web 「西の常識」総目次旧「西の常識」序章「大坂中華思想」「ことば」「観光名物」くらしと生活さいふと経済風俗トレンド人種歴史地理事件スポーツ芸能娯楽教養魔境旧「西の常識」総テキスト(あ〜ん:≒400k)新「西の常識」


13章)西の「魔境」+「オマケ」

「五階百貨店」

は謎のデパートとして知られている◆百貨店というだけあり、生もの以外はだいたいある。家庭用品、工具、スポーツ用品などが新品、中古、質流れ、分け隔てなく並べられている。問題はその年式であろう◆プラスチック製品が極端に少ないことからわかるように、ここはまだ昭和三十年代なのだ。今や日本橋は東の秋葉原と並ぶ西日本のデジタルのメッカである。疑問をもつひとは多い◆また、平屋なのに五階というのを怪しくおもうひともたくさん存在する。これは過去、近所の五階立ての展望台があったことによるに単なる地名である◆いまどき珍しい、謎めいた心ときめく大阪を代表する百貨店である。でも店番のおっさんおばはんらはちょっとコワイで。('94/11「GON!」vol.4に掲載)

 

「アジアコーヒ」

95年春、日本テレビ系の特番『たけし・さんまの世界偉人変人伝』に登場した「アジアコーヒ」の映像は、神戸なら被災認定が即座におりそうな店構え、アナクロな謎の飲料「ネーポン」、そして全てにこだわらないオーナーの婆さんと、関西人ならずともインパクトの強いものであった◆我々取材班はとるものもとりあえず、ディープなパワー渦巻く大阪のなかでも、最深部の海溝部といわれる鶴橋、玉造方面を目指しノー・ブレスでチャリンコを飛ばしたのであった◆「店を始めてから35年です…。元は倉庫やったんを買(こ)うて店やり始めてからたしか35年ね。わたしの生まれは阿波座(大阪市西区)や聞いてます。戦争中は福井に疎開しとってね、戦争のあと森之宮におって、ここへきたんです。何で、コーヒー屋したかいうて、商売しやすいでっしゃろ、簡単で(笑)。当時(昭和30年代)はアジアコーヒいうたらぎょうさんありましてな、さあ、大阪市内に十や二十はあったんとちゃいますか。いや全部同じ店と違(ちご)て、チェーン店いうか、同じアジアコーヒさん(コーヒー豆問屋)から豆買うてたんで同じ名前やったんです。うちは、コーヒやめてもう5、6年になりますか。いまはインドカレーとジュースのネーポンだけ。看板は、店できてからさわってしません。常連さんがそのままがええいうので。息子が今入院してまして。酒ですわ、アル中(笑)。わたしも酒は好きで、死んだおとうちゃんも好きで、両方酒が好きやとこどもがエエのんできしません(笑)。わたしもお医者さんから止められてるんですけど、飲んでます。いつも飲んでます(笑)。この前も朝から飲んでて、ひっくり返ってコケましたんです。頭の後ろ5針縫うてます。帽子(かつら?)とって見せましょか(笑)。酒はすきです、やめられしません。あのネーポンは10年(?)くらい前。うちに来てた甘酒の会社(鶴矢食品研究所)がもってきはって、それからです。地震も会社の方(神戸市兵庫区)は大丈夫なんとちがいますか、2日ほどまえに品物(ネーポン)届きましたから。あの3月の23日、テレビに出てからまたお客さん増えて一日百本ぐらい出るときあります(笑)。この店(の内・外装)はこのままでエエんです。変えたら常連さんに悪いし。ここで、昼間からこうして(酒を)飲んでるんが一番エエんです。おとうちゃんが元気なときはアレもようしよったんですけど。食前食後に。ふとん敷っぱなしやから、『しよか?』いうて。酒もアレも両方すきで。当時は他に娯楽がラジオぐらいしかなかったんです(笑)」◆『アジアコーヒ日の出通り店』のオーナー、西川ユキ子さん(81)のお話しでした●アジアコーヒ日の出通り店:天王寺区玉造元町19-2。?06-764-4574。毎日午前7時〜午後10時まで開店営業。基本的には「インドカレー」はランチタイムメニュー。JR環状線「鶴橋駅」と「玉造」のほぼ中間地点の高架内側にあります。ちなみに「ネーポン(250円)」は大阪市内ではココでだけ販売。ただしビンの持ち帰りは絶対不可。現在、阪神間で「ネーポン」が飲める店を調査中!読者からの情報求む?('95/5「GON!」vol.7に掲載)

 

「大阪ディープ紀行●一日コース?」

◆呑気で緊張感の全くない「西の常識」に業をにやした「GON!」編集部は「お盆大企画」として、千葉から厄年に悩む無臭のフリーライター、中西環女史を特派した。「よりディープな大阪情報を!」の特命を携え、深夜バスに乗り名神高速下り線70?の大渋滞のなか予定を12時間遅れで大阪入りした女史は、今回の強行取材のため大小便や汗の臭いを消す薬物を数日前から服用するという、慎み深いお嬢さまでありました。我等「西の常識」編集部はその取材に合流し、急遽一部紙面を差し替え、お嬢さまに伴い「大阪最深部ツアー/1日篇」を敢行いたしました。(95/10)

[西成(釜ケ崎・飛田)]

◆まず最初にかましたのは、そのパンクな土地柄が誤解をうみ、地元の大阪人でさえ立ち寄る人の少ない「西成」であります。萩ノ茶屋2丁目付近は「あいりん地区」という、日本最大規模の未組織労働者(フリーランスの人夫さんたち)の住居地区です。町名改称する前は「釜ケ崎」と呼ばれ、幾度となく暴動を繰り返し、「釜ケ崎暴動」として知られているところです。道路にも、警察の治安監視のテレビカメラが設置してある。とはいえ、路上の酒盛は日常的。泥酔者は昼夜を問わず行き倒れ、そのまま爆睡する方々も多く目につく。たまには死亡する例もあるだろうが、あまり気にとめる人は少ない。また露店も数多い。住民にとって必要なもの(石鹸、ヒゲ剃り、ビニ本、工具、電気釜など)が高価であり、趣味的なもの(骨董、古着、ブランド品、ファッション用品)は比較的安い。錆びた工具、女物の下着、片方しかない革靴、切れた電球、古い電池など用途不明なものも販売されている。また、若い女性の姿を見ないのも特筆すべきことである。住民の99%は男性。世の中にスレていないひとが多く、その反動でか、ギャルが歩いているとイキナリ話しかけたり、シリを掴んだりする行動に出る御人もいらっしゃる。命には別状ないのであまり気にしないこと。やさしい笑顔を絶やなければ大丈夫、かな? 立ち小便のおっさん多し◆次は戦前からの遊廓「旧飛田新地」へ向かう。映画のセットの様な町並みが情緒たっぷり。いまでも70軒以上が現役で営業中。玄関ごとにマネキンのような白塗りのオネエさんと、客引きのおばちゃんが座っている。料金は1枚前後でリーズナブルなので男性なら旅の思い出にちょっとヌイてみるのも良い。昭和初期そのままといってもよい遊廓の雰囲気と建物群、なかでも料理屋として営業している「飛田百番」のゴージャスな内装は一見の価値あり(ここは予約が必要)。地図上では西成区山王町3丁目付近。観光上注意していただきたいのは、オネエさんがたをジロジロ見ること。特に女性グループでキャーキャー騒ぎながらが興味本位で見学するのは失礼。

