R
上の区間塊の長さを定義する集合関数 μ( )の性質6の証明
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[準備]
・舞台設定
R :実数の全体の集合R={ x| −∞ < x < +∞ }であるが、
ここでは特に、1次元ユークリッド空間の意味ももたせる。
集合系(族)E: R上の区間塊として考えられ得るものすべてを集めてきた集合系(族)。
※区間塊Eは、Rの部分集合だから、EはRの部分集合系(族)となっている。
※Eは有限加法族である(∵)。
Ψ(I) : 区間Iの長さを定義する集合関数。
すなわち、
(i) I=(a, b] (ただし−∞< a< b<+∞) ならば、 Ψ(I) =b−a
(ii) I=φならば、 Ψ(φ) = 0
(iii) I=(−∞, b], (a , ∞), (−∞, ∞)(ただし−∞< a,b<+∞) ならば、Ψ(I) =+∞
・集合関数μの定義
Eに属す、すべてのEは、区間塊であるから、
type 1: 左半開区間(a, b]={ x | a<x≦b } (ただし−∞< a< b<+∞),
type 2: (−∞, b]={ x | x≦b } (ただし−∞< b<+∞)、
type 3: (a , ∞)={ x | a<x } (ただし−∞< a <+∞)、
type 4: (−∞, ∞)=実数全体の集合R
type 5: 空集合φ
の5タイプの区間の有限個の直和として表す(=互いに素な有限個の上記5タイプの区間へ分割する)
ことができる。
すなわち、
Eに属す、すべてのEには常に、
1以上の或る自然数nが存在して、
E= I1+…+In (ただし、I1,…,Inは、上記5タイプいずれかの区間)
と表せる。 ※自然数nは1以上とわざわざことわったのは、E= I1というケースも当然ありうるという意味。
そこで、区間Iの長さを定義する集合関数を用いて、
μ(E)=Ψ(I1)+Ψ(I2)+…+Ψ(In)
と、関数μを定義する。
このμ(E)は、きれぎれの直線Eの長さの和となる。
(
μの性質6)
任意の区間塊E と、この区間塊Eを覆う任意の「区間の可算被覆」{In}に対して、
μ( )は、次の不等式を満たす。

つまり、 μ(E)≦μ(I1)+μ(I2)+μ(I3)+… が成り立つ。
※
R上の任意の区間塊E が、非有界である場合(たとえば、(−∞, b] , (a , ∞) とそれを含む直和や (−∞, ∞) )
となるが、この、等号「=」は、広義の実数R*で定義された演算規則「∞=a+∞」の意味での等号「=」であって、
実数の枠内で普通にいう等号「=」の意味でではない。
※
ただし、ここでいう、 Eを覆う「区間の可算被覆」とは、
次の2条件を満たす可算無限個の「1次元ユークリッド空間R上の区間の列」{ I1 , I 2 , I 3 ,…}を指す。
(条件1) 区間列の要素I1 , I 2 , I 3 ,…はすべて、以下のかたちの区間のいずれかであること。
type 1: 左半開区間(a, b] ={ x | a<x≦b } (ただし−∞< a< b<+∞),
type 2: (−∞, b] ={ x | x≦b } (ただし−∞< b<+∞)、
type 3: (a , ∞) ={ x | a<x } (ただし−∞< a <+∞)、
type 4: (−∞, ∞)=実数全体の集合R
type 5: 空集合φ
(条件2) Eを被覆すること、つまり、
を満たすこと。
※Eを覆う「区間の可算被覆」{ I1 , I 2 , I 3 ,…}の例1
I1=(−∞, ∞)⊃E
I2, I3, I4,…=φ
となる{ I1 , I 2 , I 3 ,…}。この可算無限個の「R上区間の列」{ I1 , I 2 , I 3 ,…}も、条件1,2を満たすので、
Eを覆う「区間の可算被覆」{ I1 , I 2 , I 3 ,…}のひとつである。
※Eを覆う「区間の可算被覆」{ I1 , I 2 , I 3 ,…}の例2
下図は、
I1=(a, b]⊃E (ただし−∞< a< b<+∞)
I2 , I3 , I4 ,…=φ
となるケース。この可算無限個の「R上区間の列」{ I1 , I 2 , I 3 ,…}も、条件1,2を満たすので、
Eを覆う「区間の可算被覆」{ I1 , I 2 , I 3 ,…}のひとつである。
