実n次元数ベクトル空間から実m次元数ベクトル空間への一次写像の行列表示と標準化 |
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・定理:標準基底に関する一次写像の行列表示/一次写像の行列と基本ベクトルのうつしかたの関連/任意基底に関する一次写像の行列表示/一次写像の行列表示の標準形/一次写像の合成写像と行列 ・定理:標準基底に関する一次変換の行列表現/任意の基底に関する一次変換の行列表現/一次変換の行列表示の標準形は得られない/ |
※関連ページ: ・一次写像「f:Rn→Rm」と行列の関係について:実n次元数ベクトル空間から実m次元数ベクトル空間への一次写像/基底変換と一次写像の行列表示/ ・一般化:一般の実ベクトル空間のあいだの一次写像の行列表示と標準化 ・具体化:実2次元数ベクトル空間R2上の一次変換の行列表示と標準化 ※線形代数目次・総目次 |
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定理:実n次元数ベクトル空間から実m次元数ベクトル空間への一次写像・線形写像の、標準基底に関する行列表示 | ||
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設定 |
この定理は、以下の舞台設定上で成り立つ。 R:実数体(実数をすべて集めた集合) A:(m,n)型実行列 Rn:実n次元数ベクトル空間。 すなわち、Rn=R×R×…×R={ ( v1, v2, …, vn )|v1∈Rかつv2∈Rかつ…かつvn∈R }に、 ベクトルの加法とスカラー乗法を定義したもの。 ただし、Rnに属すすべての実n次元数ベクトルは、n次元縦ベクトルの形式で表されているものとする。 v:実n次元縦ベクトル。 Rm:実m次元数ベクトル空間。 すなわち、Rm=R×R×…×R={ ( v1, v2, …, vm)|v1∈Rかつv2∈Rかつ…かつvm∈R }に、 ベクトルの加法とスカラー乗法を定義したもの。 ただし、Rmに属すすべての実m次元数ベクトルは、m次元縦ベクトルの形式で表されているものとする。 |
[文献−線型代数] ※一般化: ・数ベクトル空間のあいだの一次写像の、任意基底に関する行列表示 ・実ベクトル空間のあいだの一次写像の行列表示 ※発展事項:一次写像の行列表示の標準形/基底変換行列/基底変換公式 |
本論1 |
実n次元数ベクトル空間Rnから実m次元数ベクトル空間Rmへの 任意の一次写像f:Rn→Rmにたいして、 (∀v∈Rn) ( f (v)=(Av) ) を満たす(m,n)型実行列Aが一意的に存在する。 |
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証明 |
※なぜ?→佐武『線形代数学』T§4定理2の前段(pp.17-18)
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本論2 |
(m,n)型実行列Aを用いて、 実n次元数ベクトル空間Rnから、実m次元数ベクトル空間Rmへの写像f:Rn→Rmを、 次式で定義する。 任意の実n次元縦ベクトルv∈Rnにたいして、f (v)=(Av) つまり、 Rnの元である実n次元数ベクトルvを、Rmの元である実m次元数ベクトル(Av)にうつす写像を、 写像f:Rn→Rm として定義する *Aは(m,n)型実行列、vは実n次元縦ベクトル(つまり、(n,1)型実行列)だから、 行列積の定義により、(Av)は、実m次元数ベクトル(つまり、(m,1)型実行列)となる。 すると、 任意の(m,n)型実行列Aに対して、 (∀v∈Rn) ( f(v)=(Av) )で定義した写像f:Rn→Rm は、一次写像となる。 |
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証明 |
※なぜ?→佐武『線形代数学』T§4定理2の前段(p.17)
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本論3 |
・上記の(m,n)型実行列Aを、 「一次写像fに対応する行列」、「一次写像fの行列」、 厳密には、 「Rnの標準基底{ e1, e2, …, en }, Rmの標準基底{ e1, e2, …, em }に関する一次写像fの表現行列」 などと呼ぶ。 上記の一次写像fを、「Aによって定義される一次写像」などと呼ぶ。 ・「Rnの標準基底{ e1, e2, …, en }, Rmの標準基底{ e1, e2, …, em }に関する一次写像fの表現行列」が、 「任意基底に関する一次写像fの表現行列」といかなる関係にあるのかは、 基底変換公式を参照せよ。 |
※特殊例:標準基底に関する一次変換の行列表示 ※一般化: ・数ベクトル空間のあいだの一次写像の、任意基底に関する行列表示 ・実ベクトル空間のあいだの一次写像の行列表示 ※発展事項:一次写像の行列表示の標準形/基底変換行列/基底変換公式 |
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定理:行列によって定義される一次写像は、基本ベクトルをどのように写すか | ||
