通称ヘボと呼んでいるクロズズメバチは、“地蜂(じばち)”とも呼ばれるように、地中に巣を作ります。まれに、古い木の穴や軒下にあったりしました。
◇クロスズメバチは2種類
細かいことを言うと、クロスズメバチとシダクロスズメバチの2種類あって、とても良く似ているので、子供の頃、それを区別して考えたことはありませんでした。巣の色が違うので、掘ってみてはじめてわかります。クロスズメバチの巣は灰色ですが、シダクロスズメバチの巣は赤ちゃっぽい感じです。
1 カエルの肉を用意
ヘボが飛んでいるのを見かけたら、まずはヒキガエルを捕まえてきて、それを食べます。食用と言えばウシガエルですが、子供のころ捕まえて食べたのはもっぱらヒキガエルでした。たいてい誰かの家の婆ちゃんが焼いてくれたものです。そのガラを竹とか木の棒に刺しておき、ヘボが来るのをひたすら待ちます。餌は新鮮でないとダメ! 冷蔵庫にあった残りの鶏肉なんかでやっても、ちっとも来ませんでした。
2 肉団子を持たせる
綿のついた肉団子を持たせて、それを追いかけます。ヘボが1匹だけ来たら1度は見送ります。同時に数匹来たら、巣は近いと見て即行動開始! 1匹の場合、ヘボは肉をかみ切って肉団子にして、それを持ち帰ります。その肉の大きさが、この後持たせるために作る肉団子の大きさの目安になります。それに、巣に運んだ後、また取りに戻って来るので、その時間があまり長いと、巣はめちゃ遠いことになるわけです。当時、マーキングなんてシャレたことは考えもしなかったので、みんなでわいわい言いながら見た目で識別しようとしたものでした。
3 手分けして追いかける
ヘボに、カエルの肉で作った正露丸ほどの肉団子に綿を凧のしっぽのようにつけたものを持たせます。松の葉などの棘に団子をちょっと刺して、それをヘボに与えるわけですが、この時、前からでなくお尻の方から渡すのがコツですね。肉団子は、大きすぎるとすぐ飛ぶのをやめてしまうので、慣れが必要です。肉団子を持って飛び立ったら、みんなで協力してこれを追いかけます。
4 見失ったら、またカエルを立てる
巣に向かって一直線に飛ぶハズなので、2回目以降はだいたいの方向を予測して、みんなで持ち場を分担して追いかけました。だいたい3〜4回くりかえせば、巣は見つかります。
5 セルロイドを用意=ピンポンをする
ヘボの巣を見つけたら、こんどはピンポンをします。ようはセルロイドが欲しいわけですが、使えるピンポンをつぶすのはもったいないから、潰すためのピンポンをするわけです。必然的にムチャクチャなピンポンになりました。セルロイドの下敷きがあれば、言うことナシ。セルロイドが手に入ったら、節をひとつ残して竹を切ります。その節にはキリでちょっと大きめの穴を数個開け、逆側から竹にセルロイドを詰めます。
6 煙でマヒさせて掘る
これを巣に持っていき、そこでセルロイドに火を付け。湿らせたタオルや布で竹の口をふさぐと、キリで開けた穴からセルロイドの煙が吹き出します。これをヘボの巣の入り口に押し当てて蜂を失神させるわけです。後は、びっちゅうで掘るだけ! 後に発煙筒を使うようになりましたが、これは煙りの吹き出しに威力がありすぎて、巣が燃えてしまったり、ススだらけになったり煙り臭くなったりで、やりすぎないようにしないと悲惨なことになります。
写真は、ヘボを巣から取り出したところです。やや透明っぽいのが幼虫、白黄色いのがさなぎになりたて、黒いのがもうじき成虫として出てくるやつ。巣のフタを取ると、成虫の形をしたものが飛び出してくる場合があるが、これも食べられます。
☆幼虫 そのまま生で食べると、あまり味はありませんが、薄甘い感じがします。
☆さなぎになりかけ 生で食べるとバターのような味がします。取り出す時、ちょっと力を加えるだけで、つぶれてしまいます。
☆もうじき成虫 黒い色をしていて、生では食べません。バター炒めをすると歯ごたえがあってうまいです。
どのスズメバチも、春に巣を作りはじめて、9〜10月にピークに達します。働き蜂はみんな死んでしまい、翌年女王になる蜂だけが冬を越すとのことです。古い巣を再利用することはありません。そういえば、昔の巣の横にくっついた巣はけっこう見たことがありますが、同じ巣が何年も作られたところを見たことはありません。我が家の実家の屋根裏には、本当に巨大なキイロスズメバチの巣が群を作ったことがあります。