[新世界]

◆飛田遊廓から商店街(飛田本通り)を北に抜けると「新世界」に出る。昔、「新世界ルナパーク」という遊園地があったことから命名された町。明治45年(いまのは昭和31年に再建)に建造された「通天閣」を中心に歓楽(風俗)街として栄えていた。戦後は徐々に寂れる一方だったが、現在は大震災景気(?)で人通りが多くなっている。まずはジャンジャン横丁へ。将棋センター、碁会所、クシカツ屋、甘党専科、洋食屋、喫茶店などの大阪情緒あふるるアーケードを抜けると「通天閣」が見える。新世界の中心部にそびえる通天閣は、大阪のシンボルでもある。最近、化粧直しされたが、そのアナクロな味は濃く、経験すれば一生モノなので是非上がっていただきたい(大人¥500円)。地上90?の展望台には幸福を呼ぶビリケン像があり、通天閣のアイドルになっている。巨大なふぐ提灯が下がる「ずぼらや」で遅いお昼◆じつはこの後、本誌「オバコング」で活躍されている中西環嬢の希望で、おばちゃんのメッカといわれる東大阪「石切神社」をたずねたのであります。が、そちらは、女史により近々本誌掲載の予定。請うご期待!そして、我々はまた市内へ。

[生野(鶴橋・猪飼野)]

◆まず「アジアコーヒー日の出通り店」に。店の内外装は30年前のまま。ここでしか飲めない謎のジュース、ネーポン(¥250)で一息つきながら店内の臭気、雰囲気を楽しむ。鶴橋駅から東南に拡がる生野区は、在日韓国、朝鮮人の住民が集中(9万人)していることで知られ、コリアタウンともいわれている。近鉄鶴橋駅東口からの高架下にある「国際マーケット」には網膜に焼きつくようなギンギンキラキラの半島製品専門の商店があり、異国の雰囲気を味わえる。駅からは少し離れているが「御幸通り商店街(旧猪飼野市場)」も同様。ここは看板もほとんどハングル表示?当日のコースは、午前中に西成(釜ケ崎探訪)→飛田(旧遊廓ひやかし)→新世界(ジャンジャン横丁の喫茶「千成」でイップク、「通天閣」見学、「づぼらや」でお食事)。午後からは東大阪の石切神社(参道散策、ばーちゃん取材)→夕方、市内へ戻って、玉造(「アジアコーヒ」でネーポン!)→鶴橋(国際マーケットで買い物、焼き肉「鶴一」で夕食)→桃谷から猪飼野(御幸通り商店街ブラブラ)→大正区(橋の下を溶鉱炉が通過!)→ホテルへ…●お盆の真最中の取材で、市内の店舗はほとんど休業。しかし、交通量は少なく、移動はスムースでした。読者がこれを真似すると、あとで足腰立たんようになります。ポイントを絞りましょう。(95/10)

●今回、本文で特集したディープスポットは、じつは、かなり上級者向けのものであり、脅かすわけではないですが、軽い気持ちで訪れると、えらい目に合うこともあります。結果的にイヤな思い出を残し、大阪に対し悪印象を残す、といった最悪の場合も考えられ、できれば、大阪にかなり詳しいひとに案内してもらったほうが、より安全で楽しいとおもいます。地方のひとは、いきなりディープな大阪を味わう前に、まずは各種の商店街を訪れ身体を慣らしていただきたい。温泉でもいきなりキツイのに入浴すると、かえって身体の毒になる、と死んだばーちゃんもよく言ってました。街の変なものに造詣が深く、本ページ連載の「ワイルド番外地」でおなじみの吉村智樹氏によると、商店街には謎の物質があふれており、ぶらぶら目的もなく歩くことによってエネルギーが充填され、活力が得られるという。氏はそれを森林浴になぞらえ「商店街浴」と名付けておられる。大阪には、そうした身体によい「商店街浴」に適したポイントが数多く存在します。我等、西の常識編集部が入門用としてお薦めする慣らしコースは。まず大阪が初体験なら、全国にも有名な「心斎橋筋商店街」「戎橋筋商店街」「天神橋商店街」といった観光コースからはじめていただきたい。多少身体が慣れてきたならば、より大阪の味が濃い「空堀商店街(中央区)」「千林商店街(旭区)」「九条商店街(西区)」「桃谷商店街(生野区)」「東通り商店街(北区)」などの段階をふみ、最終的に「御幸通り商店街(生野区)」「門真銀座(門真市)」「平尾商店街(大正区)」などに辿り着けば、りっぱな大阪人であります。('95/10「GON!」vol.11に掲載)

 

「ネーポンまたまた値上がり?」

◆最近の「アジアコーヒ」は猫の小便の香が目に滲みるほどキッツイ。さて、「ネーポン」は400円になりました。二年前の取材時は250円、テレビ放映で300円はご愛敬。150円だった時もあったらしいが、大阪ですからね。今回イラスト描くのでビン(中身なしの「ミスパレード」)を無理いってテイクアウトしたら800円(!)でした。中身の入った純正「ネーポン」を持ってるひと、飲むのには勇気が必要です◆西川ユキ子さん(82歳)と「ゴン」読者と自称する常連の三好直次(19歳)くん。ばあちゃんの持つのは、彼のバンド「コアラ」のCD。アメ村の「タワーレコード」「タイムボム」で販売中。1800円。('96/10「GON!」vol.23に掲載)

 

「?ネーポン? 封じ? の3本組!」

◆ゴン!(95年 V O L.6)の読者投稿欄「すんごいお店発見?」から火がつき、ついにはテレビ特番で全国的ブームになった日本一ディープな喫茶店『アジアコーヒ・日の出通り店』(ほとんどの読者は憶えてないと思うが詳しいことは95年 V O L.7を参照)。店もさることながら、その謎のローカル飲料「ネーポン」の強いインパクトも忘れてはならない。その「ネーポン」ほどではないのだが、類似のローカル飲料を3種同時に発見した。右からコーヒー飲料「パレード」、乳酸清涼飲料水「シーホープ」。この2本は尼崎市のツバメ食品製造。みかん水「南風サイダー」。高知県ミナミ食品鉱泉製造。飲んでみたいひと、ビンごと欲しいひとは、阪急「岡町」駅前、岡町商店街のたこやき屋『とくや』に走れ。でも、この3本は大阪近辺の古めの酒屋、つぶれそうな駄菓子やなどで見かけることも多く、そうレアな飲料ではないので、全国の読者は関西在住の友人にたのんで捜してもらうといい。ちなみに、「ネーポン」は現在製造元の都合(ビンが無くなった)で「パレード」のビン入り(中身と王冠はネーポン)、とややこしいので、一時の希少価値は下落中。また今回発見の「パレード」との関係は調査中です☆('96/9「GON!」vol.22に掲載)