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設定 |
この定理は、以下の舞台設定上で成り立つ。 R:実数体(実数をすべて集めた集合) A:(m,n)型実行列 Rn:実n次元数ベクトル空間。 すなわち、Rn=R×R×…×R={ ( v1, v2, …, vn )|v1∈Rかつv2∈Rかつ…かつvn∈R }に、 ベクトルの加法とスカラー乗法を定義したもの。 ただし、Rnに属すすべての実n次元数ベクトルは、n次元縦ベクトルの形式で表されているものとする。 v:実n次元縦ベクトル。 Rm:実m次元数ベクトル空間。 すなわち、Rm=R×R×…×R={ ( v1, v2, …, vm)|v1∈Rかつv2∈Rかつ…かつvm∈R }に、 ベクトルの加法とスカラー乗法を定義したもの。 ただし、Rmに属すすべての実m次元数ベクトルは、m次元縦ベクトルの形式で表されているものとする。 |
[文献−線型代数] ・永田『理系のための線形代数の基礎』1.4行列と一次写像:注意1(p.29); ・志賀『線形代数30講』7講:R2上の一次変換のケース(p.44) [文献−解析学] ・松坂『解析入門4』15.1-E命題11 (p.10) |
本論 |
(m,n)型実行列 ![]() によって定義された一次写像を、f:Rn→Rmで表すと、 Rnの基本ベクトルe1, e2, …, enのfによる像 f(e1) , f(e2) , …, f(en) ∈Rm は、 ![]() ![]() : ![]() となる。 |
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証明 |
※なぜ?→行列と基本ベクトルとの積。
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定理:実n次元数ベクトル空間から実m次元数ベクトル空間への一次写像・線形写像の、任意基底に関する行列表示・行列表現 | ||
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設定 |
この定理は、以下の舞台設定上で成り立つ。 R:実数体(実数をすべて集めた集合) A:(m,n)型実行列 Rn:実n次元数ベクトル空間。 すなわち、Rn=R×R×…×R={ ( v1, v2, …, vn )|v1∈Rかつv2∈Rかつ…かつvn∈R }に、 ベクトルの加法とスカラー乗法を定義したもの。 ただし、Rnに属すすべての実n次元数ベクトルは、n次元縦ベクトルの形式で表されているものとする。 { p1, p2, …, pn }:Rnの基底をなす実n次元数ベクトルの集合 Rm:実m次元数ベクトル空間。 すなわち、Rm=R×R×…×R={ ( v1, v2, …, vm)|v1∈Rかつv2∈Rかつ…かつvm∈R }に、 ベクトルの加法とスカラー乗法を定義したもの。 ただし、Rmに属すすべての実m次元数ベクトルは、m次元縦ベクトルの形式で表されているものとする。 { q1, q2, …, qm }:Rmの基底をなす実m次元数ベクトルの集合 |
※特殊例: ・標準基底に関する一次変換f:Rn→Rnの行列表示 ・任意基底に関する一次変換f:Rn→Rnの行列表示 ・標準基底に関する一次写像f:Rn→Rmの行列表示 ※一般化: ・実ベクトル空間のあいだの一次写像の行列表示 ※発展事項:一次写像の行列表示の標準形/基底変換行列/基底変換公式 |
本論1 |
Rnの基底{ p1, p2, …, pn }、Rmの基底{ q1, q2, …, qm}と、 一次写像「f:Rn→Rm」にたいして、 f (p1)=a11q1+a21q2+…+am1qm f (p2)=a12q1+a22q2+…+am2qm : : f (pn)=a1nq1+a2nq2+…+amnqm を満たす(m,n)型実行列 |
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![]() が一意的に存在する。 ※ |f (p1)=a11q1+a21q2+…+am1qm |f (p2)=a12q1+a22q2+…+am2qm | : : |f (pn)=a1nq1+a2nq2+…+amnqm を、行列の乗法風に、 ![]() と書く簡便法が、頻繁に用いられる。 この簡便法を用いると、上記の命題は、次のように、簡潔に表せる。 | Rnの基底{ p1, p2, …, pn }、Rmの基底{ q1, q2, …, qm}と、一次写像「f:Rn→Rm」にたいして、 | f (p1, p2, …, pn)=(q1, q2, …, qm)A | を満たす(m,n)型実行列Aが一意的に存在する |
※ポイント 一次写像「f :Rn→Rm」の行列表示は、 Rnの基底のとりかた, Rmの基底のとりかたの二点から、定まる。 これに対して、 一次変換の行列表示は、Rnの基底のとりかたのみから、定まる。 この違いは、 基底の取り替えが、行列表示に及ぼす影響を、 考察する際に、重要になる。 |
