web 「西の常識」総目次旧「西の常識」序章「大坂中華思想」「ことば」「観光名物」くらしと生活さいふと経済風俗トレンド人種歴史地理事件スポーツ芸能娯楽教養魔境旧「西の常識」総テキスト(あ〜ん:≒400k)新「西の常識」


2章)暮らし/生活

「淀川」

大阪を上空からみてもらいましょう◆そうすっと何が見えてくるかというと、まあその高度にもよりますが、いちばんに「淀川」が目につくはずです。琵琶湖から河口まで約70キロというから短い川ですが、大阪のシンボルともいえる川です。何千年もかかって大阪平野をつくった、いわば大阪の母なる川ですね。しかし、母ひとりで大阪ができたわけではなく、当然、ちょっと手伝った父もいます。父の名は「大和川」と申します◆だからというわけではないのですが、いまでは「淀川」と「大和川」に挾まれた土地を何となく「大阪」と認定する人がおおいのです。ま、いいかたをかえればこれが「西の常識」なのでしょう◆淀川と大和川、ともに市民に親しまれている数少ない大阪の自然ではありますが、実は両方共、明治時代に造られた人工の巨大な運河なのです。('95/5「GON!」vol.7に掲載)※1級河川の淀川を運河と呼ぶひともいないが、明治時代のこうした人工モノはなかなかなモノが多い。うまく残したいものです。

 

「大正区沖縄村」

大正が沖縄なんです。いきなり不条理でスンマセン◆大阪市の大正区は沖縄県人、いわゆるウチナンチュが多く移り住んでいる場所なのだ、といいたいわけです◆旧淀川の河口部分のあたる土地なので、高い防潮堤に囲まれた区全体が橋でのみ、他の地域とつながっているという、大阪市の中に「沖縄本島」がポッカリ浮かんでいるようなもんなのです◆映画「ブラックレイン」のロケ地にもなった巨大なループ橋「千本松大橋」や、運河をわたる渡船、いわゆる「渡し舟」が未だに存在するのもシブイが、ここには沖縄物産、沖縄料理、民謡酒場などの店が点在し、地元の人達の社交場になっているのでした。また、血中沖縄県人濃度の高い人物には、普通の八百屋の店先にニガウリがならんでいたり、ほとんどの飲み屋に泡盛があるのもウレシイ。なかでも平尾商店街にある「マルトミ食堂」の豚のアバラ煮と大根がたっぷり入った沖縄そば「ソーキそば」は最高にウマイ。コリアタウンとして知られる生野区の国際マーケットや旧猪飼野地区のように店が集中していないので素人が「町を味わう」には難易度が高いが、ハワイだのジャマイカだのいう前に、これからは大正区ですよ、ホンマ。('95/4「GON!」vol.7に掲載)※過去に「開発(資本が投下)」された地帯を歩くのはおもしろい。特に、ふた昔ほど前の、公務員がマジメなシゴトをしていた時代の(公共投資)ものは、今みても感心するものがすくなくない。

 

「祟り」

北区野崎町の車道上に妙な木がある◆状況をみるに「お上」が公道上でこんな事を簡単に許すワケはないので、これはやはり「祟り障り(たたりさわり)」の類であろう◆いわくありげなそのそぶりは、たぶん撤去しようとしたら多数の死人などがでたので奉っているのだろう◆取材班は「たたり」が怖いのと「ずぼら」なので深く調査するには至らなかったが、衝突防止の反射板がなんかコワイ。('95/4「GON!」vol.7に掲載)※本文で詳しく言及しなかったのは、じつは「タタリ」を恐れてのことである。主筆は唯物史観をもつインテリではあるが、こわがりである。

 

