Obsession 18" f4.2 UC
その1&2
大口径なのに、移動はこんなにコンパクト!
書き始め:2011年2月21日〜 公開:2011年6月16日〜
更新:2011年6月16日 *内容を一部修正しました。
写真:Obsession社のsiteより
何でこうなるの!?
ORION 300mm f4.5 銀ミラーは、実に素晴らしい。 しかし、我が家の車で運搬するには限界の大きさで、徐々に車の内装が痛んできてしまった。また、2人+望遠鏡を乗せて移動は厳しい。では、車を買い換えるか? そもそも、反射式望遠鏡の体積のほとんどは “空気” ではないか。そこで、Ninja のように、鏡筒を分割しようと考えた。しかし、移動で光軸が狂わないこの筒を切断するのには散々躊躇し、結局踏み切れなかった。“ちょうちん” みたいに折りたためる鏡筒は無いものか? ありました! Obsession Ultra Compact / UC。15"、18"、22" のラインナップ。
私には30cmが限界、これで十分だ、と思っていたが、良い空で45〜50cmで見ると、やはり30cmとは別次元だ。22"は流石にミラーも重く 、観望の時の高さも手に負えないが、18"でもこんなにコンパクトになるなら、車を買い換えるより望遠鏡の方が、はるかに安い、と自分に言い聞かせ、2010年12月、注文してしまった。どうせ先は長くない(?)。好きなことをやってしまえ。ORION は自宅専用とし、遠征にはObsession 18" UC で行こう。
「何事も、限界というものは、自分次第である。」
車は10年目に突入。先日、右前輪のタイヤがバーストして交換。エアコンも、また調子が悪いのだが、もっと頑張ってもらう事にした。
とはいうものの、実はもう一つ、考えていた事があった。ORION 300mm f4.5 の2段重ね反射双眼である。横並べした鏡筒で鏡像で見る反射双眼は見かけるが、鏡像にしたくなかったので、鏡筒を2段重ねにしてEMSユニットを使っての反射双眼 (ただし、水平方向は首を横にして見なければならない)、というのも考えた。しかし、光路長を考えると斜鏡が大きくなってしまうし、45cm反射にすれば、双眼装置を使っても30cm反射双眼と同等以上に明るく、45cmの分解能が得られる。また、運搬も30cm双眼では、かえって大変になってしまう。という理由もあり、Obsession 18" UC となった。
主鏡の蒸着は?
銀ミラーの素晴らしさを知ってしまうと、もう他は考えられない。 しかし、再度、冷静に検討してみた。ジオマテック社のsite (製品データのページ)が大変参考になる。アルミ通常反射だと、可視光線:400〜700nmでの反射率は92〜89%位。これにSiO2保護膜を付けると、88〜89%となる。2回反射では20%のロスである。アルミ高反射だと96〜89%、さらに超高反射にするとピークでは99%を超えるが、青色域では、反射率は73%にまで下がってしまう。銀ミラーは、98.5〜95.5%とダントツの反射率である。420〜700nmでは、2回反射でも94〜97%という物凄さ。OMI 社が公表している主鏡+斜鏡の総反射率のグラフを見ると実に素晴らしいのだが、 これに銀ミラーのデータを記入してみた。やはり銀ミラーは、そのはるか上を行っている。だからやってみる価値は、十分ある。
OMI社の公表している主鏡+斜鏡の総反射率のグラフに銀ミラーの反射率を書き加えた
Obsession 社に交渉したら、OMI 社が未蒸着のミラーを提供してくれる、という。しかも、価格も蒸着が無い分、安い。45cmもの大口径のミラーを銀にするには恐ろしく高額になるが、それでも本体を含めた総額は日本で売られている某50cmドブソニアンと同等程度である。こうなったらやるしかない。中年暴走族は、止まらないのだ。毒を食らわば...
本体は1ヶ月程で届いたが、主鏡の銀蒸着には諸事情で5ヶ月近くかかってしまう事になってしまった。そこで、 主鏡の蒸着ができるまで、いろいろ準備をする事とした。
準備-その1 取り説を読む
巨大なダンボール箱2個 + 主鏡のダンボール箱 + トラス・ポールの筒が届いたが、相当家を圧迫するので、もし購入を検討している方は、あらかじめスペースを確保しておいて下さい。また、もともとなのか、税関で開けたからなのか、クッションに使われている吹きつけウレタン+グラスウールがビニールから飛び出して散乱していた。箱も含め、この片付けが実に大変。一仕事だった。
さて、逸る気持ちを抑えきれず、さっそく組み立てようと思ったが、ここは冷静に、まず取り説を読む事にした。英文で何十ページかあるのだが、英文が延々と続いていて図が全く無い。最初げんなりしたが、難解な英文でないので、すんなり通勤電車の中で読めた。望遠鏡の取り扱いのみならず、観望のコツ等も書かれており、大いに勉強になった。 取り説の1ページ目に、「はやる気持ちはわかりますが、まず冷静になって、これを読んで下さい。」と書いてあったが、全くその通りであった。また、同時に購入した導入補助装置 Argo Navis には日本語のマニュアル(pdf file) があり、印刷して、これも目を通した。
一応、ファイルに収めた
準備-その2 斜鏡にヒーターを仕込む
