Obsession 18" f4.2 UC
その6
46cmの分解能と32cm屈折双眼の光学性能を有する総銀ミラードブ
公開:2014年9月28日〜
更新:2015年11月12日 *双望会に参加 に修正・追加しました
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右隣は、千葉のKさんのNinja400とスワロ95双眼望遠鏡
今年(2014年)はとにかく晴れなくて、国内の遠征には2回しか行けなかったが、9月の新月期になって急に晴れだした。9月中旬には、南会津に2回、そして27日(土)には、久々に富士山へ遠征できた。Astoro GPVでも快晴、PM2.5も無し。到着したら雲海が広がり、風景もクッキり、と、理想的! これは10/10行くのでは、と相当期待も膨らむ。
山頂は赤富士
日も暮れてくると、続々と天文ファンが集結してきた。ところが、程なくして雲海が無くなり、南側の空が相当明るくなってしまった。ウォーミング・アップでメジャーどこをいろいろ見たが、どうやってもSkySafari の誤差が大きい。再起動しても何度校正してもダメ。そういえば、先日iOS8 対応のアップデートがあったのを思い出し、SkySafari 4ではなく、SkySafari 3 を起動してみた。そうしたら、いつものように正確に導入できた。どうやらバグのようだ。やっぱり新しいOSはトラブル必至だ。
暗く、理想的な空になる、と思いきや、かなり明るく、淡い散光星雲は諦めモード。御嶽山が噴火した、との事で、その影響もあるのだろうか。ORPに観望に行った名古屋組は、大丈夫だろうか? 富士山は噴火しないのだろうか? また、翌日は自転車競技があり、6時から12時過ぎまで通行止め。遅くとも5時までには撤収しなくてはならなくなった。そして、いつもの通り、物凄い数の車の通行とヘッドライト、そして星空を観望しに来たはずの人の頻回のストロボ発光撮影(本当に迷惑)、とすっかり興ざめになってしまって、1時頃には本機は片付けてしまった。そこからは、EMS対空双眼鏡で、アステリズムや星座を楽しんだ。
右は、夜景とオリオン座。
ついでに、夜景も撮ってみた。けっこうきれいで、まあ、車が来るのも仕方ないか....
ちなみに、気温は3〜6℃、湿度は62〜66%と、この前の南会津と、ほぼ同じ。南会津では、小雨の中に放置したように夜露でビショビショになるが、新五合目では、カラッと乾燥、夜露皆無、フィルター・ワークも快適。この差は、何で起きるのだろうか?
西臼塚へ遠征(2015年4月21日 記)
空は明るいけど、観望できるのはありがたい。
4月18日(土)は新月期の週末で、晴れそう。となれば遠征だ! 実は、3月の新月の時(連休)に天城に遠征したのだが、あいにく光軸調整器具を忘れてしまって(アイピース・ケースを整理していて、古いアイピース・ケースを一新。ところが、これだけ古いアイピース・ケースに入れておいて、しかも奥まった位置にあったので、目に入らなかった)、また、諸事情で本機を分解した後だったので、光軸のズレが半端ではなく、星がみな彗星のように尾を引いた状態! せっかく遠征したのに、観望できない、という失態を演じてしまった。ただ、SWAT-200 と最近、諸事情で入れ替えをしたコンパクト・デジタル・カメラのG1 X Mark II のタイムラプス撮影のテストをいろいろ行い、それはそれで成果はあった。
今回は、天城高原方面に用時があったので、遠征先も天城高原。ところが、夕方に到着してみると、車が揺れる程の強風。撮影に来ていた人達は、機材が重いのか、広げている人達も多かったけれど、私のようなドブソニアンでは、無理。ちょうど友人がここに向かっている時だったので、相談して西臼塚に変更してもらい、私も急遽、西臼塚に向かった。友人は、ありがたい 。彼がいなかったら、諦めて天城で双眼鏡で眺めていただけだろうなあ。
西臼塚へは21時頃、到着。相変わらず、空は明るい。でも、夜半過ぎから薄雲も無くなり、春の銀河を片っ端から見れた。気温は-3℃で結露は凍り、寒さは堪えた。また、空は明るいのでSWAT-200 の出番は無かった(20秒も露出をかければ、もう限界)。G1 X Mark II のタイムラプスは、今回も試用。これから活躍しそうだ。近日中に、コンパクト・デジタル・カメラのsiteをオープンすると思うが、とりあえずモディファイしたG1 X Mark II の写真を下に公開。何だこれ、バカじゃないの、等と声が聞こえてきそうだが、このあたりの事情も近日中に公開予定。首から下げて歩いていれば、デジカメを知る人には、ん? ん〜〜??
*コンパクト・デジタル・カメラのページが公開になりました。こちらをご参照下さい(2015年4月23日)
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千葉のKさん撮影(2015年10月13日。マウナロア3400mの地点にて)
ついにマウナケアへ
2014年の年末、ハワイで知り合いになった友人とメールのやり取りしていたら、4駆を持っていてマウナケアにも行ける、という。実は、現地のツアー会社のバンを1台チャーターしてマウナケア遠征を計画した事があったのだが、コストと人員の点で実現できなかった。4名程度なら、彼の車で遠征ができる!という事になって、友人達に声を掛けた。期日は10月中旬の新月期。最小限の休暇で、夏から春の星座まで制覇できる時は、ここしかない。
1000mを超えると、やはり見えてくる世界が違う。2400m(富士山・新五合目)では、さらに違う。一昨年、マウナケアで1時間程観望したが、ここ、3600mは、全くの別次元。特に印象に残ったのは、銀河だった。M51 なんて、子持ちどころか兄弟みたいに両者ともしっかり渦を巻いていて、しかもそれが、おそろしく美形。写真で見る姿そのままだった。わずか口径12.5cmでこの世界なのだから、3600mに行く価値がある。
マウナケア山頂は世界中で最も天体観測に適した場所の一つと言われ、現在13基の世界最先端の天文台が設置されている。山頂は地球の対流圏のおよそ40%の位置にあり、大気中の水蒸気量も低く、他では見られない明瞭な夜空の像を得ることができる。さらに、山頂は逆転層より上にあり、晴天日は年間300日にのぼる。また、北緯20度という低緯度に位置し、北天と南天両方の多くの領域を観察することができる。斜面がなだらかな楯状火山なので、山頂への資材輸送も比較的簡単である。ハワイ島の低い人口密度は人工の光汚染が少ないことを意味する。これらの因子のすべてがマウナケアを最新の天文学にとって理想的な場所としている。(ウィキペディアより引用)
これを読んだだけで、血湧き肉踊る!