「モノレール」

東には、オリンピックを期に開業された跨座(またがり)式モノレールが存在し、また、懸垂(ぶらさがり)式の湘南モノレールなども営業しているのに比べ、大阪ではなじみのない交通機関である◆そのため、大阪人のモノレールの印象は、絵本でみる未来の都市交通あるいは遊園地の乗り物、という昭和30年代的イメージで脳停止する人が多い。その代表が私◆大阪にモノレールなど、という主張を胸に秘め、弱点をボロクソにけなすつもりが意に反し、1区間ではモノ足らず2往復も乗車してしまったのだった。ええがなコレ。遊園地感覚たっぷり。はるか下の中環(中央環状道路)などを走行する神経が理解できないほど心地よい。当然渋滞はない。乗り心地もグー。問題があるとすれば、いまのルートでは乗ってどうこうするという意味が全くないところかも知れない◆ま、はっきりいって、大阪モノレールは現在のままではd娯楽e以外の機能がウスく、都市交通機関として認められないからであろう。でも、楽しいからいまのままでも好き●「大阪モノレール」は大阪空港から、阪急宝塚線「蛍池」、北大阪急行「千里中央」、阪急千里線「山田」、阪急京都線「南茨木」、地下鉄谷町線「大日」などを経て、京阪「門真市」まで総23キロ余りを跨座式モノレールで結ぶ。('95/12「GON!」vol.13に掲載)※その後の99年夏、最初の計画からなんと30年余たちやっと半分が開通したのは喜ばしいかぎり。いかし、まだまだ利用者の数は少なく、これからの周辺人口の増加も見込めないことから近いか遠いかは知らないが、将来は観光鉄道の方向に向かう運命にある。

 

「96年の節分祭」

昨年は大震災でそれどころではなかった関西の節分であったが、今年こそは「福は内」の願いをこめ、各地で豆まきがとりおこなわれた◆宝塚市の中山寺は本堂以下十数棟が被害を受けた全滅状態のなか、宝塚歌劇団のきれいどころを福娘に五千(当局発表一万)人を集めた◆また、拝殿が全壊したことで名高い神戸市の生田神社は「震災復興節分祭」と銘うち派手な節分をぶちかました。特別福娘として世界の歌姫シンディ・ローパーまでが参加するということで、ひと目見ようという参拝者で混乱をきわめた。群衆は境内に入れず周辺で騒ぐ若人らも含め一万数千(生田警察署発表では三千)人を数え、生田神社の豆まきは開始後2分で終了した。('96/4「GON!」vol.17に掲載)※ここで何を主張したいかというと、ただ単に、主催者発表と当局(警察)発表との数字の差である。上記の人数は、主筆が時間をかけ、ひとりひとり数えた数値であり、信用に値するのである。

 

「阪神間」

大阪、神戸という二大都市にはさまれた兵庫県南東部は、関西一円では一般に「阪神間」と呼ばれ、それぞれに特長をもつ衛生都市群を形成している◆大阪平野の西部を占める尼崎、西宮、六甲山東麓の芦屋を経て神戸。さらに大阪から丹波、中国地方への街道筋であった伊丹、川西、宝塚なども含まれている◆神戸市街の背後(北)には東西30キロにわたる断層山地である六甲山系が大阪湾の間近までせまっているので、平野部は南北に狭く東西に細長い土地になっている◆阪神間には「阪神」、「JR」、「阪急」(海に近い順番。阪神間では海側を浜手、山側を山手と称す)がほぼ平行して運行している。この関西有数の交通至便の地であることが逆に大阪人のプレッシャーになることもある◆大阪のミナミ、たとえばナンバから神戸に行こうとする場合、ある悩みが発生する。大阪湾にそり逆時計まわりで数十キロ移動すれば神戸に着くことは小学生でもわかる◆ということで、まずミナミのターミナル「なんば」からキタのターミナル「梅田」へ向かうわけです。地下鉄御堂筋線でナンバから梅田までは15分、ここまではたやすいこと。しかし、梅田駅を降りる時にひとつの問題が生まれる◆ここからややこしいですが、しっかりついてきてくださいね。まず地下鉄梅田駅ホームの進行方向にむかって前(北)の方で降りたなら、神戸に行くには「阪急」の駅が近く、真ん中あたりなら「JR」、後ろからなら「阪神」がそれぞれ乗り換えに便利になる。地方の方なら、別にどれに乗っても神戸に着きゃ同じなんだからイイじゃん、で済むでしょうが、もし、どの電車に乗っても着いた所が同じだったらどうする?◆この三線とも目的地は神戸の中心駅である「三宮(さんのみや)」。それぞれの駅はドエライ近所にあるのです。もし、直撃すればに半径百メートルの大穴が空く米軍の二五○ポンド爆弾が「JR・三ノ宮(ここの駅だけノが付く)」駅ホームの西側に落下すると、「阪急・三宮」駅も地下にある「阪神・三宮」駅も同時に破壊されるぐらい近い(たとえが悪いが)◆大阪と神戸は互いの距離が近く、中途半端に情報量も多い。こうした瑣末なことがらで悩みこだわってしまうのである。('97/1「GON!」vol.24に掲載)※大阪人は中華思想を持つが、その実体は細かい細かい「瑣末主義」でもある。こうしたどうでもいいコトガラに大阪人の持つ本質的な(差別意識)をかいま見ることも可能である。