結露、防曇のためのヒーターがオプションで用意されている。あくまで防止のためで、結露を乾かすためのものではない。この斜鏡のホルダーは秀逸だ。ホルダーにコーキング材で固定するのではなく、ホルダーの中に入れて、後部からクッション材で圧迫して固定する形になっている。だから取り外し自由で、汚れた時の洗浄にも便利だ。
まず、付属のテンプレートで、斜鏡にセンターマークの点を入れた。このテンプレートはいろいろな大きさの楕円が描かれていて、他の斜鏡にも応用できて便利だ。次に、ヒーター基盤を斜鏡にアラルダイドで接着し、一晩置いてからホルダーに収めた。 ケーブルは基盤内側に回り込むクセがついていると、操作中にミラー面に電池のスナップが接触して傷が付くので注意! 収めてみたら白色部分がそれなりにあるので、水性マジックで黒色に塗装して仕上げた。ちなみに、斜鏡の銀蒸着は、松本さんのお陰で、すぐに行う事ができた。
写真左:オリジナル 写真右:隙間を黒で塗装。
見えているコードは、006P用ケーブルの他、温度センサーとパワー・インジケーターLED。
準備-その3 フォーカサーの光軸調整
最初は、左右の軸の調整。斜鏡を固定する主軸の受け(スパイダーの頂点)に同径の金属の棒を入れ、レーザー光が、棒の中央を射抜くよう調整する(写真左)。使用した棒はチェロのスパイクで、紙を巻いてちょうど良い太さにした。
左右の軸の調整と高さ調整。
使用しているレーザー・コリメーターは、FARPOINT
FP210。
次は、高さ調整。フォーカサーを固定しているトップ・リング底面からレーザーポインター発光点までの高さと、トップ・リング底面から遮光フードに照射されている点の高さを等しくする (写真右)。フォーカサーは出荷時に調整されており、ピッタリ合っていた。
標準で、テルラドが付いている。本体をくるりと回して収納/使用するようになっている。等倍ファインダーは、他にも Baader Planetarium の Sky Surfer III 等を使っているが、テルラドは無骨なデザインとは裏腹に、大変見やすく使いやすいので良い。これはそのまま使うとしても、この望遠鏡での最大実視野は、1.4°。 私の場合は、やはり実視界数°のファインダーもあった方が良さそうだ。国際光器で扱っている正立ファインダー(50mm 8 倍)は、秀逸で、APM-Bino もORION もこれを使っているが、同じでは面白くない。Baader Planetarium から、口径6cmのファインダーが出ていて以前から大変気になっていたのだが、実際に覗いてみたら、意外と視野(実視界・見掛け視界双方)が狭く、却下。
BAADER Multi Purpose Vario-Finder 10x60 mit Astro-Objektiv und 45° Einblick
それなら、いっそフィールド・スコープをファインダーにしてしまおうか。これなら、ファインダーとして活躍するだけでなく、優秀な屈折の像が同時に楽しめる。80mmを超える口径でEDレンズ、正立像、そして本体が1.5s などという、信じられないスペックが目白押しである。ところが、大口径のフィールド・スコープでは最大実視界は2.4°止まりがほとんどで、3°を超えるものは、あまり無い。 以前は実視界3°を超えるアイピースも各社出していたが、どうも人気が無く、今はあまり生産されていないようだ。NAV-HW と双眼鏡で技術力の高さを見せ付けた、ニコン・ビジョンのEDG 85-A は、3.3°の実視界が得られるが、本体が2s あって、他社のものよりひときわ重い。
まあ、とにかく覗いてみよう、という訳で、さっそくあれこれ比較した。やはり口径の差は歴然としている。どうしても80mmは欲しいところだ。私が大いに期待したEDG 85-A は、アイピースの交換が、とにかく大変。怪力が無いと出来なかった。何で、アイピースも双眼鏡も、そしてフィールド・スコープも光学性能は素晴らしいのに詰めが甘いのだろう。結局選択したのは、Kowa Prominar TSN-883。88mmもの口径があって、しかもフローライト・クリスタルレンズ、本体1.5s。最も明るく像も秀逸だった。アイピース :TE-17W で実視野2.4°、見掛け視界72°である。それにしても、昔の望遠鏡の感覚からすると、ほとんど信じられないスペックである。望遠鏡業界の感覚が、未だに古典的・保守的概念から脱却できない部分を常々感じているが、ここでもそれを感じてしまった。
口径88mm、フローライト・クリスタルレンズ、正立像、実視野2.4°、見掛け視界72°、
本体重量1.5s
アイピースを換えれば、実視野1°まで拡大できる。フィールド・スコープ恐るべし!
さて、このまま単純には終わらない。さっそく各種天体用アイピースで試してみた。愛用している笠井 EWV 32mm は、2"バレルにレンズが詰まっておらず、しかも外す事が出来る。しかも、スコープ本体のアイピース口部のリングを外して、これを被せるようにして見ると、無限遠でピントが出て、しかも実視野は3°以上取れているようだ。 ただし、見掛け視界は85°は得られない。専用アイピースの挿入部の径が細く、2”アイピースでは、視野がしっかりケラれる。アイピース・コンバーター TSN-EC3 を使って昔発売されていたTE-21WD を装着すると3°得られるようだが、今は入手が難しい。
リングを外したところ EWV
32mm
を被せてみた。ピッタリ!