ところが、当初、声をかけたメンバーの参加状況が思わしくない。「行けるかも、行けないかも〜」。数名集まらないと、ツアーが成り立たないので、急遽、もう1人に声を掛けた。
その途端、5名の方が強く参加を表明。当初、ちょっと大きい車をチャーターして6名位なら対応できる、という話もあったが、結局彼の車に掲載できる人数と機材で、という事になり、定員は4名。utoさん、千葉のKさん、fmasaさんが一緒に行く事になった。最後に声を掛け、最後に参加表明をした114中野さんは、残念ながら補欠という形となった。
実は、2012年に一緒にオーストラリアへ遠征したNさんが、昨年病に倒れた。闘病中、「来年は、一緒にマウナケアに行きましょう!」と励ましていたのだが、年末に亡くなられてしまった。だから、このツアーには、私の心の中でNさんも、一緒に参加。
*以前は、Mauna Kea と表記されていましたが、2015年春より Maunakea に変更になりました。
機材 (2015年1月下旬)
海外遠征なら、BORG 125SD-Bino。トラベル用に特化した望遠鏡だから当然だ。西オーストラリアも、極上の世界を堪能させてくれた。utoさんが、メンバーで情報をやりとりする限定掲示板を立ち上げましょう、と発案。さっそく1月末に立ち上げたが、これが1ヶ月で110を超える内容の濃い投稿があり、大盛況。この掲示板で機材は何に、とやり取りをしていたら、やはり大口径は1台あった方がいいでしょう、という事になり、そうなるといっそObsession を持ち込もうか、と話が大きくなってしまった。というのも、1人23s、2個まで無料だから、仮に4人なら、184sまで持ち込めるし、追加荷物、追加重量を払ったとしても、4人で割れば、1個あたり1人数千円の負担でOK。だから、方法によっては現実的な話なのだ。と、いつもの「毒を食らわば」の精神で、Obsession 持込み決定。12.5cmであれだけ見えるのだから、46cmなら、いったいどんな世界が展開するのであろうか。
Obsession からは専用ケースが出ていてMorgenstern さんから譲ってもらったのだが、これ単体で17sもある。これにObsession を一式入れたら総重量は60s以上になり、運搬もできないし、飛行機にも預けられない(預けられる最大重量は32s)。という訳で、いつものアド・トランクに製作を依頼。この会社は、125SD-BinoやLunt LS100Tha DS、アイピース・ケースなどを実に見事に作ってくれる 。預ける重量配分を考え、結局ミラー、ミラーボックス(鏡筒下部)、トラス棒、トップリング部の4つに分けた。トラス棒は、アメリカから送られてきた時の丸型ダンボールをちょっとだけカットしてそのまま使用。残りの3つを製作してもらった。 ケースをオーダーしたのは、さらに先を見据えての事。
ケースが届いた (2015年2月初旬)
1月末までに企業からの注文(多数)を納品しなければならない、との事で、2月に入ってから製作を依頼。あっという間に、見事なケースを作ってくれた。写真左側は、ミラーボックス(鏡筒下部)のケース。ケース込みで、重量は32.3sと持込み制限重量より300gオーヴァーしてしまった。ミラーカヴァーは650gなので、これを外せば31.65sとクリア。右側はトップ・リングのケース。総重量は16.55s。トップリングは、ヴェルクロできちんと固定・保護され、ファインダー兼低倍観望用屈折望遠鏡:Kowa Prominar TSN-883 も収納できるようにしてもらった。これもヴェルクロできちんと固定される。このケースには、ミラーの遮光板、トップリングの遮光版(私の自作のものではなく、純正のもの)が納されるが、ミラーカヴァーもこちらに入れる事にしたので、総重量は17.2sとなった。
ミラーは、単体で重量が18sある。重量追加料金は23sから付加されるので、ケースの重さは5s以下に抑えなければならない。出来上がってきたケースは、これもまた見事な出来。アメリカから送られてきた時の箱は右側の通りで、上下・左右のクッションは段ボールで、わずか1cmちょっとしかない。アド・トランクの場合は四隅で受けているので、クッションの厚みが全然違う。送ってくれる場合には、ダンボールで囲むのではなく、三角形のものを四隅に入れてくれれば良いのに、こういった発想(発送)の転換が無いのが残念。
ところが、総重量が24.2sと、お願いしていた重さより1.2sもオーヴァーしていた。しっかり作られているのは大変ありがたいが、ここは何としても23s以下にしたい。という事で、このケースはリフォームと相成った。ところで、大型の製品の輸送の場合、コストの関係か、 福山通運となる場合が多々ある。ところが、ここはDHL なみにトラブルが多い.。昔は土日は休み、夜は18時まで、とかで、1週間以上、望遠鏡を受け取れなかった事もあった(結局、自分で営業所まで取りに行った)。今回は、日曜受け取りでお願いしていたのに、3個の内、2個が、まだ埼玉にある、とかで、翌日の夜、受け取りとなった。翌月曜日、何としても夜、受け取ろうと車で通勤し、高速道路を使って急いで帰宅したが、この日は荷物が紛失・行方不明とかで、結局受け取れなかった。こんな無駄なやり取りを繰り返させる会社が未だに日本にあるなんて信じられない。
ポタ赤 (2015年2月22日)
私は眼視派だ。撮っている時間があるなら、一つでも多くの天体を見ていたい。といいつつも、近年、星景写真も撮るようになってきた。せっかくマウナケアに行くなら、何かちゃんと写真も残したい。また、マウナケアは緯度が低いので、いつものように30秒もシャッターを開けていたら、星もけっこう流れるかもしれない。という訳で、ポタ赤:SWAT 200 を購入。これから練習を兼ねて、時々撮らないと。
台車 (2015年2月25日)
羽田便。出発は10月10日(土)夜だけれど、午前は仕事で、そこから機材満載で車で羽田まで向かわなくてはならない。駐車場からチェックインまで、そしてホノルル空港では自分でこれらの機材一式+トランクを運ばなければならないので、何らかの台車が要る。最初、考えていたのは、ネットで見つけたご覧のパレット台車。価格も\1780と安い。ところが、これがとんでもない粗悪品だった。まず、キャスター2個は普通にねじ込んて固定できたが、残りの2個は板を打ち抜いただけの薄いスパナでは、全く入っていかない。自前の薄型スパナでやっと入れた。それから、角アングルを固定するネジが全部バカになっていて四角形が固定できない。こんなもので運んだら途中でキャスターが折れて、一巻の終わりだ。返品 (しかも、返金してもらうのに、幾度も連絡が必要だった)して、他のものを探した。
次に目に止まったのは、ウカイ・キャスターのAC-50, 60, 75。同じようなものが花岡産業からも「らくらくドーリー」として出ている。この手をネットで見つけても、あくまでも製品の紹介なので、購入となると、大変難しい場合も少なくない。今回も、販売店を経由してくれ、と言われ、 紹介された販売店(卸)に電話すると、「会社名は?」、「販売は10台から」などと言われ、個人の購入となると、まあ大変。説明には、「各部の分解・組立は容易」等と明記されていたので、分解して手さげに入れて現地で組み立てて運ぼう、と思ったのに、よくよく問い合わせたら、リベットでの固定なので、分解したら組み立てられない事がわかった。いかげんな説明と販売網の不備のため、全く無駄な3日間を費やしてしまった。
ミラー・ボックスのケースは一番重いので、本当はこれを一番下にし、他の箱を重ねて運ぶのがいいのだが、すでに重量制限ギリギリなので、この箱にキャスターを装着する事はできない。しかし、トップリングのケースは、まだ重量制限に余裕があるので、結局、このケースの底面にキャスターを直接装着し、その上にミラー・ボックスのケース、その上にミラーを載せて運ぶ事にした。重心は高くなるが、ゆっくり押せば大丈夫だろう。また、トップリングのケースは内部はヴェルクロでしっかり固定されているので、 このケースは立てても大丈夫だ。荷物を預ける場合には、このケースを立たせる事でキャスター部分は接地しないので、耐久性の点でも、その方が良さそうだ。という訳で、このケースの外のレイアウトを変更してもらう事となった。
窒素を増やすことで低酸素状態を生み出している、との事(左の酸素濃度12.5%が高度4000m、右の酸素濃度10.7%が高度6000m)。
富士山・新五合目2400mではポテトチップの袋がパンパンに膨れるけれど、体も頭もなんとも無い。また、マウナケアのオニヅカ・センター2800mでも日常と何ら変わらず 、銀剣草のある丘も普通に登った。ところが、すばる望遠鏡のある4200mでは、息苦しさを感じたし、早く歩くとクラクラした。また、以前、富士山・新五合目に着いて直ぐに 、一気に一合上のトイレまで登った事があったが、この時は動悸と息切れでビックリした事があった。高地、低酸素を侮ってはいけない。また、低酸素では判断力も鈍るので、せっかく望遠鏡を持って行っても、導入もろくにできず、無駄な時間を過ごしかねない。そこで、以前から興味があったミウラ・ドルフィンズで、まず高所テストを受けてみた。 私が受けた海外高所テストは私の他に3名いて、皆キリマンジャロへ登頂する、という。
私の測定結果(赤線がSaO2、青線が脈)。左が安静時、中央が運動負荷時、右が仮眠時。
最初は肺活量や脚力等の測定。脚筋力は、年齢(57歳)平均値38.9sに対し59.7sと20歳代だった。A室では、大気圧はそのままで酸素濃度を約12%とする事で、高度4000mを疑似体験できる。その部屋で、パルスオキシメーターを装着して動脈酸素飽和度SaO2と脈拍数を常時モニターしながら、安静25分、踏み台昇降運動20分、最後に睡眠40分をチェック。正常な人の場合、SaO2は97-99位。これが90以下の場合、何らかの肺疾患 (酸素の取り込みが悪い)が疑われる。ところが、4000mだと安静時でも80台になる。少し息苦しい感じだ。そしてこれは、正しくマウナケアの山頂で経験した感じと同じだった。そこで、ちょっと深めに息を吸い、吐く時に口をすぼめて負荷をかけるようにすると (肺に圧力をかける感じ)、みるみるSaO2が10程上昇する。まるで酸素を吸入したような効果だ。ここで、深呼吸を繰り返したり、パニック的呼吸(浅い呼吸を頻回に行う)をすると過換気になり逆効果 。時に失神の原因となるので注意!