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証明 |
※なぜ?→証明
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本論2 |
Rnの基底{ p1, p2, …, pn }、Rmの基底{ q1, q2, …, qm}と、 (m,n)型実行列 ![]() にたいして、 f (p1)=a11q1+a21q2+…+am1qm f (p2)=a12q1+a22q2+…+am2qm : : f (pn)=a1nq1+a2nq2+…+amnqm を満たす一次写像「f:Rn→Rm」がきまる。 ※ |f (p1)=a11q1+a21q2+…+am1qm |f (p2)=a12q1+a22q2+…+am2qm | : : |f (pn)=a1nq1+a2nq2+…+amnqm を、行列の乗法風に、 ![]() と書く簡便法が、頻繁に用いられる。 この簡便法を用いると、上記の命題は、次のように、簡潔に表せる。 | Rnの基底{ p1, p2, …, pn }、Rmの基底{ q1, q2, …, qm}と、 | (m,n)型実行列Aにたいして、 | f (p1, p2, …, pn)=(q1, q2, …, qm)A | を満たす一次写像「f:Rn→Rm」がきまる |
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証明 |
※なぜ?→証明
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本論3 |
・上記の(m,n)型実行列Aを、 「Rnの基底{ p1, p2, …, pn }、Rmの基底{ q1, q2, …, qm} に関する一次写像fの行列表示」 「Rnの基底{ p1, p2, …, pn }、Rmの基底{ q1, q2, …, qm} に関する一次写像fの表現行列」 「Rnの基底{ p1, p2, …, pn }、Rmの基底{ q1, q2, …, qm} を定めたとき一次写像fに対応する行列」 などと呼ぶ。 ・(m,n)型実行列Aが、 「『Rnの基底』α={ p1, p2, …, pn },『Rmの基底』β={ q1, q2, …, qm } に関する一次写像fの表現行列」 であることを、 ![]() という記号で表すことがある。 ・「Rnの基底{ p1, p2, …, pn }、Rmの基底{ q1, q2, …, qm} に関する一次写像fの行列表示」 が、 「標準基底に関する一次変換f:Rn→Rnの行列表示」 と、いかなる関係にあるかは、 基底変換公式を見よ。 |
※特殊例: ・標準基底に関する一次変換f:Rn→Rnの行列表示 ・任意基底に関する一次変換f:Rn→Rnの行列表示 ・標準基底に関する一次写像f:Rn→Rmの行列表示 ※一般化: ・実ベクトル空間のあいだの一次写像の行列表示 ※発展事項:一次写像の行列表示の標準形/基底変換行列/基底変換公式 |
※ |
このように「一次写像f : Rn→Rm」の行列表示は、Rnの基底のとりかた, Rmの基底のとりかたの二点から、定まる。 これに対して、一次変換の行列表示は、Rnの基底のとりかたのみから、定まる。 この違いは、基底の取り替えが、行列表示に及ぼす影響を、 考察する際に、重要になる。 |
本論4 |
[一次写像y=f (x)の行列表現] ・実n次元数ベクトル空間Rn に属す任意の実n次元数ベクトルxは、 『Rnの基底』α={ p1, p2, …, pn }の一次結合として一意的に表せる(∵基底の定義)。 つまり、 任意のx∈Rnに対して、ある実数x1 , x2 ,…, xnが一意に存在して、 x=x1 p1+x2 p2+…+xn pn を満たす。 この実数の組(x1 , x2 ,…, xn) の縦ベクトルを、 xの《Rnの基底α={ p1, p2, …, pn }》に関する座標ベクトルと呼び、 [x]α と表す。 ・実m次元数ベクトル空間Rmに属す任意の実m次元数ベクトルyは、 『Rmの基底』β={ q1, q2, …, qm }の一次結合として一意的に表せる(∵基底の定義)。 つまり、 任意のy∈Rmに対して、ある実数y1 , y2 ,…, ymが一意に存在して、 y = y 1 q1+ y 2 q2+…+ y m qm を満たす。 この実数の組(y1 , y2 ,…, ym)の縦ベクトルを、 yの《Rmの基底β={ q1, q2, …, qm }》に関する座標ベクトルと呼び、 [y]β と表す。 ・すると、一次写像y=f (x)は、 xの《Rnの基底α={ p1, p2, …, pn }》に関する座標ベクトル [x]α yの《Rmの基底β={ q1, q2, …, qm}》に関する座標ベクトル [y]β 「『Rnの基底』α={ p1, p2, …, pn },『Rmの基底』β={ q1, q2, …, qm } に関する一次写像fの表現行列」 を用いて、 [y]β=A [x]α と表せる。 |
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※なぜ?