スコープ本体のアイピース口のリングは、口径54mmのネジ、EWV 32mm の2"バレルの内径のネジは56mm、この、54mm→56mmのステップ・アップ・リングは、市販品には見当たらない。そこで、松本さんに製作を依頼した。松本さんは、まるで ドラえもんのようだ。あっという間に、外周にギザギザの付いたフランジ付きのステップ・アップ・リングを作って下さった。松本さんに送ったのは、スコープ本体のアイピース口のリングのみ。これを基にジグを製作して、ステップ・アップ・リングを作った、との事。流石の技術力だ。
松本製ステップ・アップ・リング EWV
32mm
に装着したところ
純正のネジではないので、このような場合、何らかの潤滑材を使用しておいた方が安全だ。使用したのは、テフロン配合のオイル:Wako’s メンテループ ごく少量。APM-Bino の耳軸のメンテに使用しているものである。装着してみると、まるで標準のアイピースのようだ。
フィールド・スコープは、焦点距離等の情報は公開しておらず、各社、問い合わせても教えてくれない。 しかし、このスコープの焦点距離が500mmである、という情報を得た。そうすると、f5.68。EWV 32mm で15.6倍、実視界5.4°、射出瞳径5.63mmとなるが、視野がしっかりケラれるので、手持ちの機材との比較で、EWV 32mm を装着した時の実視界、見掛け視界がどの位なのか、チェックしてみた。実視界は、 何と約4°、見掛け視界は62°位だろうと思う。また、しっかりケラれた分、目の位置がシヴィアになる。 的確に眼を合わせないとブラック・アウトしてしまう し、アイピースに眼を近づきすぎても遠すぎても見掛け視界は狭くなる。
アイカップを装着すると、アイピースと眼の距離がちょうど良くなる。
EWV 32mm には、アイカップが付属している。これを装着してみたら、アイピースと眼との距離がちょうど良かった。つまり、眼鏡のレンズがアイカップに接する位で、最大視野が得られる。眼鏡のレンズも傷付かないので、実に具合が良くなった 。
ところで、標準のズーム式アイピースを使えば、60倍、実視界1.05°が得られるが、見掛け視界は63°で、定価は\63000もする。手持ちのアイピースを利用しない手は無い。本体にアメリカン・サイズのアイピースを挿入したら、合焦した 。Nagler Type6 5mm を使えば、見かけ視界82°で倍率100倍、実視界0.82°の超小型超軽量高性能正立望遠鏡になる! ただ、そのままではアイピースを固定できないので、何らかの筒状のスペーサーを入れなければならない。あれこれ考えたが、最も安上がりなのは、3mmの太さのOリング (\55)を履かせる、というもの。6本かませたらピッタリ!
口径88mmのフローライト・クリスタルレンズ の望遠鏡+アイピース3個(実視界4〜0.82°をカヴァー) で総重量3s以下、こんな物凄い望遠鏡は他にあるだろうか。軽量ヴィデオ三脚と一緒に持ち歩けば面白い。さらに、目幅が10cm位あればウルトラ双眼鏡にもなるが、流石にそんな人はいないだろう。
Nagler
6 5mm
に、3mmの太さのOリングを6本履かせる
左:EWV
32mm 、アイカップの先端を折り返し
て使用。 中央:標準アイピースTE-17W 右:Nagler
6 5mm
口径 | f | 焦点距離 | 倍率 | 実視界 | 見掛視界 | アイ・レリーフ | 射出瞳径 | |
TSN-883 |
88mm | 5.68 | 500mm | |||||
EWV | 32mm | 15.6 | 4°* | 62°* | 20mm | 5.63mm | ||
TE-17W | 16.6mm* | 30 | 2.4° | 72° | 20mm | 2.9mm | ||
Takahashi LE | 10mm | 50 | 1.° | 52° | 6.2mm | 1.8mm | ||
Nagler Type6 | 5mm | 100 | 0.8° | 82° | 12mm | 0.9mm |
* 推定値
さて、このスコープの取り付けにはあれこれ悩んだ。口径を考えると恐ろしく軽量なのだが、それでも何だかんだで2s近くある。 テルラドが付いている筒に錘の棒を入れ、鏡筒のバランスを取るよう設計されているのだが、先の部分にこのスコープを取り付け、双眼装置を使用したら、間違いなくトップ・ヘヴィーでバランスが取れない。
写真:Obsession社のsiteより
しかし、フィールド・スコープを装着しない標準の状態では、錘無しでも、けっこういろいろなアイピースがバランスが取れて使えることは驚異的だ。テフロンで 、底面とアームが接しているだけなのに動きもスムーズで、しかもフリー・ストップである。Obsession 社代表の Dadid Kriege 氏は、長年ドブソニアンに制作をしていて、下記の本を出版している。見てみると、このUltra Compact シリーズが、長年のノウハウの集大成である事がわかる。自作も楽しいが、これは全く敵わない、と思った。
The Dobsonian Telescope: A Practical Manual for
Building Large Aperture Telescopes
トラス部分に SLIK ロアーII クランプヘッド32 で取り付けて、これを移動してバランスを取るとなると、トラス・カヴァーに大きな穴を開けなければならず、フィールド・スコープを移動すると、ファインダーとしての光軸がずれる。クランプヘッドにアリミゾ(Vixen プレートホルダーSX) を載せ、長めのプレートでフィールド・スコープを移動してバランスを取ってみたが、これも今一。また、秘蔵していたBaader のSTRONG HOLD 2450310B も見送りとなった。
SLIK ロアーII クランプヘッド32
と
クイックシュー
HAKUBA MG35LB。Vixen
プレートホルダーSX
Baader
STRONG HOLD 2450310B