次に、踏み台昇降運動。ただでさえ酸素が足りない、と感じているのに、運動なんかして大丈夫なのか? だいたい私は山にも登らないし、等と戦々恐々だったが、何事も経験だ。無防備で運動するとSaO2はみるみる60台にまで下がるが、呼吸に気をつければ、再び10以上上昇する。これは大きな自信に繋がった。また、ウトウトと睡眠状態に入ると、50台にまで下がった。その時は防御反応が起き、覚醒する。そして呼吸する事で、値は再び上昇する。今回、SaO2が90台、80台、70台、60台の時の自覚症状が把握でき、これは極めて大きな収穫となった。機会があったら、6000mも経験したい。
ミラー収納箱 (2015年3月4日)
リフォームされたミラー収納ケースが届いた。本当は4日前に届いていたのだが、福山運送で送られてきたので、昼間仕事をしている私達の家庭では受け取れない。重量 は1.2sオーヴァーしていたが、今度はケースの重さは4.6s、総重量も22.4sと目標達成! 箱は少しだけ小さくなり、錠前も小型化、内部のクッションも簡素化された(しかし、しっかり保護されている)。流石はアド・トランクだ。あとはキャスターの付いたトップ・リング収納箱の出来上がりを待つのみ。
キャスター装着 (2015年3月8日)
トップ・リング収納箱にキャスターが付いて送られてきた。ケースの重量は、14.7sとなったが、全て収納して総重量は22.3sとクリア。もう、明日でも遠征可能!
写真左:2015年8月、写真右:10月。
最高の像を提供してくれていた銀ミラーが劣化してきた。EMSユニットや斜鏡は全く問題ないのだが、観望の度にビショビショになり、そのまま自然乾燥を繰り返された環境は、Protected Silverでも無理だったようだ。通常の用途では問題ないが、ドブソニアンでは、斜鏡のみ銀が良いと思う。
写真左は本年8月のもので、右は10月のもの。撮り方で随分写りが異なってくるが、一見汚れのように見える白い部分は保護膜の下面のミラー自体の錆で、洗浄しても落ちない。むしろ、いろいろな洗浄を試みて、かえって劣化を早めてしまった。これの再蒸着等々については、現在、検討中。
ちなみに、使用頻度も減っていて筒で保護されているORION 300mm f4.5 の銀ミラーは、蒸着して5年経つが、全く変化無くOK。
メンバー交代 (2015年8月)
utoさんが、仕事の関係で、ハワイへ行けなくなってしまった。そこで補欠になっていた114中野さんが急遽参加へ。幸い便が取れ、4人が揃った。機材は、114中野双眼望遠鏡を持って行く、という。これで大口径ドブと屈折双眼が揃い、向かうところ
敵無し、となった。それにしても、残念!
utoさん、今度は一緒に行きましょう!
fmasa君は、愛機:Zeiss APQ の屈折、千葉のKさんは、撮影に燃えて(萌えて)いて、今回は撮影主体。
でも、スワロ95の双眼望遠鏡は持参。
トラブル発生! (2015年9月)
いよいよ、あと1ヶ月、という時になって、TMT望遠鏡建設問題が深刻化してきた、と連絡が入った。マウナケアは、ネイティヴ・ ハワイアン(ハワイ先住民)の聖地で、すばる望遠鏡建設の時にも注意が払われ、現在の13基以上は建設しない事になっている。もし、新たに建設する場合には、既存の物を取り壊し、そして許可も必要、という事になっているのだが、既存の天文台はそのままで、建設が始まっている。そこのところの経緯の詳細かつ正確な情報はわからないのだが、6月には逮捕者が出て、入山も1ヶ月程できなくなった、との事。
正式な手順で無いと建設許可が下りないので、どれを壊して建設するのかは協議済みのはずなのだが、 マウナケアは、やはりハワイ先住民にとって文化的聖地なので、矢鱈と踏み入って欲しくない、という根本的な部分がネックになっているようで、また、聞くところによると、あんな巨大なものと、口径1〜2mのものとは同じ1基として扱えない、と反対している 人もいるらしい。また、環境破壊なども反対理由に挙げられている模様。
残念なのは、「環境破壊の望遠鏡が建設される。聖地が汚される」ので、反対しよう、という図式に、それなら「反対」と単純に署名してしまう人がいる事だ。「環境破壊」ならば 、とりあえず「反対」という意思表示をする前に、本当に環境破壊なのか、何が環境をどのように破壊するのか、具体的に知るべきである。一番危険なのは、イメージだけで判断する事だ。イメージの選挙でヒトラーが首相に選ばれ、小泉政権の時は、郵政民営化、というスローガンだけで、自民党員が大量に選ばれた。その後の結果は惨憺たるもので、いかに、そういった判断が危険であるのか、歴史が証明している。
もし、先住民に説明不足であったのなら、それも残念なことだ。画期的な成果が見込めるだけに、うまく話がまとまり、無事建設ができるように願うばかりだ。
2015年9月現在は、22時〜4時までは、2800m以上(つまり、オニヅカ・センターより上)からは退去しなければならない取り決めになっている、との事。ただし、今後、どうなるのかは、全く不明。入山不可の可能性もあり。せっかくこの時のために準備をすすめてきたのだが、はたしてマウナケアで星は見れるのだろうか?
