福島・会津(その1) 
 福島・会津(その2) 
 ロンドン・ハロウ近辺 
 バークシャー留学記 
 ドイツ訪問記・前編〜レヒテンバッハ 
 ドイツ訪問記・後編〜フランクフルト・マールブルク 
 シュルーズベリ訪問記・前編 
 シュルーズベリ訪問記・後編 
 英国・アイルランドB&B事情 
 北イタリア訪問記(その1) 
 北イタリア訪問記(その2) 
 北イタリア訪問記(その3) 
 北イタリア訪問記(その4) 
 北イタリア訪問記(その5) 
 北イタリア訪問記(その6) 
 北イタリア訪問記(その7-a) 
 北イタリア訪問記(その7-b) 




第一回目は少々昔の記憶を掘り起こして、語学の勉強のため渡英した当時の話です。彼の国はその数年前にツアーで初めて訪れて以来、ぜひもう一度ゆっくり訪ねたいと思っていたので、だいぶ力も入っていたようです。大学の寮とはいえ初めて外国に「住む」緊張もあったし...幸い友人の両親がロンドン郊外に住んでいて、新学期が始まるより少し早めに英国入りして2週間ほど泊めてもらったおかげで、生活上のこまごましたことや言葉にも慣れる余裕ができました。


ロンドン・ハロウ近辺

乗り継ぎの香港の空港はまだ新しくなる前で、話に聞いていた通りまるで街の中に飛行機が沈んでいくような感じ。主翼が背の高いビルにひっかかるんじゃないかと本気で心配になる。空港から見た夜の街はまさに100万ドルの夜景で、くらくらしそうなほどだったけれど、ここは単に乗り継ぎ便を待つだけ、空港の外に出るわけにもいかない。すでに閑散としたロビーのカフェで、これから7ヶ月間本当に一人で外国で暮らすのか、と何となく不思議な気分になりながら、同じように何もすることがなくて行ったり来たりしているフランス人の家族をぽけっと眺めつつ数時間をやり過ごす。ようやく離陸した飛行機の窓から見下ろすと、夜の香港の光の海はほんの狭い範囲で、暗闇に別世界のように浮かび上がっている。まさか、いくら何でもこんなに狭いわけは...とよく見ると、きらびやかな光が突然途切れた縁の外側にもぽつぽつと光が見える。ビルでも何でもないふつうの家々の、夜になって家人が床につけば当たり前のように消えていく光だろうか。不夜城の街とは、何という対照。

合わせて13ー4時間の飛行の後ようやくヒースローに到着。友人の両親が車で空港まで迎えに来てくれる。到着ロビーに出ると、出迎えの人たちが手に手に「Mr.◯◯」とか名前を書いた紙をかかげてずらっと並び、出てきたわたしたちを待ち構えている。まさか、この中にわたしの名前もあるのでは?友人のお母さんとは、彼女が娘を訪ねて日本に来たときに一度会ったきりだし...と一瞬不安になるも、品評会の牛のように連なってぞろぞろ歩いていく先に、見覚えのあるプラチナブロンドと親しみのある笑顔を発見。向こうもわたしに気付いた。名札は持っていない。お父さんとはこれが初対面だ。午後遅く家に着き、お茶のあと間もなくたっぷり夜まで眠ったくせに、食欲だけはどこにいっても衰えないわたしは起きたとたんにぱくぱく食べて、周囲をたいそう驚かせてしまった。それ以来友人の両親はどこに行っても「彼女は細くて小さいけど(日本では決してそうではない)とんでもない大食だから、どんどん食べさせないと」と言いふらして歩くようになる。でも外国では日本のように遠慮していると「ああこの人は少食なのか」と理解されて次からは食事を減らされたり、ということになりかねないらしいので、食べたいときはしっかり食べたほうがいいようだ。それに誰でも自分が料理を作ることを考えたら、妙に遠慮されるよりもおいしいと喜んで食べてくれたほうが嬉しい。特にドイツなどでは、たくさん食べる人は歓迎されるとか。


ロンドン郊外のハロウ(Harrow)の友人の両親の家の居間。ロンドンでは典型的な、建て売りのセミ・デタッチト・ハウス(semi-detached house、外見は一軒の家のようで実際には真ん中で仕切られ二世帯に分かれている。玄関も庭も完全に別々。一軒家はdetached house)。最近田舎に家を買って引っ越したので、現在は住んでいない。ハロウはイ−トン(Eaton)校と並んで有名な名門ハロウ校のあるところで、故チャーチル首相もここの卒業生。今でも昔と変わらず、先生たちは長いマント(ガウン?)をはおり、生徒は茶色の制服に麦わら帽をかぶって歩いている。前者はなかなか威厳があってかっこいいけれど、後者は正直言ってけっこう力の抜ける光景。写真がなくて残念。ハロウ・オン・ザ・ヒルという地名の通り丘の上で見晴しもよく、緑も多いので、天気がよければお散歩にはいいコース。



同家の裏庭。このころは9月始めで、りんごが旬の季節。いい天気の日(着いた次の日かな...)に一人で留守番をしていたら、あまりに庭がきれいだったのでカメラを持ち出した、多分この滞在中初めて撮った写真だと思うけれど、縮小したら何だかよく分らなくなってしまった。英国のりんごは小さくて酸味が強く、そのままでも食べられるけどお菓子作りやジャムにも向いているようだ。日本で言えば今や手に入りにくい「紅玉」に近いだろうか。




ロンドンといっても郊外の住宅地はけっこう静かで、庭先には小鳥やりすも訪れる。英国はインドを植民地にしていた関係で、インド系の人たちの人口に占める割合が高いが、友人の家の近辺もかなり多かったようだ。通りにはインド料理のレストランや食料品店、それにヒンドゥー教の人たちのためのハラ−ル肉(HALAL meat、一度神に捧げられて浄められた肉)を売っている店もあって、本国で使う食材や調味料はたいてい揃う。英国では日本に比べてもインド料理は非常に人気があって、味もずっと本格的。ふつうのスーパーなどで売られている冷凍ものやレディメイドのものでもスパイスがきいていてなかなかおいしいので、機会があったらお試しあれ。
中年以上の女性には今でも普段サリーを着ている人も多く、冬でもピンクや緑のきれいな薄い布をひらひらさせてバスを待っていたりする。えらく寒そうだけれど、下にたくさん着ているんだろうか。ひそかに観察したりもしたけど、やっぱり寒そう。若いインド系の男性に聞いたら「よくわからない」と言う。日本の若い男性(女性もかな)が着物のことについてよく知らないのと同じようなものだろうか。どなたかこの謎についてご存じの方はご一報ください。


21.8.1999





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