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序章「大阪中華思想」>「大阪中華思想の発生」>「大阪中華思想総帥に会見」

0)大阪中華思想

 関西、特に大阪には中華思想を持つ人が多いといわれている。中華といっても、大阪の中華どんぶりは具だくさんでウマイといった下世話なハナシではない。コトは哲学思想である。日本の中心は大阪であり、その大阪が世界の中心であり、何と宇宙の中心にもなる、という恐るべき力技の主張をもつ浪速のスコブル危険な思想である。これは文化人類学でいうところのエスノセントリズム(※)にあたる。すなわち自分たちの文化習慣などを中心にして他の異文化を評価分類し、ツッコミを入れボケたおし、知らんぷりをし、なだめ、すかし、なんとしても自分たちの下位にランクづけしようとする単なる自己民族至上主義である。こうした関西人による「西の常識」は箱根を越えれば、ともすればゼイロクのタワゴトとして悪意をもってむかえられることも多く、全国的にさまざまな誤解や軋轢などをまねいている。昨今のマスコミ界で、突然のように降って湧いては収束をくりかえす根のない関西ブームの本質も、この大阪中華思想への誤解から発生していることもママある。パパはいない。

 とはいえ本稿もまた、我が国で一番太っ腹といわれる某出版のご好意により成立することになった関西ネタである。本来は関ケ原より西の広大な地域を意味する「関西」を、より深く理解していただくためのものであるが、筆者の生活が大阪北部と兵庫県南東部の往復でなりたっているので、その近辺中心に偏ってしまったのは否めない事実である。しかしこうしたズボラなご都合主義もまた、大阪中華思想の神髄なのである。おおきな愛をもってむかえていただきたい。(94/11 掲載)

※エスノセントリズム:Ethno-centerism/自己民族至上主義。中華思想/centerismから派生したもの。民度の低さをはかる、とかいわれているが、どこの民族でもこの傾向は大なり小なり存在する。世界では「フランス中華思想」、全国では「名古屋中華思想」(かなり脆弱)がよく知られている。

 

「大阪中華思想の発生」

 筆者が大阪中華思想という6文字熟語をこの目でとらえたのは1983年夏のことである。その年、大阪の出版社チャンネルゼロ(※)から発行された、今は亡き総合漫画誌「漫金超(※)第5号」のコラムでのことであった。

 

 

西の常識、東京へ?「大阪中華思想総帥と会見?」

◆読者のなかには「GON!」のようなパワフル極まる雑誌に何故に「西の常識」のような脱力ページが挟まっているのか疑問に思うひともいるだろう。あなたが読んでるこの見開きページの制作者である主筆にも、それは謎である。しかし、あたまハゲらかした呑気オヤジが、謎を謎として放ったらかし、というのも危険な賭である。そこでこのページに、より強力な大阪パワーの注入をと考え、主筆は上京を試みた。目的は、我らが信奉し、また行動原理の中心としている?大阪中華思想?の名付け親であり、その数三人とも八十万ともいわれる信者たちの頂点に立つ偉大なる人物と会うためである。残念ながらその伝説の人物は、大阪ではなく東京に在住しているのだった。コンタクトは困難を極めたが、新宿二丁目で、運良く大阪中華思想 T 総帥に会見を許されたのであった。(96/6 掲載)

 

主筆 大阪と東京でケンカしたらどっちが勝ちます?

総師 東京は、ケンカしないんじゃないの? 弱いから。一対一なら大阪の勝ちとちがう? 東京の人は本気出さへんでしょ。かっこ悪いから。アホでないとケンカなんかできないでしょ。ほら、東京はみんなバカだから。

主筆 あ、やっぱりバカ。

総帥 バカじゃないと、こんなとこ住めんでしょ、じっさい。

 

主筆 大阪で一番ケンカ強いのどこです? やっぱり河内ですか?

