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今回はツアー最後の滞在先、海辺の観光地セストリ・レヴァンテに入ります。


北イタリア二人旅・その4 セストリ・レヴァンテ (Sestri Levante, North Italy)



二日間滞在した山の恵み豊かなヴァレゼ・リグレの宿を出たわたしたちは、このツアーの最後の滞在地セストリ・レヴァンテに向かった。朝食後間もなく出発したため時間はたっぷりあったので、途中に入った街(どこだったか今となっては分からなくなってしまった...)に車を停めてしばらく歩いてみることにする。

中心地に立派な教会のあるこの街は人通りも多く、凝ったショウ・ウィンドウやおいしい誘惑たっぷりの店もたくさん。ひときわ高いところに建つ教会の前の地面には石で見事なモザイクが描かれ、横には大きな門の向こうに墓地があったが、一つ一つの墓石がやたらと大きく、墓地で門が閉まっていなければスケッチでもしたいような見事な天使や女性の像がついているものも多い。どうやら全体的に裕福な街なのだろうか。横の方は高い白石の壁のようになっているのだがこれも実はお墓で(お骨が入っているのか、それとも実は奥行きがあって縦に棺が入っているのだろうか?)、壁一面に整然と四角く区切られたそれぞれのスペースに墓碑が刻まれ、綺麗なランタンや蝋燭立て、花輪などが飾られている。一番上の方はかなり高いので、手入れをする人のために高い脚立が置いてある。平日のせいもあるのか教会の周辺は人も通らず静まり返っていて、日射しを避けて一息つくのに格好の場所だ、と思いつつ建物の横手の陰になっている植込みをよく見ると、大小のかたつむりがわらわら葉っぱにくっついていてびっくり。涼しくて水のある場所を探して集まっているのだなあ。
church (k)
mosaic (k)
cakes! (k)


タバコより甘いものよね、とミュシャの女神様も仰せです。
ちょうど昼頃に到着した海辺の街セストリ・レヴァンテは、これまた賑やかで活気がある。まずはお昼!ということで早速店探し。まさに海がすぐそこなだけあって、海産物料理を前面に出した店が軒を列ねる。その中の一つで歩道の真ん中に一段高くなったテラスのようなスペースを設けている店に決めた。天気もいいので、もちろん外の席を選ぶ。ウェイトレスの女性もてきぱきにこにこしていて気持ちがいい。やはりシーフードでしょう、とspaghetti al mare(mareは「海の」の意味)を注文。トマトソースのシンプルなスパゲティなのだが、とにかくどさどさ入っているエビやら貝やらが新鮮で海産物好きには嬉しい限り。このせいで海の近くで食事をするときは(今回は海沿いの土地がほとんどだったのだが)とにかくal mareと書かれたものを注文してしまう。近くに座っていた親子連れの男の子が食べていたのにつられてじゃがいものフライも頼んでしまったので、またもやお腹一杯。甘いもののお店のウィンドウなども気にしつつとりあえず先にホテルのチェック・インを済ませて荷物を部屋に入れ、食べた分の運動も兼ねて界隈を散策することに。


ヨーロッパを訪ねていてよく不思議に思うのが、海辺の街でもあまり潮の匂いが気にならないこと。日本の海辺もそう頻繁に訪れるわけではないが、限られた記憶を辿れば日本の場合、海の近くの街に行くとまだ海そのものが見えなくてもかなり潮の匂いの強い、というかはっきり言って生臭い風が吹いてくる。ヨーロッパではまずこの経験をした憶えがない。潮風が清清しいとは感じるけれども、「生臭い」という感じではないのだ。もちろん波打ち際まで行けばある程度は生臭いが、それでも大したことはない。フェリーなどに乗っても日本ならすぐに髪がべたついてくるのに、ヨーロッパの場合それもない。海岸の砂浜の質や湿度の関係もあるのかも知れないが、いまだにこれが不思議。この街も例に漏れずなので、時折海側から気持ちのいい風が吹いてくる時以外は、入り組んだ商店街などを歩いている時はすぐそこが海だということを忘れてしまうほど。
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が、ちょっと街の中心を外れて風の吹いてくる方向へ足を向けると、古い教会やら洗濯物のはためく家の庭やらのすぐ先にいきなり海岸と碧い海が拡がる。この日も青空のいい天気で、結構な数の人が海岸で日光浴を楽しんでいる。高級ホテルらしい白亜の建物なども見えたので、そういうところの滞在客なども結構いたのかも知れない。目の前に拡がる海の青さにも驚くのだが、波打ち際に行ってもびっくりするほど水が澄んでいる。岩を渡りながら水の溜まっている辺りを覗き込むと、小さい魚や蟹までいるではないか。おお蟹だカニだ、と言うと友人が大喜びして、いつの間にかカニ狩りが始まってしまった。子供の頃夏になるとよく地元の沢で蟹探しをしたので、この辺ならいそうだと見当を付けて石をひっくり返すと大抵小さいのがさかさか出てくる。サワガニは赤茶色だが、この海の蟹は黒や緑や黄色っぽいのなど結構カラフル。手に載せてほれほれと見せると更に喜ぶ友人。意外なことにこういうところで生きて動いている蟹を見るのは初めてだとか。ここにいただのこっちの方が大きいだのイタリアくんだりまで来て蟹と戯れるいい大人のドイツ人と日本人、蟹もいい迷惑だったであろう。ごめん。
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タイルを4枚使って描かれている赤毛の女の子の絵は、もしかして「長くつ下のピッピ」?
海辺でひとしきり運動(?)した後、また街に戻って散策する。先に書いたように、特に夏の初めということもあってか街全体に活気がある感じだ。ここも前には海、後ろに山という自然に恵まれた地形なので、休暇を過ごしに来る人も多いのだろう。海辺らしいオープン・レストランやパラソルが鮮やかなカフェなどがあちこちにあって、開放的な雰囲気。たまたま歩いていた通りの壁の一部に、タイルに描かれた色鮮やかな絵がずらりとはまっている。地元の小学生達の作品だろうか。