ちなみに、日本ではほとんど報道されなかった、この問題。アメリカ本国ではどうなのかutoさんに聞いてみたら、日本同様、ほとんどニュースに登場しなかったらしい。
アイピースはどうするか? 何を持っていくか? (2015年10月)
マウナケアは0℃まで冷え込むので、観望小物に掲載している防寒具一式を用意した。ただし防寒靴は、軽量のタイプ(A.D.ONE AD-609:Amazonで送料込み\2180!)にした。寒い所では、足底から冷え、冷えると観望が続かなくなるので、ここは大事だ。これに、ほっかいろで補強。
滞在する部屋は、機材を広げる関係上、土足禁止とし、室内履きを用意した。トイレの無い所での観望が主体なので、携帯トイレも用意。また、3600m以上で具合が悪くなった人は、2800mで待期する事にしていたので、アメリカ製のトランシーバーを用意した。たった\4000少々で、日本では許可が必要な位の相当強力なものが2台買える。
ドブソニアンでは、足台が必須。これは、折りたたみ式のACTY #2748(Amazonで送料込み\713!)を見つけたので、これをトランクに忍ばせた。光軸調整器具を忘れないよう用意し、肝腎のアイピースは、あれこれ悩んだ挙句、いつも使っている双眼装置Baader Planetarium Mark V+Panoptic 24mm+GPC(135倍、実視野0.5°、射出瞳径3.4mm)と高倍率観察用にPentax XW 5mm(381倍、実視野0.18°、射出瞳径1.2mm)のみとした。というのも、単眼アイピースは、114中野さんとfmasa君がいろいろ持ってくるようなので。いつもは、Docter UWA 12.5mm(152倍、実視野0.55°、射出瞳径3.0mm)も常用するが、淡い銀河は、双眼装置を使った方が、より良く見える。フィルターは、Astronomic のCLS、UHC、OIII、笠井Hβ を持参。
ファインダー兼低倍観望用の屈折望遠鏡のKowa Prominar TSN-883 にはTE-17W ではなく、ズームアイピース:TE-11WZ を装着し、25倍から60倍を楽しめるようにした。これに、カメラ一式、SWAT-200 一式、着がえやもろもろ入れると、もはや双眼鏡を持って行くスペースは皆無となった。双眼鏡は、fmasa君のZeiss SF を借りて見る事にしよう。
トップ・リングは、今のものはケースに収まらないので、最初に製作して今は使わなくなったものをカットして用意した。
減光対策 (2015年10月)
写真左:購入当初、マジックで減光を試みた(効果無し) 写真右:ビニール・テープを挟んで、減光量をコントロール
マウナケアの空は極上だ。日本で普段やっているような減光対策では、まだまだ明るい。明るいライトが原因で、レンジャーから退去命令が出ても困るし、淡い天体を楽しむためにもカメラのディスプレイを含め、減光に留意した。いつもの赤色透明の塩ビ板をカメラの液晶ディスプレイに用意しただけでなく、LEDヘッドライトには黒色ビニール・テープを挟んで減光した。
もう、出発 (2015年10月10日)
約10ヶ月準備をすすめてきたが、あっという間に出発の月になってしまった。ところが、10日の出発を前に、不覚にも風邪気味となってしまった。TMT問題、そして、天候も悪くなりそうだ、と連絡が入り、相当弱気になってしまった。イベント晴れ男、台風をも蹴散らして晴れにする、等と言われ続け、いつもは自信満々だったのだが、今回はダメ。散々、マウナケアは物凄いぞ!と仲間を誘い、鼓舞してきたが、3日とも曇ったらどうしよう、等と暗い気持ちで出発の日を迎えた。
仕事と雑用を終え、空港に向かった。便はほぼ0時に出発。羽田では問題無かったが、ホノルル空港の税関で引っかかった。「これは何だ? 仕事か? いくらするんだ? 職業は何か? これをどうするのか?」、矢つぎばやに質問が続く。そして、「何でカルネを使わないのか。」と来た。「やばい、高額課税か」、と凍りついたが、「アマチュアの天文愛好家で、自分の望遠鏡だ」、と解ると、「次はカルネを使いなさい。」で大丈夫だった。ほっと一息。ただし、Fragile、天地無用のマークは、やはりホノルルでも全く無力。逆さになって、普通の荷物と一緒に「どかーん」と出てきた。羽田では、キャスター台車で丁寧に運んで出してくれるのに。
さすがにこんな荷物で旅行する人はあまりいないせいか、行きも返りも私の全ての預け荷物は開封・チェックされて、写真・右の紙が挿入されていた。
滞在は、2ベッドルーム(ただしベッド3台)、2バスのコンドミニアム。洗濯機から台所、食器全て揃っている。ベランダは、ゴルフ・コースに面していた。ここにエキストラ・ベッド(要外注。英語ではrollaway bedという)を1台入れた。といっても、お決まりの連絡ミス等々あり、何とか当日には間に合った。午後5時にチェック・イン。近くのレストランで軽く祝杯を上げた。明日は、高度3600m以上。言うまでも無く、深酒は危険だ。
観望日程
観望は3日予定した。初日の予定は、16時にホテルを出発し、17時にオニヅカ・センター着。高地順応1時間の後、18時20分観望地(3600〜3700m)着。機材を広げ、18時50分頃から観望開始。21時20分に片付け開始で、22時までにオニヅカ・センターを通過し23時にホテルに戻ってくる、という7時間コース。観望時間は2時間半。
2日目の予定は、15時30分にホテルを出発し、16時30分にオニヅカ・センター着。高地順応1時間半の後、18時20分観望地(3600〜3700m)着。機材を広げ、18時50分頃から観望開始。21時20分に片付け開始で、22時までにオニヅカ・センターを通過し、次の観望地へ向かう。1時50分に片付けを開始し、3時半にホテルに戻ってくる12時間コース。観望時間は2時間半+約3時間。
3日目の予定は、15時30分にホテルを出発し、16時30分にオニヅカ・センター着。高地順応1時間半の後、18時20分観望地(3600〜3700m)着。機材を広げ、18時50分頃から観望開始。21時20分に片付け開始で、22時までにオニヅカ・センターを通過し、次の観望地へ向かう。0時に片付けを開始し、1時半にホテルに戻ってくる10時間コース。観望時間は2時間半+約1時間半。
4日目は、申し込んでいたすばる望遠鏡の見学許可が下りたので、午前に見学し、15時の便で帰国、というもの。7時半にホテル出発し、見学は10時から約1時間。ホテルには12時半に戻り、13時チェック・アウト、空港へ、という、ちょっとハードな日程。
なお、当然ながら、天候によっては1〜3日目の日程を入れ替えるかもしれない、とした。私個人は、3日連続徹夜でも大丈夫だが、3600m以上となると、そうもいかないし、友人のドライバーの体力もある。結局、観望3日目は、友人から紹介してもらった、個人のハワイ・ガイド(ワンボックス所有)に頼む事になった。
観望1日目(10月11日) それは、空前絶後の空での体験だった!
マウナケア方面は曇り。山頂にも、しっかり雲がかかっていて、見えない。しかし、ハワイ島在住の友人によると、多分大丈夫でしょう、との事。途中雨だったが、2000mを超えてくると晴れ間が 覗いてきて、コントラストが恐ろしく良い風景が展開してくる。こんなモヤの無い風景なんて、日本では、ほとんどお目にかかれない。 車の窓越しで撮っても、この写真(画像処理一切無し)。こりゃあ星が良く見える訳だ。見えない訳が無い。
オニヅカ・センターでは、銀剣草を見る事ができるが、そこには絵になる樹が沢山あった。星景写真にいいかもしれない(定番過ぎるかな)。
2800mで、既に雲は眼下にある。しかも、地平線以下である。つまり、視界は地平線0°以下まである、という事だ。高地順応を終え、山頂に向かった。ああ、もう日没が迫っている。雲と太陽が織り成す空に感動。しかし、この薄雲は消えてくれるだろうか。幸い、3700mの所に落ち着いて観望できる絶好のポイントがあったので、そこで設営。急がないと、観望時間が短くなる〜!
設営 (ハワイの友人撮影)
いつもなら、ミラーの温度順応を除けば30分もあれば余裕で観望可能な状態まで設置できるけれど、何だかんだで45分位すったもんだを繰り返した。 風がそれなりに吹いていたので、シュラウドは外した。3700mは息切れもほとんど無く、余裕で動ける。ありがたい。さて、いつものようにヴェガで較正。まだ地平線は青いけれど、M57 をチェック。久々に青いM57 を見た。驚いたのは、近傍のIC1296 の銀河。手裏剣のように広がっている2本の腕が、はっきりと見える。何なんだ、この空は! ああ、どうしよう。何から見たらいいんだ!?