総帥 泉南よ、泉南の岸和田ですよ。あそこは「だんじり」もあるし、見たことある? 無茶苦茶ですよ。毎年民家に突っ込むのよ。十年前まで死人が出てたんやからねえ。むかしは警察署の前にだんじりの死亡者いうパネルあったもんな。岸和田では、ケンカが強かったら人物評価上トップですよ、ブッチギリでトップ。面白いひとより上。しかし、惜しむらくは文化がない。そうすると、ケンカと文化の合わせワザで総合力は河内の八尾のほうが上かも知れんな。そう、大阪中華思想の中心地は八尾。八尾は大阪で最も崇高な土地ですよ。

主筆 あ、やっぱり悪名が強い。

総帥 こっち(関東)にはそうゆう土地の歴史ないでしょ? 掘っても出てくるの貝ばっかり。モース貝塚とか。ナウマン象。

主筆 こっちは、いわばみんな土民ですね。

総帥 よりどころとなる文化歴史がないね。みんな田舎に帰りゃいいのにね。

主筆 帰っても仕事ないでしょ。

総帥 そ、それが問題。近代主義の崩壊がここにはあるね。

主筆 主義いう余裕ないでしょ。大阪みたいに街なかで笑ってる人間なんか見ませんよ。笑ってるなと思ったら、明らかに病名付きのヤツ。さて、壊れたヤツしか笑ってない都市に、未来はあるのか。大阪なんか、十人に一人は楽しそうですけどねえ。

総帥 そいつらはシャブ打ってるんでしょ。

 

主筆 それでは、本題の中華思想について、突っ込んだお話を…。

総帥 何なの、何か疑問点あるの?

主筆 いや、わたしではなく読者が。

総帥 読者はどこじゃ?(参考:毒蛇はどこじゃ、のシャレ。ノリの佃煮「えどむらさき」の往年のテレビCMより)

主筆 ハハハ、イキナリ。で、大阪中華思想にたどり着くキッカケというのは?

総帥 はっきり覚えてないがあ、たぶん文化人類学なんかの教科書的な図書を読んでおったト。で、そこに出てた。

主筆 大阪中華思想がですか?

総帥 そんなもん出てないでしょ。文化人類学のエスノセントリズム。神は細部に宿るってことよ。世界のどの民族にもこの傾向があるわけですがね。まあ、自分たちの文化や習慣を基準にして他人や異文化を判断するというのが、まあいわゆる中華思想だな。まるっきり大阪でしょ?

主筆 お国自慢とどこが違います?

総帥 固有の文化を誇るひとびとが異文化を比較評価するときに、自分たちより上に評価なんかします? とうぜん下にみるでしょ。だから、極めて排他的で危険な考えですね。思想的に大阪にピッタリでしょ。

 

主筆 ところでこの写真どうです?

総帥 ナニコレ。着物の子供じゃない。

主筆 ぐうぜんに高田馬場の駅構内で発見しまして追いかけたんですワ。親に聞いたら、普段から毎日このカッコだそうです。時代劇ファンらしく刀も二本差し。

総帥 こっちは武士の本場ですからコンナ子多いね。大阪だったら丁稚のカッコした子いるでしょ、船場あたりに。

主筆 そら、船場にいけば子供っさんはみんな丁稚ですわ。

総帥 でしょ? 商人の街の子供は丁稚、大人は番頭さん。大阪人、二人寄ればダイマルラケット、これ常識。で次の写真は? アー、電車のなかの携帯オヤジね。

主筆 中央線、とくに多かったです。やっぱりウレシイんでしょうな。初めて持った文明の力。大阪ではヤングが多いけど、こっちはオッサン。サラリーマンが目立つ。

総帥 携帯五割増しの法則。五割は話が大きくなる。百万の取引なら百五十、一千万なら一千五百万。気持ちが大きくなる。

主筆 あれ、マイクロ波が出て脳腫瘍になるでしょ? アンテナ伸ばさず使うとマズイですよ。

総帥 ウゾ! ホント? 単なるウワサでしょ。大阪人なら大丈夫でしょ?

(96/6 掲載)

●参考コラム(近日公開予定)「アホ」と「ばか」/「キタ」と「ミナミ」/「差別」と「区別」/「金」と「ビ」/「私鉄」と「JR」/「京都」と「大阪」と「神戸」


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