結局、Argo Navis 取り付け位置にクランヘッドを装着し、ドブソニアン本体底部に錘をぶら下げてバランスを取る事にした。ここに微動雲台までを載せると、 フィールド・スコープの重心が鏡筒本体 からどんどん離れ、鏡筒がある程度上を向くと、フィールド・スコープの重みで、鏡筒が勢い良く起き上がってしまう。フィールド・スコープの角度の調整は、クランプヘッドそのもので行う事とした。 なお、プランプ・ヘッドとフィールド・スコープは、手持ちのマグネシウム・クイックシュー HAKUBA MG35LB を使い、ワンタッチで着脱できるようにした。
Argo Navis
を指定の位置に取り付けたところ その位置にフィールド・スコープを取り付けたところ
さて、錘をどうするか。これは、鉛のインゴット、1.2sと500gをいくつか用意し、これを小さな袋に入れ、引っ掛ける事にした。バランス取りの実験をし、用意したのは、1.2s 4個、500g 2個、計.5.8s。これだけあれば、かなりいろいろ対応できそうである。袋はネットで見つけたタイの小物入れ。専用に作ったみたいに、本当にピッタリ・サイズだった。しかも、1個¥160。引っ掛けてみると、実に具合が良い。これには、けっこう達成感があった。
1.2sと500gの鉛インゴット 袋に入れたところ(ビニール包装は、そのまま)。下の2つは500g
ぶら下げたところ(無し〜2.9sでバランスが取れる)。*主鏡の上は、カヴァー。
斜鏡のヒーター電源
ヒーター電源は、006Pに直接ヴェルクロを巻きつけ、トップ・リングのスパイダーに貼り付けるようになっている。斜鏡ホルダーからはみ出ているが、取り説には、「心配ない。気にするな。」とあるが、そういう訳にはいかない。ヴェルクロも毎回使い捨てではスマートでない。電池ホルダーを使うと、やはり斜鏡ホルダーからはみ出でしまうので、リチウムイオン充電池にヴェルクロを巻きつけ、斜鏡ホルダーに完全に隠れるようにした。
指定の取り付け方法 リチウムイオン充電池を装着(余ったスパイダーのヴェルクロはカット)
冷却ファン
冷却ファンは、ケーブルが先バラの状態だった。プラグを取り付けインシュロック・タイで固定し、片手で差し込めるようにした。 なお、ファンは、ケーブルの赤線に+の電圧を加えれば、ちゃんと鏡に風が当たるよう、取り付けてあった。
取り付けたプラグ ケーブル
インシュロック・タイで固定
銀ミラーが届いた!!
この大口径の銀ミラー蒸着は大変だった。会社との行き違いや、大震災による工場の被害、余震による再被害等々で、遅れに遅れた。しかし、松本さんの尽力のお陰で、2011年5月末、やっと届いた。一点の曇りも無い、完璧な蒸着だった。部屋の蛍光灯の反射が恐ろしく眩しい。覗き込んだ、自分の顔がリアルで気持ち悪い。ああ、もっと美形だったら、私の人生も相当変わっていただろうに...
銀ミラーの蒸着の成功には、洗浄という作業が大変重要らしい。この大口径の蒸着には、大口径専用の洗浄機を動かさなければならないが、これだけで、相当な金額がかかってしまう。この洗浄機の稼働率が悪く、この銀ミラーを最後に、この洗浄機を処分する、という。実に残念だが、私の銀ミラーが、この会社で最初で最後の大口径銀ミラーとなってしまった。この銀ミラーの反射率の測定結果を見ると、420〜700nmで、 97.5〜98.8%という、破格の反射率であった。宝物を一生大事に扱おう。
測定結果
さっそく光軸を調整した。私の場合、FARPOINT FP210 & FP261 を 使っているが、ジズコ社が添付した取り説・光軸調整の方法で行っている。内容は転記できないが、とてもわかりやすくまとまっていて、良いと思う。カヴァーをかけないと、主鏡の位置からフォーカーサーが丸見えなので、あっという間に光軸が合わせられる。また、バーローレンズを使った方法が紹介されている。
この望遠鏡の購入を検討している時、この望遠鏡のオーナーのMorgenstern さんのブログが大変参考になった。彼によると、鏡筒を傾ける角度で光軸がずれる、という。そのために、主鏡を保持するケーブル・スリングを注文し、トップリングの取り付け位置を変更し、光軸問題を解決している。 大口径ドブ使いの先人達による適切なアドヴァイスとそのアプローチは科学的で素晴らしく、とても勉強になった。私が注文した時は、ケーブル・スリングは標準装備となっていた。最初に組み立てて光軸をチェックしたら、鏡筒を傾けても光軸が全く動かず、驚いた。トップリングの取り付け位置は従来と変っていないように見えるが。翌日、移動して組み立ててみたら、今度は、光軸のズレが確認できた。ただし、アイピースの位置で最大で5mmだった。焦点距離は1905mmなので往復3810mmで5mmのズレ、組み立て式トラス構造としては、優秀なのではないだろうか。ただし、今後もチェックし続ける必要がある。
写真左:天頂を向いた時
。レーザー光は、出た所と帰ってきた所が完全に一致している。
写真中央:
約45°傾いた時:3mm程ずれる。 写真右:
水平付近:5mm程ずれる。
ミラー・ボックスに鏡を入れて持ち上げてみたら、予想より相当重かった。重さを量ってみたら、33sもあった。2〜3回移動してみたが、私にはちょっと危険な重さだ。紹介ヴィデオでは難なく持ち上げているが、 誰でも取り扱える重量ではない。とりあえずは頑張るが、 主鏡のケースを見つける事にした。そうこうしていたら、満員電車で右肩を捻り、右手が全く上がらなくなってしまった。これ、50肩? あと何年頑張れるだろうか。
オプションで、ケースが用意されている。こんなものに入れたら持ち上がらないのは明白だし、車にも入らないので、注文しなかった。しかし、本体の保管や、主鏡を除いて送付する場合(3年後のGWを考えている)、ケースはあった方が良い、とも思えてきた。幸い、Morgenstern さんがケースが不要で有償で処分しようとしていた、という事だったので、譲っていただいた。
とてもしっかりした、素敵な箱が届いた。これが活躍できるよう、頑張りたい。
Obsession 18" f4.2 UC
その2
大口径なのに、移動はこんなにコンパクト!