この日の為に、マウナケア専用のガイドブックを編纂してきたのだが、一瞥もせず、超メジャー天体巡りを敢行した。だって、いつも見えない光のシミをチェックするより、見慣れたメジャー天体がどう見えるのかの方がずっと興味があるでしょ。
とはいうものの、まずは低いさそり座へ向かった。アンタレスBは、シュラウドを外しても風で揺れて、ちょっと見づらかった。M4 に続き、天体写真で有名なへびつかい座のρ Rho Ophiuchi Nebula へ。色こそ無いが、ガスの広がりがそのまま見える。M80 に立ち寄った後、M7-8 の南側の散開星団が、どうにも高度が低くて、Cat's Paws Nebula: NGC6334、 NGC6357、IC4628 はパスして、いて座へ。
いて座は、まずは球状星団巡りから。M54、M70、NGC6352、M69、NGC6624、NGC6569、NGC6558、NGC6528、NGC6522、NGC6553、NGC6544 などなど。背景が黒いし双眼効果もあって、毛玉のような粒々は快感。いつもはM55、M22、M28 から始まるのに、なぜか抜けてしまった。で、お待たせのM8 干潟星雲へ。見た瞬間、ガスの広がりの大きさに驚愕。日本だと、写真で見る赤いガスの濃い所だけが見える感じだが、その周囲に広くガスが広がっているのが、はっきりと見えるのである。さすが3700m! 空気・水蒸気でブロックされないと、こんなに散光星雲が見えるのか! 背景はどこまでも暗く、シュラウドが無くても、コントラストも抜群だ。
こうなると、隣のM20 三裂星雲は? ガスが広がりすぎていて、最初、倍率の把握を間違え、三裂の位置に戸惑った位だ。フィルターをいろいろ差し替えて見たけれど、どの散光星雲も、そのままで十分 はっきりと存在がわかる。周囲の散開星団を見るのももどかしく、M17 オメガ星雲へ。ここも白鳥の体〜尾の周囲に広大にガスが広がっている。ああ、何と素晴らしい散光星雲! M16 わし星雲へ行く前に、M21、M23 をチェック。南天で見るりゅうこつ座の散開星団のように、星間ガスが見える! 散開星団なのに、蛙の卵状。M16 わし星雲も全く別物。
ハワイの友人撮影
明日は晴れる保証も無く、今日は初日で観望時間も短い。急いで他も見ないと! で、いきなりアルビレオへ。二重星なんて日本でも見れるから、と重視していなかったが、空がいいと、こんなに色がきれいに出るのか! でも考えてみれば、地上風景があんなにコントラストがいいんだから、当然か。
そうこうしている内に、114中野さんが、北アメリカ星雲を見せてくれた。彼の双眼望遠鏡は、この星雲の全景を見事に見せて(魅せて)くれる。この18番、圧巻! わざとらしいピンク色の写真なんかより、ずっとこちらの方が星雲らしく美しい。今度はfmasa君が、Zeiss APQ でM45 プレアデス星団・すばるを導入。これが、物凄い。きりりとしまった刺すような青い星に、青い星雲が取り巻いているのが絶品! 今まで見たガスは、夜露と大気の水蒸気でガス状に見えたようなものもあったけれど、これは、紛れも無くきれいな星雲だ。こんな昴、見たこと無い。これ、相当衝撃で、3夜、各自何度も導入して見比べる事となった。
ああ、ここで時間切れ。非常な宣言「撤収〜!」。しかし快晴である。ここは1日目と2日目を入れ替えて、観望を続けよう、という事になった。そこで、オニヅカ・センターから車で20〜30分程で行けるマウナロアへ向かった。標高2400mの地点に広く平らな場所を見つけたので、ここで再び機材を広げ、23時50分に観望開始。 ところが、「あれ〜、見えない!」と一斉に声が上がった。マウナケアは、気温1〜2℃だったけれど、ここは7℃と暖か く、しっかり結露したのであった。各自車の暖房ヒーターであぶって復活。
残された時間は2時間。そこで今度は、秋のオールスターズ。網です、お〜! アンドロメダです、お〜! M33 です、お〜! 二重星団です、お〜!ってな具合。 中野さんのカリフォルニア星雲も濃い。M2、30、15、NGC7009 土星状星雲、NGC7293 らせん星雲や、ちょうこくしつ座のNGC55、NGC253 Sculptor Galaxy、NGC288、NGC247、NGC300、そして、ぎょしゃ座、上ってきたオリオン座を観望していたら時間切れとなって、再び非情の「撤収〜!」宣言。 地平線からは、カノープスがきれいに顔を出していた。あんな出方は、他ではちょっと見れないなあ。満天の星空なのに、片付けるのはつらい。ホテルに戻ってきたのは3時半過ぎだった。
衝撃と感動で、頭がジンジン。マウナケア、マウナロアは、我々にとっても聖地だった。心より感謝! マウナケア、凄かったね〜と会話も弾み、寝たのは5時頃となった。
観望2日目(10月12日) 再び3700mへ!
今日は、観望2日目だが、1日目のプログラムと入れ替えたので、短め。観望地にはトイレが無いので、3日間とも昼にしっかり食事をし、夜は観望の合間に軽食を取るようにした。今日の昼は、ワイメアにある有名なレストラン Merriman's へ。
今日も、昨日と同じ3700mのポイントで観望する事にした。 さて、今日は、知り合いになった国立天文台ハワイ観測所:すばる望遠鏡に勤務する沖田さんと一緒に観望の予定だ。天文学者、というと、あくまで天体は研究対象であって、望遠鏡で観望を楽しむ、という方は少ない、という印象を持っていたが、彼は自作の40cmドブでスケッチをする、という。しかも、60cmドブを計画中、との事。この空で40cmドブで頻回に見れるとは、何ともうらやましい! 60cmなら、いったいどんな世界が展開するのだろうか!?
マウナケア方面は雲が多く、途中もしっかり雨。これで星は見えるのか? しかし、雲の上に抜けると昨日同様、コントラストが恐ろしくクリアーな地上風景が展開してきた。山頂に向かう途中は砂利道で、振動が物凄い。私のドブは、驚くほど毎回光軸が大幅に狂っていた。もし、頻繁に行くような事になるなら、毎回ミラーは外して運搬した方がいいかもしれない。砂利道の途中、右側には、なだらか、かつ起伏に富んだ地面に、石がごろごろと一面にある風景が広がっていた。そう、まるで映像で見た火星そっくりだ。実際、火星探査機のテストもここで行われた、という。擬似惑星旅行を楽しんだ後、観望地3700mに辿りついた。
ハワイの友人撮影
昨日は、観望時間を削るのが惜しくて、ほとんど写真を撮らなかった。でも、せっかくSWAT-200 を持ってきたので、今日はG1 X Mark II のタイムラプスと共にセッティングした。しかし、撮影が2分、とかになるとバルブ撮影なので、カメラにつきっきりとなってしまう。結局3枚だけ撮って、やっぱり観望に集中した。
写真には、ドブソニアンが2台写っている。正面が沖田さんの40cmドブで、右側のが私のもの。幸いハワイの友人が、いろいろと写真を撮ってくれていたので、ありがたい。なぜか昨日見忘れたM55、M22、M28 から始まり、今日もメジャー天体巡りだ。昨日の鮮烈な体験が忘れられず、結局同じものを反芻して見ていった。ただし、今日は少し空がグレーで、エアロゾルがありそう。とはいっても、物凄い空だけれど。それにしても、本当に見慣れた天体でも惚れ直す空だ。中野さんのEWV 32mm を借りてアンドロメダを見れば、M32 とM110、 そしてM110 の間の暗黒帯2つが同一視野に、まるで宇宙船の窓から見ているように見える。NGC7331 とステファンも持って帰りたい位だ。
そうこうしていたら、スケッチをしていた沖田さんが、M57 の中心星が見えた、と声を上げた。私も「見えるかな?」と期待して見ていたけれど、ダメだったやつだ。さっそく皆が彼の望遠鏡に殺到した。倍率は480倍(NAV-7SW + EiC-16)で、パラコアは、フォーカサーに内蔵されているStarlight Integrated Paracorr System (SIPS) を使っている、という。彼によると、TeleVue のものは、回転にガタがあって、光軸がずれる、という。しばらく見ていたら、時々チラッツ、チラッと中心が光って見えた時があった。これか? しかし、光って見えた時の明るさが、意外と明るいのである。心眼の可能性もあり、私の場合△印、といったところか。
思いっきり手抜きのの写真(恥ずかしくて、これ以上大きく掲載できない...)
今日も中野さんが北アメリカ星雲とペリカン星雲を入れている。皆で、お〜。fmasa君は、APQ で 、今日のすばるを見せてくれた。これは今宵は意外と冴えない。星雲の青さが昨日ほど無いのだ。という事は、昨日はマウナケアでも極上の空だった、という事なのだろうか。とはいうものの、やはり星雲の広がりは格別だ。
マウナケア専用のガイドブックには目もくれず、空を流していった。しかしながら、本当は、一つの天体をじっくり見たい思は強い。ちゃんと観察しないとスケッチは書けないのだ。天文旅行記だって、このように文章にしてまとめているから、自ら読んで記憶を反芻するから忘れないし、観望も一緒だと思う。でも、時間も、ゆとりも、無い!! いつか、そのような日を迎えたいものだ。沖田さんは、学生の時に、研究の為に南極に2度、しかも3800m(ドームふじ。ただし白夜の時期との事)を経験している、という。また、ナミビア砂漠近くでは、エアロゾルがほぼ0で、ここも物凄かった、という。そして、今はマウナケアに通っていてスケッチをし、今度は60cmだ。まだ30歳だ、というのに、世の中には凄い人がいるものである。
ああ、そうこうしている内に、「撤収!」。しかし、明日は総行程10時間コースの後、明後日は早朝出発のすばる望遠鏡見学も控えている。満天の星の中、片づけをして帰路に向かった。降りてくる途中、何か赤いものが見える。何と、キラウエア火山のハレマウマウ火口が見えたのだった! ハワイ在住の友人によると、なかなか見れない、との事。どこまでもラッキーな一行であった。
この下の写真2枚は、2013年5月撮影
今日も、聖地:マウナケアに心から感謝。もう、ハワイ島、大好き!