 

大阪商店街探検A「千林商店街」

◆地方人が大阪人を理解するには商店街が一番てっとり早く、しかも喜んでいただける。おしなべて大阪の商店街というものは、さまざまなお店が連なり、ただ商品を雑にならべて販売しているだけ、というものではない場合がおおいからです◆大阪の商店街は一般のデパートやスーパーと異なり、ただ買い物だけをする場所ではなく、ひとびとが買い物をする風景を観察する空間でもあるからです。しかも、大阪人である店主の強いワガママやアク、あるいは個人的な事情が、店がまえや品揃えに圧縮状態で表現されていたりするからおもしろいのであります。('96/10「GON!」vol.23に掲載)※どこの地方都市においても商店街は存亡の危機を迎えている。店舗数の3割のシャッターが降りているとその商店街の寿命は5年未満だというデータもある。

 

異国の商店街!「御幸通り商店街」

同じ日本人から、言葉の通じるのが不思議だ、などいわれなき差別をうけるわが街大阪。洗練をキワメ、かつまた哀愁もあわせもつこの大都会のどこが異文化や、といいながら本心は地方から見れば外国というのは、まんざらでもないことなのです◆生野区にある「御幸通り商店街」は素人なら判別できない、一見普通に映る商店街ですが、大阪でも最高峰の外国な商店街である。これには説明が必要。現在、わが国で生活している韓国・朝鮮籍のひとは四○万とも五○万ともいわれていますが、周辺にはその約6分の1、八万人前後が住んでいるのです。いまは元の地名「猪飼野(いかいの)」も73年の住居表示の変更で消え、ここ数年の女性雑誌などの韓国ブームで日本人の買い物客も増え、ハングル表示の看板もめっきり減ってしまっているが、以前は肉屋のショーケースにカラフルなホルモン(放るもんが語源という)類がドーン、の解剖学的世界でした。スーパーでパックされて販売されているのでワカリニクイが、よくみるといまでも充分スゴイもん売ってたりするのでした。よーく見ないとワカリマセンが、ここは異国の商店街なのです。('96/10「GON!」vol.23に掲載)※上記された、生野区の韓国・朝鮮籍の数値は公式なものではなく、90年代初頭における概算である。ちなみに1999年のそれは3万人前後とされています。

 

四○○店ひしめく! 千林(と今市)商店街

京阪「千林(せんばやし)」駅前の「千林商店街」は、過去はどうあれ現在最強の商店街である◆「ダイエー」発祥の地でもあるこの千林は、大阪市内で一番物価がヤスイことでしられています。手元のいささか古い資料には、大阪市全体の平均物価を100とすると、千林は88.6で堂々金メダルです。二位以下には、九条(くじょう)、上新庄(かみしんじょう)、三軒家(さんげんや)、放出(はなてん)と市内でもディープどころが続きます◆また、アーケードがつながっているとなりの「今市(いまいち)商店街」や周辺の小さな商店もあわせると総店舗数約400を超える、とてつもない規模の商店街です。さらにそのほとんどの店がまだ元気に現役営業している、というのもスゴイ。かさねて、風俗っぽい店が見あたらないのなかなかの見識◆今市商店街のたこやき屋「ふみ」は値段もヤスイ(4コで100円)が、その味には感動。カリッと香ばしい表面、クリーミーな中身と大ダコ。ソースなしでいただくのが通。大阪でトップクラスの店。('96/10「GON!」vol.23に掲載)※フーゾク店は駅前周辺に数点存在しますが、表通りで営業していないところに見識というか、ぶっちゃけたはなし、裏世界との「ナシのつけかた」がうまくできている、ということであります。

