・1変数関数本体の定義:は
じめに読む定義/厳密な
定義 → 1変数関数の属性・類型一覧 → 総目次 |
【一般化】 2変数関数/n変数関数/実数値関数/ベクトル値関数/写像 |
はじめに読む定義
・Dで定義された1変数関数とは、 |
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・上記ビギナー向け「1変数関数」定義最大のポイ
ントは、「…に対して、1個の実数を対応づける」の「1個」
にある。
これを外してしまうと、《関数ではない対応》と区別がつかなくなってし
まう。
* どういうこと? → 関数と対応: 「関数ではない対応」と「関数である対応」との
違い
・1変数関数は、厳密には、「写像」という一般的な雛形の一つの具現化として、定義される。
・多くの教科書を比較検討すると、
写像を雛形とした1変数関数の厳密な定義は、以下の2タイプに分かれている事に気づく。
この2タイプの定義には、終集合の扱いに関して、微妙な差異が認められる。
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* どういうこと? どう違うの? 【定義間の差異】・タイプAの定義とタイプBの定義は、一致していない。タイプBのDで定義された1変数実数値関数という言葉が指す範囲は、 タイプAのDで定義された1変数実数値関数という言葉が指す範囲を含むが、 タイプBのDで定義された1変数実数値関数という言葉が指す範囲は、 タイプAのDで定義された1変数実数値関数という言葉が指さない範囲まで 射程に収めている。 |
・タイプBの定義を採用した場合、
「Rで
定義された1変数実数値関数 f(x)=x2」
という言葉は、
終集合を最大限広くとって、f(x)=x2
を対応規則とする写像「f:R→R」を指すものと解して
も、
終集合を狭くとって、
f(x)=x2
を対応規則とする写像「f ' :R→[-100,∞)
」を指すものと解しても、
f(x)=x2
を対応規則とする写像「f '':R→[-10,∞)
」を指すものと解しても、
f(x)=x2
を対応規則とする写像「f ''':R→[0,∞)
」を指すものと解しても、
よいことになる(いずれにせよ、写像の定義を満たしているか
ら)。
( もっとも、 f
'''':R→(0,∞) ,f ''''':R→(10,∞) ,f ''''':R→(100,∞) などと見た場合は、
値がφとなるところが
でてきて、写像の定義を満たさなくなるので、もはや関数と呼べな
い)
同一の対応規則f(x)=x2
、同一の定義域Rを
有すが、終集合が異なる
f:R→R
f ' :R→[-100,∞)
f '':R→[-10,∞)
f ''':R→[0,∞)
は、別の関数として扱われる。
実際、f ''':R→[0,∞)は全射であるが、他は全射でない、といったように、これらの関数は別の性
質を帯びている。
[→ラング『ラング現代微積分学』0章§2
例3注(p.6)]
・一般に、Dで定義された1変数実数値関数「f:D→R」の値域f(D)にたいして、終集合Sを、f(D)⊂S⊂Rを
満たすようにとって、
fと同一の対応規則に従うDで定義された1変数実数値関数「f ':D→S」 をつくっても、
「f '
:D→S」
は、写像の定義、したがって、Dで定義さ
れた1変数実数値関数の定義-タイプBを満たす。
同一の対応規則、同一の定義域をもっていても、「f:D→R」と「f ':D→S」は、別の関数として扱わ
れる。
(終集合Sが、f(D)⊂S⊂Rを
満たさない場合は、
値がφとなるところが
でてきて、写像の定義を満たさなくなるので、もはや関数と呼べな
い)
・このように、タイプBの「Dで定義された1変数実数値関数」定義を採用した場合、
終集合の設定可能な範
囲に幅がでてくることになる。
では、われわれは、終集合の設定範囲を、どのように選択すればよいのだろうか?
