Obsession 18" f4.2 UC  その3&4
大口径なのに、移動はこんなにコンパクト!

  公開:2011年7月23日〜
更新:2011年9月27日 *ななつがたけ北天文台へ
行ってきました を追加

光軸調整中

いざ、富士山へ

  今年(2011年)の梅雨明けは早かった。絶好の空が続いていたが、あいにく満月に向かっていて、遠征deep skyはお預け。そうこうしている内に台風6号がやってきて、横浜は無事通過。その直後は晴れが期待できるが、次の週末は、土曜、日曜もフルに仕事だし、次はいつ晴れるかわからない。7月21日(木)は夕方から時間が作れたので、気流はダメなのは承知の上で、 しかも月が出るまでのたった2時間半程度の観望だけれど、富士山・新五合目に向かった。だって、本体が届いてから7ヶ月も待ったのだから...

 横浜を出る時、まだかなりの曇りだったし風も強かったが、天気予報通り、新五合目は晴れで無風。ただし、上空の気流は相当速いようで、土星は高倍率では見れない。でも、双眼装置で、135倍、実視野0.5°はOK、そこそこ楽しめる。数日前、木星を見たが、Zeiss Abbe II 4mm(476倍、実視野0.1°)での素晴らしい像が記憶に新しかったので、残念ではあった。

 導入装置 Argo Navis 初始動。ところが、最初のキャリブレーションからして誤差大! 幾度もやり直し、天体を導入してさらに校正を加えても、全く違った方向を向いている。エンコーダーはきちんと動いているのは確認したつもりだったが、いつまでもこれに関わってはいれないので、スイッチを切った。これから原因究明をしなくては 。

 観望時間は長くて2時間半しかなく、ところどころ雲もあるので、急いでメジャー天体を見てみた。メジャー天体なので、個々の描写は省略するが、流石は大口径で、これでないと見えない世界が次々と展開する。一番驚いたのがM57。覗いた瞬間、声が出てしまった。ガスの輪が青い! 色付きなんて、全く予想も考えもしていなかった。色は、双眼装置で一番良く認識できた。これは大口径・銀ミラーならではの世界かもしれない。

 さそり座、いて座は、大口径を持ってしても、南天の空のようには見えない。やはり、第一番に空、機材はその次だ。台風直後で平日、という事もあり、展望台より少々下の所は車が1台も駐車しておらず、広々と機材を広げていたが、月が顔を出す10時頃には満車近くなり、早々に撤収して帰路に向かった。それにしても、重くて組み立てが面倒でも遠征する価値は十分ある。労働対効果が得られるので頑張れるが、それにしても主鏡ユニットは重い(33s)。いつまで持ち上げられるだろうか。

 実際に観望を重ね、ファインダーの位置等に大いに改善が必要なのがわかった。しかし、とりあえず組み立てについて、掲載した。

  

組み立て

 まず、地面に毛布、シートなどをひいて、その上に鏡筒ベースを置く。

 左側にエンコーダーの取り付け部がくるように置く。

 水平回転軸のエンコーダーにケーブルを接続(長い方が水平回転軸用)。

 四方のゴム・バンドは鏡筒固定用。少々の風でも倒れない。

 ミラー・ボックスを載せる。エンコーダー取り付け部が同側(左)になるように注意。    アームを広げてクランプで固定。
 ミラーのファンに通電。
 

 観望の時はスイッチを切り、微細振動による像の劣化を防ぐ。

 トラス・ポールを軽く固定する。

 上には袋を被せておくと、先が広がらず安全。

 袋を被せておかないと、突然、先端が開いて危険な場合がある。

 鏡筒トップ・リングを軽く固定。それから全てのネジ・ノブ(上下3箇所)を少しずつ締め上げる。

 フォーカサーは、鏡筒の右側に立って見る方向で、ORIONとは逆。

 斜鏡の保護カヴァーを外し、ヒーター電池を仕込む(ケーブルの接続はまだ)。

 写真は、斜鏡保護カヴァーを主鏡カヴァーの上に置いたところ。

  主鏡のホコリをブロワーで吹き飛ばし、光軸調整。終わったら、再び主鏡にはカヴァーを被せる。

 ちなみに、移動の際は、カヴァーを付属のゴム・バンドで固定できる。

 シュラウドを被せ、上部を絞って固定。

 シュラウドのArgo Navis固定用穴に、ファインダー用クランプを固定(シュラウドの下から手を入れて行う)。

 *現在は、ファインダーの取り付けは、下記の方法に変更。

 主鏡のカヴァーを外し、主鏡の遮光フードを装着する。

 シュラウドの下をまくって、エンコーダー・アームを印刷された線に沿ってしっかり固定する。

 ケーブルは事前に接続しておいた方が良い。

 続いて、エンコーダー回転軸の固定アームを装着するが、実際に鏡筒を動かして最もストレスがかからない位置で緩やかに固定する。そうしないと、エンコーダーが空回りする。
 
 きつきても、緩くても誤差が生じるので、ここは最重要ポイント。

 シュラウドの下をゴムで引っ掛けて固定(5箇所)。

 後方は、ファイバー製の棒を本体に入れて固定する。

 全体像。  ファインダーを装着。

 *現在は、ファインダーの取り付けは、下記の方法に変更。

 ファインダーを装着し、天頂付近を向けると、ファインダーの重みで鏡筒が自然と起き上がってしまう。錘は鏡筒の上にもぶら下げ、バランスを取る。

 *現在は、ファインダーの取り付けは、下記の方法に変更。

   

  

ファインダーの取り付け位置の変更

  今までの取り付け方法だと、ファインダーが起き上がりこぼしのように作用し、錘を付けていても鏡筒が勢い良く立ち上がってしまうことがあった。やはり、重心はできるだけ前後方向に飛び出さないようにしなければならない。そこで、トップ・リングに付いている取っ手にクランプで取り付けてみた。この位置だと、ほぼ前後の重心からずれない。問題は、錘を下にぶら下げてバランスが取れるかどうか、だ。単眼の場合、用意していた錘 1.2s、4個でどの角度でもバランスが取れた。双眼装置の場合、さらに500g、2個追加で、バランスが取れた。最初に、この方法も考えていたが、どうせ重過ぎてバランスが取れないだろう、と思っていたが、やはり何でも試してみなければならない、と反省した。
 ちなみに、このファインダーは実視野が約4°あるので、このクランプでも光軸は合わせられる。