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→[トピック一覧:実n次元数ベクトル空間から実m次元数ベクトル空間への一次写像の表現行列] →線形代数目次・総目次 |
定理:実n次元数ベクトル空間から実m次元数ベクトル空間への一次写像の行列表示の標準形 | ||
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設定 |
この定理は、以下の舞台設定上で成り立つ。 R:実数体(実数をすべて集めた集合) Rn:実n次元数ベクトル空間。 すなわち、Rn=R×R×…×R={ ( v1, v2, …, vn )|v1∈Rかつv2∈Rかつ…かつvn∈R }に、 ベクトルの加法とスカラー乗法を定義したもの。 ただし、Rnに属すすべての実n次元数ベクトルは、 n次元縦ベクトルの形式で表されているものとする。 Rm:実m次元数ベクトル空間。 すなわち、Rm=R×R×…×R={ ( v1, v2, …, vm)|v1∈Rかつv2∈Rかつ…かつvm∈R }に、 ベクトルの加法とスカラー乗法を定義したもの。 ただし、Rmに属すすべての実m次元数ベクトルは、 m次元縦ベクトルの形式で表されているものとする。 「f : Rn→Rm」:RnからRmへの一次写像 rank f :一次写像 f の階数 |
[文献] |
本論1 |
一次写像「f : Rn→Rm」には、 f (p1)=q1, f (p2)=q2, …, f (prankf )=qrankf , f (prankf+1)=0, f (prankf+2)=0,…, f (pn)=0 を満たす 『Rnの基底』{ p1, p2, …, pn }、『Rmの基底』{ q1, q2, …, qm } が存在する。 |
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証明 |
※なぜ?→証明
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本論2 |
したがって、 [本論1]で存在が示された、『Rnの基底』{ p1, p2, …, pn }、『Rmの基底』{ q1, q2, …, qm }をとると、 これらの基底に関する一次写像fの行列表示は、 ![]() となる。 ただし、 この行列D (m,n, rankf )は、 (m,n)型実行列であって、 (1,1)成分, (2,2)成分, …, (rank f,rank f)成分という(rank f )個の成分が1 それ以外の成分はすべて0 となる行列を表すものとする。 |
Cf.一次変換の行列表示のケースでは、うまく標準化できない。 →一次変換の行列表示の標準化の問題 ※ここで利用されている事項:基底に関する一次写像fの行列表示 |
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※なぜ?