あちこち歩いていて気付いたのが、そこここに"Andersen Festival"と書かれたポスターや看板があること。オレンジと黒のデザインで人の眼をモチーフにしたロゴと目立つので気になる。何だろうね、と話しながらうろうろしていると、たまたま入った通りがなんだかひときわ賑わっている。と、後ろから何か来るぞと思ったら、奇妙な格好をした人々が音楽を鳴らしながら山車のようなものに乗ってこちらにやってくる。よく見るとその山車は船の形をしていて、乗っている人達はどうやらその船員らしい。子供らしいワンピースを着たお下げ髪の女の子(でも大人)がアコーディオンを弾いて、みんなで歌ったり大袈裟にアクションをしてみせたり。たちまち子供達が周りを取り囲み、観光客らしい大人達もカメラやビデオを出して集まる。船員の一人がマストに登って軽い身のこなしで聴衆の拍手を誘う。口上師?のような人が観客に向かって何やら浪々と喋っていたと思うと、やがて役者同士が喋ったり歌ったり。どうも劇のようなものが始まったらしい。もちろん全部イタリア語なので何を言っているやらほとんど分からないのだが、一区切りすると少し移動してはまた喋り、という具合。その度に人垣も一緒に移動するので、わたしたちも自然とついていく。カメラを向けているとマストから降りてきたお兄さんがこちらに気付き、ウィンクしたりひょうきんな顔をしたり愛想を振りまいてくれたのだが、たまたま家の陰に入って暗かったのかシャッターが下りずに撮り逃してしまった。残念。

何度か移動した後にまた止まって劇の続きが始まったのだが、突然近くの家の階上の窓がばたんと開いたかと思うと、中から顔を出したおじさんが大声で怒鳴り出した。一瞬うるさいので苦情を言っているのか?と思ったが、再びマストに登ったお兄さんがさらに大声で何かやり返す。よく見ると窓から身を乗り出しているおじさんも緑の別珍の上着にひらひらのシャツというやたらと派手な服装。これも劇の一部なのだ。双方の掛け合いに聴衆もさらに盛り上がる。どうやらこれがフェスティバルの一環らしい。Andersenはアンデルセン、つまり童話や劇などに焦点を当てた子供達のためのお祭りなのだろうか。この街とデンマーク人のアンデルセンにどういう関わりがあるのかは分からない(何しろホテルに置いてあるリーフレットなどを見てもみんなイタリア語だし)が、後で知ったところによるとこのお祭りは毎年行われているらしく、一定期間に渡って毎日街のあちこちでさまざまな催しが繰り広げられるようだ。ちなみにセストリ・レヴァンテのウェブサイトはこちら。これもイタリア語のみですが、左側フレームのAndersenという項を選ぶと今年(多分)のアンデルセン祭りの写真が観られます。 hotel backyard (8k)
よく分からない移動劇。
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右側の家々の一つの窓からおじさんが顔を出す。

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椅子が可愛すぎ...かも。
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翌日と翌々日は近辺の観光地を回ることになっていたので、この日はレヴァンテの街をのんびり歩き回って早めにホテルに引き揚げる。夜は午前中に立ち寄った街で買ったチーズ(スモーク・チーズだったのだがえらくおいしかった)と果物、パンなどを部屋で食べる。今回のホテルも繁華街から直ぐの場所にあるため歩いて行ったり来たりできるので気軽だ。ここも四つ星で、先に泊まった四つ星ホテルよりさらに豪華な雰囲気。レセプションもどーんと広く、従業員もちゃんとお揃いの制服を着込んでいる。とにかく広く(一人でうろうろしたら迷いそうだと密かに思った)、階段の踊り場や絨毯の敷かれた廊下にはやたらと大きくて古そうな家具や肖像画などがずしずし置かれている。よく見ると大きな衣装箪笥(?)などに「16○○年」などと年代と歴史(?)らしいものが書かれたプレートがついていたりする。新しくて綺麗なエレヴェータもあるのだが、艶のある石で造られた階段も広くて立派。一階食堂のテラスの向こうには結構な大きさのプールまである。今回の「ツアー」で泊まった一連のホテル、置いてあるリーフレットや時期ごとの値段表などを見て分かったのだが、普通の宿泊料金で泊まると実はわたしなどは普段検討さえしないような高額らしい。三ツ星クラスのところでも結構なお値段なのだが、このドイツの旅行社の「ツアー料金」のおかげでわたしたちはそれぞれ半額近くという破格の料金で泊まっているのだった。改めて友人に感謝。

16.10.2002


次回はセストリ・レヴァンテを基点に、欧州でも人気のある風光明美な観光地を巡ります。どうぞお楽しみに。


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