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風邪は,ウイルス(一説によると300種類以上)感染でおこる最もありふれた病気です.
時に二次感染が見逃されて,肺炎になってしまうということも完全には否定できませんが,
ほとんどの場合には気道の繊毛運動とからだにもともと備わった免疫反応のおかげで数日で自然に治る病気です.
インフルエンザや,その他の重い病気を見逃さなければ,かならずしも医学的な治療を必要とすることはありません.
それに残念ながら本当の意味で風邪に効く薬はいまのところ実用化されていません.
(バージニア大学のハイデンらが風邪のウイルスの一種であるライノウイルスに対する抗ウイルス薬ブレコナリルを開発したとの報告がありますが,
現時点では臨床応用の見込みはありません)
風邪をひく人は,やはり無理をしていると思います. 疲れているのです.
そんな人に神様が数日の休暇をくれたと考えたらどうでしょう. 38℃も熱があれば,周囲の人たちも休めといってくれます.
思い切って休みをとって寝てください. 安らかな眠りの時間に体中の免疫の機能が高まり,3日後にはたぶんよくなっています.
逆にこの時期に強いくすりで抑えて無理をすると重症化,長期化するのです.
注射を打ってがんばるというのは最もいけないことだと思います.
ところで,インフルエンザはふつうの風邪とはちがいます.
致死的(通常の流行時で0.05%-0.1%の死亡率)な経過をとることもある重症の病気です.
一方,きちんとした診断の上で使用する抗ウイルス薬での治療がきわめて有効です.
元気にしてた人が急に高熱を出したときには,インフルエンザの可能性も否定できません.
経過をみていないで直ちに医師の診断を受ける必要があります.
普通の風邪とちがって,インフルエンザの場合には早期診断・早期治療が大切です.
温度・湿度のコントロール
かぜのウイルスは高温・多湿に弱いのです. だからかぜは寒くて乾燥した冬にはやります. 室内の温度を20〜23℃にし,湿度も上げてください.
できれば加湿器を使用して40%以上の湿度を保つのが目標です. 風邪の予防・回復のためには,部屋の湿度・温度を適切に管理する方が,薬を飲むよりも有効で,費用もあまりかかりません.
うがい
うがいは,ウイルスの侵入阻止に役立ち,その後の細菌感染(2次感染)の予防にもなります. イソジン(市販のもので結構)のうがいは,予防的な抗生剤を使うより安上がりで,何より副作用がありません. イソジンの濃度は低くてもかまいませんが,うがいの回数は多ければ多いほど有効です.
禁煙
タバコは風邪には厳禁です.タバコに含まれるさまざまな有害物質が気管支の繊毛上皮を痛めつけウイルスや細菌の進入を許してしまいます. その上,のどや気管支の上皮の修復をあきらかに阻害します. 喫煙者の風邪が長びくのはこのためです. まず禁煙です. 風邪をひいたついでに,本格的な禁煙のきっかけとするのが得策です. また風邪をひいているこどもに,間接喫煙でタバコの煙をすわせることは,なんとしてでも避けてください. タバコをすった部屋には,5時間以上有害物質が浮遊していると言われています.
風邪薬をはやく飲めば,はやく治るのでしょうか?
よくテレビで宣伝しているように,風邪ぐすりを”早めに飲む”と,はやく治るのでしょうか? 残念ながら,いくらはやく総合感冒薬を飲んだとしてもやはり風邪は,風邪としての自然経過をとるか,
ないしはかえって悪化すると考えた方がよいと思います. 特にインフルエンザであった場合には, 市販の風邪ぐすりを安易に飲むと悪化させる可能性が高いようです.
せき,鼻汁,熱などの風邪の症状は,ウイルス排除のための合目的的な生体反応で,ある意味では病気が治るための大切なプロセスです. しかしこの反応が過剰となり体力がついていけなくなることは困ります. このような時に少量の抗ヒスタミン剤や鎮咳剤を使うことは意味があることです.
熱に対してもアセトアミノフェンなどのかるい解熱剤を飲むことは許容でき,有効でもあると思います. つまり症状がでてきて耐えられないならば,それを上手にコントロールするという考えでよいと思います.
風邪をひいたらすぐに病院へ行くべきでしょうか?
二次感染(細菌感染)の徴候を見逃さないため,また風邪のような症状で発症する風邪以外の重い病気を見逃さないために, 医師の診察をうけることは意味があると思います. しかし診断の結果,本当に単純な風邪であれば,その風邪ををなおすために医師にできることは そんなに多くはありません. ”はやめに医者に行って,注射を打ってもらうと風邪が治る”というようなことは残念ながら,ありえません.
風邪に対する本当の意味での良いくすりはありませんし,ましてや注射は無効ないしは有害です.
お風呂にはいっていいのでしょうか?
風邪のときには汗もかき,不快です. さっと汗を流せば,気分転換にもなります. 著しい高熱のときには,入浴はひかえるべきですが, 元気があり微熱程度であれば,むしろのどの炎症に対しては湿度のある湯気を吸引することは良いことです.
わたしは,軽い風邪の時の入浴には賛成です. ただし体力の消耗をふせぐために長湯はさけてください. また部屋を暖かくして,湯冷めしないうちに早く寝てください.
はやく治したいので点滴か注射をうってくれますか?
実際にこのような治療を行っている医療機関もあり,そのような治療を要求される患者さまもおられます. 早くなおしたいというのは人情としては理解できますが,最新の現代医学をもってしても,そのような都合のよい治療法は存在しないのです.
風邪に対する抗生物質や解熱剤はまず有害と考えられますし,なおかつそれを注射で投与する必要はなく,さらに有害で危険であると思われます. ビタミンCやビタミンB群は確かに風邪に有効かもしれませんし,大量でなければ副作用も少ないので,悪くはないと思いますが,
それを注射する理由が理解できません. 食事ができている基本的に元気な人に点滴をして500mlの水分と少量の糖分と塩を補給することに,医学的な妥当性があろうとは考えられません.
自費で行うならまだしも,保険診療で意味のない治療を行うことは,許されないことです.
注射や点滴で風邪が治るということは医学ではなく幻想です. 点滴や注射にあたかも魔法の力でもあるかのような幻想を与えて, 治療(?)してきた,この国の医療に責任があると思います.
当然ですが,当院ではこのような治療はしていません.
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