Fragrant olive
金木犀の出てくる物語や詩、漫画などをご紹介しています。
モクセイ科の常緑小高木
〔花期〕9月中旬〜10月中旬
〔花言葉〕謙遜・陶酔・あなたは高潔です
中国原産。秋に橙黄色で独特の芳香を持つ小花を咲かせる。漢名は丹桂。花の色が白いものは銀木犀。
<短歌(和歌)・俳句>
黄葉(もみぢ)する 時になるらし 月人の 桂の枝の 色付くを見れば (よみ人しらず/万葉集)
※「月人の楓」には金木犀の他諸説あり。
木犀や 障子しめたる 仏の間 (正岡子規)
木犀の 香にあけたての 障子かな (高浜虚子)
木犀に 三日月の金 見失ひ (中村汀女)
<漢詩>
王建 「中秋望月」
中庭地白樹栖鴉
零露無聲濕桂花
今夜月明人盡望
不知秋思在誰家
「中秋月を望む」
中庭地白くして樹鴉を栖ましむ
零露聲無く桂花を濕(うるお)す
今夜月明人盡く望む
知らず秋思の誰が家に在るかを
+ + +
桂花は木犀の花のことで、一般的に木犀といえば銀木犀を指すようです。
<小説>
霜島ケイ 「幻戯師(めくらましし)」(『影喰らい』収録) 小学館キャンバス文庫
浅草界隈で興行している高尾一座の読心術の見世物で、主人公の片割れが当ててみせるようにと差し出したのが金木犀。
明治を舞台にした短編です。
枝から散りこぼれた蜜柑色の小さな花は、甘い香りをもこぼして、少年の細い指からすべり落ちた。 (p.176)
<漫画>
赤石路代 「その日は金曜日」(『フェアレディは涙をながす』収録) 小学館
あずみと「彼」が出会ったのは、金木犀の花が散りはじめた金曜日だった。小学生のあずみを車から助けて、その日彼は死んだ。
それから7年後、あずみは高校の下見に行ったときに、あのときの彼とそっくりの人物に出会う。優しく声をかけてくれた先輩に受験のときもお世話になったあずみは、入学式の日にお礼を言ったのだが、彼はあずみを知らないようで……。
その日は金曜日だった
街中の金木犀が散りはじめた日
そして
あたしが彼に会った日 (p.109)
+ + +
金木犀の香りがうまく使われている素敵な短編です。
内田善美 『星の時計のLiddell 2』 集英社
「幽霊になった男の話をしようと思う」
このフレーズから始まる物語は、彼の見た夢から語り始められる。幾度も幾度も繰り返される、見たことのない家。見たことのない土地。見たことのない夜。……そして、彼の夢の中に現れた少女は、彼を「幽霊」と呼んだ……。
ああ
名前を聞いただけでも香りがするみたい
あれは 空気がきれいに澄んでないと花をつけないの
そう…ちょうど今頃の季節に咲くんだわ (p.73)