※Eを覆う「区間の可算被覆」{ I1 , I 2 , I 3 ,…}の例3
下図は、
I1=(a1, b1] (−∞< a1< b1<+∞)
I2=(a2, b2] (−∞< a2< b2<+∞)
:
I6=(a6, b6] (−∞< a6< b6<+∞)
I1∪I2∪…∪I6⊃E
I7, I8, I9,…=φ
となるケース。この可算無限個の「R上区間の列」{ I1 , I 2 , I 3 ,…}も、条件1,2を満たすので、
Eを覆う「区間の可算被覆」{ I1 , I 2 , I 3 ,…}のひとつである。
※Eを覆う「区間の可算被覆」{ I1 , I 2 , I 3 ,…}の例
下図は、
I1=(a1, b1] (−∞< a1< b1<+∞)
I2=(a2, b2] (−∞< a2< b2<+∞)
:
I1∪I2∪…⊃E
となるケースのイメージ図。もちろん、うまく書けるはずはないのだけど。
※この最後の例から、各区間I1 , I 2 , I 3 ,…が極めて小さくなった例をイメージせよ(これは描けない)。
an−bnが、今あなたの見ているディスプレイのドット幅よりも小さなI n、
無数のこのようなInが、Eの上に隙間なく、重複もほとんどなく、びっしり敷き詰められている、
そんなイメージ。
(μの性質
6の証明)
※以下の証明のポイント:
一見すると、「μ()の性質6」は、あたりまえっぽい。
なぜなら、
μ()は、性質3より、単調性・劣加法性をみたすから、
ならば、μ()の単調性より
μ()の劣加法性より、
よって、
ならば、
しかし、これは、いえない。
なぜなら、μ()が有限加法的測度だからという根拠から、μ()が満たすといえる劣加法性は、
有限劣加法性
に過ぎないから。
だから、これが有限の集合列の和のみならず、無限列の和についても成立することを示すには、
無限列の和を、ボレル・ルベーグの被覆定理→コンパクト性を利用して、有限列の話に持ち込み、
そこで、有限劣加法性を適用し、示す、
という回り道をしなければならなくなる。
Step1: 微妙にInを広げる微数δnを定義→ step2: Jn定義,step3: Gn定義で使用
任意の実数ε>0に対して、ある実数δn>0が存在して、
{In}において、Inがtype 1:(an, bn](−∞< a< b<+∞)またはtype 2: (−∞, b](−∞< b<+∞)となるすべてのnについて、
条件:μ((an, bn+δn ])≦μ(In)+ε/2n …(1-1)
(区間Inを右方向に+δnだけ広げたところで、区間の長さはもとの長さからε/2nを超えては長くならない)
を満たす。
(∀ε>0) (∀n | In=(an, bn](−∞< a< b<+∞)または(−∞, b]を満たす限りで) (∃δn>0) (μ((an, bn+δn ])≦μ(In)+ε/2n )
なぜなら、
(i) In=(an, bn](−∞< a< b<+∞)のケースでは
μの定義より、
μ((an, bn+δn ])= bn+δn−an 、μ(In)= bn−an だから、
(1-1)は、bn+δn−an≦ bn−an+ε/2n と書きかえられる。
これを整理すると、 δ
n≦ε/2n
たとえば、n=1,2,3で仮に、In=(an, bn](−∞< a< b<+∞)となっているならば、
δ1≦ε/2 、δ2≦ε/4 、δ3≦ε/8 、…
これを満たすδn>0はたしかに存在する。
(ii) In=(−∞, bn] (−∞< bn <+∞)のケースでは
・μの定義より、いかなる実数δn>0に対しても、μ(( −∞, bn+δn ])=+∞
・μの定義より、μ(In)=μ(( −∞, bn ]) =+∞。
だから、広義の実数R*で定義された演算規則(∀a∈R) ( (+∞)+a =+∞) より、
いかなる実数a >0にたいしても、μ(In)+a=+∞
・よって、任意の実数ε>0に対して、任意の実数δn>0が、
μ(( −∞, bn+δn ])=μ(In)+ε/2n
を成立させるといえる。
ゆえに、任意の実数ε>0に対して、任意の実数δn>0は、
(1-1): μ(( −∞, bn+δn ])=μ(In)+ε/2n
を成立させる。
Step2: δnを用いて、Inの端をちょっぴり拡げた左半開区間を定義し、Jnで表す。