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※ |
[階数との関連] 少なくとも上記の基底に関する一次写像fの行列表示D (m,n, rankf )の階数は、 一次写像fの階数(rank f )と等しいことが確認できる。 では、他の基底に関する一次写像fの行列表示の階数も、 一次写像fの階数に等しいといえるのだろうか。 ⇒一次写像の階数と行列の階数の関係 |
本論3 |
「『Rnの標準基底』{ e1, e2, …, en },『R mの標準基底』{ e'1, e'2, …, e'm }に関する一次写像fの行列表示」Aにたいして、 ある実行列P,Qが存在し、 ![]() を満たす。 ただし、 この行列D (m,n, rankf )は、 (m,n)型実行列であって、 (1,1)成分, (2,2)成分, …, (rank f,rank f)成分という(rank f )個の成分が1 それ以外の成分はすべて0 となる行列を表すものとする。 |
※一次変換の行列表示のケースとの違い: ※ここで利用されている事項: 基底に関する一次写像fの行列表示/基底変換の行列/基底変換公式 |
証明 |
※なぜ? |
→[トピック一覧:実n次元数ベクトル空間から実m次元数ベクトル空間への一次写像の表現行列] →線形代数目次・総目次 |
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定理:実n次元数ベクトル空間Rn上の一次変換の、標準基底に関する行列表示 | ||
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この定理は、以下の舞台設定上で成り立つ。 R:実数体(実数をすべて集めた集合) A:(m,n)型実行列 Rn:実n次元数ベクトル空間。 すなわち、Rn=R×R×…×R={ ( v1, v2, …, vn )|v1∈Rかつv2∈Rかつ…かつvn∈R }に、 ベクトルの加法とスカラー乗法を定義したもの。 ただし、Rnに属すすべての実n次元数ベクトルは、n次元縦ベクトルの形式で表されているものとする。 v:実n次元縦ベクトル |
[文献−線型代数] ・志賀『線形代数30講』7講:R2上の一次変換のケース(pp.42-5)10講(p.63); ・佐武『線形代数学』T§4(p.20) [文献−解析学] ・松坂『解析入門4』15.1-E命題11(p.10);F注(p.13); 18.1-A (pp.84-5);標準基底に関する表現行列 |
本論1 |
実n次元数ベクトル空間Rn上の任意の一次変換「f:Rn→Rn」にたいして、 (∀v∈Rn) ( f (v)=(Av) ) を満たすn次正方行列Aが一意的に存在する。 |
本論2 |
n次正方行列Aを用いて、 実n次元数ベクトル空間Rnから実n次元数ベクトル空間Rnへの写像f:Rn→Rnを、 次式で定義する。 任意の実n次元縦ベクトルv∈Rnにたいして、f (v)=(Av) つまり、 実n次元縦ベクトルvを、実n次元数ベクトル(Av)にうつす写像を、 写像f:Rn→Rnとして定義する *Aはn次正方行列、vは実n次元縦ベクトル(つまり、(n,1)型実行列)だから、 行列積の定義により、(Av)は、実n次元数ベクトル(つまり、(n,1)型実行列)となる。 すると、 任意のn次正方行列Aに対して、 (∀v∈Rn) ( f (v)=(Av) )で定義した写像「f:Rn→Rn」は、一次変換となる。 |
本論3 |
・上記のn次正方行列Aを、 「一次変換fに対応する行列」、「一次変換fの行列」、 厳密には、 「Rnの標準基底{ e1, e2, …, en }に関する一次変換fの表現行列」 などと呼ぶ。 上記の一次変換fを、「Aによって定義される一次変換」などと呼ぶ。 ・「Rnの標準基底{ e1, e2, …, en }に関する一次変換fの表現行列」が、 任意基底に関する一次変換fの表現行列と、 いかなる関係にあるかは、 基底変換公式を見よ。 |
※具体例:R2上の一次変換の標準基底に関する行列表示 ※一般化: ・任意基底に関する一次変換f:Rn→Rnの行列表示 ・標準基底に関する一次写像f:Rn→Rmの行列表示 ・任意基底に関する一次写像f:Rn→Rmの行列表示 ・実ベクトル空間のあいだの一次写像の行列表示 ※発展事項:一次変換の行列表示の標準形/基底変換の行列 |
図解 |
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→[トピック一覧:実n次元数ベクトル空間から実m次元数ベクトル空間への一次写像の表現行列] →線形代数目次・総目次 |
定理:任意の基底に関する一次変換の行列表示・行列表現 | ||