これに対して、笠原『微分積分学』1.4
例3(p.23)は
「このようにΩ2(注:写像の終集合をさす)をせばめるのは、
たとえば多数の関数を同時に考察するときなどに不便である。
そこで普通Ω2(注:写像の終集合をさす)はなるべく広くとっておくことにする」
と述べている。
・Dで定義された1変数実数値関数をタイプBで定義すると、「f:D→R」も「f ':D→S(f(D)⊂S⊂R)」
もDで定義された1変数実数値関数と呼んでよいが、
Dで定義された1変数実数値関数をタイプAで定義すると、
Dで定義された1変数実数値関数と呼んでよいのは、「f:D→R」だけで、
「f
':D→S(f(D)⊂S⊂R)」
は、 Dで定義された1変数実数値関数と呼べない。
・たとえば、
タイプAの定義を採用した場合、
f(x)=x2
を対応規則とするf:[0,∞)→R は、1変数
実数値関数と呼んでよいが、
f(x)=x2
を対応規則とするf:[0,∞)→[-100,∞)
f(x)=x2を
対応規則とするf:[0,∞)→[-10,∞)
f(x)=x2
を対応規則とするf:[0,∞)→[0,∞)
を、1変数実数値関数と呼んではならない。
・だから、タイプAの1変数実数値関数の定義を採用した場合、
「Rで
定義された1変数実数値関数 f(x)=x2」
と言えば、
「f(x)=x2
を対応規則とする『f:R→R』」のみを指す。
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・「1変数実数値関数」の〈タイプAの定義〉〈タイプBの定義〉の違いは、
全射の判定に影響をもたらす。
・たとえば、「Rで定義された
1変数実数値関数 f(x)=x2」
について。
・タイプAの1変数実数値関数の定義を採用した場合、
「Rで
定義された1変数実数値関数 f(x)=x2」
とは、
「f(x)=x2
を対応規則とする『f:R→R』」のみを指すから、
これは、断じて全射ではない。
・ところが、タイプBの1変数実数値関数の定義を採用した場合、
「Rで
定義された1変数実数値関数 f(x)=x2」
には、全射となる余地が出てくる。
タイプBの1変数実数値関数の定義では、終集合の設定が各自の裁量にゆだねられているからである。
詳しく説明すると…
タイプBの1変数実数値関数の定義を採用すると、終集合をどこに設定するかが不定になるから、
「Rで
定義された1変数実数値関数 f(x)=x2」
は、
「f(x)=x2
を対応規則とする『f:R→R』」を指すかもしれな
いし、
「f(x)=x2
を対応規則とする『f:R→[-100,∞)』」を指すかもしれない
し、
「f(x)=x2
を対応規則とする『f:R→[-10,∞)』」を指すかもしれない
し、
「f(x)=x2
を対応規則とする『f:R→[0,∞)』」を指すかもしれな
い。
終集合を広く取って、
「Rで
定義された1変数実数値関数 f(x)=x2」
を、
「f(x)=x2
を対応規則とする『f:R→R』」、「f(x)=x2
を対応規則とする『f:R→[-100,∞)』」、「f(x)=x2
を対応規則とする『f:R→[-10,∞)』」
などと解釈した場合、「Rで定義された
1変数実数値関数 f(x)=x2」
は、全射でないが、
終集合を狭くとって、
「Rで
定義された1変数実数値関数 f(x)=x2」
を、
「f(x)=x2
を対応規則とする『f:R→[0,∞)』」と解釈した場合、
「Rで
定義された1変数実数値関数 f(x)=x2」
は全射となる。
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・「1変数実数値関数」の〈タイプAの定義〉〈タイプBの定義〉の違いは、
《逆関数の定義》と《逆写像の定義》との関係に影響を及ぼす。
・タイプAの「1変数実数値関数」では、《逆関数の定義》と《逆写像の定義》とのあいだにズレが生じるが、
タイプBの「1変数実数値関数」では、《逆関数の定義》と《逆写像の定義》とを一致させることができる。
・「Dで定義された1変数実数値関数 fの逆関数(の存在)」とは、
「fの値域f(D)から定義域Dへの写像『f:f(D)→D』(の存在)」
のことだった。
・すると、
タイプAの1変数実数値関数の定義を採用した場合、
「Dで定義された1変数実数値関数 f」とは、写像「f:D→R」
を指すから、
「Dで定義された1変数実数値関数 fの逆写像(の存在)」とは、写像「f:R→D」(の存在)にほかなら