  

エンコーダーの取り付け方と誤差

  水平軸は、全く問題無し。ここがおかしい場合は、エンコーダーの不良だろう。垂直軸は、エンコーダー軸固定アームの装着次第で、エンコーダーにスリップが生じる。エンコーダーは回転する鏡筒側に装着していて、エンコーダー軸固定アームは鏡筒ベースに装着している。回転は真円ではないので、エンコーダー軸固定アームをしっかりきつく止めても、かといって緩すぎてもエンコーダーにスリップが生じる。加減は少々難しいが、毎回エンコーダーがきちんとパルスを送っているかどうか、確認して慣れるしかないだろうと思う。

 

ファインダーの取り付け方 (2011年7月26日)

  

  クランプを使った実験で、ファインダーがトップ・リングの位置で使える事がわかったので、これをスリム化した。クランプとクイック・シューで重さが535g、これをSLIK SBH-100DQ というクイック・シュー付きボールヘッド(130g)に置換するだけで、400gダイエットできる。また、スコープの固定も迅速で確実となる。手持ちのカメラ・ネジが20mmで、トップ・リングの厚みと同じだったので、ドリルでザグリを作成し、ボールヘッドを固定。スマートに装着できた。いつもは、アンプのシャーシー加工で苦労するが(ただし大変楽しい)、木だと、こんなに加工が楽なんだ、と驚いた。一つ困った事に、SLIK の製品には、全て 「大きすぎるSLIK という刻印」 がある点である。下品な事この上ない。今回は、テプラPROの黒色テープでマスキングした。この文字をふた回り小さくすれば、 大きい刻印を見ただけで購入を避けていた人も、購入する事になるだろう。同社は、これだけで随分損をしている。

  

ファインダーの取り付け方法の変更 (2011年8月11日)

  

 このボールヘッドは極めて優秀で、キュッと固定したら、微動だにしない。で、実際にフィールドスコープの光軸を幾度も合わせていく内に、フィールド・スコープの重みは、ボールヘッドをトップ・リングに固定している三脚ネジを緩む方向にダイレクトに作用し、次第にボールヘッドの固定が緩んでしまうのであった。テコの作用は凄い。

 このボールヘッドの底面はリブ状になっているので、ネジのタップが立てられない。そこで、ここにアラルダイドを流し込み、滑り止め用にネジを仕込んだ。底面をクサビ状に削って滑り止めにする方法もあるが、台形状の部分があると効果は激減するので、ネジを仕込む方が楽だ。写真上は45°おきに16本ネジを仕込んだが、実際の取り付けでは半量、8本に 減らした。

 

主鏡の左右のガタ対策 (2011年7月26日)

  主鏡は、ワイヤーで吊り下げる形で固定されている。左右の止め具は、主鏡落下防止のためで、主鏡との隙間が数mmある。従って、移動の際、主鏡は左右に1cmは揺れながら移動するし、光軸調整後も、ショックを与えれば光軸はずれる。そこで、東急ハンズで、ゴム製のドア・クランプ(\150)を購入し、これをカットして隙間に挟んだ。これまたスッキリ!

 *使っていると、いつの間にかゴムが外れている場合が多い。縦方向に挿入しても同様だった。使用していても主鏡が左右に移動する事も無いので、今は使わなくなってしまった(2011年11月26日追記)。

 

トラス・ポールの金属音対策 (2011年7月26日)

 

 トラス・ポールを固定する時、ポールが触れるとガチャガチャとうるさいばかりでなく、時々「キーン」と耳を直撃していただけない。そこで、エツミ マルチ・プロテクターS を上下、1本おきに巻いた。ポール径は25mmまで、となっているが、ギリギリ巻ける。これ以上、大きい必要は無いし、大きいと、価格もばかにならない。これまたスッキリ!
 今日は、3つも達成して、実に気分爽快。

 

Argo Navisとフィールドスコープのケース (2011年8月11日)

 

 フィールド・スコープには専用のケースもあるが、このケースは基本的に装着したまま使用するように設計されていて、着脱は面倒だ。ヨドバシ・カメラで、ノート・パソコン用ソフト・ケース ELECOM 16.4inch Wide \680 を見つけ、これを購入。純正接眼レンズや接眼フードも一緒に収納できるので、便利だ。また、Argo Navis は、HAKUBA のレンズポーチLにケーブルと共に収納する事にした。

 

Sky Surfer III も取り付けました (2011年9月4日)

  標準でテルラドが付いてくるが、これを見た後フィールド・スコープで追い込む時、ちょっと目の移動距離が大きい。また、この望遠鏡は左利き、効き目も左で設計されているので、テルラドは左目、ス コープとアイピースは右目、と統一性が無い。そこで、今はBaader Planetarium Sky Surfer III が¥2800と安いので(他社にも全く同じものがたくさん出回っているが、これが一番安い)、これをフィールド・スコープのすぐ近くに取り付ける事にした。
 私の場合、等倍ドット・ファインダーに
TC-E2 Bino を併用して使用するし、テルラドの場合は常にレンズ越しで見なければならず、暗い星が犠牲になる。できるだけレンズは小さくして、実際の空にぽっかり小さくドット表示できた方が導入効率が良い。

  Hobby's Wolrd では、ファインダーの取り付けキットが充実している。その中で、アイピースに取り付ける台座(写真左)や、ベルト式(写真右)が使えそうだ。しかし、小型ボールヘッドを介して固定するにも、Sky Surfer III の底部に取り付けプレートを用意しなければならない。国際光器の説明には、「望遠鏡用汎用取付けブラケットとアダプタープレート使用で、工夫次第、色々な鏡筒やスポッティングスコープなどへ取付けできます。」とある。しかし、アダプター・プレートにブラケットが「パチン」とはまるのかと思いきや、ブカブカで?? 同社に問い合わせたら、アダプタープレートはカーヴを合わせる役目しかなく、ネジで止めてくれ、との事。中途半端なブラケットには見切りをつけ、Sky Surfer V に付属していたスタンダード・クランプ 2457000A をフードに両面テープで取り付けた。このフードには照準器のラインが付いているが、これを下にしてちょうど反対側に取り付けた。