 

「いちば」

大阪を代表する市場といえば、市内最大の小売り市場である「黒門(くろもん)市場」が有名である◆日本橋1丁目交差点の南東に位置し、ミナミの盛り場一帯の飲食店の魚介類を一手に引き受けている関係上、新鮮さには定評が高い。とうぜん値段も高い◆午前中は板前さんの仕入れでにぎわい、昼過ぎには市内にお住まいの奥様方でにぎわう。185軒の商店には寿司やも多く、極上の寿司を求めグルメなども集まる◆一方、高級な市場なんか市場やない! という主張をもつ大阪庶民の市場といえば「庄内」にとどめをさす◆「北の庄内、南の黒門」ともいわれ、この2つの市場が大阪を代表する市場である●阪急庄内駅周辺は、ダイエー、イズミヤの2大スーパーをはじめ4つの商店街に約200店舗がひしめき、街全体が巨大な市場である。なかでも1955年に開設された「豊南(ほうなん)市場」は庄内のシンボル、市場のなかの市場である。70数店舗が軒を連ね、平日でも一万人のおばはんおっさんでにぎわう。('96/8「GON!」vol.21に掲載)※主筆はおっさんだがおばはん的性格を有しているので、ヨユウがあるとくには「豊南市場」で買い物をする。いい市場なのでありますが、周辺にてごろな駐車場があまりないので大量な買い物ができないことが惜しまれる。

 

「住吉大社」

住吉大社は古くから「住吉っさん」と呼ばれ大阪で一番親しまれている神社である◆広大な境内いっぱいに数百の露天が迷路のように並ぶさまは、さながらアナーキーな仮設アミューズメント・パークである◆露店の規模では日本屈指のものであり、ディープ物マニア、見せ物小屋フリークには欠かすことのできない必見のポイントとして全国にとどろいている◆正月三が日の初詣が有名であるが、毎年7月31、8月1日の「住吉夏祭り」にも露店が出るのも見逃せない▲住吉大社の神馬。二十円でエサを授けることができる。気が荒いので噛まれたり、ぼやぼやしてると涎をベットリつけられたりするがたてがみで素早くふきましょう。吉兆です。('96/3「GON!」vol.16に掲載)

 

「生田神社96」

生田神社は古くから「生田さん」と呼ばれ、神戸で一番親しまれている神社である◆狭い境内いっぱいには大量の材木、セメント袋など建築資材がおかれている。大鳥居も崩れ落ち本殿は全壊、といった震災直後の様子はみじんも感じられないが、本年度は足場だらけの工事現場を拝むかたちになった◆コワレタ物に鈍感にならざるを得ず、危険など気にしていられない経験を経た神戸ならではの神社風景である。('96/3「GON!」vol.16に掲載)

 

「えべっさん96」

今宮戎神社は古くから「えべっさん」と呼ばれ大阪人に親しまれてきた神社である◆一月十日の前後三日間で行われる「十日戎(年寄りは「とぉかえべす」と訛って発音する)」には一日平均五十万人の人で賑わう◆ササに小判や米俵などのミニチュアをつける巫女は「福娘」と呼ぶ。毎年末に厳正なオーディションにより選ばれ、そのレベルはかなり高いことでも知られる◆今年は中華人民共和国の上海から選りすぐりの美人五名が福娘として来日したことも話題になった。がちょっと化粧が濃い。('96/3「GON!」vol.16に掲載)※上記の3つの文章を手抜きとみるか、仕掛けとみるか判断はおまかせします。主筆はこういうのがとてもとてもすきなんですぅ。


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