観望3日目(10月13日) マウナロア:3400mへ!
中野さんは、天文歴50年のベテランだが、ドルフィン・スイム歴も10数年。夏は天文ではなく、御蔵島に通う、という。今日から明日にかけてハードなスケジュールなのに、朝7時に起きて、ドルフィン・スイムに出かけた。現地のインストラクターが目を丸くして驚いてしまう位の凄い泳ぎを披露したらしい。中野さん、現地でインストラクターやって、我々をマウナケアに連れてって下さい!
私、といえば、こういった時には、ナチュラル・ハイになるのであろうか。毎日2〜3時間睡眠が1週間以上続く。この日も5時に覚醒してしまった。そこで、せっかくこの日の為に編纂してきたマウナケア専用ガイドブックを見直して、作戦を立てた。
最初は、とんでもない量の天体をリストアップしていた。しかし、あれでは1つの星座を制覇するのでも、1晩あっても足りない。そこで、けっこうダイエットしてみたのだが、それでも相当な量だ。それをさらにピックアップしてみた。はたして今晩は、どの位見れるのだろうか。
中野さんはドルフィン・スイムに出かけたが、我々は、ホテル近くのビーチに出かけた。といっても海には入らず、撮影だけ。ホテルの周りは溶岩だらけで、やはりここは火山島だ。マウナケア山は晴れ渡っていて、山頂の望遠鏡も4基ほど見える。北のコハラ山も雲一つ無い快晴。最初、3晩とも晴れなかったらどうしよう、と弱気だったが、今や晴れ以外、考えていない。そういえば風邪気味だったのに、ハワイに着いた途端、吹き飛んでいて、忘れていた。
さて、今日はハワイ在住の個人ガイドのワンボックス車で遠征だ。プロのガイドがマウナケアに入るには許可が必要で、確か7社だけだったと思う(個人が自家用車等で行くのはOK)。しかも、ここ何年かは、追加許可も下りていないはず。だから、今日はマウナケアには行けないし、仮に行けたとしても、22時を挟んで移動する時間ももったいない。という訳で、今日はマウナロア、しかも行ける最高地点が目標だ。以前は道が相当悪かったようだが、今は全部舗装されている。舗装、といってもアップ ・ダウンがきつくて、1人は車酔いで嘔吐していた。また、溶岩台地の細道なので、もし横道に反れたら、良くてパンク、横転したら廃車のリスキーな道でもある。2日間の感じから、今日は高地順応の休憩は取らず、一気に3400mに到達した。
写真右は、中野さんの双眼望遠鏡をiPhoneでコリメート撮影したもの。iPhoneがもっと高感度に強くなり、これで超お気軽天体写真の日も遠くないか。
マウナロア3400m地点は、ちょうどマウナケア山と向き合っていた。すばる望遠鏡をはじめ、ズラリと望遠鏡群が見える。これを中野さんの双眼望遠鏡で見ると、サンセット・ツアー客までも認識できて、これまた真骨頂。明るい内からいろいろ準備ができるのはありがたい。と言っても、G1 X Mark II のタイムラプスの設置は暗くなってしまって、丘を少し下ろうとしたら、平坦だ、思った道が、けっこうな坂になっていてよろけ、危うく尖った溶岩に転倒して、大怪我をする所だった。しかも3度も。星景写真も命がけで、こりゃあ熟練が必要だ。
辿りついた地点は、マウナロア観測所の真下の駐車場。電線もあり、完全に360°見渡せる訳ではないが、アスファルトなのはありがたい。といっても、そこそこ傾斜があって、水平レヴェル調整用として使っている三角形のドア・ストッパーが活躍した。実は、2度のマウナケアで、ミラーにはうっすらと茶色い砂埃がかかっていて、ホテルに戻るとしっかり結露していた。毎回、水をかけて砂を落とした方が、ミラーへのダメージは少ないかもしれない。18時40分で気温3.8℃、湿度60%。ただ、結露は一切無く、観望は快適そのもの。
例によってヴェガで較正して、今日はりゅう座のM102、NGC5807、NGC5879、NGC5907 からスタート。残念ながら角度の関係で、おおかみ座の美しい二重星Cerbens η Lupi、M51、Nickson 68、M101 は見れなかった。
千葉のKさん撮影
続いてさそり座を一周した後、みなみのかんむり座のNGC6727、6726、6729 の散光星雲とNGC6729 とγ CrA の間・南西側に広がる暗黒星雲Fest 1-446/7 を堪能。やっぱりここも星雲の見え方が抜群だ。日本だと、星雲は良くて小さくショボく見えるだけで、どこが暗黒星雲だかわからないが、ここでは「暗黒星雲」として「見える」。NGC6723 を経由してへび座へ向かったが、時既に遅し。NGC5921、6118、Seyfert's Sextet NGC6027 A-E は見れなかった。もっとテンポを上げないと、どんどん沈んでしまう! へびつかい座の定番観望の後、中野さんの双眼望遠鏡で、The Snake Bernard 72 S字状星雲を見せてもらった。で、急いで、いて座を一周。ここの散開星団は、Kowa Prominar TSN-883 で堪能。本当に優秀な屈折望遠鏡だ!
続いてたて座を経由してヘルクレス座へ。M13 の近傍のNGC6207 は、全く普通に銀河としてしっかり見える。また、個人ガイドの彼には、ここの美しい二重星、95 Her と Rasalgethi を紹介。きれいだ、と感激していた。ここで再びりゅう座へ戻り、NGC6543 Cat's Eye Nebula、NGC6503、アステリズム/ミニ・カシオペア(HD172922 の辺り)、UX Dra (Carbon Star) を観望。マウナケア専用ガイドブックは、パート8まであるのだが、ここまででパート1。こりゃあ無理だ。
千葉のKさん撮影
今晩も中野さんの北アメリカ星雲を見せてもらった。というのも、この星雲とそのすぐ周辺だけで、NGC7000、Collinder (Cr) 428、B353、Barkhatova (Bark) 1、NGC6996、NGC6997、Birds’ Nest、Little Orion、LDN 935、IC5070, 5067-8、IC5068A, B, C、NGC6991、IC5076、NGC7026 とあるのだ。でも、これまで見た中でダントツで見事な北アメリカ星雲とペリカン星雲を見たら、細かいところはどうでも良くなってしまった。
中野さんのEWV 32mm を借りて見てみると、星雲の広がりが、本当にきれい。ここでは、18”ドブでもすばるは感動をもたらす天体だった。fmasa君の APQ のすばるは初日と同じ素晴らしさで、再び皆が釘付けとなった。
観望時間のリミットが迫ってきた。でも、網・絹は外せない。ここではOIII でも暗くならない。はくちょう座のGamma: IC1318 も明るい。マウナロアも散光星雲天国だ。この辺りを一周した後、わし座、や座、こぎつね座、そして秋の星座へ。
もう、最後の5分を切った。ああ、どうしよう。アンドロメダとM33 を見た後、個人ガイドの彼に感謝の意味を込めて、美しい二重星 Almach を紹介。ここは、二重星も、ほんとうに綺麗だなあ〜 「撤収!」 ここも聖地だ。心から感謝。
ホテルに戻ったのは2時近かったと思う。明日は、すばる望遠鏡見学のために7時半にはホテルを出なければならないが、見学から戻ってきたら、即空港へ向かわなければならないので、今の内に荷造りをしなければならない。とは言うものの、まずはちょっと一息。自分の撮った写真があまりに情けない、とディスプレイを見ていたら、千葉のKさんの写真、タイムラプスがあまりに凄くて驚愕。やはり本腰を入れると、こうも違うのか。お気軽G1 X Mark II のタイムラプスも、何だかなあ〜、になってしまった。
最終日(10月14日) すばる望遠鏡見学!