 

「パレードの謎を追う!」

◆「ネーポン」は製造元の都合(みんなが記念に持って帰るのでビンの在庫が無くなった)で今年から「パレード」のビン入りになっているとお伝えしましたが、ミスでした! 大阪府豊中市で発見したコーヒー飲料「パレード」と「ネーポン」ビンの「パレード」とは、全く異なるものと判明しました。詳しくは左右のイラストを参照していただきたい。「ネーポン」のビンは「ミス・パレード」でした。ラベルの色も同じ赤ですが「パレード」の上に小さく「ミス」という字があります。「ネーポン」製造元のツルヤ食品研究所(神戸市)さんが去年のテレビ放映以来、かたくなにマスコミ取材を拒んでいるので、はっきりとは言及できませんが、この2本はよくある類似商品でしょう。本家、元祖などのいさかいドラマが過去にはあったかも。「パレード」の製造元はツバメ食品工業(尼崎市)。「ツルヤ」と「ツバメ」、近しさを感ぜずにはいられません。ただし「パレード」は登録商標されています。('96/10「GON!」vol.23に掲載)

 

大阪魔界めぐり

橋の下を溶鉱炉が走る?

◆性格は穏和、虫も殺さぬという呑気なうつけ者であろうとも人間を十年もしていればひとを殺したくなったことが幾度あっても不思議ではない。週に何度か発砲事件がある大阪ではあるが誤解してはならない。一般民間人までチャカがいきわたっているわけではないのだ。諸外国のようにそうそう簡単に人殺しはできない。そうした鬱屈した気持ちの方々のためなのか書店には各種のハンドブックを見かける。現在も入手可能なのかはさだかではないが、手元には「ザ・殺人術」(ジョン・ミネリー著、富士碧訳、第三書館、¥一三○○)という書籍がある。プロの暗殺者用に編まれたこの本には、殺人という現代社会でも希有のスリルという「殺人」を味わいたいひとに向け、素手での殺しから家庭内にある身近な道具、たとえば金づち、包丁、針金、ロープなどを使った基本的なものにはじまり、いくぶんマニアックな毒殺、吹き矢、殺人犬、電気鋸、パチンコ、ボウガン、ナイフ、ピストル、ライフル、火炎放射器、はては原爆の製造法にいたる様々な殺しかたが語られている。なかなか楽しい内容なのではあるが、語られているのは殺人の方法のみで、実行に移してから後、すなわち死体の隠蔽処理には全く触れられていないという、不親切極まりない本なのであった◆じっさい、殺人など、キレたらできる。相手のコメカミにカナヅチをおもいきり打ち込めばたいていの人間は死体になる。だが、その死体をどうする? ほとんどの殺人者は死体遺棄がきっかけで逮捕されている。てまヒマかけ殺すならその処理まで考えるべきだ。血液反応はキレイに拭いても出るそうだし、ちょっとでも死体を発見されたらせっかくの殺人がパアである。逆にいえば、死体さえ発見されなければノープロブレム◆以下の情報は、いま現在アパートの冷蔵庫や押入にバラバラ死体を隠し持っているせっぱつまった読者以外は読まないようにしていただきたい◆大阪には道路(正確には陸橋)の直下を溶鉱炉が通過する場所がある。専門的には「トーペードカー」というその溶鉱炉車は電気炉で溶かされた鉄を運搬するためのものであり、その温度は千数百度。ターミネーターでも溶ける程の高温は何物でも一瞬にして消すことが可能なわけです。有識者に聞いたところ人体などは数分で炭素と水蒸気と化すという◆昼間の交通量はかなり多いが、通過するほとんどの車両からは気付かれない位置関係というのも処理には有利で、しかも溶鉱炉は昼夜を問わず、火を落とすことなく稼働しているのです。深夜ならバッチリ。ただし、15分おきに通過する「トーペードカー」の速度は約30キロ、溶鉱炉の口は約2メートル、陸橋の上からそこへタイミングよく死体を落とすのはかなり至難の技。犬や猫の小さな動物の死体で十分練習してからにしましょう。('96/12「GON!」vol.25に掲載)

 

大阪魔界めぐり/観光ガイドが絶対触れぬ大阪!

◆普通の人々が、普通にくらす、普通の都市大阪が、異常な街として各種マスコミでもてはやされているのは、なにより暑苦しいほどエネルギッシュで元気に見えるからだ。また、人々が理由なく陽気(キれてるともいう)、というのもある。しかし大阪のように度を超した陽気は、裏へまわって?妖気?に転じるのだ(?吉村智樹)という説も正しい。大阪には秘められたナニカが渦巻いているのである。今回は、その大阪という都市の謎を求め、大阪魔界めぐりと題し、有名な魔所をあるいた。(96/9)

【地下街】

兵庫県伊丹市に住む猟奇カルトまんがの帝王、川崎ゆきお氏は地下街についてこう語る◆「東洋の魔窟、梅田地下街は田舎者なら一度入れば二、三日出て来れないぐらい迷路のように入り組んでいる。地下から一発で目指す地上の場所まで出られるようになるには夏を2回経験しなければいけない(大阪もののけ紀行、白水社刊より)」◆新しいモン好きの大阪は全国に先駆け地下商店街、いわゆる「地下街」を整備した。昭和30年代にはナンバ、梅田、アベノ(天王寺)などの地下街も完成、その未来的でビンボー臭い土地利用を誇った。なかでも梅田地下街は、阪急・阪神の私鉄に加え、JR、地下鉄と東洋一の乗り換えターミナル駅として無秩序な拡大を繰り返し、また近隣ビルの地下街とも連結され、迷路のように広がっていった。東洋の魔窟とも呼ばれる所以である◆日々、二百万人が行き交い、どの通路も人でいっぱいのハズだが、エアポケットのようにひとがいない通路もある◆写真はウメダの一等地、阪急グランドビルの地下通路。どんなに人が多くともココに人通りはない。(96/9)

