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4)風俗/トレンド

「ミナミ、アメリカ村に妖怪が出没! ショートパンツに注意!94」

最先端ファッションの若者たちであふれかえるミナミのアメリカ村◆例年にない猛暑のためか、今年はダブダブの短パン・スタイルの若者が目につく。しかし、短パンで出かけるのはやめたほうがよさそうだ。若い女性のひざ下をねらう妖怪が出没するそうな。女子高生、H美(仮名)さんの体験を聞いてみよう。

「エライ暑いから、ちょっと怖いけど今日も半ズボンはいてきてん。あの時もこの三角公園でボーッとしててん。ここ木かげやからちょっと涼しいし人見るの好きやから。夕方、急に暗なってきたんで、歩きだそと思たらなんか足がもつれそうになってん。足もとに小犬がまとわりついてるみたいな感じがして、ひざの下あたりが少しあったかいねん。でも見てもなんにもないねん。そしたら体がだるーくなって、そのうち動けんようになってしもてん。歩道のガードレールにすわって何度か足組みなおしてたら、スウッと楽になってん…。こんなん、私だけなんかなあ。まわりでぜんぜん聞けへんよ…。」

これは明治時代まで岡山・広島県の山中で頻繁に出没したといわれている妖怪「すねこすり」のしわざである。アメリカ村のシンボルともいえる三角公園の(厳密には台形であるが)さし示す方向を地図上でたどると大阪厚生年金会館裏の昼でも暗い新町北公園になる。公園周辺は昔、大阪で一番のフーゾク街、新町遊郭のあった場所である。主に中国地方から人買いに集められたといういたいけな少女たちのせつない「気」が三角公園周辺にたむろする若者たちを媒体に、妖怪すねこすりを呼び寄せたのであろう。

[すねこすり] 山道などで足元にまとわりつき歩行をさまたげたり、股をくぐったりする犬のような妖怪。股を正面からくぐられると魂を抜かれて死ぬるという。足をはすかいに踏み交わしながら歩行すると去るという。('94/9「GON!」vol.3に掲載)

参考:「日本妖怪大全」水木しげる著、講談社アルファ文庫

 

「ナビオ95」

先日、テレビで「ナビオ族」のレポートがあった。土曜の深夜、大阪梅田のファッションビル「ナビオ」周辺道路で暴走行為をする反社会的若者グループで、騒音や事故で近所の住民も手を焼いているとのこと。2年前、同じ場所に深夜の取材をしたことがある。当時の「ナビオ族」は暴走ゾクというより「カーチーム」といったほうが似合うグループだった。完成直前の阪急インターナショナルホテル前の道路に自慢のクルマを並べ、仲間が通るたびに歓声をあげる、いわばアメリカングラフィティ・タイプのグループだった。ナビオを低速で周回する程度で、暴走は見られなかった。ところが、現在の状況はかなりヒドい。グループ化されていない20台ほどのクルマがシンナーの臭いをふりまきながら気ままに暴走してはガードレールに衝突する、馬鹿らしくも非常に危険な状況だった。突貫取材を試みたが、有機溶剤酩酊状態のあんちゃんに木刀で殴られそうになり残念ながら諦めざるをえなかったた。カメラも一台壊されたし。ということで写真は昼間のナビオ。('95/1「GON!」vol.5に掲載)

 

「伊丹空港」

「かんくう(関西国際空港の略、アクセントは『か』に強く『く』にも弱く付け、語尾は下げるのがコツ)」の開港以来、何かと影がうすい「旧大阪国際空港」がデイトコースとして再び脚光を集めている。国際という金看板が取り外されたので、本来は「大阪空港」と呼ぶべきところであろうが、国内線オンリーの「伊丹空港」という、いかにもローカルな響きをもつ名称の方が通りがよいという現状である。国際線は利用できなくなったが、駐車場などの設備はそのままなので、以前は混雑時に車を駐めるだけで2時間かかったのがウソのよう。空港から北へ15分ほどの池田市には50万ドル(注:100万ドルは六甲山)の夜景で名高い五月山の展望台もあり若いカップルにはこたえられないシチュエーションだろう。また、大事なことだから記しておくが、空港周辺は大阪府下でも有数のファッションホテル街である。昨今の利用状況は金曜の夜10時すぎでも待たずに利用できる所がおおいとも聞く。夕方、空港で旅客機をみながら軽く食事をし、五月山で夜景を見て、帰り道にホテル、という絵にかいたようなマニュアル通りのデイトが時間的負担なく可能になったのである●注:地方の方々はご存じないであろうが、もともと大阪と冠しいる大阪空港の施設のほとんどは兵庫県伊丹市に属し、大阪府に属しているのは空港ターミナルの一部分だけです。ということで地元では「大阪空港」というより「伊丹空港」と呼ぶひとが多いのです。('95/5「GON!」vol.7に掲載)

