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風邪にしては病状の重い様子があり,38.5℃以上の熱がでて,しつこい咳(細菌性肺炎に比べると,細気管支での炎症がつよいため, 咳が著しいのが特徴)が伴うときには,マイコプラズマ感染症を疑う必要があります.風邪のような症状でおこる病気のうち見逃してはいけないものの1つです.
以前には,4年ごとの流行周期からオリンピック病などともいわれましたが,このところは,かならずしもそうともいえず,
秋ごろから冬にかけて毎年のように流行するようです. 風邪として治療を受けておられても,なかなかよくならず,
セフェム系抗生物質(セフゾンやバナンなど)の処方が追加されても解熱せず,当院に受診され,
診察させていただいたところ実はマイコプラズマ肺炎であったという症例が数例続いてありました.
治療をする側からも注意が必要です.
伝染力が強く,家族内はもとより,学校や職場で集団発生することがあり,このような面でも注意が必要です.
マイコプラズマ感染症はMycoplasma pneumoniae(M. pneumoniae)という病原体によって起こります.一般の細菌は,一番外側に細胞壁という膜があり,この膜によって細菌の形が保たれ生きています.
これがないとその細菌は溶けてしまいます.
M.pneumoniaeは,細胞壁がなくても生きていけるという特殊な構造上のデザインを持っています.
呼吸器感染症に対してよく使われるセフェム系抗生物質は,細菌の細胞壁の合成を阻害することで抗菌力を発揮します.
ところが,M.pneumoniaeには,もともと細胞壁がないため,ふつうの細菌によく効くはずのセフェム系抗生物質が,
この特殊な病原体に対しては全く効かないのです.
マイコプラズマ肺炎は,肺炎球菌などによる細菌性肺炎よりも軽症との固定観念がありますが,重症化して,
呼吸不全をおこし集中治療室での管理を必要としたという例もあります.(わたしも日本呼吸器学会で症例報告をしています)
内科・小児科領域でまずはじめに処方される抗生物質がセフェム系ということが多いので,マイコプラズマ感染症を念頭において治療しないと,
治るものも治らないということになります.
しかし,この病気を意識して,適切な抗生物質(クラリスロマイシンやアジスロマイシンなどのニューマクロライドが第一選択となります)を選択し,
きちんとした内科的管理をすれば,ほとんどの場合には,心配ありません. しかし,ふつうの風邪と思って不十分な治療を続けると重症化する可能性もあります.
咳が多く,なかなか熱が下がらない時には,マイコプラズマ感染症にもご注意を.
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