【OBP】

現在、大阪城は金箔瓦と白壁にに改装中、もうすぐ高級中華料理店風キンキラな天守閣がお目見えする。市民のシンボルがこうでは、またまた全国から誤解されるなあ◆ま、天守閣はさておき、その東北部には大阪ビジネスパーク(通称、O B P )と呼ばれる広大なオフィス街がある。中之島、淀屋橋にかわる大阪の新都心として80年代に計画開発されたのだが、バブル崩壊しオフィスはあまり利用されていないらしい◆高層ビル群が建ち並び、高級ホテルなどもあることから、大阪城ホールでコンサートの夜などは、若者のデイトスポットとして賑わう。しかし、ここはかなりワケアリな土地なのだった◆城からも鬼門(北東)にあたり縁起は極めて悪く。もとは東洋一を誇り米軍の大爆撃で廃虚となった「大阪兵器廠(しょう)」の場所なのです。陸軍兵舎、武器庫、兵器工場が建ち並ぶ大規模なものであった。軍事施設の民間転用はよくあるが、ここには数百、数千の人柱がまだ埋めまっているという。しかも、大阪夏の陣まで逆戻るともっと恐ろしいコトになる。ココではなにが起こってもおかしくない。高層ビル群は巨大な墓石に見えないこともない。('96/9「GON!」vol.22に掲載)

 

お宅拝見?「河村邸」

記念すべき第一回目のお宅拝見は、大阪の都心まで30分の便利なベッドタウンとして知られる大阪府池田市の高台、五月丘にある白亜の豪邸です。池田というと、むかしは上方落語「池田の猪(しし)買い」などでも知られている、獣が闊歩する山深い土地だったそうですが、現在は高級住宅地です。ご主人の本名は河村静哉さん。若くして全国的に有名になった落語家さんです。表札がちょっと変わってますね。イラッシャイ。('96/1「GON!」vol.14に掲載)

 

お宅拝見?「長谷川邸」

一昨年、新築された超の上に超が三ケほどつく豪邸であります◆ダイオキシン以外近所には何もない大阪府能勢町の観光ポイントにもなっています。とはいってもSECOMが設置され、私有地に勝手に入ったりすると犯罪が成立するので、みんな道路から見上げるだけです。もとは栗山として利用していた二千坪の土地は整地されナイター設備、観覧席付きのミニサッカーグランドがあると聞きます。ご主人の長谷川公彦さんは元漫才師。現在はテレビの超売れっ子タレント、週に二日しかこの家に住めないそうです。('96/2「GON!」vol.15に掲載)

 

お宅拝見?「古田邸」

◆主筆の自宅から自転車で数分のところに?お宅?があるのでご紹介したい。といっても一般民間人の家ではないからね。日本シリーズ優勝、そしておっさんのアイドル中井美穂との結婚、さらに兵庫県川西市から市民栄誉賞まで手にした幸せの三冠王、ヤクルトスワローズ古田選手のご実家です。周辺の小学生には古田邸の前でヤクルトを飲めば成績が上がる、という噂も発生している。('96/3「GON!」vol.16に掲載)

 

お宅拝見?「科学実験所」

◆今回は個人住宅ではなく、西淀川区に奇妙な研究所の建物を発見したので「番外編」である。お宅なら表札にあたる、門柱プレートの「実験」が「實験」と旧字、しかもかなり年期がはいっている昔のSF映画に出てくるような、風情ある建築です。少なくとも半世紀は「科学」を「実験」していると推測されますが、科学が少年たちの輝ける未来の象徴であった時代ならいざしらず、裏庭には謎の薬品のドラム缶が山積みというのは近頃の風潮として不安がないわけではない。('96/4「GON!」vol.17に掲載)

 

お宅拝見「渡辺邸」

◆今回は大阪で一番ふる〜いお宅を拝見しました。ちょっとやそっと(そっと、て何ぞい?)の古さではなく、大阪夏の陣(一六一五年)以前に建てられた超旧家なのである。渡辺さんのご先祖は、四百年前から西淀川区西三国にお住まいなのであります。梅田から電車で10分の地にこのような歴史的お宅が存在することを知るひとは少なく、重要文化財指定のこの民家周辺にも区画整理の計画があるという。('96/5「GON!」vol.18に掲載)

 

「派手」

●大阪には『派手』というイメージがある。商店看板や建造物も広告効果を考えすぎてか必要以上にバカでかく、ひとを驚かす目的のものがおおい。探せば大阪にもシブーイ、地味な趣味をもつひなびた建物は存在するはずなのであろうが、どうしてもパワフルな派手モンにかき消されてしまうのである。表通りからチョット入ったところにそうした「大阪のちょっとした地味趣味」を満喫できるものが沢山ある、はずなのであったがじつは裏道りは表通りより一段と『派手』なのであった●写真はミナミの盛り場から歩いて10分ほど、国道26号線からチョット入った浪速区元町二丁目の「八坂神社」であります。この超派手でバカでかい「獅子頭」は口の中が舞台になっていて、毎年の夏祭りには氏子たちの奉納獅子舞がとりおこなわれる。今年は7月の13・14・15日とのこと。大阪の裏通りの派手な「獅子舞台」でした。('95/7「GON!」vol.8に掲載)

 

「送電線鉄塔」

◆大阪には戦災後の区画整理を免れたところもある。幅が一定でない道が曲がりくねっている地域は、たぶんそうした地域である。散歩にはこれほど楽しい街はない。写真は、とある大阪の下町で発見した、地所内に送電線鉄塔のある家。('95/9「GON!」vol.10に掲載)

 

「川の中のビル」

◆水の都、大阪。市内の70%の川は昭和40年代に埋立られ道路や駐車場になっている。ここは道頓堀川の西のはずれ、水中に建つ「共進湊町ビル」。道路に面しているのは実は2階。1階の喫茶『珈琲艇・CABIN』は川の中にある。('95/9「GON!」vol.10に掲載)

 