ず、
したがって、「『fの値域f(D)』=『R全
体』」を満たすfを除いて、
「Dで定義された1変数実数値関数 fの逆関数(の存在)」という概念と「Dで
定義された1変数実数値関数 fの逆写像(の存在)」という概念とは一致しない。
(タイプAの1変数実数値関数の定義を採用した場合、登場する様々な写像を「関数」の定義に収め
ようとすると、幾重もの困難に見舞われる。
第一に、「f:D→R」の逆写像「f:R→D」は、終集合がRで
はないから、タイプAの1変数実数値関数の定義に収まらない。
第二に、「 fの逆関数『f:f(D)→D』」も、D=Rと
なるケースを除いて、終集合がRではないから、タイプAの1
変数実数値関数の定義に収まらない。
第三に、逆写像が「 fの逆関数『f:f(D)→D』」となる「 f:D→f(D)」も、
f(D)=Rと
なるケースを除いて、終集合がRではないから、タイプAの1
変数実数値関数の定義に収まらない。)
・ところが、タイプBの1変数実数値関数の定義を採用した場合、
「Dで定義された1変数実数値関数 f」は、終集合の設定が各自の裁量にゆだねられ
ているから、
fの終集合を「fの値域f(D)」に設定して、「Dで
定義された1変数実数値関数 f」を写像「f:D→f(D)」と解すことがで
き、
(あるいは、「f:D→R」でなくて「f:D→f(D)」であっても、「Dで
定義された1変数実数値関数 f」と呼ぶことが許されており、)
このように解すことによって、
「Dで定義された1変数実数値関数 fの逆写像(の存在)」という概念を、
「Dで定義された1変数実数値関数 fの逆関数(の存在)」という概念に一
致させることができる。
・ここから、《逆関数の存在条
件》の違いもでてきて、
・タイプAの1変数実数値関数の定義を採用した場合、《逆関数の存在条件》は「D上で定義された1変数(実数値)関数『f:D→R』
が単射であること」
・タイプBの1変数実数値関数の定義を採用した場合、《逆関数の存在条件》は「D上で定義された1変数(実数値)関数『f:D→f(D)』が全単射であること」
となる。
・以上の話を、「[0,∞)で定義された1
変数実数値関数 f(x)=x2」
を例にとって、具体的に展開してみよう。
・もちろん、「[0,∞)で定義された1
変数実数値関数 f(x)=x2」
の逆関数は、x
= f -1 (y)=√y である。
・タイプAの1変数実数値関数の定義を採用した場合、
「[0,∞)で定義された1
変数実数値関数 f(x)=x2の逆関数」x = f -1 (y)=√y
は、
「[0,∞)で定義された1
変数実数値関数 f(x)=x2の逆写像」ではない。
タイプAの1変数実数値関数の定義においては、
「[0,∞)で定義された1
変数実数値関数 f(x)=x2」
とは、「f(x)=x2
を対応規則とする『f:[0,∞)→R』」であるから、
「[0,∞)で定義された1
変数実数値関数 f(x)=x2」
の逆対応は、「f-1:R→[0,∞)」となるが、これは写像の定義を満たさないので(たとえば、f-1(-1)=φ)、
「[0,∞)で定義された1
変数実数値関数 f(x)=x2の逆写像」は存在しない。
このように、タイプAの1変数実数値関数の定義では、1変数実数値関数fが全単射でなくて、逆写像の存在条件を満たしていなくても、
1変数実数値関数fが単射でありさえずれば、fの逆関数が存在することになる。
・タイプBの1変数実数値関数の定義を採用した場合、
「[0,∞)で定義された1
変数実数値関数 f(x)=x2」
を写像「f:[0,∞)→[0,∞)」と解すことが許されて
いるから、
「[0,∞)で定義された1
変数実数値関数 f(x)=x2の逆関数」x = f -1 (y)=√y
は、
写像「f:[0,∞)→[0,∞)」と解した際の「[0,∞)で定義された1
変数実数値関数 f(x)=x2」
の逆写像である。
このように、タイプBの1変数実数値関数の定義では、
fの終集合の調整だけで、fに、逆写像の存在条件を満たしてやることができること、
つまり、fの終集合の調整だけで、fを全単射と解すことができること
が、fの逆関数の
存在条件となってくる。
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→トピック一覧:1変数関数の定義→1変数関数の属性・類型一覧→総目次 |