2013年5月撮影
一般見学日ではなかったが、正式な手順で見学を申し込んだら、許可が下りた。しかも、沖田さんが自ら案内してくれる、という。沖田さんは、すばる望遠鏡の望遠鏡エンジニアリング部長、つまり、望遠鏡本体と観測ドームの責任者なのだ! まずは、ハレポハク中間宿泊施設から。オニヅカ・センターの少し上にある、山頂望遠鏡関係者の宿泊・食事施設で、ハレポハクとは、「石の家」というハワイ語。昔は溶岩石で建物を建てた事に由来し、外のトイレの壁が、その面影を残している。
玄関正面を入るとロビーがあり、ハワイ州の国旗と、山頂の天文台に関係している国の国旗が並んでいた。写真・右は、すばる望遠鏡のスタッフ・ルーム。
写真左:食堂 写真右:ビリヤード台があった(国際的)
さて、沖田さんからすばる望遠鏡の説明を受けた。すばる望遠鏡は、1980年代に建設準備が始まり、1991年に建設開始が始まっている。最先端の望遠鏡、と思われがちだが、実は20年前の技術の望遠鏡だ、との事。反射望遠鏡の原理は350年変わっていないし、ミラーも素晴らしいと思うのだが、運用のための膨大なセンサーとそのインターフェースが時代遅れ、との事。なるほど! 望遠鏡自体の説明は、ここ。
さて、いよいよ山頂へ。メイン・コントロール室には時間、温度14.6℃、湿度6.8%!の表示が。この望遠鏡を建てた時、ハワイアン様式の祈祷が行われ、その後、ヒロ市内にあるヒロ大神宮の神職による地鎮祭が行われた、との事。最先端の 望遠鏡なのに、そこが素敵だ。
ヘルメット、見学者である事を明確にする為の黄色いジャケットを着て、中へ! エレベーターから出ると、望遠鏡を支える巨大な円柱が顔を出す。
左の黄色い装置は、主鏡をメンテナンスするための移動装置。レールで移動していくと、上に巨大なスプリンクラーのようなものがあり、これは主鏡洗浄装置。水だけでなく、イソプロピル・アルコールも使う、との事。
沖田さんによれば、イソプロピルアルコールを使用するのはアルミメッキを溶かした後の脱脂(水との置換)のためで、塩酸でアルミを溶かしたあと重曹で洗浄し、その後、純水や純温水で洗浄、アルコールで置換して乾燥させるため。当然、汚水はタンクに貯蔵し、ヒロ市内の廃棄物処理業者に処理してもらっている、との事。
左側は、主鏡の蒸着装置(釜)、でかい。来年夏には再蒸着が予定されているらしい。すばる望遠鏡は、オイルでの静圧軸受で望遠鏡を浮かしている。そのオイルを冷却するのが、右側の装置。
望遠鏡をメンテナンスするための外周部分は、さながら工場のようだ。発電機はスバル製!
これが、望遠鏡の全景。主鏡のカヴァーの一部が開いているのは、アクチュエーターのメンテナンス中のため。ピラーも美しい(アルミと特殊鉄の合わせ構造の凝ったもの)。
左:カセグレン焦点に搭載する装置を運搬する専用台車。著名人のサインが書かれてあった。右:主鏡を冷却する装置。
これをバックに全員で記念写真を撮ったのは、いうまでもない。こんな巨大で重いものが、とてつもない精度で作られ、運用されているのだ。下に飛び出しているものは、カセグレン焦点に位置するニコン製のユニット。何だか、アポロの月着陸船みたい。
エレベーターでトップユニット階に昇ると、副鏡があった。左が可視光用カセグレン副鏡(1.3m)、右が赤外線観測用副鏡(1.3m銀ミラー!)。
さらに上へ登ると、主焦点の搭載ユニット交換用アーム(写真手前)が見えた。写真右は、トップ・リング10m。 中心には、あの8億7000万画素の主焦点カメラ:Hyper Supreme-Camがあった。あんなに大きなカメラだが、トップリングからみれば、普通のニュートン。
エレベーターには、ご覧のバケツが(山頂ではよく停電するので、これはエレベーターが止まった時用、との事。後ろにはマットも置いてあった)。写真右は、望遠鏡建屋の回転部分。ここから外に出て、望遠鏡の外を一周できる。
写真・左下は、電波望遠鏡を移動しているところ。写真・右下は、TMT建設予定地
正面。ここが開く。
ここで見学終了。帰りの飛行機があるので、ナスミス階の見学はできなかった。心配していた4200mでの見学。特に息切れもせず、歩き回った後でのパルスオキシメーターでのSaO2は89、と優秀だった、ミウラ・ドルフィンズでの経験が生かされて、満足 。すばる望遠鏡の見学が無くなる、という噂が絶えない。今回、見学できたのは、本当に幸運だった。
帰路
見学を終え、ホテルに直行。電光石火で荷造りして空港に向かった。ハワイアン航空のチェックインは30分もかかり大変だったが(ここでクレームを書くと白けるので具体的には書かないけれど、本当にオソマツな対応だった)、千葉のKさんと中野さんのANA便は、機長が怪我をして明日に延便、という。中野さんは、相当お疲れの模様。
それにしても、物凄く充実した4日間だった。初日は、マウナケアで観望した後、機材を完全にしまい、それからマウナロアへ行って再び機材を広げたので、2日観望した感覚だった。だから、我々としては、3日で4回観望したような充実感があった。そしてすばる望遠鏡の見学。これ以上の遠征は考えられない程、幸せな4日間。
一緒に行 ってくれた仲間と、たくさん情報をくれて我々をベスト・ポイントに連れて行ってくれたハワイの友人達、運よく出会えた沖田さん (このページをまとめるのにあたり、情報を沢山いただいた)、そしてハワイ島の聖地、マウナケア、マウナロアに、心より感謝!
ゲッコウ。ベランダにて。けっこう遭遇し、かわいい!
沖田さんによると、「一説には、緑色のやつは外来種で、ハワイ固有種は白色をしている。緑色は主に昼行性、白色の固有種は夜行性のようだ。
ハワイでは「ハッピーゲッコー」と呼ばれ、縁起の良い生き物とされている」、との事。
初日にこれを見たから、いい結果をもたらしたのかな?
*引用させていただいた千葉のKさんのタイムラプスはYouTubeにも投稿していますが、PCで見るのと比べると、相当画質・情報が落ちてしまっています。現在、もう少し良い条件でのup検討中です(私のsiteは既に容量オーヴァーで課金されています)。
今年は11月の開催で、山は美しい紅葉に彩られた。 7日、朝日に照らされた、お馴染みの鉄塔のある山。
今年も双望会に行ってきた。 早くも8回目だ。私は、第1回目はハイランダーで参加し、双望会と共に成長(
加速膨張)してきた。若い方から「うらやましい。」と声をかけられる 時もあるが、私が本格的に天文を始めたのは実質50歳からで、休眠から覚醒してから、たかだか8年程度の経験しか無い。見ていない天体も、まだまだ山ほどあり、私からすれば、若い内から天文を始められている方は、うらやましい限りである。結婚した当初は、¥1500のフライパンを買うか、¥2400のフライパンを買うかで、お店を3往復して悩んだ所からスタートし、家内は50歳になるまで、月2日休みがあるかどうか(しかも、夜も満足に寝られない激務)という、いつ過労死しても不思議の無いような生活を20数年続けてきて、夫婦50歳を過ぎてから、ようやく一緒に旅をする事ができるようにもなった。子供達も独立し、残された老後は未知数なので突っ走っているけれど、「これをやらずして死ねない。」と毎回言っている割には「なかなか死なない」のは、ありがたい。老眼も着実に進行し、腰痛に加え、再燃した五十肩がけっこうしんどい状況だが、普通なら軽量化に向かうだろうけれど、まだ本機ミラー・ボックス32sを持ち上げての移動は大丈夫なので、私は逆を行こうと思っている。 動ける内にやれる事をやっておかないと.... ん? どうなる事やら??