Step1で示した、任意のε>0に対して存在するδn>0を用いて、
次のように、{In}の各InからJnを定めてゆくことで、R上の区間列{ Jn }を定義する。
(i) Rの部分集合列{In}に属すInが type 1: (an, bn]またはtype 2: (−∞, b]となるすべてのnについて、
Jn=(an, bn+δn ]
(ii) Rの部分集合列{In}に属すInが type 3: (a , ∞)、type 4: (−∞, ∞)、type 5: φとなるすべてのnについて、
Jn= In
このとき、
すべての自然数nを通して、 μ( Jn )≦μ( In ) +ε/2n が成立する。…(2-1)→ step10で利用。
なぜなら、(i) の場合、(1-1)より μ( Jn )=μ((an, bn+δn ] )≦μ( In ) +ε/2n 、
(ii) の場合、 μ( Jn )=μ( In ) ≦μ( In)+ε/2n
詳しく言えば、
・Jn= Inが type 3: (a , ∞)ないしtype 4: (−∞, ∞)ならば、
左辺=μ( Jn )=μ( In )=+∞ ∵μの定義
右辺=μ( In)+ε/2n=+∞+(実数) ∵μの定義
広義の実数R*で定義された演算規則(∀a∈R) ( (+∞)+a =+∞) より、
左辺=右辺となる。
・Jn= Inがtype 5:φならば、
左辺=μ( Jn )=μ( In )=0 ∵μの定義
右辺=μ( In) +ε/2n= 0+ε/2n ∵μの定義
ゆえに、左辺≦右辺

Step3: δnを用いて、Inの端をちょっぴり広げた開区間を、Gnで表す。
Step1で示した、任意のε>0に対して存在するδn>0を用いて、
次のように、{In}の各Inから開区間Gn を定めてゆくことで、R上の開区間列{ Gn }を定義する。
(i) Inが(an, bn](ただし、−∞< a< b<+∞)となるすべてのnについて、
Gn=(an, bn+δn )
(ii) Inが(−∞, b](ただし−∞< b<+∞)となるすべてのnについて、
Gn=(−∞, bn+δn )
(iii) Inが(a , ∞)(−∞< a<+∞)、(−∞, ∞)、φとなるすべてのnについて、
Gn= In
このように定義したR上の開区間列{ Gn }は、以下を満たしている。
すべてのnを通して、In⊂Gn …(3-1)
すべてのnを通して、Gn ⊂ Jn …(3-2)

Step4: Eの内側から、Eに限りなく近い区間塊をFと定義
「μ( )の性質5」より、
任意の実数α<μ(E) にたいして、
以下の条件を満たす有界な区間塊Fが存在する。
条件1:Fの閉包がEに含まれること。[F]⊂E
条件2:μ(F)>α
すなわち、
( ∀α<μ(E) ) ( ∃F∈E ) ( [F]⊂E かつ α<μ(F) )
Step5: GnとFの関係(1)
R上の開区間列{Gn}は、Fの閉包 [F]の開被覆となる。
なぜなら、
・step3(Gn定義)の(3-1)より、∀nについて、In⊂Gnだから、

・仮定:{In}の定義の条件2:
・step4(Fの定義)より Fの閉包[F]⊂E
の3点より、
Fの閉包[F]⊂E⊂ (I1∪I2∪I3∪…) ⊂ (G1∪G2∪G3∪…)
つまり、R上の開区間列{Gn}は、Fの閉包[F]の開被覆となる。
Step6: GnとFの関係(2)
・Fの閉包[F]は有界閉集合だから、
ボレル・ルベーグの被覆定理より、[F]はR上のコンパクト集合だといえる。…(6-1)
・Step5より、R上の開区間列{Gn}は、Fの閉包[F]の開被覆。
(6-1)より、[F]の開被覆{Gn}は、有限部分被覆をもつ。
すなわち、
R上の開区間列{Gn}から取り出した有限k個の開区間列{Gn(1) , G n(2) , …, G n(k ) }で、
[F]⊂(Gn(1) ∪G n(2) ∪…∪G n(k ))
を満たすものが存在する。
Step7: JnとFの関係
{Gn(1) , G n(2) , …, G n(k ) }と同じ添数のものだけ{ Jn }から選び出した{ Jn }の有限部分列は、
Fを被覆する。
・step4より、というか、閉包の定義より、F⊂[F]、
・step6より、[F]⊂(Gn(1) ∪G n(2) ∪…∪G n(k ))