・fが「『Rの部分集合Dに属す実数』xにたいして、f(x)で表された実数を対応させる規則である」というだけでは、 fを、関数と呼んでよいかどうかはわからない。 しかし、このようなfは、関数でなくとも、少なくとも対応であるとはいえる。 ・対応fは、 [ケース0] 『Rの部分集合Dに属す実数』xにたいして、0個の実数f(x)を対応させる(つまり、対応させる相手がない)(すなわち、f(x)=φ) ことも、 [ケース1] 『Rの部分集合Dに属す実数』xにたいして、1個の実数f(x)を対応させる(すなわち、f(x)=一元集合) ことも、 [ケース2] 『Rの部分集合Dに属す実数』xにたいして、2個以上の実数f(x)を対応させる ことも許容する概念である。 ・これに対して、関数fは、 どの『Rの部分集合Dに属す実数』xに対してでも、 [ケース1] 『Rの部分集合Dに属す実数』xにたいして、1個の実数f(x)を対応させる(すなわち、f(x)=「実数の一元集合」) のでなければならない。 ・だから、 「対応fが関数である」ためには、 ・どの『Rの部分集合Dに属す実数』xに対しても、 [ケース0] 『Rの部分集合Dに属す実数』xにたいして、0個の実数f(x)を対応させる(つまり、対応させる相手がない) ような割り当てが一切ないこと (∀x∈D⊂R) ( f(x)≠φ ) ・どの『Rの部分集合Dに属す実数』xに対しても、 [ケース2] 『Rの部分集合Dに属す実数』xにたいして、2個以上の実数f(x)を対応させる ような割り当てが一切ないこと、 が共に満たされていなければならない。 ・逆に、 ・少なくとも一つ以上の『Rの部分集合Dに属す実数』xに対し、 [ケース0] 『Rの部分集合Dに属す実数』xにたいして、0個の実数f(x)を対応させる(つまり、対応させる相手がない) ような割り当てがなされている (∃x∈D⊂R) ( f(x)=φ) ・少なくとも一つ以上の『Rの部分集合Dに属す実数』xに対し、 [ケース2] 『Rの部分集合Dに属す実数』xにたいして、2個以上の実数f(x)を対応させる (∃x∈D⊂R) ( f(x)=「2個以上の実数からなる集合」) ような割り当てがなされている のいずれかに該当するfは、 「関数ではない対応f」である。 |
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・対応fが数式で書かれているからといって、 「対応fが関数である」とは限らない。 数式で書かれた対応fのなかには、 「関数ではない対応f」となるものが多々ある。 [例] 「f(x)=1/x と表された対応『f:R→R』」は、 関数ではない。 なぜなら、 x=0∈Rにおいて、 f(0)=1/0=φとなる(∵実数体の定義)から。 しかし、 R全体ではなく、 Rから0を除いたR−{0}=(−∞,0)∪(0, +∞)で定義しなおして、 「f(x)=1/x と表された対応『f:(R−{0})→R』」とすると、 対応fは 関数となる。 [小林昭七『微分積分読本:1変数』2章1(p.39)] |
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[例]
なぜなら、x<0を満たすx∈Rにおいて、 f(x)=φとなるから。 しかし、 R全体ではなく、 Rから「負の実数」を除いた D=[0,∞)={x∈R|x≧0} で定義しなおして、 「f(x)=1/x と表された対応『f:D→R』」とすると、 対応fは 関数となる。 あるいは、 実数に対して実数を対応させるのではなく、 実数に対して、複素数を対応させるように変更する方向で、 対応fを 関数にしていくことも可能 [小林昭七『微分積分読本:1変数』2章1(p.39)] |
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・少なくとも一つ以上の『Rの部分集合Dに属す実数』xに対し、2個以上の実数f(x)を対応させているために、 「関数ではない対応f」となる例として、以下をあげる。 [例] 実数xに対して、「x2+y2=1を満たすyの値」を割り当てる対応f -1≦x≦1においては、
f(x)=φ ・対応fが関数であるからといって、 fの逆対応も関数になるとは限らない。 関数fの逆対応のなかには、「関数ではない対応」となるものが多々ある。 →くわしくは、逆関数をみよ。 |
→トピック一覧:1変数関数の定義→1変数関数の属性・類型一覧→総目次 |