さて、機材紹介は専門家に任せる事とし、私は順不同 (というか、撮影順)にいくつか紹介。もちろん、これ以外にも沢山アイディア、刺激を受けているのは、言うまでも無い。
Civetさんの鏡筒が激変
無骨な(失礼!)ボイド管から、えらくかっこいいフレーム式となった。素人目からも、作りが普通でないのがわかる。聞けば、後述のにゃにゃにゃさん作、との事。鏡筒の右側には、ハーシェル・ニュートンとレンズレス・シュミット・ニュートンが同架されている。このあたりが、Civetさんの真骨頂。鉄・アルミのフレームには萌えるなあ。
ミラクルKさんの鏡筒の改造
ミラクルKさんが、あのAPM の鏡筒のバッフルを改造・置換した。APM の鏡筒のバッフルは、写真上左のように、これでもか、という位丁寧にバフリングされている。反面、筒内の空気の循環が妨げられ、温度順応の点からは不利となる。そこで、取り付け位置以外の部分にスリットを設け、空気の循環を良くしようという意欲的な試みだ(写真右上)。Zeiss の鏡筒で似たような機構があったと思う。
しかし、同位置でスリットがある、という事は、その方向でのバフリング効果は弱くならないだろうか? 1枚ずつスリットを開ける場所を時計回転方向(もしくは逆回転)にずらしていけば、気流は回転して筒内を循環するので、効率は良くなるような気がする。しかも、バッフル効果は失わない。これ、どの望遠鏡メーカーもやっていないと思うので、是非、どこかのメーカーが試みてほしい。もし、これが効果を発揮するなら、ここにアイディアを明記したので(K式バッフルと命名 - ミラクルK & K Nebula)、これをどこかのえげつない人間がアイディアを盗んで特許、実用新案などを登録せず、この方式が広まって欲しいと思う。
きたかるさんコーナー
Lavendura 旋風のきたかるさんは、今年は20cmf/10のニュートンを持ってきた。筒のカーボンも自分で巻いた、との事。当然、ミラーも自分で研磨。私の場合、アンプ等は完全自作。市販品の、どんな高価格品よりも良いものができるからで、他にも自分で設計、図面を引く事も多いけれど、望遠鏡の場合は、いつも完成品のモディファイばかりだ。双望会では、いろいろと自作する方が多く、 毎年見るのが楽しみだ。写真左上の手前の赤い屈折は10cmのクオリティの高いもの。これから輸入・販売の予定らしい。
アイピースは、Lavendura
シリーズとRPLシリーズ。彼の作るアイピースは、「視野の広さではなく、像の歪みの無さとヌケ」を追求したもので、コンセプトが明確。全部を叶えようと中途半端なものではなく、一つのものに特化して製品を作る姿勢が素晴らしい。
Lavendura
63mm、50mm
は、114中野さんの鏡筒をお借りして、紅葉の山肌を散歩し、しばらく楽しませていただいた。写真・上は、その時のコンデジでのコリメート撮影。
ご対面
ヒデさんが、お譲りしたPST双眼で参加された。2年ぶりの対面! 丁寧にお使いいただいていて、 とても嬉しかった。ただ、曇っていて太陽を見れなかったのは残念!
初日の夜は、NAV-12.5mm+EiCに驚喜
最も溺愛しているNAV-HW 17mm にEiC を装着すると14mmになり、12.5mmという焦点距離に近い。そんな訳で12.5mmは購入する事も無く、Docter UWA 12.5mm を愛用してきた。しかし、マウナケア遠征に向けて準備をしている時、17mmがあんなにいいのだから、12.5mmが悪い筈がない。これを実際に見ずしては死ねない、という思いに至り、 入手するに至った。
APM双眼望遠鏡で月を見て、アペニン山脈の切り立った斜面の描出や直線壁のレリーフに惚れ惚れ。やっぱりNAV-HW シリーズは凄かった。驚いたのは、EiC を装着した10mm! このシリーズは102°という広視野が売りだけれど、解像度、コントラストが卓越しているだけでなく、色も良く見える。で、この10mmにも惚れ惚れ。ただし、TeleVue のアイカップを装着しないと、そのままでは使えない。
で、やっと今回本機でチェック。12.5mm + EiC ; 10mm が凄かった。M15 の分解能、周辺まで刺すようなシャープな星像に驚喜した。よって、Docter UWA 12.5mm 2本とLeica Vario Zoom ASPH. 17.8-8.9mm 1本は友人の所に渡る事となった。NAV-HW シリーズ + Powermate 2× で、相当な範囲をカヴァーできてしまう。
2日目の朝
AstroArtsのsiteより引用
初日の夜は、0時頃まで観望を楽しんだが、その後曇ったので寝てしまった。「良く見えていましたよ。」というinouさんの声で目が覚めて、急いで外に出た。5時半頃か。日の出前は、なかなかいい風景が観れるのだ。いろいろな鏡筒で、月と木星を堪能。天体を見る楽しみと、望遠鏡・アイピースを楽しむための天体。両方楽しめるところが長続きする理由の一つかな。
okaさんのシーロスタット
双望会でも、Solar Star Party は定番のメニューとなった。特に、初日の受付開始前の観望は恒例(一番晴れる)。okaさんは、20数年前に購入したシーロスタットを展示。2012年に展示したものより小型となった。右側の白い棒は、パラソル。日陰で太陽が楽しめる。実際に観望する時には、顔の前に遮蔽板を装着。双望会の素晴らしいのは、多様性だ。いいろいろな考えで、いろいろなアプローチがあって、いろいろな機材があって、画一的で無いのがいい。
にゃにゃにゃさんの22”反射双眼望遠鏡
今回の双望会の目玉の一つ。以前から、ウワサの望遠鏡。55cmの反射双眼って、いったいどんな世界なんだ!? 彼は、2日目から参加。午後に到着し、望遠鏡組み立てショーには当然人垣ができた。というか、ほとんどの人が集まったので、機材紹介は、組み立て後、ここから始まった。それでは、組み立ての模様を紹介。
双望会の最大口径:66cmは、やおきさんの軽自動車で運ばれる。そして、この最大双眼口径55cm×2も軽自動車だった。今は、高さ190cmの軽自動車もあり、凄い事になっている。アメ車は、図体はでかいのに車内は恐ろしく狭いものも多く、少しは日本の軽自動車を見習ったらどうだ、と思う。本体 は電動ウインチで下ろす。ミラー・ボックス内にトップリングが納められていた。
キャスター・ジャッキでミラー・ボックスを持ち上げ、水平回転軸ユニットを挿入。トラス棒を固定し、トップリングを装着。水平回転軸ユニットの下にあるプラスチックのジャッキは、住宅床用のもの、との事。
双眼視用ユニットを装着。ここで、おしりにバーコードが張ってあるのを“専門家”が発見(写真右端)。携帯で読み込んだら、「オシリ見ないで! エッチ」と出た。まんまと罠にはまった我々であった。
ミラーを見せて、とリクエストしたら、皆が一斉に覗き込んだ。で、何が凄いかって、設置の動きに迷い、無駄な動きが全くないのだ。時間にして20分少々?
まさに望遠鏡組み立てショーだった。
その後、曇り→雨で、楽しみにしていた55cm反射双眼は、来年まで(?)お預けとなった。夜は、雨なので、宴会。いろいろな熱い意見が飛び交って、空は見えないけれど、それはそれで有意義。ただし。疲労+アルコールで、けっこう意識が飛んでいた。
今回、とっても嬉しいことがあった。それは28年ぶりのキャッチボール。昔からキャッチボールが大好きで、子供の頃は、ボールが見えなくなる頃までやっていた。仕事を始めて遠のいて、いつもやりたいなあ、と思いつつ、こんなに月日が経ってしまった。相手をしてくれたのはutoさん。でも、再燃した 五十肩がひどくて、1球投げる度に激痛が走る。肩が痛くても、もう少し投げれるか、と思っていたが、だめだった。ボールはへなちょこでも、とっても嬉しかった。まじめに肩を治さなくては。
来年も行こう。さらに加速膨張か? あるいは静止する宇宙か? それとも減速??
初日、会場入りする前の昼、会場の近くのそば屋:茶禅一に立ち寄った。突然、TVのロケが行われ、隣のテーブルで、東MAXさん達が蕎麦を食べ出した。機関銃のように、次から次へと褒め言葉が出てくるのに、仕事とはいえ、凄いと思った。この模様は、12月に東海地方で放送されるらしい。
写真は帰路の同店の前。ここは、雲海で有名な所。日本の田舎は美しい。
答え:Q1(M10。へびつかい座の球状星団) Q2(M17。いて座のオメガ星雲)
続く...
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