 

 これだと、Sky Surfer III からすぐにフィールド・スコープに目が移動でき、TC-E2 Bino の併用も可能。フードを回転させれば、Sky Surfer III の位置もちょうど良い位置に固定できる。欠点は、フィールド・スコープの光軸がずれると、一緒にSky Surfer III の光軸もずれてしまう点だ。本来は独立して取り付けた方が、イザという時に復帰が早い。

 といっても、今年の夏は空が無い。木星すら拝めない。早いところ、実際に見比べて検討したいところだ。 ちなみに、このフィールド・スコープをドブソニアンに取り付ける意義は、ファインダーだけではない。大口径ドブでは大きな散開星団や星雲は視野からはみ出して見ることができないが、その時は、この 口径88mmのフローライト屈折望遠鏡が活躍する。つまり、この望遠鏡は、全天をカヴァーできる驚異的な望遠鏡なのである。

 

Sky Surfer III の取り付け位置を変えました (2011年9月8日)

  実際に望遠鏡に取り付けて使ってみたら、ラバー・フードへの両面テープの固定では、ちょっと不安定だった。Sky Surfer III の光軸調整をすると、かえって微妙にずれる。上記の通り、テルラドは常にレンズ越しで見なければならず、暗い星が犠牲になるので取り外し、Sky Surfer III は、ここへ移動した。

 

  スタンダード・クランプは、余っていた植毛紙を介してインシュロック・タイで固定した。

  

木星が凄い !!! (2011年9月11日)

  関東地方は、やっと梅雨明けしたような暑さと空がやってきた。こんな時に限って月が眩しい。しかし、せっかくの空なので、APM-Bino M101 の超新星にチャレンジしてみた。我が家の北天は東京方面なので、とても明るい上に月明かりときては、流石に確認できなかった。しばらく時間をおいて、今度はObsession で木星を見た。大口径で空が悪いと星がお団子となり、とても見れたものではない。その点、APM-Bino はコンスタントに良い像を届けてくれて、実にありがたい。ところが今晩(9/10〜11)は、Obsession で見ても星がシャープな点像だ! さすが、どんよりした都会の空、またとない絶好の空。 いそいそと木星に望遠鏡を向けた。

 これは凄い! 濃い暗斑とNEB、SEBの複雑な模様がはっきり見え、南側のSTB、SSTB、中央のEB、北側のNTB、NNTB、NNTZがきれいに分離して見える。しばらくして大赤斑も顔を出してきたが、その渦の前後の模様までしっかり見えた。 衛星も点ではなく、しっかり大きさがわかる。アイピースは、Pentax XO 5mmTMB Supermonocentric 5mmZeiss ABBE II 4mm で解像度抜群なのだが、一番見ていて楽しく眼が離せなくなるのは、双眼装置 + Docter UWA 12.5mm。圧倒的に、これは凄い!! 肉眼で、望遠鏡で、しかも自宅でこんな素晴らしい像が見れるなんて、思いもよらなかった。 空が良いと、こんなに性能を発揮するのだ。感無量。本当にこの望遠鏡を手にして良かった...

 あまりに空の状態が良いので、少し散歩してみた。二重星もきれい。明け方になり、トラペジウムを見てみた。流石に明るくて雄大なガスはダメだけれど、薄い雲を通して見ても、余裕で6個にきれいに分離している。少しねばって8個まで行くかな?としばらく見ていたが、流石に明るいこの空では無理だった。そうこうしている内に、夜露の来襲と 共に星はお団子へ。

 今度は、フィールド・スコープの取り付けに改良点を見出した。近日中に変更予定。これから幸福に満たされてベッドへ向かう。

   

冷却ファンのプラグ・ケーブルを交換しました(2011年9月21日)

 

 ある時、冷却ファンに電源を接続しようとしたら、プラグが合わない。間違って、別のコードでもトランクに入れてきたと思いきや、何と本体側のプラグの先がすっとんでいた。運搬の時のダメージだろうか。今度は、オス・メスを逆にして、ケーブルも途中から交換した。今はファンは無くても大丈夫だが、これからは必需品だ。

 

レヴェリング・ボードを用意しました(2011年9月21日)

  

 今までの遠征先の地面はアスファルトで、ほぼ水平が保たれるが、双望会では、下は草地である。これでは、安定性が不安なので、シナ合板21mmを用意した。これに、ドア・ストッパーもかませれば、やや傾斜した道路でも、観望が可能となる。

 
2辺にストッパーを入れ、水準器(iPhone)で水平を出す。

 今週末は、ななつがたけ北天文台へ遠征だ。それまでにファインダーの取り付けを変更しなければならないが、その情報の掲載は、来週に。

  

ななつがたけ北天文台へ行ってきました (2011年9月26日)


夕闇のObsession 18" UC

 9月の連休の週末は、2回ともななつがたけ北天文台楓林舎で過ごした。私は、siteに掲載してある機材・全て(+α)を2週に分けて持って行ったが、そもそも、ななつがたけ北天文台には、ドームに常時7〜8本はメインの赤道儀に 同架しているし、販売店以上に望遠鏡・双眼鏡がゴロゴロしているし、さらに参加者もいろいろ持ってきたので、 けっこうな数の望遠鏡・双眼鏡(しかも、どれも優れもの)が並んだ。昼間だって、太陽望遠鏡が3種類。まるでミニ双望会のようだった。全てを見るのは、なかなか大変。写真を撮るのも忘れて活動していたので(というか、これを全部報告するのは無理)、上の写真1枚だけの掲載と相成った 。