 

「イタイ音楽」

◆昨今、修正に修正を重ね産み出される商業音楽群は、もはや音楽の原型をとどめてはいないのではないだろうか。大阪のディープサウス、富田林で十数年前結成されたスポンジ(同名のグループがアメリカ、スコットランドに存在するが共に無関係)は、職業音楽家たちには造り得ない、無修正モロ出しの「イタイ音楽」を世に問うている。「イタイ」は芸人スラングで「脳が足らん」という意味ですが、このイタイは「神経的な痛み」である。死体写真満載の本誌読者のような、「自分が痛い」のは避けるが、「他人が痛い」のには、ヤブサカデナイという人物にこそ、ぜひこのサウンドを聞いてもらいたい。死体も裸体も音楽も無修正は良い。残酷絵師、伊藤まさや氏によるジャケットもかなりエロチック、一流です●『覚醒時における映像の生産と肉体の関係について/Sponge』通販のみ、Q584 富田林市富田林町11の2 奥山佳史まで、送料込み1500円。('95/9「GON!」vol.10に掲載)

 

散歩でポン磨@ラブホテル散歩 96

健康な男性にとり、性交可能な若い婦女子と街を歩くことほど至福の時はない。しかし、獣ではないので街中で性交を成功させるには秘めたる場所、ラブホテルが必要である◆大阪のホテル街といえば桜ノ宮が全国的にも知名度が高い。が、キタの繁華街から気軽に歩いて行ける距離ではなく、四百メートル余りの桜ノ宮橋を二十数件のホテル街を正面に見ながら渡り切らないとたどりつけない。しかも橋のたもとには有名な生ニンニクたーっぷりの即効精力食品「薩摩っ子ラーメン」がオールナイトで営業している。これは出来すぎである。セックスぐらいはお散歩感覚でこなしたいものです。また、盛り場からあまり近いホテル街もミエミエで気恥ずかしい◆その点、生国魂(いくたま)神社界隈はベストロケーションといえる。ナンバから徒歩で十数分の距離だが、なにより上町台地の縁(フチ)に位置することから、汗だくで坂道を重い荷車を引く思いで女性を引っ張り上げると後は天国、という心理解放のバランスが大阪人の情緒を満足させてくれるはずです▼取材当日、生国魂神社境内で公演中の唐十郎氏。リハーサル中のスナップ。生国魂さんではこういうこともしている。('96/6「GON!」vol.19に掲載)

 

「危険な音楽」

先日、その半生をL S D 啓蒙に捧げたラリパッパ教祖というべきティモシー・リアリーが死去したが、死ぬ前に「この音」を聴かせてみたかった。以前紹介したことのある大阪のバンドd S p o n g e eが16年のバンド活動の中で初 C D を発表した◆自らの危険さを自覚している彼らは中途半端な日本の音楽メディア状況を期待していないようで、今回もアメリカディストリビュートの方法をとったようだ◆値段は高めではあるが、それだけに内容は濃い。わざわざカナダで制作したLPサイズの見開きジャケットにピクチャーCD、しかも9人の先鋭的なコミックアーチストたちによるイメージブックレット付、と贅沢の限り。ヘッドホンでフルヴォリュームすると75分間、確実にdイケeます。保証します●『羽根と眼球または混血のダンス/S p o n g e 』T. E. C. T O N E S- R E C O R D.

U. S.A./定価¥3000、送料¥800(何枚でも)、申込みは現金書留か無記名小為替で、〒584 大阪府富田林市富田林町11-2 奥山佳史まで(96/8「GON!」vol.21に掲載)

 


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