℃以下)の中で空中戦をやっていたのだから、超人という他無い。


口径数m〜10mのマウナ・ケア天文台群。ここに、来年着工のTMT(口径30m)が加わる。
*観望時間は、わずか1時間だったので、星の写真はありません。

 さて、標高3600mでの観望。タイム・リミットは設置・撤収も含め、わずか1時間。このBinoなら、ものの2分で設置/撤収ができるので、本領発揮だ。沈み行くオリオン座、ぎょしゃ座から始まって、南天は南十字より上、東はおうし座より上、北はこぐま座より上のメシエ、メジャーなNGC 天体がターゲット。基本的に星は瞬かないが、日没直後の木星のシーイングは今一、また、おうし座のあたりにわずかに薄雲がかかっていた時もあったが(火山の煙、との事)、超快晴で、地平線(雲海)付近まできっちり観望できるし、何よりも透明度がいつもと全く別次元。いつもの像から、ガラスが2〜3枚無くなった感じ。空の暗さも理想的。最初、M383637M4647 辺りを見たが、その周りだって一面が散開星団のように星々が見える。とにかく見えている星の数が、全然違う。見た瞬間、感じたのは、「ああ、これが限界等級か」という事だ。SkySafari で12等まで星を表示させると、星の数が多すぎてかえって見づらくなるが、ここでは、そのまんま見える。普段は、望遠鏡の性能の6〜8割程度しか性能を引き出せていないのではなかろうか。M101 だってちゃんと渦を巻いているし、子持ち銀河だって、子持ちどころかまるで兄弟のようにしっかり見える。ここでは、12.5cmの口径でも日本の30cmより見え、しかもどれもがはっとする程、超美形。


ロボットの顔/ヘルメットのようなカリフォルニア工科大学の10.4m CSO/カクテク・サブミリ波天文台と、NASA/IRFF(3.0m赤外線望遠鏡)

 自慢のSkySafari は、高山病にでもかかったのだろうか、導入誤差が大きくて使い物にならなかった。早々に見切りをつけて表示だけで使用。どうしたことか。時間が無いので、焦りながらメシエ、メジャーNGC マラソンをしたが、残念な事に、一つの天体をじっくり見れない。ゆっくり見れれば、もっと微細な所まで見えるのに。横では、もう一人のガイドさんが星空解説をしていたが、一般向け星空ガイドと侮る事なかれ。下手なプラネタリウムの解説より遥かに素晴らしくて、驚いた。1時間は、本当にあっという間。せめて4時間は欲しいところだ。バンを1台チャーターする事もできるようなので、何人かで天文ツアーを組めたらいいなあ。この日、気温は相当高め。冬観望の時の上下の下着にヒートテック2枚重ね(+ツアーが用意してくれた上下の防寒着と帽子、手袋)で望んだが、夏の新五合目だって、こんな暖かい日は経験が無い位。ここは、湿度が数%との事で、それも体感に多少関係しているかもしれない。

 
オニヅカ・ビジター・センターにて。昼間は太陽望遠鏡、夜は、これらの機材が
ズラリと並ぶ 。
写真:右は、こことヒマラヤにしか生息していないSilversword(銀剣草)。触れてはいけない。

 オニヅカ・ビジター・センターに戻ってきたら、ハワイ大学の人達が、望遠鏡を総動員してDSOを見せてくれていた。ここは標高2800m、新五合目と大差無い、等と侮っていたが、空の暗さは全然違う。トイレ休憩のみだったので望遠鏡は広げられなかったが、CANON の防振双眼鏡で流してみた。やはりηカリーナと、その周辺は本当に美しい。ああ、南天が呼んでいる!

 
オニヅカ宇宙センターの月の石 。彼は、ハワイ出身の初の宇宙飛行士で、初の日系人宇宙飛行士。日本人宇宙飛行士は、彼の後。

 ちなみに、ハワイ島・コナ空港の中央に、オニヅカ宇宙センターという小さな展示館がある。時間があったので見に行ったら、月の石が置いてあった。訪れていた間、他にお客さんは皆無で、大阪万博(1970年の大阪万国博覧会で、アメリカ館が月の石を展示した。これを一瞬見るために何時間も並ばなければならなかった)の事を考えると、いくら時代とはいえ信じられないなあ。

 機材は無傷どころか、「望遠鏡です。」といって預けたら、ANA もハワイアン航空も丁寧に扱ってくれた。特にANA は、羽田で一般のトランク/荷物とは別に、一つだけカートに載せて持って職員が持ってきてくれた。素晴らしい!