 1週目は、月例19.0だったので、APM-BinoORION、そして双眼鏡全機種を持参したが、2週目は月も 隠れるので、Obsession 主体で伺った。1週目は、半袖で蚊に刺されながらの観望だったのに、2週目は、富士山仕様の防寒具で観望。一気に冬になった。でも、まだ寒さに震える程ではなかった。1週目は、ほとんど曇りだったけれど、それでも合間に楽しんだ。ななつがたけ北天文台のドームの鏡筒も一通り見せていただいた。どれも素晴らしく楽しいのだが、特に印象に残ったのは、Nikon 10cm ED (f 12)。高倍率の像に無理が無く、10cmなのに、M57 のリングの濃淡がきれいに見えた。今は長焦点の屈折は姿を消してしまったが、長焦点には、長焦点の素晴らしさがあるのを強く実感した。

 2週目は夜露が凄く、透明度・シーイングは今一だったけれど、とにかく空が暗い! だから、濃い星雲などをObsession で見ると圧感だ。夕飯までの間に、まず、回転花火銀河の超新星を見た。今度は、写真のように、回転花火銀河の中に超新星が見えた。流石は大口径で、銀河が銀河らしく見える。そして、M8M17M20あたりに望遠鏡を向けた。というのも、銀ミラーなので、赤の色付で見えるのでは? という期待があるからだ。レンズ枚数の少ないアイピースをとっかえひっかえして見てみたが、残念ながらモノクロだった。もっとも、M57 も富士山で見たように青くは見えず、透明度は今一だったので、これは仕方のないとろだ (といっても、リング内のガス構造まで見える)。是非、近日中に富士山で確認してみたい。

 夕飯は美味しくて、話題は尽きない。1を言って10理解する方々なので、こんな時には、あの対物とヘリコイドで某社のマウントで、など言うと、もうお互いに頭の中では完成していて、どう見えるかも想像できている(きっと近々オーナー2の方が実現するでしょう)。そして、ユーロ/ドルが安くて 、今あれがいくらだ、等という 「危険な話題」 が次から次へと飛び出す。楽しくて、快晴の空なのに、なかなか腰を上げるきっかけがつかめない。

 さて、それからは観望タイム。超メジャー天体を中心に見ていただいたが、さんざんいろいろな機材で見てきた方々も、皆、「おっ、おお〜!」、「凄〜い! こんなに見えるの?」、「今までこんなの見たことない。」と絶賛されたのは嬉しかった。自慢したいのではなく、感動が共有できる喜びだ。とにかく見えるのだが、やはり大口径での一番の違いは系外銀河か。とにかく形がわかり、楽しめる。口径が小さいと、もわ〜んとしたシミのようにしか見えないNGC891 だって、銀河をきれいに上下二つに分離して見せてくれる。木星はユラユラでシーイングは良くないが、それでも、星雲・星団・銀河は十分に楽しめた。オーナー1によると、透明度は6/10程度との事。この暗い空で好条件下で是非、全てを見直して見たい。

 馬頭がダメで楓林舎に戻ったら、「重鎮」の方が、ロンキー・テストを行っていたところだった。また、さらに様々な鏡筒が並んでいる。ちょっと残念な結果のものもあったけれど、またまた話は尽きない。明るくなってきて、就寝。起きたら、今度は太陽望遠鏡と各種双眼鏡だ。話も見るのも尽きる事がない。

 怒涛の2週で、連休明けは大忙しだが、いまだにけだるい幸福感に満たされている。オーナ1の方も2の方も言う通り、「楽しかったなあ〜!」
 

 Obsession 18" f4.2 UC  その4
大口径なのに、移動はこんなにコンパクト!

 公開:2011年10月1日〜
更新:2012年3月25日 *エンコーダー・ケーブルの修理
を追加しました。

  この望遠鏡を購入して、まだ8ヶ月少々、ミラーが完成して、まだ4ヶ月というのに、もう 「その4」 に突入してしまった。この3年間の密度の濃さは物凄く、APM-Bino は、もう10年以上、このObsession だって、もう何年も使っているような感じだ。恐ろしい速さで突き進んでいるが、私の場合は全てがこんな調子だから、半年も経つと、随分 “過去”。 もっとも、一旦軌道に乗ってしまえば少しの力で推進し続けるので、それまでが怒涛の歩みなのだ けれど... それと、数多くの素晴らしい出会いがあってこそ、である。

 

ファインダーの取り付け

  Kowa のフィールド・スコープ:Prominar TSN-883 は優秀だ。9cmのフローライト、正立プリズム付き なのに1.5s 。ファインダーとして採用したが、Obsession の最大実視界が1.4°なので、それ以上広い視野が必要な散開星団などの場合は、このスコープの担当となる。EWV 32mm で16倍、実視界約4°、見掛け視界62°、純正アイピース :TE-17W で30倍、実視野2.4°、見掛け視界72°の極めて優秀な望遠鏡なのだ(残念ながら、純正のズーム・アイピースは良くない)。時々アイピースを交換するが、標準アイピースを付けて見ると、ほぼこれだけでも足りてしまうのではないか、と思ってしまう事すらある。Obsession と、このフィールド・スコープがあれば、何でもOKだ(空が良ければ...)。

 取り付けには苦労した。最初、Argo Navis 取り付け位置にクランプ・ヘッドを装着してスコープを固定したが、本体の重心から前後方向に離れる位置になるため、望遠鏡が起き上がった時と、水平になった時とバランスが異なり、その都度、底の錘を調整する必要があった。
 その後、
SLIK SBH-100DQ というクイック・シュー付きボールヘッドで、トップ・リングにスコープを取り付けた。今度は軽くて前後のバランスも良いのだが、観望の時、ちょうどお腹にスコープが当たってしまい、光軸がずれる時がしばしばあった。スコープがテコの作用となり、取り付け部には、相当の力が加わるのだ。度々の光軸調整は、面倒だ。


微動雲台の取付方向 (トップ・リングのアームは外している)