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設定 |
この定理は、以下の舞台設定上で成り立つ。 R:実数体(実数をすべて集めた集合) Rn:実n次元数ベクトル空間。 すなわち、 Rn=R×R×…×R={ ( v1, v2, …, vn )|v1∈Rかつv2∈Rかつ…かつvn∈R } に、ベクトルの加法とスカラー乗法を定義したもの。 ただし、Rnに属すすべての実n次元数ベクトルは、 n次元縦ベクトルの形式で表されているものとする { p1, p2, …, pn }:Rnの基底をなす実n次元数ベクトルの集合 |
[文献] ・松坂『解析入門4』15.1-E命題11(p.10);F注(p.13); 18.1-A (pp.84-5); ※具体例―基底の具体化: ・標準基底に関する一次変換f:Rn→Rnの行列表示 ※具体例―Rnの具体化: ・R2上の一次変換の任意基底に関する行列表示 ※一般化: ・任意基底に関する一次写像f:Rn→Rmの行列表示 ・実ベクトル空間のあいだの一次写像の行列表示 ※発展事項: ・一次変換の行列表示の標準形 ・基底変換の行列 ・基底変換公式 |
本論1 |
Rnの基底{ p1, p2, …, pn }と、一次変換「f:Rn→Rn」にたいして、 f (p1)=a11 p1+a21 p2+…+an1 pn f (p2)=a12 p1+a22 p2+…+an2 pn : : f (pn)=a1n p1+a2n p2+…+ann pn を満たす実n次正方行列 ![]() が一意的に存在する。 ※ | f (p1)=a11 p1+a21 p2+…+an1 pn | f (p2)=a12 p1+a22 p2+…+an2 pn | : : | f (pn)=a1n p1+a2n p2+…+ann pn を、行列の乗法風に、 ![]() と書く簡便法が、頻繁に用いられる。 この簡便法を用いると、上記の命題は、次のように、簡潔に表せる。 | Rnの基底{ p1, p2, …, pn }と、一次変換「f:Rn→Rn」にたいして、 | f (p1, p2, …, pn)=(p1, p2, …, pn)A | を満たす実n次正方行列Aが一意的に存在する |
本論2 |
Rnの基底{ p1, p2, …, pn }と、 実n次正方行列 ![]() にたいして、 f (p1)=a11 p1+a21 p2+…+an1 pn f (p2)=a12 p1+a22 p2+…+an2 pn : : f (pn)=a1n p1+a2n p2+…+ann pn を満たす一次変換「f:Rn→Rn」がきまる。 ※ | f (p1)=a11 p1+a21 p2+…+an1 pn | f (p2)=a12 p1+a22 p2+…+an2 pn | : : | f (pn)=a1n p1+a2n p2+…+ann pn を、行列の乗法風に、 ![]() と書く簡便法が、頻繁に用いられる。 (数ベクトル空間のケースだと、便利さが引き立つらしい) この簡便法を用いると、上記の命題は、次のように、簡潔に表せる。 | Rnの基底{ p1, p2, …, pn }と、実n次正方行列Aにたいして、 | f (p1, p2, …, pn)=(p1, p2, …, pn)A | を満たす一次変換「f:Rn→Rn」がきまる。 |
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証明 |
※なぜ?→証明
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本論3 |
・上記の実n次正方行列Aを、 基底{ p1, p2, …, pn }に関する一次変換fの行列表示、 基底{ p1, p2, …, pn }に関する一次変換fの表現行列、 基底{ p1, p2, …, pn }を定めたとき一次変換fに対応する行列 などと呼ぶ。 ・基底{ p1, p2, …, pn }に関する一次変換fの表現行列が、 標準基底に関する一次変換fの表現行列と、 いかなる関係にあるかは、 基底変換公式を見よ。 |
※発展事項:一次変換の行列表示の標準化の問題/基底変換の行列/基底変換公式 ※具体例―基底の具体化: ・標準基底に関する一次変換f:Rn→Rnの行列表示 ※具体例―Rnの具体化: ・R2上の一次変換の任意基底に関する行列表示 |
※ |
要するに、 「『Rnの基底』α={ p1, p2, …, pn }, 『Rmの基底』β={q1, q2, …, qm}に関する一次写像『f: Rn→Rm』の表現行列」 ![]() のうち、 [条件1] n=mであること、 [条件2] 『Rmの基底』β={ q1, q2, …, qm }が、α={ p1, p2, …, pn }であること を満たす特殊例 すなわち、 「『Rnの基底』α={ p1, p2, …, pn }, 『Rnの基底』α={ p1, p2, …, pn }に関する一次写像『f: Rn→Rn』の表現行列」 |