キラウエア火山・ハレマウマウ火口 。火口はカルデラの中にある。

 ハワイ島なら、家族旅行でも楽しめる。そのついでに(どっちが、ついでだか...)天文ファンなら、フィールド・スコープかハイランダー持参で1時間だけでも見に行こう!

  

巻きつけフード (2013年6月2日)

 南会津の遠征で、夜露に弱いことがわかったので、巻きつけフードを作ってみた。作った、といっても、所有していた塩ビつや消し板(0.2mm厚、400×550mm。東急ハンズで\230)の長辺を70mmカットして、ヴェルクロで巻きつけられるようにしただけ。最初、植毛紙を内側に貼ろう、と思っていたが、この塩ビシートの片面はツヤ消しだし、少しでも軽くしたかったし、経時的には植毛紙はシワシワになってくると思われたので、シンプルにしてみた。 また、これだと専用トランクにも上から被れるようにして収納できる。
 この塩ビシート製フードでレンズの結露は防げると思うが、フード自体に結露してしまう可能性もあり、それは、また追って報告。

 

ファインダー:Sky Surfer IIIの曇り止め (2013年9月1日)

 ファインダーにはBaader PlanetariumSky Surfer III を使っているが、大変使いやすい反面、夜露にはめっぽう弱く、真っ先に失神する。また、レンズが筒内中央にあるため、拭き取る事もできず、唯一救えるのはドライヤーのみだった。何らかのヒーターを仕込もうか、とずっと思っていたが、ようやく取り組んでみた。

 ヒーターは、ORION の斜鏡で仕込んだ事があったが、もっと温度を上げたかったのと丁度良いサイズが無かったのでネットで検索し、シンワ測定株式会社のポリエステル・ヒーターを探し当てた。この中の、No.44149(20Ω、写真上)が大きさがピッタリで、リチウムイオンの006Pバッテリーで丁度良さそうな温度に上昇しそうだ。とても親切な会社で、ヒーター端子の保護用ポリアミド離型フィルム(写真左下)と耐熱両面テープ:DIC #8810NR(写真右下)も送っていただいた。

 

 まず、006Pバッテリー用スナップのリード線をヒーターにハンダ付けする。ハンダは、半球状にきれいに盛り上がり、光沢がなければダメだ。ヒーターは、ヒーター面を内側にするように両面テープで巻き付けた。これは、保温をより高めるためだけでなく、ハンダ付けされた端子が内側になると、結露でショートする可能性があるためで、この端子を外側になるようにし、そして保護用ポリアミド離型フィルムを両面テープで保護した。

 ここで、赤外線温度計を使って温度上昇のチェックをしてみた。バッテリーは、充電後で8.2V。電池を接続する前は29℃で、電池を接続後30秒後には早くも36℃に上昇し(測定距離7cm)、1分後には39℃、2分後には42℃、3分後には44℃、4分後には47℃、5分後は47℃だった。触ってみると、十分過ぎる位に温まっていたので、これなら結露していても、十分乾燥できそうだ、2回目も、ほぼ同様の温度上昇だった。

 最後は、チョコレートを買った時の保温シートのアルミ面を黒艶消し塗装をしてカヴァー。電池はヴェルクロで装着。けっこうスマートに仕上がった!と自己満足。あとは実際に使ってみて具合が良かったら、他のSky Surfer III もこれにしようと思う。
 *結果が出た時点でヒーターをまとめて購入しようと思います。1枚なら\2000以上しますが、枚数が集まれば半額以下になると思いますので、掲示板をチェックしてみて下さい。

 

双望会に参加 (2013年11月5日)

 今年も双望会に参加してきた。概略は、ここを参照していただくとして、このBinoに関していくつか。
夜露の激しい御園だが、上記巻き付けフードで、夜半までOKだった。しかし、朝、カヴァーを外してみたら、対物レンズの間にしっかり結露。やはり、使い捨てカイロ等をあてがっておいた方が良いかもしれない。ただし、ファインダーに仕込んだヒーターはバッチリ! 電池を繋いでほどなくしてスッキリ結露が取れた。

 また、双望会の名物 の一つ、“鏡筒鑑定団”のSさん125SD の鏡筒の光学テストをしていただいた。 結果(2014年1月7日にリンク)はOKで、一安心。「あれ、こんな鏡筒で見ていたの?」などと思われずにすんだ。 ただし、基本は“トラベル望遠鏡”なので、時々光軸等のチェックはしておいた方が良さそうだ。

 

   続く.....!

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   その2 笠井/Hofheim-Instruments RD-300DX
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   その5 「BORG 125SD Binoで 西オーストラリア遠征」 へ

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