 そこで、今度はトップ・リングに微動雲台を取り付け、光軸調整がやり易いようにしてみた。微動雲台の光軸調整用ツマミと望遠鏡のハンドル、斜鏡のスパイダーが干渉しないように取り付けるためには、微動雲台をアングルで2cm程上に浮かせて取り付ける必要があり、これでは、スコープの位置がトップ・リングから10数cmも上になってしまう。また、微動雲台は344g、これにクイック・シューを加えると、これだけで470gになる ので、これでは重過ぎてダメだ。そこで、写真のように、横方向で取り付ける事にした。この取り付け方法だと、スコープが外に大きく飛び出るのも防げる。垂直方向の調整は良いが、水平方向の調整は、鏡筒に沿って弧状に移動するので効率は悪いが、そこはトレード・オフ。 取り付け専用アングルは、例によって松本さんにお願いした。

 
取り付け位置(赤丸印)  松本製特製アングル

 取り付ける位置は、トップ・リングに付いている鏡筒を動かす時のアームと、斜鏡を支えているスパイダー の隙間:5cmの所しかなく(写真左上、赤丸印)、ここを外すと、重心のバランスが崩れる。また、ここには既にボールヘッド用の穴もあいてあり、穴あけ位置は慎重に選ばないと、トップ・リングを廃物にしてしまう恐れがある。という訳で、写真右上のような、頑丈かつ精密なアングルが出来上がった。トップ・リングを広い面積で確実に挟み込める構造にしている。

 で、実際に使ってみた。バランスを取るためには、底に錘を2袋(2.4s)追加が必要になったが、これが今度は操作性を悪化させてしまった。この望遠鏡は、元来476倍、実視野0.1°(Zeiss ABBE II 4mm) だって難なく追従できるのだが、頭もお尻もこれだけ重くなると、像がユラユラし、安定するのに時間がかかるようになってしまった。やはり、ここに500gも追加荷重はかけれないし、スコープの位置を、もっと下に下げる必要がある。

 トップリング・接眼部が反対側を向くように組み立ててみたらどうだろう。そういえば、望遠鏡が届いて初めて組み立てた時、普通に出回っている反射望遠鏡のように、鏡筒の左側に立って見るように組み立てていまい、シュラウドの位置が合わず、悩んだ。この望遠鏡は、鏡筒の右側に立って見るよう(左利き用)に設計されているのだ。逆向きに組み立てると、接眼部が少し上を向く感じとなり、使いづらくなってしまう。トップ・リングの取り付け位置を変更する方法もあるが、今は、鏡筒の角度が変わっても光軸はずれないので、ここの加工は避けたいところだ。

 そこで今度は、このアングルを下向きに取り付けられないか、試みた。もし、アングルが下向きに取り付けられ、ここに、クイック・シューを直付けすれば最も軽量になるし、スコープの取り付け剛性は一番だ。光軸調整は、出たとこ勝負。
 しかし、事はそう単純には運ばない。単純にアングルを下向きに取り付けると、トラス・ポールが取り付けられなくなるし、また、シュラウドを下から潜らせるような隙間を作らなければならない。また、ここには既に3つも穴が開いているので、新たに穴は開けたくない。プレートにはネジ頭を埋め込むためのザグリがあるし、 アングル背面のカメラ・ネジ穴はオフセットしさせているし、トップ・リングの既存の穴を利用して、トラス・ポールとスパイダーとアームの干渉を避けて装着しなければならない。まるで立体パズルのようだが、アングル背面の板を裏返しに取り付け、少々斜めにトップ・プレートに取り付けるとうまく収まった。 微動雲台を取り付けるためにカメラ・ネジをオフセットさせていたのが幸いし、クイック・シューがちょうど良い位置に収まった。

 

 写真で見ると、「別に〜」と思われそうだが、取り付け角度が少し狂うと、トラス・ポールは装着できないし、シュラウドも被せられなくなるのです。さて、スコープはしっかり保持できるようになったが、光軸調整は、どうするのだろうか? これにはいくつか方法がある。

  その1:ゴリラポッド自由雲台BH-2を取り付ける。

ボールヘッドなのに、回転軸は独立して固定できる。これだと垂直方向は快適に合わせられるが、重さが150g追加となる。また、スコープが鏡筒から7cm離れてしまう。

  その2:精密な手動ステージを使う

 

 例えば、シグマ光機のθ軸租微動ステージKSP-256 を使えば、垂直方向はバッチリだし、重さも何と90g。またαβ軸傾斜ステージAIS-40B を使えば、60gの追加で水平方向も微調整できる。ただし、高価。この手を見ていると、うっとりと見蕩れてしまい、逆にこれを使って何か作れないか、等と考えてしまう。芸能人やセレブと称する人達の家の紹介で、高価な置物や調度品が「いくらいくらです」などと紹介されても、成金的な趣味の悪さばかり目立ってちっともうらやましいとも思わないが、ここにゴニオ ・ステージや精密XYステージなんかが置いてあったら、そうとう株は上がるであろう。

  その3:原始的に調整する。

 スコープ側のクイック・シューの止めネジを程よく緩めて装着すると、垂直方向はフリーとなる。垂直方向の光軸を合わせたら、クイック・シューから外し、止めネジをきっちり締めて固定 し、クイック・シューに再装着する。実際にやってみたら、バッチリ! クイック・シューなので、意外と迅速に合わせられ、光軸の再現性も全く問題無い。では、水平方向の光軸は、どうやって合わせるか?
 実際に装着したら、スコープは少しだけ内側を向いていた。つまり、鏡筒の先を少しだけ外側を向かせてやれば良い訳で、クイック・シューの望遠鏡・先端側に紙を挟んで調整した。紙を折る回数で、角度が変る。幸い、それ程厚みはいらなかった。クイック・シューの装着にも問題無い。幾度か着脱を繰り返したが、光軸の再現性は完璧だった。また、スコープをハンドル代わりに使っても良い位、剛性もある。 トップ・リングの運搬で、どれだけ光軸がずれるかは、未定。スコープが数cm下に装着できたお陰で、錘の総量は基本2〜3袋でバランスが取れ、操作性も大丈夫だった。よし、しばらくこれで行こう!

