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Gentian

竜胆(リンドウ)

リンドウの出てくる物語や漫画などをご紹介しています。

リンドウ

リンドウ科の多年草

〔花期〕9月〜11月

〔花言葉〕悲しんでいるあなたを愛する・(皮肉で)ありがとう【仏】

山野の草原や土手の草むらに自生。青紫色のラッパ状の花を咲かせる。名前は漢名の「竜胆」の音読みに由来する。

 

<古典>


『枕草子』 第六十五段

竜胆は、枝ざしなどもむつかしけれど、こと花どものみな霜枯れたるに、いとはなやかなる色合ひにてさし出でたる、いとをかし。…

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他の花が枯れているときに、鮮やかに咲くところがいい、と書いてあります。確かに、他の秋の花と比べると花期が遅いようです。

『徒然草』 第百三十九段

…秋の草は、荻、薄・桔梗・萩・女郎花・藤袴・紫苑・吾木香・刈萱・竜胆・菊。黄菊も。蔦・葛・朝顔。いづれも、いと高からず、さゝやかなる、 墻に繁からぬ、よし。…

<短歌(和歌)>


わがやどの はなふみしだく とりうたん
  のはなければや こゝにしもくる (紀友則/古今和歌集)

「りうたんのはな」(リンドウの花)を詠み込んであります。

<小説>


伊藤左千夫 『野菊の墓』

村の旧家に生まれた僕は小学校を卒業したばかりの十五歳、親類の民子は十七歳だった。兄弟のように母親に可愛がられた二人だが、周囲の人間がもう子どもではないと母親に告げ、母親も僕と民子にあまり会わないようにと言う。
そのときから、民子の様子も変わり、僕の民子への気持ちも変化していった。
しかし、二人の仲に疑いを持つ人々によって、僕は早々に別の場所にある学校にやられて……。

花好きな民子は例の癖で、色白の顔にその紫紺の花を押しつける。やがて何を思いだしてか、ひとりでにこにこ笑いだした。
「民さん、なんです、そんなにひとりで笑って」
「政夫さんはりんどうの様な人だ」
「どうして」
「さアどうしてということはないけど、政夫さんは何がなし竜胆の様な風だからさ」
民子は言い終って顔をかくして笑った。
「民さんもよっぽど人が悪くなった。それでさっきの仇討(あだうち)という訣ですか。口真似なんか恐入りますナ。しかし民さんが野菊で僕が竜胆とは面白い対ですね。僕は悦(よろこ)んでりんどうになります。それで民さんがりんどうを好きになってくれればなお嬉しい」

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野菊も出てきます。

宮沢賢治 『銀河鉄道の夜』 旺文社文庫など

父親が遠く仕事に行っている間、働きながら学校へと通うジョバンニ。銀河の祭りの夜にも同じ学校の子供たちに父親のことでからかわれ、つらい思いをしたジョバンニは、いつの間にか銀河を走る列車に乗っていた。

前の席に座っていた友人のカムパネルラとジョバンニの旅が始まる。

「ああ、りんどうの花が咲いている。もうすっかり秋だねえ。」カムパネルラが、窓の外を指さして言いました。
 線路のへりになったみじかい芝草の中に、月長石ででも刻まれたような、すばらしい紫のりんどうの花が咲いていました。