書き始め:2011年6月5日〜
公開:2011年6月16日〜
更新:2012年2月5日 *アイピースの組み合わせのレイアウトを変更しました。
写真:Obsession社のsiteより
ファースト・ライト(2011年6月4日)
今年は、5月に入梅してしまった。連日雨で、地上風景すら拝めない。でも6月3日より天候が回復。4日(土)は、伊豆でファーストライト!と思っていたが、薄雲に覆われた空の可能性が高く、見送った。とりあえず、家で見てみよう。世間の天気予報は「晴れ」でも、天文的には「曇り」が多い。天体観測用天気予報があれば良いのに。
夕闇が迫ってくる頃、屋上でファースト・ライト。ところが、フェンスが視界を遮り、地上風景が全く見えない。ORION の場合は台に載せて見れたが、これはそういう訳にはいかない。いつもチェックしている鉄塔が見えないのは、とても残念だ。工事現場のクレーンを見つけ、とりあえず、これを見てみる事にした。ところが、見えない! 何だろうと思ったら、いつものように、 アイピース延長筒を使っていたのが原因だった。延長筒無しでアイピースをそのまま挿入して合焦した。
おお! これは凄い。実にシャープでコントラストが良く、反射とは思えない。シュミカセみたいなギラギラした感じが無いのは、銀ミラーの威力だろう。夜8時。横浜の我が家では、アークトゥールス位しか見えない空だが、とりあえず、空に向けてみた。いいですねえ。星が点です。 しかも、色の諧調が豊富で、同じ赤系の色の星でも色は様々で、一気にダイナミック・レンジが広くなった。そういえば、土星が見えるはず。気を付けないと、どこにあるかわからない位の空だけど、薄雲を通して土星を見てみた。おお、やっぱり大口径は凄い。1km先で見ていた風景が、200m位に近づいた感じだ。表面の帯の見え方が全然違う。 それにしても、OMI 社のミラーは優秀だ。こんな大口径を扱う会社がアメリカにはいくつもあるなんて、このあたりはやっぱり凄い。
さて双眼装置を装着。合焦しない! ORION の場合は、2" glass path corrector (GPC) を使用し、アイピース延長筒無しで合焦していた。アイピース単眼の場合は、アイピース延長筒を使用。Obsession では、アイピース単眼の場合でも延長筒はいらないので、双眼装置を使うと、バック・フォーカスが足りなくなるのであった。あれこれリレー・レンズを組み合わせてみたり、接続バレルを工夫してみたりしたが、全くダメ。主鏡も1.5cm位浮かせてみたが、これもダメ。2倍以上のリレー・レンズを使うか、トラス・ポールを短くするしかないようだ。ただ、私のObsession は光軸があまりずれないので、トラス・ポールの加工はしたくない。あとは、トップリングの下側に、もう一つフォーカサーを取り付け、トラス・ポールに、収納・引き上げ式の斜鏡を もう一つ仕込む方法もあるが... デンクマイヤーなら合焦するようなので、もしこれから購入する方は、こちらをどうぞ。双眼派としては残念だが、ORION でも惑星を見る時は、Pentax XO 5mm かZeiss ABBE II 4mm の単眼だったので、このあたりは柔軟に使っていこうと思う。双眼装置は見やすくて疲れないが、ここ一番の解像度は、やはり双眼装置は無い方が上だ (とはいうものの、下に書いた通り、やっぱりトラス・ポールを短くした)。
アイピース
アイピースの対応表は以下の通り。TeleVue Paracoor Type 2 を使用 する場合もある。Type 2 となって、格段に性能は向上したと思う。アメリカでは、口径50cmでF3台などというドブソニアンが出てきて、それというのも、このパラコアが、F3のパラボラミラーまで対応できるようになったからである。F3のニュートン鏡筒にこれを使うと、何とパラコアを使わないF12のコマ収差に匹敵するという。将来は、「昔は脚立に乗って見ていたんだって。」などと言われるのかもしれない。
使用しているアイピースと実視界、倍率、等をまとめてみた(2012年7月現在)。
Obsession 18" UC |
焦点距離 | 倍率 | 実視界 | 見掛視界 | アイ・レリーフ | 射出瞳径 |
口径457(454)mm f4.2 | 1905mm | |||||
EWV | 32mm | 60 | 1.43° | 85° | 20mm | 7.6mm |
NAV-HW | 17mm | 112 | 0.91° | 102° | 16mm | 4.1mm |
NAV-HW with EiC | 14mm | 136 | 0.75° | 102° | 16mm | 3.3mm |
Zeiss Ortho | 25mm | 76 | 0.68° | 52° | 21mm | 6.0mm |
Docter UWA | 12.5mm | 152 | 0.55° | 84° | 18mm | 3.0mm |
Leica Vario Zoom ASPH. | 17.8mm | 107 | 0.56° | 60° | 18mm | 4.2mm |
8.9mm | 214 | 0.37° | 80° | 18mm | 2.1mm | |
Ethos | 8mm | 238 | 0.42° | 100° | 15mm | 1.9mm |
Ethos | 6mm | 318 | 0.31° | 100° | 15mm | 1.4mm |
Ethos | 3.7mm | 515 | 0.21° | 110° | 15mm | 0.9mm |