 

フィルター・スライダーを追加しました (2011年10月23日)

 

 国際光器から、フィルター・スライダーが出ていた。どうしようかな、としばらく考えていたが、やっぱり購入してしまった。手持ちのシュミカセ・アダプターの長さは2インチで、EWV 32mm だと合焦しないので、ショート・タイプ(39.5mm)も用意した。これから活躍すると思う。最近、国際光器では、きちんと小ポーチが付属し、大変ありがたい。
 装着は、ファインダーと干渉しないように、斜めに取り付けなければならない。また、フィルターが外にむき出しで付くので、夜露にはめっぽう弱い。夜露検出器のように曇るので、場所によっては短時間の使用に留まる。ちなみに、自作フードに縦のシワが入っているが、これは夜露に曝される度に徐々にこうなってしまったため(内側に貼った植毛紙が縮んだ)。

 

主鏡を洗浄しました (2011年10月23日)

 主鏡が若干汚れて きたので、洗浄した。どのマニュアルでも、主鏡の洗浄は年1度すれば十分、とあるが、常に良い状態を保ちたいのと、汚れが固定してしまうのが恐ろしいので、ORION は半年に1回は行っている。耐久性については、自分で試している次第。

 洗浄は、シャワーで流した後、中性洗剤を主鏡の窪みに流し込み、優しく手で表面に広げる。こするのではなく、表面の滑らかさを確認するような感じ。まんべん無く“接触”したら、再びシャワーで洗い流す。銀ミラーの保護膜(?)のせいか、ミラーを立てかけると、ほとんど水は弾けて流れてしまう。残りの水滴は、紋防止のため、エアー・ダスターで完全に吹き飛ばす。エアー・ダスターは、急速冷凍効果でダメージを与えてしまう物もあり注意が必要だ。プラス OC-500等はダメだが、オリエンテック AD400FLはOK。乾燥を含め、洗浄作業は10分もかからない。


プラス OC-500(×) オリエンテック AD400FL(○)

 洗浄の方法は、古典的・教科書的でなく、また、この方法を薦めるわけでもない。ただ、これで良いのかな、と思って実行している。 ちなみに、主鏡の重さは18s、主鏡を支えているミラー・ボックス部は14.6sである。ミラー・ボックスを一体で運ぶ場合、ミラー・カヴァーも含め、総重量は33.2sにもなる。当初、持ち上げた時、「これはダメだ、重くて持ち運べない」、と思ったが、 じきに慣れてしまった。運搬による筋トレ効果か?

   *ただ、やっぱりこの洗浄方法は止めて、次回からこちらの方法にしよう(2011年11月26日追記)。

  

 
双望会へ行ってきました (2011年10月28〜29日)


広場の一角からの眺望。この望遠鏡群の後ろに、もう一群あり、全部で100数十台?

 今年も双望会へ行ってきた。持ち込んだのは、このObsessionハイランダーEMS広角双眼鏡P.S.T.双眼遠近逆転倒立双眼鏡、等。参加者の機材の創意工夫(+爆笑機材紹介)には、いつも感嘆してしまう。自分の機材も見ていただくので、頭底全部は見切れない。時々するりと抜け出し、つまみ食いをするような感じで他の望遠鏡を覗かせてもらった。例年参加の 定番の素晴らしい機材については割愛するが、個人的に印象に残ったものをいくつか。詳細は 、他の方のブログ等をご参照下さい(責任転嫁ですみません。“家の建設ブログも溜まっているのに、双望会までは苦しい” という 声もありましたが.... よろしくお願い致します!)。

 今回の目玉の一つ、やおきさんのStarmaster 22" SFX。双望会最大口径の56cmだが f3.3 (1845mm) なので、普通のドブソニアンの脚立でOK。Paracorr Type2 のお陰で、アメリカでは f3 クラスが普及してきている。18”は標準サイズ、22”あたりから大口径で、凄いのになると、クレーン車持参で48”なんてのもあって、絶句してしまう。 巨大な脚立で観望だと、導入は?と思ってしまうが、utoさんによると、超大口径ドブ使いの人達は一発で適切な位置に脚立を立てるらしい。津村さんが、「消防車があれば、ええな。」と言っていたが、確かに消防車(はしご車)ごと望遠鏡にしたら、凄いものができるかもしれない。アメリカには最小18”から、という大口径反射鏡を製作している会社が何社もあるが、住宅事情の違いだけでなく、趣味の無い人達がゴルフばっかりやっているどこかの国とは、ちょっと事情が違うように思う。

 このStarmaster は、何とgo-to付き。導入精度は、だいたい1°以内、との事。一般的に女性は追尾が苦手のようで、皆が見る時は、自動追尾は重宝する。私の場合は、自由気ままに鏡筒を振り回すのが好きで、また追尾も苦にならないので不要だ。ミラーの重さは30sとの事。ドブソニアンの場合、この重さでバランスを取っている部分もあるが、ここを軽くできれば、運用面ではだいぶ楽になる。方法としては、軽量ミラーWangsness OpticsZERODURなどの新素材の活用、あるいは、カーボンなどの軽い素材に薄いガラスを接着させて、ガラスを研磨するとか、あるいは宇宙望遠鏡のようにSiCミラーにするとか、いろいろアプローチの仕方はあり、 自分なりに考えているところではある。まあ、その内、アクチュエーターが廉価になり、薄い素材で電子的にコントロールする時代も来るのかもしれない。大人気で、いつも行列だったが、いくつか見せてもらった。解像度も馬頭も流石は56cm、よく見える。上を向いたきりが無い、と言うが、こうなると、やはりもっと上も見てみたくなる。公共天文台はもっと大口径だが、反射面が多いせいか、さほど良くない。某所の60cmなら、我がORION 30cmの方が、遥かに良く見える。もしかしたら、余計なものが付いていないこの手の超大口径ドブの方が、観望では一番良く見えるのかもしれない。 ちなみに運搬は、何と軽自動車、積みっ放し。妻には内緒、との事。走り去る車の後姿を見て、「あれが望遠鏡ケースか」とフォーマルハウトさん。名言だ!