[西 の ウ わ サ]●大阪でミドリのおっさんといえば、知るひとぞ知る隠れた街の有名人であった。ミドリ虫、グリーンさんなどとも呼ばれ、身につけているもの全て、時計、指輪、メガネなどの小物にいたるまで全身ミドリ色で統一していた。著名な美容研究家という証言もあるにはあるが、いまだに謎のおっさんである。15年ほど前、本町で女子高生に目撃されて以来、発見されていないので死去したとおもわれていたが跡継ぎが出現したようだ。地下鉄谷町九丁目(谷九)でミドリのおばさんが発見された。以前より駅周辺で仕事帰りのサラリーマンに声をかけまくっていた60才ぐらいのパンパンと同一人物だという説もあるが、駅構内でホームレスのおっさん相手に事に及んでいたのを目撃されている。壁に手を突きバックからしていたらしい。発見者の話ではチラリ垣間見えたパンツもミドリ色であったというから、ミドリのおじさんの血縁者ではないかともいわれている。少し悲しいニュースでした●ナンバの新歌舞伎座裏はオカマスポットとして名高い。これは江戸時代から続く芝居と同性愛との相関関係の証明でもある。また、同地では、ホモにつづきレズ(オナベ)バーという風俗業も注目をあつめている。関西は宝塚少女歌劇というレズ趣味の総本山が存在する関係上そうした婦女子用の娯楽施設も多いのだろう。しかしオナベはオカマに比較し総人口も少なく各種衣料の専門店も少ないと聞く。ナンバの千日前にあるRという高級洋装店では宝塚の男役風シルエットを持つ女性用のスーツをあつらえてくれる全国では唯一の店としてそのシュミをもつ女性たちに愛されている●ミナミのヨーロッパ村は80年代後半、アメリカ村の名称が定着した後、周防町周辺にヨーロッパ系のブティックが多いことから名付けつけられたことになっているが、ほんまは、各ブティックのある通りを地図上でつなげてみると「ヨの字」になるというあほくさいものであった。命名者に聞いたので本当です●わが国が各種国際利権条約に加盟したおかげでパチモン(ニセ物)はおおっぴらに売買できなくなって久しいが、本物と見間違うほどのブランド物が、アホみたいな値段で売られるのをよろこぶ人は多い。しかし、最近できの悪いパチモンが露店で売られている。露店というのがアジアだが、決まって売り手が毛深い外人というのが、またあやしい。深夜になると、ナンバ球場北のハードロックカフェ周辺に不良外人がたむろしているのを見たひとも多いとおもうが。あれらが、外人露店の国際的なユダヤシンジケートの構成員でっせー●東洋一(?)大きな商店街「天神橋筋商店街」には、この20年間で、お好み焼き屋→純喫茶→ジャズ喫茶→ロック喫茶→同伴喫茶→インベーダー喫茶→ノーパン喫茶→TVゲーム喫茶→カラオケ喫茶→レンタルビデオ店→カラオケボックス→宝石商→パソコンショップとキチガイのような変遷を経ている店があるそうだ。しかも商売が変わっても従業員の顔ぶれがほぼ同じというのもスゴイ。('95/1「GON!」vol.5に掲載)

 

[西 の ウ ワ サ]●今回のウワサは地震前後に直接見聞きしたことでばかりです。もっと陰惨なウワサやデマやホントのことを耳にし、この目で見てもきましたがちょっと…●地震関係のデマベスト3。1位)○月○日○時頃再び強い余震が阪神間を襲う。2位)外国人の窃盗団が組織され焼け残った商店を襲う。3位)仮設住宅の申し込みは早い者順。これが初期段階デマのベスト3でした。結局全部、根も歯もなかったウワサ●去る12月9日。大阪府大阪狭山市で市民大学の一環として「地震考古学」の公開講座が開催された。講師は淡々とした口調で、学問的な立場から関西圏での大規模地震を杞憂していたという。聴講生は5週間余り後、渡された阪神間の活断層資料を手に絶句することになる。●1月13日。神戸市長田区の淡水魚マニア(66)が二十数年来、自宅の大水槽で飼育中の大ナマズ数十匹が大暴れした。「地震が来る!」と親戚近所にふれまわったが誰からも信用されなかった。平時ナマズを大量に飼育しているような人物の言動はどうしても信頼されないのであった。せつない。これ以外にも、今回の地震を予言(予知)していた動物愛好家は多数存在したが、動物への愛が強ければ強いほど、結局社会的には無力な存在なのである●17日、比較的被害の少なかった川西市全域でガスが止った。テレビで頻繁に流れたガスメーター(震度5でオートカットされる)の復旧方法(赤いスイッチを10秒間押し続ける)を、電気のメーター(当然赤いスイッチはない)で何度も試みる主婦が続出した。が笑ってる場合ではなかった●18日、神戸市中央区元町本通り(通称元町商店街)の「ルイ・ヴィトン・ジャパン・神戸店」では、店頭のガラスが人為的に破壊され、棚から全ての商品が消滅した。近所の商店主が騒乱のなか他府県ナンバーのトラックと丸太やハンマーを持った東南アジア系の男性を多数目撃●いっぽう、ほとんど被害がなく別世界の大阪都心部ではおりしも冬物バーゲンの真最中であった。大阪ではいまアウトドア風のダウンパーカと毛糸の帽子が大流行している。奇しくもそれは阪神大震災の被災地ルックと一致している。関西のファッションリーダーの地、神戸は極限状態のなかから、計らずもトレンドを産み出してしまったのである。('95/4「GON!」vol.6に掲載)

 

※以下の文章は「西の常識」連載中、主筆の秘かなお楽しみでもあった左右柱(欄外)用に書いたものである。それぞれの西の常識の、それぞれの「あとがき」でもある。 

■旧い話でスンマセンが、前々号「ゴン9月号」の「西の常識」で紹介した<痛い音楽『SPONGE』>の連絡先に間違いがあります。河内長野の奥山佳史さん宅の郵便番号が589と掲載されていましたが、正しくは584であります。おわびと共に深く反省し、この記事によって関係各位への混乱について謝罪いたします。いまさら、どうするスベも持たない私ではあるが、すべて私の責任です。申しわけありませんでした。というおわびはさておき、みんなエーカゲンにしときや! 失礼にもホドがある。ゴンの購読者層をつかんでいなかったこちら側にも責任はあるが、一般にこうしたインディーズの通販に関しては、返信用の封筒に切手を貼り同封し、問い合わせるというのが最低限のマナーなのですが、いきなり現金・小為替を送ってきた人がいたというじゃありませんか。でも、これはまだマシなお方。いきなりハガキ1枚を送り、スポンジ送って下さい! なんてひともいた。雑貨屋か? しかもそのハガキには「1500円の価値、本当にあるんですかー?早く送って下さい。首を長ーーくしてまっております。ほんじゃあ」何を考えているのだぁ貴様ぁー!神奈川県の清水陽子(19才)お前だ、お前! 「月刊憲兵」に電話番号チンコロして拉致監禁してもらうぞ! 失礼だとは思わんのか! バカタレめが。それから、愛媛の西山繁樹、26才、会社役員、かなんか知らんが、ハガキ1枚送っただけでレコードが送られてきたら世の中楽でたまらんわ。通販業者なんか成立せんゾー、ワレー! ワシ、久しぶりにコーフンしたわ。ま、すんだことなので仕方ないですが、次からはチャンとしましょうネ。(95/11)

■本誌10月号の『テレビチェアマン』欄でボロクソにけなされていた大阪のタレント、北野誠氏の件について一言。べつに、「西の常識」という大阪モノのページだから、大阪人の彼を弁護するというわけではないのであしからず。まず、基本的におさえておいていただきたいのは、ライターの方(岸谷隆明氏)の批判の源となっていたテレビ番組、「トゥナイト?」「噂の東京マガジン」などの番組ですが、あれらの番組は大阪では放送されていない、東京で製作された番組である、ということなのです。これがまず一番大事なことなのです。東京で大阪は誤解されています。その誤解イメージの一番てっとり早いところで、言い方をかえるなら誤解を利用して、彼は?大阪タレントの東京シゴト?をしているわけです。リストに上がっていた彼の発言録にしても、すべて東京からみた大阪というイメージそのままの発言であろうとおもわれます。なぜ、彼がそんなわかりやすく誤解をうける発言をするか、というと、たぶんそれが番組製作者側の意図、でもあるからなのです。大阪を誤解しているプロデューサーが、それらのベタベタの大阪的発言を要求し、指示したのだとおもいます。もっとも、彼の中に批判の対象となるべき資質(ネタ)があるからこそ、ベタベタな大阪ネタが出たわけですが。指示の現場にいたわけではないので断言はできませんが、番組製作側の問題も大きくある、ということを少し理解していただきたいのです。また、彼のファッションセンスに対する批判ですが、あれはすべてそのとおりです。はっきりいって、彼の趣味は悪い。(95/12)