Nagler Type 6 | 5mm | 381 | 0.21° | 82° | 12mm | 1.2mm |
Zeiss ABBE II | 6mm | 318 | 0.14° | 43° | 1.4mm | |
Pentax XO | 5mm | 381 | 0.12° | 44° | 3.6mm | 1.2mm |
TMB Supermonocentric | 5mm | 381 | 0.08° | 30° | 4.2mm | 1.2mm |
Zeiss ABBE II | 4mm | 476 | 0.1° | 43° | 1.0mm | |
Nagler Zoom (4-2mm) | 4mm | 476 | 0.1° | 50° | 10mm | 1.0mm |
3mm | 635 | 0.08° | 50° | 10mm | 0.7mm | |
+ 双眼装置 (f=7.14 換算) | 3238.5mm | |||||
Panoptic | 24mm | 135 | 0.5° | 68° | 15mm | 3.4mm |
Docter UWA | 12.5mm | 259 | 0.32° | 84° | 18mm | 1.8mm |
TeleVue Powermate 2" | 2× | |||||
Zeiss Abbe-Barlow | 2-2.2- |
2.6-2.8 |
× |
|||
TMB Supermonocentric ED | 1.8× |
|
|
基本はトップ・ヘヴィーなのだけれと、軽量アイピースの場合は、やはり錘はあった方が扱い使い易い。付属の筒に鉛球(4.5mmφ)を入れて使う事にした。3本あるので、まず、500g、400g、300gでやってみる事にした。
左:植毛処理済み 右:未処理(オリジナル)
この望遠鏡は、基本骨格だけの望遠鏡なので、斜鏡はむき出しである。暗い所でないと、盛大に光が入り込む。我が家の屋上等では、もろに影響を受ける。しかし、もともと暗い所での遠征用なので、全く気にしていない(今のところは。何せ、まだ暗い所で見ていない!)また、筒内気流の影響を受けにくい、等のメリットもあるし、何といっても、このスケルトンのデザインに惚れ込んで 購入したし、見とれている位だ。しかし、最低限の迷光対策はしておきたい。
まずは、遮光フードに植毛紙を貼った。上記写真ではわかりにくいが、写真左側はトップリングの遮光フードで、右側は主鏡の遮光フードである。双方ともに、ヴェルクロで装着する。 外側は光沢があるが、内側は、無反射処理がしてある。しかし、植毛紙を貼った方が、より光を吸収してコントラストが上がるに違いない。という訳で、カーヴに合わせて貼っていき、余分な所はカットするようにして貼った。耐久性は未知数。もっと大きな遮光フード+植毛処理を考えているが、とりあえずは、これでスタート、といったところか。
トラス・ポールの短縮
Baader の双眼装置が使えないのは残念だ。しかし、もしトラス・ポールをアイピース延長筒の分だけ短くすれば、2" GPC を使用して合焦する。もっと短縮すれば、2" GPC 無しでも合焦させる事はできるだろうが、斜鏡の大きさやコマ収差 、フォーカサーによるケラレの可能性を考えると、これは止めた方がよさそうだ。トラス・ポールの強度と精度を保ち、6本の短縮加工は、ちょっと自信が無い。Obsession 社のオーナー、Dadid Kriege さんに相談したら、$300で短縮トラス・ポールを出してくれる、という。$300なら、注文した方が安全だ。という訳で、6月8日、注文。
手持ちのアイピースで、最もフォーカスが手前なのは、Nikon NAV-HW 17mm(ただし、特製スリーヴを装着した状態で)。最も遠いのはEthos 8mm で、その差は、約31mm。双眼装置(Baader + 2" GPC )の場合は、NAV-HW 17mm より23mm手前になる。また、2" GPC は鏡筒内にかなりはみ出るので、できるだけバック・フォーカスはかせぎたいところだ。しかし、主役はParacoor Type 2 + NAV-HW 17mm。ちなみに、Paracoor Type 2 を併用しても、焦点はほぼ変らず、またバレルの長さはフォーカサーのスリーヴと全く同じ。このあたりは流石だ。このあたりを考え、トラス・ポールの長さを5cm短縮する事にした。標準のトラス・ポールの長さは140cm、短縮版は135cm。今後、オプション(標準?)としてカタログにも載ると良いと思う。トラス・ポールが短縮すれば、双眼装置が使える、2" GPC が鏡筒内にとび出さない、トップリングの組み立てが楽、天頂付近での観望が楽、光軸が狂いにくくなる、等々メリットが極めて大きい。
トグル・クランプのネジが曲がった
ぐにゃっ、と曲がったので力で元に戻したが、真っ直ぐには戻っていない。
組み立て、運搬を繰り返していたら、トグル・プランプのネジが曲がっているのに気づいた。ほぼ毎日、主鏡が収まっているヴァーチャル・ミラー・ボックスを持ち上げていたが、徐々に重さに慣れてきた、とはい え、やはり重いし、気合一発で持ち上げた時に、変な角度で負荷がかかったのだろうと思う。何とか元に戻したが、長さの調節ができなくなった。今後、このあたりにも注意が必要だ。
トグル・クランプを外して運搬する時、ネジの頭が上を向いていると一番出っ張りが無いのだが、いつの間にか写真・中央のように、出っ張った位置で引っかかって止まっている場合がある。これでは危険だ。ネジの頭は、下方向にして運搬した方が安全のようだ。