 大口径ニュートンでなくても、しっかり見えて素晴らしいものある。端正な像で、違うな〜、と感嘆したのが、Ninoさんが持ってきた、タカハシTS-160X。田口氏がタカハシの研磨室長だった時の18台限定品、との事。ミラーで拡大しているのだから、やはりここが命だ。その点、鈴木さんのクエスターも同様で、見た目は怪しいのに、何でこんなに見えるの?と不思議な位だ。
 こんな調子で機材を紹介していたらとても終わらないので、あとは機会があったら紹介します(すみません)。

 初日は、晴れ。ただし、透明度、シーイングはベストではない。ギャラッド彗星、夏の星座あたりから始まって、明け方のオリオン、エスキモー星雲、北は上がってきたM8182 までのメシエ、代表的なNGC 等を観望。青いM57 のリクエストが多かったが、青い時とそうでない時があった。また、今回も単眼(Docter 12.5mm)よりは、双眼装置+Panoptic 24mm の方が青色が見えやすかった。M42 は、中心が青緑色で、その上下が茶色。土星状星雲もきれいな青色。このあたりは銀ミラーならではだが、何と言っても18”の解像度は抜群で、どの天体も素晴らしく見せてくれた。

 
2日目の昼、どなたかが、「あっ、彩雲だ。」と教えてくれた。あっという間に消えていった。

 2日目 の昼、utoさんが目盛り環導入で、金星、そして水星まで導入して見せてくれた。昼間の水星なんて、皆既日食でしか見たことが無かった。さすが達人である。夜、予報ではけっこうな曇りだったが、合間にスカッと晴れる。 この日は、沈み行くM22M8M17M20 あたりから始まって、夏、秋の星座を一巡。シーイングはかなり素晴らしく、木星も良く見えた。ただ、やはりシーイングは刻々と変化し、良い時に高倍率にして行列にバトンタッチしている内に悪化し、かえって高倍率が仇になる場合もあった。1人見る度に、毎回チェックした方が良かったかもしれない。実は、 風邪気味で双望会入りして、夜飲んで寝不足、翌日は吐きそうな位の頭痛だったので、観望に身が入らなかった。幸い(?)9時半頃にはけっこう曇ってきたので、夜露攻撃の前に、機材を撤収してしまった。0時半過ぎに、さらなるビッグ・ウエーブが来たが、ここは他力本願。残っている望遠鏡で覗かせてもらった。

 アイピースでビックリしたのは、Leica のフィールドスコープ用のズーム・レンズ:焦点距離9mm。イメージからすると、こんなものを望遠鏡に挿してちゃんと見えるの?と思ってしまうが、utoさんので見て驚愕した。さっそくミラクルKさんにお借りして、M2 でいろいろなアイピース(ほぼ同焦点)と比較したが、解像度、コントラスト共にNo.1だった。今年もしっかり毒を盛られてしまった...

 個人的に受けたのは、“Oka Optics” の200mm f12。日本特殊光学のレンズで自作。ファインダーまで似せて作っている。本物だったら、家が建つ? 昨年はTMB/APM のデザインだったけれど、今年はZeiss。来年は?? 星見こたつも最高。確かにあれに入ったら、望遠鏡は組み上げたままで、双眼鏡だけで終わってしまうかもしれない。蒼い星さんの機材紹介は、史上に残る傑作。続く ほそさん と合わせて、ちゃっきりさんの穴を埋めるには十分すぎるパフォーマンスだった。

 職場で、凄い望遠鏡の集まりがあった、と言ったら、「それって曇ってても良く見える望遠鏡とかですかあ?」と返された。素人の発想は侮れない。
今年もいろいろな方にお世話になり、どうもありがとうございました。どこかで見かけたら、よろしくお願いします。

 

斜鏡の光軸調整ネジの錆をきれいにしました (2011年11月10日)

 

  秋になって、夜露が物凄い。特に、南会津や双望会の会場では、主鏡が水洗いした時以上にビッショリ濡れ、斜鏡の光軸調整ネジも、あっという間に錆が生じてしまった。大切な金属の錆落しは、Case Medical Medical Ink & Adhesive Remover を使っている。ただし、悪臭+。これで錆をきれいに落とし、錆防止のため、 メンテループ を薄く塗布した。メンテループの色は茶色(錆色)なので、右の写真も若干錆色がかっている。
 本機はスキマだらけで、温度順応、筒内気流等の点では有利だが、夜露にはめっぽう弱い。逆に、
Ninjya みたな鏡筒だと鏡がFRPに囲まれるので、夜露には強いと思う。このあたりは、メリットとデメリットの天秤だ。ただ、観望の度にビショビショだと、主鏡の寿命 がちょっと心配だ。

 

やっちまった...! (2011年11月27日)

  2011年11月20日(日)、前日の天気予報では天城は快晴。Astro GPV (製作者に感謝 !!)によると、風速は8〜9mと出ている。ちょっと風が強い、がせっかくのチャンスなので、行くしかない。これから気流も悪くなるし、次の新月付近もどうなるかわからないから。ただ、翌日は仕事なので、11時過ぎには撤収して帰路に就かなければならない。

 早めの午後到着。風が強い! う〜ん、と思いながら、とりあえず鏡筒を組み上げる。この望遠鏡のベースには、写真のようなゴムが付いていて、これで鏡筒を固定する事ができる。鏡筒を離れる時、勝手に鏡筒が太陽の方へ向き、煙が 出ないように保護されるのだ。良くできているのです。ただ、風がある時は、固定せず、風任せに風見鶏のように放っておいたほうが安心だ。で、風任せに放ってみたら、うまく風を流して 勝手に動き、倒れるような感じも無い。

 さて、日も暮れてきて観望開始。ところが、風がますます強くなってきた。瞬間最大風速時には、鏡筒を押えないと危険。だいたい像がぶれまくっていて、観望どころではない。せっかくの数時間を過ごしたかったが、これでは危ない。撤収だ。夏の星座に別れを告げ、アイピースを外して収納しようと後を向いた瞬間、 背中で「ガシャン」と音がした。ああ、恐れていた見たくも無い光景が.....!!!!!

