Patrinia scabiosifolia
オミナエシの出てくる物語や和歌などをご紹介しています。
オミナエシ科の多年草
〔別名〕おみなべし・おみなめし・ちちぐさ・粟花
〔花期〕8月〜10月 〔花言葉〕美人・はかない恋・約束を守る
秋の七草の一つ。分かれた枝の先に、黄色い小さな花を咲かせる。「をみな圧(へ)し」が語源で、「若い女性を圧倒する」ほどに美しい、の意。
<古典>
『枕草子』 第六十五段
草の花は、なでしこ、唐のはさらなり、やまとのもいとめでたし。女郎花。桔梗。朝顔。…
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「草の花は」で始まる段のかなり最初の方に、女郎花の名前が出てきます。
『枕草子』 第百八十九段
野分のまたの日こそ、いみじうあはれにをかしけれ。立蔀、透垣などの乱れたるに、前栽どもいと心苦しげなり。大きなる木どもも倒れ、枝など吹き折られたるが、萩、女郎花などの上に、よころばひ伏せる、いと思はずなり。…
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野分(秋の台風)が吹いた翌日のことが書かれています。
『源氏物語』 宿木の巻
女郎花 しをれぞまさる 朝霧の
いかにおきける 名残なるらむ
『源氏物語』 手習の巻
移し植ゑて 思ひみだれぬ 女郎花
うき世をそむく 草の庵に
『徒然草』 第百三十九段
…秋の草は、荻、薄・桔梗・萩・女郎花・藤袴・紫苑・吾木香・刈萱・竜胆・菊。黄菊も。蔦・葛・朝顔。いづれも、いと高からず、さゝやかなる、 墻に繁からぬ、よし。…
<短歌(和歌)・俳句>
女郎花 咲きたる野辺を行 きめぐり
君を思ひ出 徘徊(たもとほ)り来ぬ (万葉集)
女郎花 秋のの風に うちなびき
心ひとつを たれによすらん (古今和歌集/左のおほいまうちぎみ)
をぐら山 みねたちならし なく鹿の
へにけむ秋をしる人ぞなき (古今和歌集/紀貫之)
※折句の技法が用いられています。
ひよろひよろと 猶露けしや 女郎花 (芭蕉)
淋しさに 堪へて広野の 女郎花 (正岡子規)
<小説>
岡本綺堂 「お化け師匠」(『半七捕物帳 1』より) 光文社時代小説文庫
半七が浅草観音を拝んだ帰り道に、下っ引の源次がお化け師匠が死んだと報告してきた。
お化け師匠とはもちろんあだ名で、歌女寿と呼ばれる踊りの師匠だった。彼女は自分の姪をあとを継がせるつもりで娘として扱ったのだが、姪がいうことをきかないので、無理やり仕事をさせ死なせてしまっていた。
そのお化け師匠が蛇に巻き殺されたという。姪のたたりだという人の噂とは逆に、半七は犯人は人間で蛇は後で巻きつけたことに気づいた。蛇を手がかりに犯人を追う半七だが……?
墓の前の花立てには、経師職の息子が涙を振りかけたらしい桔梗と女郎花とが新しく生けてあった。 (p.126)