「架空の庭」の入り口へ 

Cosmos

コスモス

コスモスの出てくる物語や漫画などをご紹介しています。

コスモス

キク科の春播き一年草

〔別名〕秋桜・大春車菊など 〔花期〕8月〜11月

〔花言葉〕乙女の真心・調和・野生美・少女の愛情(赤)・少女の純潔(白)

秋桜の和名でも親しまれている日本人好みの花だが、原産地は主にメキシコ。日本には明治20年ごろ(諸説あり)渡来。コスモスはギリシア語で「秩序・調和・宇宙」などを意味する「kosmos」を語源とする。

 

<俳句>


コスモスの 花あそびをる 虚空かな (高浜虚子)   

コスモスを 離れし蝶に 谿深し (水原秋櫻子)

<小説>


今西祐行 「一つの花」 岩崎書店

戦争中、ゆみこのはっきり覚えた最初の言葉は、「一つだけ、ちょうだい」だった。食べるものも制限されていた時代、ゆみこは、ご飯のときや、おやつのときに、もっと、もっと、と言ってほしがり、お母さんが「一つだけよ」と言って自分の分から分けてくれるのだ。

しかし、とうとう、ゆみこのお父さんも戦争に行かなければいけない日がやってきて……。

+ + +

「あの」シーンでお父さんがゆみこに渡した花がコスモスです。

湯本香樹実 『夏の庭』 新潮文庫

人間の死とはどういうものなのか。それを知るために、町外れに暮らす老人を僕たちは観察しはじめた。もちろん、老人の「死」を見たいがためだ。あるきっかけから、しだいに老人と僕らは打ち解け、夏の長い休みの大部分を一緒に過ごすようになる。
しかし、別れの日はやはりやって来て……。

子どもたちの抱える悩みや、子どもから見た大人の世界の矛盾もていねいに書かれた物語。

コスモスが庭いっぱいに咲いている。背も低く、花も小ぶりだけれど、雑草の中でそいつらは小さな火が燃えているようだ。 (p.201)

+ + +

おじいさんの庭の草取りを終えた「僕ら」は、そこにコスモスを植えます。庭いっぱいに咲いた秋の花を、彼らはどういった気持ちで眺めたのでしょう……。

<漫画>


こうの史代 「コスモス日和」(『街角花だより』収録) 双葉社

有馬通商不動産課に所属する凛は、今日中の現金回収が不可能の場合、家賃が未納になっている花屋の店長から「アレ」を取り立ててこいと命令されていた。
「アレ」とは古ぼけた鉢に植えられたコスモスである。

しばらく待ってください、頑張りますのでと店長は言い、待っている間退屈していた凛はいつの間にか店の手伝いをしてしまう。

それでも、自分の業務時間が終わる頃、そのコスモスを持って帰ろうとした凛だが……。

あの時は春なのにコスモスがいっぱいでした
でも似ているようでこれは全然値打ちが違うんでしょうね
 (p.9)

+ + +

花屋を舞台にした連作短編集です。