本論4 |
[一次変換y=f (x)の行列表現] ・実n次元数ベクトル空間Rnに属す任意の実n次元数ベクトルxは、 『Rnの基底』α={ p1, p2, …, pn }の一次結合として一意的に表せる(∵基底の定義)。 したがって、 任意のx∈Rnに対して、ある実数x1 , x2 ,…, xnが一意に存在して、 x=x1p1+x2p2+…+xnpn を満たす。 この実数の組(x1,x2,…,xn) の縦ベクトルを、 xの《Rnの基底α={ p1, p2, …, pn }》に関する座標ベクトルと呼び、 [x]α と表す。 また、 任意のy∈Rnに対しても、ある実数y1,y2,…,ynが一意に存在して、 y=y1p1+y2p2+…+ynpn を満たす。 この実の組(y1,y2,…,yn)の縦ベクトルを、 yの《Rnの基底α={ p1, p2, …, pn }》に関する座標ベクトルと呼び、 [y]α と表す。 ・すると、一次変換y=f (x)は、 xの《Rnの基底α={ p1, p2, …, pn }》に関する座標ベクトル [x]α yの《Rnの基底α={ p1, p2, …, pn }》に関する座標ベクトル [y]α 《Rnの基底α={ p1, p2, …, pn }》に関する一次変換fの表現行列A を用いて、 [y]α=A[x]α と表せる。 |
[文献] ・斎藤『線形代数入門』4章§5(p.117); |
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定理:一次変換の行列表示の標準形は得られない | ||
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設定 |
この定理は、以下の舞台設定上で成り立つ。 R:実数体(実数をすべて集めた集合) Rn:実n次元数ベクトル空間。 すなわち、Rn=R×R×…×R={ ( v1, v2, …, vn )|v1∈Rかつv2∈Rかつ…かつvn∈R }に、 ベクトルの加法とスカラー乗法を定義したもの。 ただし、Rnに属すすべての実n次元数ベクトルは、n次元縦ベクトルの形式で表されているものとする 「f:Rn→Rn」:一次変換 rank f :一次変換 f の階数 |
[文献−線型代数] ・志賀『線形代数30講』26講(pp.166-167); ・斎藤『線形代数入門』4章§5 (p.117); |
本論1 |
一次変換「f:Rn→Rn」には、 f (p1)= p1 , f (p2)= p2, …, f (prankf )=prankf , f (prankf+1)=0, f (prankf+2)=0,…, f (pn)=0 を満たす 『Rnの基底』{ p1, p2, …, pn } が存在する とはいえない。 |
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証明 |
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本論2 |
したがって、 ある 『Rnの基底』{ p1, p2, …, pn } をとると、 これらの基底に関する一次変換fの行列表示は、 ![]() となる とはいえない。 なお、 この行列D(n,n,rankf )は、(n,n)型実行列であって、 (1,1)成分, (2,2)成分, …, (rank f, rank f)成分という(rank f )個の成分が1 それ以外の成分はすべて0 となる行列を表すものとする。 |
Cf なぜ、ここで、一次変換の行列表示の標準形が得られなくなるのか? [・志賀『線形代数30講』20講Teatime(p.131);26講(pp.164-167); 斎藤『線形代数入門』4章§5 (p.117);]
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本論3 |
「『Rnの標準基底』{ e1, e2, …, en },『Rmの標準基底』{ e'1, e'2, …, e'm }に関する一次変換fの行列表示」Aにたいして、 ある実行列Pが存在し、 ![]() を満たす とはいえない。 |
※一次変換の行列表示のケースとの違い: ※ここで利用されている事項: 基底に関する一次変換fの行列表示/基底変換の行列/基底変換公式 |
本論4 |