■えーっ、本誌12月号の「完全切腹マニュアル」に関して。写真にあった切腹の作法手順でありますが、あれでは本当の切腹は不可能です。特に、手順写真の拾壱。短刀(脇差)が載せられてきた三方を尻の下に置いてからの作法手順は、歌舞伎「仮名手本忠臣蔵」などの舞台演出とも合致し、そちらから発生した手順とおもわれるフシが濃厚なのです。三方というのはご存じのとおり杉板などを曲げてつくられるもので、軽いものを載せる台です。男性が全体重をかければ、一瞬にして三方が分解し、後方にもんどりうつことになります。二十数年前、三島由紀夫が市ケ谷の自衛隊で切腹しましたが、三島はこの手順どおりの作法で切腹を遂行しようと試みた様です、しかし、急に三方がつぶれ、頭部と背を打ち、腰も痛めたといいます。結局三島は三方をあきらめ、床に正座し腹を切ったのです。これは、三島の介錯(断首)を行なった森田必勝の証言から明らかになった事実です。また、日華事変の折、敵前逃亡の帝国軍人十数人の切腹に立ち会った老人に話しを聞いた時も、ほぼ同意見でした。腰を高くすると安定せず、かなり鋭利な刃であっても腹を裂くこと無理な様です。では、何故三方を尻の下に敷いたのか。たぶん舞台から遠い観客にその姿を自然なかたちで観せるための演出だったのでしょう。(二階堂)(96/1)

■毒グモ騒ぎは何かおもしろかったなあ。私は阪神間のチベットと呼ばれる、ひじょうに交通の便が悪いK市に住んでいるので、今回の騒ぎは全くの他人事だったのだった。現地へいっても毒グモのポスターが寒風にヒラヒラしているだけで、チットモ気分が盛り上がらない。それもこれも毒グモに毒がなかったのが原因だ。でも春になってまた出てきて、ためしに調べ直してみたら、猛毒があったりしたらコワイ。ま、いいか。さて、大阪が毒グモで大騒ぎするチョット前、本ページでもおなじみの吉村智樹氏が初の単行本「バウやねん!」を上梓したことは、前号でお伝えしました。調べたわけじゃないのでよくはわかりませんが、たぶん全国の書店でも売ってるとおもいますので、もしまだ買っていないひといるのなら、すぐ買いなさい。オモシロイから。あっ、そこのひと「ゴン!」を買ってからにしなさい! さて、大阪では本が出てからもうすぐ一ヶ月というのに、いまでも大きな書店では平積み状態。氏はこの印税を見込んで、西九条周辺に手頃な土地を物色しているという噂、はないがよろこばしいことではあります。ところで、吉村智樹氏は大阪ミニコミ界では有名な人物でしたが、最近はお仕事の方がいそがしいのか発行されていません。そのかわりに奥様の吉村康子さんが、「ねこじゃらし」というミニコミを発行されています。当然のことながら、夫である吉村智樹氏も執筆しています。(二階堂)(96/2)

■本誌読者のなかにはグロ趣味な若者も多いようなので、グロの憧れ人体模型について少し。近ごろは、インテリアとしての需要もあるとは聞きますが、デパートに人体模型売場はないし、人体模型の専門店などない。プラモデルがブームだった20数年前には、おっさんにたちには懐かしいマルサン商会から30センチほどの人体模型(男性)が販売されていたこともある。発売当初はヒット商品で、透明な人体に内蔵をパズルのようにはめ込むことができる、なかなかディープな模型であった。小さな十二指腸と膵臓のパーツを無くし途方に暮れた少年も多かった。マルサンの「人体模型(これが製品名)」がアメリカのコピー製品であったのはその世界では有名なことで、本家のは現在もプラモデル専門店にいくと比較的容易に入手できる。女体も製品化されており、乳腺や子宮も完備なのでどうせならそっちがお得。プラモデルではその他の人体パーツ、たとえば、耳、目、鼻、心臓(ポンプ付き)、脳、なんていうのもある。特に「頭蓋骨」というのがベスト。外人のだが、実物大なので上手くつくればなかなかの置物になる。でもつくるのがじゃまくさく、できればすべて金で解決したい、という人なら京都科学の製品を購入しましょう。京都科学は医学教育用の模型製作では世界有数(従業員数では世界2位)の人体模型メーカーです。人体模型の分厚いカタログだけでも値打ちもの。「株式会社京都科学」本社・京都市伏見区鳥羽渡瀬町35-1。東京支社・東京都千代田区神田須田町2丁目6-5。送ってくれるかどうかはまでは責任もてませんが、まずはカタログ請求してみましょう。(二階堂)(96/3)

■生まれてはじめて爪を割った記念に、死体写真満載の本誌読者にとっては軽いもんですが、その写真を掲載してみました。直後のを、とも考えましたが血のりがババちく、しかも白黒印刷では意味もないと判断し、傷口がふさがり痛みもほとんどなくなった楽な状態を撮影しました。足の指にも見えますが、左手の第四指(クスリ指)です。ところで、拷問のなかには爪を痛めつけるものもあります。爪をペンチでじわじわ抜く、のや爪と指のスキマに針を突き刺してゆく、というものがよく知られています。爪を破断して自覚したことが一つある。爪の拷問を仕掛けられたら即、自白するであろうことである。痛い、本当に痛い。古来からの拷問は効果をそれなりに考えられている、と痛感した次第であります。ところで、みなさんは爪がどこから生えてきているのかご存じでしょうか。私は、爪の根本の白いとこの奥まった辺りから生え伸びてくるのだろう、と信じていたのですが、割ってから経験者に聞いてみると、無くなった爪の下の皮膚が徐々に爪に変化していくという。しかし、じっさいの私の指先は、変態なのかいつまでたっても皮膚は爪化せず、指紋が爪側に回り込むという、極端な深爪状態というか指先がズルムケたようになっているのだった。これからどうなるのだろう…。ところで、去年の暮れ全国を騒がした毒グモのセアカゴケグモでありますが、あれだけ殺虫剤撒いたのにやはり効果なく、春の陽気にさそわれて例の墓場にまた出現しました。去年は捕獲に失敗したので、絶対に生け捕りするぞー!だが、今年のは毒が強い新種だったりすると、少し心配。(96/5)