曲げてから1ヶ月後、短縮トラス・ポールを送ってもらう時、一緒にネジも送ってもらった。交換。今度は曲げないように気をつけよう。
集光力と極限等級
双眼鏡のところで、集光力についてまとめたが、口径42mmの双眼鏡では36倍、APM-Bino では345倍、口径300mmのORION では1817倍、この18" Obsession では、何と4206倍もある。では、何等級の星まで見えるか、という極限等級は、1.77 + 5log(口径mm) で求められる。肉眼は、6等級まで、口径42mmの双眼鏡では9.9等級、APM-Bino では12.3等級、18" Obsession では、15.1等級である。見える世界が広がる訳である。
双眼鏡・望遠鏡 | 口径(mm) | 集光力(倍) | 極限等級 |
10 | 2 | 6.8 | |
TC-E2 BINO | 12 | 3 | 7.2 |
TC-E2 BINO | 14 | 4 | |
Leica/Zeiss | 20 | 8 | 8.3 |
Kowa | 33 | 22 | 9.4 |
Canon/Nikon EDG | 42 | 36 | 9.9 |
Nikon/miniBORG50 | 50 | 51 | 10.3 |
High Lander | 82 | 137 | 11.3 |
Kowa TSN-883 | 88 | 158 | 11.5 |
APM/LZOS | 130 | 345 | 12.3 |
ORION | 300 | 1817 | 14.2 |
OBSESSION 18" | 454 | 4206 | 15.1 |
斜鏡の保護
トップ・リングを外して移動する時、斜鏡には靴下を履かせるのが良い、と取り説には書いてあり、実際、siteのヴィデオを見ると、組み上げた後、サッと靴下を引き抜いている。しかし、あれでは斜鏡の表面を擦ってしまわないだろうか。そこで、適当なケースを近くのスーパーで探した。ちょうど、スクリュー・キーパーなる容器 (\399)を見つけた。これに穴をあけて紐を通し、斜鏡を保護するようにした。専用のアクセサリーみたいにピッタリ! 達成感に満足。
スクリュー・キーパー 紐を通す 中にクリーニング・クロスを入れる 斜鏡を入れ、紐で軽く固定。
トラス・ポールとスタビライザー・バー、エンコーダー・アームのケース
トラス・ポールは丸いダンボールに入ってきたが、これでは移動に場所を取ってしまう。また、スタビライザー・バーとエンコーダー・アーム(下の図を参照)のケースは無い。という訳で、ケースを探した。三脚のケースみたいな高価で立派なものは不要だし、こういった時は他の分野から探した方が良い。トラス・ポールは標準で金具を含めると150cm、短縮版で145cm。スキー板のケースやストック、テント・ポール用のケース等もあるが、大きくなると重いものもあり、デザインも今一。勤務先の近くの石井スポーツに行ったら、カヌーのパドル・ケース:マーシャス PC-102 というのを見つけた。しかも\2513。帰ってからトラス・ポールを入れてみたら、専用ケースのようにピッタリ! しかも軽くて扱いも抜群に良くなった。これまた達成感に満足。
標準トラス・ポール(付属のゴム・バンドで結束)
パドル・ケースM:マーシャスPC-102に収納
さて、下部の弧状のアームを補強するスタビライザー・バー(長さ70cmの棒状の板)と、エンコーダー + 固定アームの収納には、いつもレコーディング機材でお世話になっているサウンドハウスからスタンド・ケースを探した。
スタビライザー(左) と エンコーダー取り付け用アーム(右)
独K&M は、安くて良いものが多く、私の大型のマイク・スタンドもK&M 社製だ。10811というケースは、長さが70cmでピッタリだし\1400とリーズナブル。これにアーム類を入れた。ただし、スタビライザー・バーは重く、こもまま全てを入れて運搬するとエンコーダーを 痛めてしまうので、エンコーダー + 固定アームは、エアー・クッションで保護してから入れるようにした。また、ナイロン・シュラウド(鏡筒の遮光カヴァー)固定用のファイバー棒も入れた。
アーム類をK&M 10811に収納
どれも自分の手を加わえないと完成しないので、かえって大いに楽しめる。
標準の遮光フードは小さく、盛大に斜鏡に光が入り込む。暗所での使用が前提だが、大きな遮光フードを作成した。暗所だって赤色灯の光はちらつくし、遮光フードは大きい方が良いと思う。そういえば、「大きいことは、いいことだ。」というコピーを思い出したが、これが通じる人は同世代以上。
標準の遮光フード
標準遮光フード同様、植毛紙を貼るのだが、けっこう重くなるので、支えとなる板は薄くて軽いものが必要だ。東急ハンズへ行ったら、塩ビ黒色ツヤ消し板、厚さ0.2mm、400×500mm、\383
というものを見つけた。これを組み合わせて遮光フードを作る事にした。4枚購入。
トップ・リングには斜鏡を支えているスパイダーが3本あるが、これに合わせて板に切り込みを入れると、ヴェルクロで着脱を繰り返す内に、切れ込みがどんどん拡大していくようなので、とりあえず、スパイダーの間に板を配置し、間を細い板で補完する形にした。接着は、全てヴェルクロで行った。購入は、ここから4m(交渉すると、m単位で売ってくれます)購入したが、ちょうどピッタリ使い切った。
左:分割した遮光フード(植毛紙の両脇は、ヴェルクロ) 右:1枚に組み立てた遮光フード
左:トップ・リングに装着(上部に小さく光っているのは、テプラで打った通し番号) 右:筒内側フォーカサー部、真黒!