・(3-2)より、{ Gn },{ Jn }は、任意のnに対して、Gn⊂ Jnとなるので、
step6で{Gn}から取り出した{Gn(1) , G n(2) , …, G n(k ) }についても、
任意のn(・)に対して、Gn(・) ⊂ Jn(・)となる、
ゆえに、(Gn(1) ∪G n(2) ∪…∪G n(k )) ⊂ (Jn(1) ∪J n(2) ∪…∪J n(k ))
の3点から、
F⊂[F]⊂ (Gn(1) ∪G n(2) ∪…∪G n(k )) ⊂ (Jn(1) ∪J n(2) ∪…∪J n(k ))
つまり、F⊂ (Jn(1) ∪J n(2) ∪…∪J n(k ))
Step8:
・μ()は有限加法的測度であるから(∵μの性質3)、有限加法的測度の単調性を満たす。
Step7の結果とμ()の単調性より、
μ(F)≦μ ( Jn(1) ∪J n(2) ∪…∪J n(k ))
Step9:
・μ()は有限加法的測度(∵μの性質3)であるから、有限加法的測度の有限劣加法性を満たす。
したがって、μ( Jn(1) ∪J n(2) ∪…∪J n(k ))≦μ( J n(1) )+μ( J n(2) )+…+μ( J n(k ) )
これと、Step8の結果より、
μ(F)≦μ( J n(1) )+μ( J n(2) )+…+μ( J n(k ) )
Step10:
step2の(2-1)でみたように、
{ Jn }は、すべての自然数nを通して、 μ(Jn)≦μ(In)+ε/2n が成立するように定義されていた。
したがって、{Jn}の部分列である{Jn(1) , J n(2) , …, J n(k ) }も、
任意のn(・)にたいして、 μ(J n(・) )≦μ(I n(・))+ε/2 n(・) を満たす。
ゆえに、
μ( J n(1) )+μ( J n(2) )+…+μ( J n(k ) ) ≦μ( I n(1) )+ε/2 n(1)+μ( I n(2) )+ε/2 n(2)+…+μ( I n(k) )+ε/2 n(k)
=μ( I n(1) )+μ( I n(2) )+…+μ( I n(k ) )+ε/2 n(1)+ε/2 n(2) +…+ε/2 n(k)
Step11:
μ( I n(1) )+μ( I n(2) )+…+μ( I n(k ) )+ε/2 n(1)+ε/2 n(2) +…+ε/2 n(k)≦μ( I 1 )+μ( I 2 )+…+ε
つまり、

なぜなら、
・μ( I n(1) )+μ( I n(2) )+…+μ( I n(k ) )は、無限和μ( I 1 )+μ( I 2 )+…から有限個の項を抜き出した有限和で、全項非負だから、
μ( I n(1) )+μ( I n(2) )+…+μ( I n(k ) ) ≦μ( I 1 )+μ( I 2 )+… …(11-1)
・{ε/2, ε/22, ε/23, …,ε/2n,…}は、初項ε/2、項比1/2の等比級数。
等比級数の和の公式より、
ε/2+ε/22+ε/23+…+ε/2n+…=ε …(11-2)
・{ε/2 n(1), ε/2 n(2), …,ε/ n(k)}は、{ε/2, ε/22, ε/23, …,ε/2n,…}の有限部分列であり、
すべての項は正だから、
ε/2 n(1)+ε/2 n(2) +…+ε/2 n(k)≦ε/2+ε/22+ε/23+…+ε/2n+… …(11-3)
・(11-2)(11-3)より、ε/2 n(1)+ε/2 n(2) +…+ε/2 n(k)≦ε …(11-4)
・(11-1) (11-4)より、

Step12:
step4でのFの定義より、α<μ(F)
これと、step8- step11の検討の結果をすべてあわせると、
α<μ(F) ≦μ( J n(1) )+μ( J n(2) )+…+μ( J n(k ) )
≦μ( I n(1) )+μ( I n(2) )+…+μ( I n(k ) )+{ε/2 n(1)+ε/2 n(2) +…+ε/2 n(k)}
≦{μ( I 1 )+μ( I 2 )+μ(I3)+…}+ε
要するに、α<{μ( I 1 )+μ( I 2 )+μ(I3)+…}+ε
εは任意の正数で、αはμ(E)にどれだけでも近くとれるので、
μ(E)≦μ(I1)+μ(I2)+μ(I3)+…
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