■キダ・タローの 二枚組C Dを朝から晩までブライアン・フェリーと変わりばんこにくり返し聴いていたら、気が狂いそうになってきた。何でこんな恐ろしい組み合わせ聴いているのだろう。だが、このカップリングは自分で選んだものではなく、偶然なのであった。どちらも近所の図書館で借りたものなのだが、ブライアン・フェリーはさておき、もう一枚はジャニス・ジョプリンのはずであった。この二枚(ジャニス・ジョプリンの方は二枚組だから正確には三枚)の空ケースをカウンターに持っていけば、ネエチャンなのかオバハンか一瞬迷う不思議な風体の係員がバーコードをピッ、で中身をわたしてくれるシステムなのだ。しかし、二枚組の方が何処でどうデータが交錯したのか中身はキダ・タローだった。キダ・タローの音楽がテレビやラジオで流れていても普段は気にならないのだが、まとめて二時間以上(二枚組ですので)聴くとキツイ。脊髄液が肛門からジワーッと滲み出てくるような悪寒がはしる。ところで私は十数年前から後頭部を中心にハゲている。隔世遺伝という不治の病である。浪花のモーツアルトと自称するキダ・タロー氏は特殊な帽子をかぶっている。これは関西に住む国民の総意であるからして、ことさら騒ぐことでもない。テレビに出演したとき問題になっている、生え際の位置が一定していない事実。これが帽子説の根拠である。私は暑がりなので帽子しようとは思わないが、すぐ判別できるズサンな帽子をかぶって普通に歩いているオヤジに出会うと強く胸を打たれる。その感動がどこから去来するものなのかはわからない。(96/6)

■前号(6月号)で道頓堀の「グリコ」のネオンが近々取り壊されるという件ですが、先日みたらもうすでに「グリコ」は消滅しておりました。もうしわけない。噂では秋に解体するということでしたが、聞いた相手が悪かった。自分で調べりゃよかったのですが、大新聞の記者にはなしを聞いたのでそのまま裏をとらずに書いてしまった私がアホでした。名刺をもってたので権威に弱いんだよね、ワシも。さて前回、浪花のモーツァルト、キダ・タロー氏のはえぎわについて子供でもわかる話を書いたところ、私が帽子(ヅラ)をかぶるひとを嫌っているように誤解しているひとがいる。私はハゲだが暑いのでかぶらないが自分のは所持している。たまにお客さんがきたら?おもてなし?と称し、かぶったところをお見せしたりする。ところがたまにかぶったまんま煙草などを買いに外にでてしまうことがある。ご近所の奥さんは表情が一瞬にして固まり、あいさつもそこそこに逃げるように去ってゆくのであった。毛が抜けて死ぬことはないのだが、私は一応不治の病だとおもっている。だからどうのこうのいうのも個人の趣味の問題だ。でも明らかにわかる帽子のようなのをかぶったまんま歩行しているひとを発見するととても興味が湧く。どの程度のものなのか内側がものすごく気になる。といいつつ本心はどーでもいいのだった。鏡さえ見なければ自分の全身の風体など確認できない。でもときどき長髪にしていたころ緩い風で髪がそよぎ毛先がほほをなぜていく感触を思い出すこともある。すこしせつない。(96/7)

■エッヘン。ま、せきばらいすることでもないが、わたしは立派なオッサンであるからして、基本的にはションベンくさい、ちまたのアイドルとかの「ウソくさい女性タレント」に興味はなかったのであーる。であるにはあったのだが、中年期の男性にありがちなチョットした気のゆるみというか事故というか、例の、何が例なのかはさだかではないが、例の台湾アイドルの?ビビアン・スー?が好きになってしまったのであーる。べつにエラそーにいうことでもないのだが、ちょっと恥ずかしい…。で、ビビアン・スーですが、ほんの1週間まえまでは何の興味もなかったのに、とあるコンビニで「鶏そぼろ弁当」、これがまた好物なんですねわたしは、それをあたためてもらう数十秒の間、ハゲたでっかいオッサンがレジの前でボーっと立っているのはいかにも見た目が悪く、また情けない。即座に雑誌コーナーへ移動したわけです。そうこうする間「鶏そぼろ弁当」はチンされてしまってたのだが、わたしの右目の視野の隅っこに映った某ペントハウス7月号表紙にすでに反応したあとのことだった。しかし、脳は何故か一瞬にして?タイプ?を選り分けるようにプログラムされてはいないのである。確認のため、その後十数分じっくりと立ち読みし雑誌購入を決定し、瞬時の判断にマチガイのないことを確認したわたしは、それ以来ビビアン・スーのその無垢な裸身に恋い焦がれる毎日を過ごすことになる。にくらしいことに、カラーグラフの最終ページには写真集の発売予告が掲載されており、わたしの期待と股間はふくらむばかりでなのである。(96/8)

■読者のみなさまから、なにかと評判の悪い「西の常識」であります。ついに7月号「今月の責任者出てこい!」欄では栄光のワースト2に輝いてしまいました。というわけで、責任者の姿をとくとご覧下さい。ウサギの面あたりに深い反省の気持ちが込められています。大阪でこのポーズは、キセル、無免許、万引きなどがバレたときのポーズとして広く知られ、万一逮捕されたときでも、このポーズでいれば情状酌量されるというポーズです。ま、責任者も深く反省しているので、次回もよろしく。('96/9「GON!」vol.22に掲載)

?ついに9月号で「西の常識」がワースト1位になったぞー? ハハハハ、ハァ…(脱力)。というわけで、前号から、プレゼントという読者に媚びたイヤらしいコーナーもつくったりしたアレコレで、このクソ暑い大阪市内を原付で走りまわり、正直わたし少々疲れております。先程の小便なんか黄色4号、黄色5号とネーポンみたい色でした。がしかし、泣き言はいってはいられないのだった。というのも、最近数カ月の大阪の変わりようは驚くべきもので、いままで常に在るのが当然だったモノがアッ問いう間に無くなってしまうコトが連続している。先日、住吉大社の夏祭りにいったら、いつも出ている見せ物小屋がない、お化け屋敷もすくない。人間ポンプさんが亡くなったのは聞いていたが、牛女さんも去年の暮れに亡くなったらしい。残念だがどちらももうかなりご高齢であったろうから仕方のないこと、ではあるがアアしたもんが無くなるのはとてもせつない。大阪も、地方のかたがたを案内して喜ばれる「分かり易いモロ出しの大阪」的な場所に少しづつ変化があらわれてきています。「グリコ」のネオンは消失し、「新世界」には巨大な若者向けアミューズメントセンターが建設中です。先日も、友人が天満のお好み焼き屋「菊水」が変わった、と憤慨していました。ここは、その味もさることながら(次回につづく)(96/10)