製作は、現物合わせで適当に成り行きで行った。組み立ててトップ・リングを傾けてみたが、円筒形は保たれていて、問題なさそう。なお、組み立てはシートを順番通りに並べないと、きれいな円筒形にならないので(現物合わせで作ったので)、テプラ・透明テープで通し番号を貼り、わかるようにした。内側を覗くと暗黒が保たれ、これまた達成感に満足! でも、何で最初からこうしないのだろう。
本当のファースト・ライトはお預け状態が続いているが、望遠鏡はどんどん進化している。梅雨明けは、まだ先。
と、ここまで書いて何日か様子を見たが、やはりこの円筒遮光フードは強くないようで、風が吹いたら、おそらくダメであろうと思う。そこで、竹ひごを支えとして入れようと考えた。東急ハンズへ行ったら、何とカーボン・ファイバーの棒 1mmφ×900mmが売られていた。1本\882と竹ひごの100倍も高価だが、折れないし軽いので購入。円筒内側に沿わせて、上部とフォーカサー部に2本ずつ、計4本を植毛紙で固定した。この遮光フードの着脱はヴェルクロだが、けっこう手間がかかり、しかも、きれいに円筒形に装着するのは 意外と大変なので、おそらく、半固定遮光フードになると思う。
カーボン・ファイバーで、骨入り。
脚立
天頂付近では、これが無いと見れない。標準トラス・ポールの場合はアイピースの高さは178cmだが、短縮版だと173cm。私の場合は20cmの高さの脚立があれば間に合う。しかし、間にステップがもう一段あった方が見やすい。手持ちのものだと1段目の高さが22.8cmなので、10cmの適度な台を東急ハンズで見つけた。木製のブロックで\2980。脚立の前に置いても良いし、中に入れて半分出すように置いても良い。私達夫婦は、これでOK。
月を見た(2011年6月21日)
ファーストライトから3週近く経過。星どころか月すらも見えない日が続いた。太陽も見えない梅雨時の曇天だから、月が見えないのも当然といえば、当然だ。しかし、6月21日朝、久々に太陽 と青空が顔を出している。太陽が見える時の朝の日課は、P.S.T.。NHK-BSで放送されている、コズミック・フロントは内容が素晴らしく見応えがあるが、「迫りくる太陽の異変」も大変興味深かった。今後、曇り空が増え、星が見える日も少なくなってくるのかもしれない。昼間は夏のような猛暑。帰宅し雑用を済ませ遅くなったが、深夜1時過ぎに望遠鏡を出した。月齢20.2、35〜45°位の高度だったが、気流は割りとOK。大口径なので、NDフィルターを使わないと、眼を傷めてしまう。とはいうものの、どの位眩しいかは、しっかり体験。
さっそく「アルプス谷」あたりを中心に見てみた。「谷の谷」はちょっと厳しいが、谷の南側の斜面にある、非常に小さいクレーター群が鮮明に見えるので驚いた。流石は大口径。Ethos 8mm 238倍は、極めて鮮明でシャープ。見やすくて、実に楽しい。5mmアイピースはいろいろあるが、やはりPentax XO 5mm (381倍)は傑出している。谷の壁面の描出の鮮明さには、しばし時を忘れてしまう位だ。自分にとってはXW シリーズは過去のものになってしまったが、XO シリーズは、是非生き残ってもらいたいものだ。Supermonocentric もABBE II もTakahashi LE も良いが、このあたりまでが無難なところか。Ethos 3.7mm 515倍も使えない事はないが、XO 2.5mm は、過剰倍率。Nagler は、双眼望遠鏡向き。そのうち、木星で再度アイピースを見比べてみよう。
短縮トラス・ポール(2011年7月4日)
2011年6月末、短縮トラス・ポールが届いた。 さっそく光軸をチェックしてみた。標準トラス・ポールの場合、水平方向で最大で5mm程ずれたが、短縮版では、思いっきり水平方向にして、最大で3.5mm程度に留まった。通常使う40°〜天頂では2mm以内、これなら十分な精度といえよう。
写真左:鏡筒が約45°傾いた時。レーザー光は、出た所と帰ってきた所が完全に一致している。
写真中央:鏡筒が天頂を向いた時。ズレは1.5mm位。 写真右:鏡筒が 水平付近:3.5mm程ずれる。
寝ようと思ったら雲の隙間から星が見えるので、さっそくテストしてみた。双眼装置は、フォーカサー外筒から27mm出た所で合焦。鏡筒内側への突出は17mm、「いいんじゃないの〜」、とつぶやいてしまった。Paracoor Type 2 を使う場合、延長筒を使わず直接フォーカーサーに入れ、もう少し焦点距離が必要な場合は、若干引き抜いて使用。単体アイピースでは一番手前で合焦するNAV HW 17mm は、フォーカサー外筒から47mm出た所で合焦。一番後で合焦するEthos 8mm は、78mm出た所で合焦、これは、Paracoor を若干引き抜く必要があった。
はくちょう座の姿も追えない位の空だったが、それでもさっそくM13、27、57 を見てみた。この3つは都会の空でも良く見えるが、さすがにこの空で西に傾いたM13 は、期待よりちょっと今一。それでもM27 は十分濃いし、M57 は、リングの濃淡が写真のように見え、感激! (残念ながら、この空では中心星は無理だった)。都会でも、こんな大口径が生かせるのに驚いてしまったが、何といっても152倍、実視野0.55°(Docter UWA 12.5mm) の像のクオリティが極めて高いので、今までに無い大きさで天体が楽しめるのに感嘆してしまった。梅雨明けまで、あと2週間位だろうか、待ち遠しい。
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