ところが、 ある種の一次変換「f:Rn→Rn」に対して、 ある 『Rnの基底』{ p1, p2, …, pn }をとると、 これらの基底に関する一次変換fの行列表示は、 ![]() となる。 だから、 ある種の一次変換「f:Rn→Rn」については、 「『Rnの標準基底』{ e1, e2, …, en } に関する一次変換fの行列表示Aにたいして、 ある実行列Pが存在し、 P−1AP= diag(λ1,λ2,…,λn) を満たす。 そこで、一次変換では、 標準化にかわって、このようなかたちに変形することが課題として浮上する。 一次変換の行列表示を、このようなかたちにできることを対角化可能といい、 一次変換の行列表示が対角化可能となる条件を求める問題は、固有値問題と呼ばれる。 |
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定理:実行列との乗法による一次写像の合成写像 | ||
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設定 |
この定理は、以下の舞台設定上で成り立つ。 R:実数体(実数をすべて集めた集合) A:(m,n)型実行列 B:(l,m)型実行列 v:実n次元縦ベクトル。 Rn:実n次元数ベクトル空間。 すなわち、Rn=R×R×…×R={ ( v1, v2, …, vn )|v1∈Rかつv2∈Rかつ…かつvn∈R }に、 ベクトルの加法とスカラー乗法を定義したもの。 ただし、Rnに属すすべての実n次元数ベクトルは、n次元縦ベクトルの形式で表されているものとする。 Rm:実m次元数ベクトル空間。 すなわち、Rm=R×R×…×R={ ( v1, v2, …, vm)|v1∈Rかつv2∈Rかつ…かつvm∈R }に、 ベクトルの加法とスカラー乗法を定義したもの。 ただし、Rmに属すすべての実m次元数ベクトルは、m次元縦ベクトルの形式で表されているものとする。 Rl:実l次元数ベクトル空間。 すなわち、Rl=R×R×…×R={ ( v1, v2, …, vl)|v1∈Rかつv2∈Rかつ…かつvl∈R }に、 ベクトルの加法とスカラー乗法を定義したもの。 ただし、Rlに属すすべての実l次元数ベクトルは、l次元縦ベクトルの形式で表されているものとする。 「A:Rn→Rm」:(m,n)型実行列Aと実n次元縦ベクトルとの乗法による 実n次元数ベクトル空間Rnから、実m次元数ベクトル空間Rmへの 一次写像 「B:Rm→Rl」:(l,m)型実行列Bとm次元縦ベクトルとの乗法による 実m次元数ベクトル空間Rmから、実l次元数ベクトル空間Rlへの 一次写像 |
[文献−線型代数] 永田『理系のための線形代数の基礎』(p.26-7); 斎藤『線形代数入門』2章§3(p.45); 佐武『線形代数学』T§4(p.20) [文献−解析学] 松坂『解析入門4』15.1-E命題12 (p.11); |
本論 |
一次写像A:Rn→Rmと、一次写像B:Rm→Rl の合成写像B〇Aは、 行列積BA[(l,n)型実行列]とn次元縦ベクトルとの乗法で表せる。 |
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解説 |
なぜなら、 合成写像B〇Aとは、 n次元縦ベクトル ![]() B(Av) とすること。 ところが、結合則より、 B(Av)=(BA)v |
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(reference)
日本数学会編集『岩波数学辞典(第三版)』 岩波書店、1985年、項目83行列L線形写像(p.222)
線形代数のテキスト
志賀浩二『数学30講シリーズ:線形代数30講』朝倉書店、1988年、7講線形写像と行列(pp.42-7)、10講R3上の線形写像(pp.62-7)、17講線形写像(pp.107-112)。
ホフマン・クンツェ『線形代数学I』培風館、1976年、3.4行列による一次変換の表現(p.89)。
永田雅宜『理系のための線形代数の基礎』紀伊国屋書店、1986年、1.4行列と一次写像(pp.23-31)。
藤原毅夫『理工系の基礎数学2:線形代数』岩波書店、1996年、4.3線形写像の階数と行列の階数(p.102)。
斎藤正彦『線形代数入門』東京大学出版会、1966年、第2章§3行列と線形写像(pp.44-5):実線形空間・複素線形空間のみ;。
佐武一郎『線形代数学(第44版)』裳華房、1987年、Tベクトルと行列の演算§4一次写像(pp.17-19)。
代数学のテキスト
酒井文雄『共立講座21世紀の数学8:環と体の理論』共立出版、1997年、1.6ベクトル空間(p.22)。:数ページしか触れていないが、逆に、一般の線形空間の理論の骨組みだけを浮かびあがってくるので、何が重要事項なのかを見極める上で便利。
数理経済学のテキスト
神谷和也・浦井憲『経済学のための数学入門』東京大学出版会、1996年、§5.2.1線形写像の行列表現(p.165)。
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