■前回の続き、のつもりだったのであるが、じっさいそれどころじゃないわ。なにかと評判の悪かった「西の常識」でありました。しかし、各方面で話題になっている本誌であればワーストでもなんでも堂々1位というのはなかなか気分のよいもので、会うひとごとに自慢していたのにどうした! 10月号ではワーストランク圏外になっているぢゃないの。しかも、一句まで詠まれちまった日にゃー、わしの大阪での立場がじぇーんじぇーんないんですがのー(広島弁風)。これでも必死のパッチ(大阪のおっさんは必死になるとだいたいの人がパッチ、すなわちももひきをはきます)でがんばってたんだぜい! なーんちゃって。これだからちかごろの中年は信用がおけない。ところで2年前の10月に連載を開始してあたりまえだがはや2年。今回で22回目にもなってしまった。数が合わないのは本誌が最初は隔月刊だったせいです。私ごとで読者には関係がない(あるっちゅーの)ことではありますがこれは私の雑誌連載の最長不倒記録であり、その記録を次々と更新したのでありました。('96/11「GON!」vol.24に掲載)

■先日、ゴンの取材班が数日間来阪し、延べ半日市内某所を案内がてら同行させていただたのですが、普段見慣れていた大阪の日常の風景も、東京からの取材陣に伴い疑問点にじぶんなりの説明を加えながら行動してみるという行為、いわば「東からの視点」のフィルターで見てみるといかに大阪が異常な空間であるか心底思い知らされてしまうのでありました。具体的なことをこまごま説明していると長くなりそうなので、それは場所を改めてしっかり言及したいとおもいますが、やっぱり大阪ってかなり?変?だわ。どうかんがえても普通じゃない。どうしてこうなったのかは仮説としてはおおよそ出来上がってる部分、たとえば何度もこのページで繰り返している「大阪中華思想」という考え方もありますが、たぶんそれだけではない大阪にはそこに暮らす人々を狂わす「変なパワー」があるのかも知れない。あらゆるオカルト的な事柄は、バカが世の中からバカにされた仕返しのイヤガラセと考えていた、本籍地が東京都という関東遺伝子が濃い大阪人である私は少し想い始めている。('96/12「GON!」vol.25に掲載)

■大阪編集という地の利を活かし、小刻みに締切をおくらせたりするわりには内容の方面が<モ・ヒ・ト・ツ>という本ページの担当さん、いわばビンボーくじを引かされたことに対しグチもこぼさず耐えに耐え、ながらくおつきあいをしてくれていたゴン編集部の宮野ミンミン嬢こと順子女史が体調を崩されミリオン出版を退社された、と聞く。おもいおこせば94年の春、桜の花舞い散る市ケ谷の旧ミリオン出版まで地図をたよりにたどりついた私を、ひと気のまったくない編集部であたたかく迎えてくれたのは女史だった。見ず知らずのハゲちゃびんおやじに紅茶まで入れたりして、おまけに明治屋のクッキーまで付けたりしてからに。その後ヒガ編集長のご理解(?)を得ることもでき、こうしてワガママなページを3年にわたり続けることになったわけです。ところで、ここだけの話ですが当「西の常識」は事情により次回97年2月号をもって終了いたします。パチパチパチ(拍手!)。誰や、手たたいてるのは! あっ、わしか。なお、誤解なきように「GON!」は続きます。あたりまえですが。(97/1)


■西の常識#25「最終号」

東京一辺倒のマスコミ界に衝撃的なデビューをはたし、

全国にその脱力パワーを見せつけた我等が「西の常識」は、

予定通り本号をもってその第1段階計画を完了し、

次号より勝手に第2段階へと突入する。

そこにはまたまたアッと驚くような腰砕けの新展開が待っている。

期待して待つように。そんときはヨロシク! (97/2)

■西の常識(主筆)二階堂茂 

◆協力・順不同 大阪布哇胡桃公司(大阪市)、ハワイアンクリームカンパニー(山口由美子・秦京子:大阪市)、川崎ゆきお(伊丹市)、川崎宏美(吹田市)、金龍ラーメン(大阪市)、サンテレビ(神戸市)、関西新空港(?)、チャンネルゼロ(冨岡雄一・村上知彦・上田耕司)、通天閣観光(大阪市)、吉本興業(竹中功:大阪市)、ビレッジプレス(村元武:吹田市)、中村よお(神戸市)、川口尚子(和歌山市)、坂本漢方(大阪市)、わんだーらんど(南端利晴:堺市)、ハリー&マリリン(大阪市)、繁盛花形本舗(塚村真美)、昼寝屋(大阪市)、マルトミ食堂(寝屋川市)、アジアコーヒ日の出通店(西川ユキ子:大阪市)、ツルヤ食品研究所(神戸市)、西牟田靖(行方不明)、グリコ記念館(大阪市)、大淀公設市場(大阪市)、正光大佑商店(豊中市)、玉手山遊園(羽曳野市)、石橋鉄筋(大阪市)、甘党喫茶三好(大阪市)、小堀純(南河内郡)、奥山佳史(河内長野市)、テック・トーンズ・レコード(USA)、中西環(千葉市川市)、クレイン乗馬センター(豊中市)、生駒山上遊園地(奈良市)、パチンコ・ローズガーデン(大阪市)、田岡由伎(神戸市)、西康人(東京)、宝塚ファミリーランド(宝塚市)、岡室弘毅(堺市)、旭食品(八尾市)、住吉大社(大阪市)、生田神社(神戸市)、今宮戎神社(大阪市)、高木ひとし(大阪市)、G・スコープ(石原ガンジー基久:大阪市)、TKカンパニー(安田謙一:神戸市)、土橋とし子(東京都世田谷区)、エス・プロジェクト(土屋健二:越谷市)、月光舎(小松杏里:神奈川)、イマジン(北清水武資:東京)、ミサワランド(茨木市)、徳屋(大阪市)、石橋幹次(大阪市)、むぎばたけ(川西市)、月蝕歌劇団(高取英:東京)、峯正澄(堺市)、キャットミュージックカレッジ(星野知美:羽曳野市)、うさぱら有限会社(小形克宏:東京)、コアラ(三好なおぢ:大阪市)、オカルトショップテリトリー(大阪市)、ツバメ食品(尼崎市)、アドサンルーム(藤岡明雄:大阪市)、ストロベリーメイズレコード(伊東克彦:大阪市)、千林商店街振興会(大阪市)、杉本明(東大阪市)、らえぷ(兼田由紀夫:大阪市)、たこやきとくや(大阪市)、吉村智樹事務所(吉村智樹・吉村康子:東京)、前田研二(寝屋川市)、ささ丸(笹埜能史:伊丹市)、マハロ・スタジオ(増田ゴージャス吉久:大阪市)、スタジオ・アリス(鄭幸江・二階堂正子:川西市)、ミリオン出版(宮野順子、島田正英、比嘉研二:東京)以上の方々のご協力に感謝? 最後に読者の皆さま、どーもおーきにぃ。では皆の衆、再見! つづきはどこかで!


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