 ああ、もし家だったら、この風なら望遠鏡は出さないのに... 2時間以上運転してきた代償を求めなければ... 数時間の観望への欲望に負けてしまった... いろいろな思いが頭をグルグル駆け巡る。しかし、起こってしまった事は仕方が無い。とりあえず、撤収だ。横倒しになった望遠鏡を一つずつ確認しながら片付けた。Sky Surfer III のベースを取り付けているインシュロック・タイが切れ、電池もろとも外れて飛んでいるが、幸いミラーもスコープも無事。Argo Navis は、外れて落下した模様。水平回転方向のエンコーダーから、ケーブルが外れない。他には、目だったダメージはなさそう。 が、しかし、車に収納している時に、右小指をドアにぶつけて激しく突き指してしまった。ど〜ん、と暗い気持ちを引きずって、家に向かう。ああ、お決まりの東名大渋滞。星も見ていないのに、何で渋滞なんだ! 指も心も痛い。予定より相当早い時間に家に着いたが、機材をチェックする気力は失せていた。

 この週は、とにかく多忙。連日帰宅が11時過ぎだった。だいたいこんな時は、悪い事が立て続けに起こりまくる。それもあって、最初の2日は、チェックしようという気持ちは 全く起こらなかった。でも、気を取り直して、少しずつチェック。光軸はずれていたが、光学系は大丈夫だった。26日に家で見てみたが、トラペジウムも普通に6個だし、リゲルも余裕で実にきれいに伴星が見えている。木星の解像度も思ったより、良い(まだ気流は保っている模様)。M42 も色付だったので、ちょっと気持ちを持ち直した。う〜ん、都会でも18”は有効です!

 被害は、@トップ・リングのトラス固定部が回転してずれた → ナットを緩め、位置を正し再固定でOK。 A外れていたSky Surfer III のベースを再固定。 B水平回転方向のエンコーダーから、ケーブルが外れない → 何故か、どうやっても外れない。正確にパルスは出ているようなので、とりあえずこのまま使う事にした。 CArgo Navis の挙動がめちゃくちゃ → ただし、前回からおかしかったので、初期化して再設定した。それでもおかしいので、現在検証中。 といったところ。倒れた方向が幸いし、高価なスコープに被害は生じなかったし、アイピースも外していたのは、不幸中の幸いだった。でも、この鏡筒、意外と丈夫だ。

  教訓:どんな状況でも冷静に行動しましょう。欲望に負けてはいけません。

 

海外の銀ミラー会社 (2011年12月1日)

  とある情報を検索していたら、Hubble Optics という会社を見つけた。ここでは、ミラーがサンドイッチ構造になっていて、温度順応が極めて急速に行える、と謳っている。驚いたのは、銀ミラーが選択できる点だ。しかも、蒸着代が恐ろしく安い。大口径は国内では難しいので、突破口を見つけた感じだ。しかし、耐久性は未定。海外で、銀ミラー・耐久性も問題無い、と豪語していたメーカーがあったようだが、全くダメだった、という話も伝わっている。問い合わせたら、重さは、8”で1.2s、10”で2.9s、12”で6.5s(サンドイッチ)、18”で17.75s(サンドイッチ)、と特に軽くは無いようだ。
 まだまだ未知数だが、とりあえずの “情報” 。

 

日本の空では大口径は性能を発揮できない? そんな事あるか! (2012年1月9日)

 よく、「日本の空では大口径の性能は発揮できない」というような文句を目にする。私もそう思いこまされていた感がある。しかし、実際に大口径を手にして見てみたら、何という事だろう。一気に世界が広がった。横浜の空だって、球状星団も大迫力で楽しめるし、M42だって色付だ。木星だって、驚愕する程、鮮烈に見える。誰が、何を根拠にこんな事を言い出したのだろう。本当に大口径で、そして年間を通して見た上での意見なのだろうか? 悪い気流でしか見ていないのではなかろうか。

 望遠鏡と車は似ている。双眼鏡のところでも車に例えて、「対物レンズが大きい程明るくなるが、大きく、重くなってしまう。大きな荷物を運ぶ時は大型トラックが必用だが、コンビニに買い物に行くには、不便この上ない。だから、何台も必要になってしまう」と書いた。

 大口径は、いわばスーパーカーのようなものかもしれない。190kmを過ぎてからスイッチが入ったようにググーッと路面に吸い付き、矢のように300km以上まで加速するフェラーリやポルシェは、日本の道路では楽しめないか? 無駄か? 決してそんなことは無い! 無駄 だ、と答える人は、運転すらした事が無いか、実際にこれらの車を知らない人達である。確かに超高速は出せないが、車の楽しみや性能は最高速だけではない。そんなものは、車の性能の一部だ。

 もしかして、大口径はアメリカに敵わない日本のメーカーに操られた“重鎮”の陰謀ではなかろうか、と思う位腹立たしい。日本のメーカーは、もっと大口径ドブを作るべきである。反射でもおそらくは耐久性のあるであろう銀ミラーだって作れるし、ちゃんと作れば、大雑把なアメリカ製を簡単に凌駕できるはずである。実際に大口径で「観る」という事の感動の原点を思い出して欲しい。一時的に売れる写真用望遠鏡ばかりなど、糞食らえ! できる技術があるのにやらないのは、頭脳がない技術と同等だ。このままでは、中国の二番煎じにすら成り下がる。

 日本の望遠鏡/光学メーカーよ、立ち上がれ! 世界一の、世界中のマニアが欲しくて夜もうなされるような大口径ドブを作れ!

   

   追記(2012年1月15日)

 車が好きで、自分が乗りたい車を作る会社/国と、まず「売る」という目標が優先される会社/国。採算重視、といったって、やっぱり作りたくて作ったものは魅力的で、人気が出て、結果的に売れるのではなかろうか。まして、望遠鏡は実用品というよりは、趣味の世界。もっと突き抜けて欲しいと思う。

 反面、ネットの普及でグローバル化が急速に進んでいる。国内・国外関係なく、欲しいものは、だいたい輸入できる。あまり国にこだわる時代でもないのも事実だ。そもそも、大口径ドブで筒付なら、日本にはNinjya がある。しかし、これだけ海外の情報が入手できる時代なのに、未だ日本市場は閉鎖的な印象は拭えない。

 

ファインダー用ブラケットを交換しました (2012年1月15日)

 ファインダー取り付け用アングルは、最初の設計とは異なり下方向に取り付けるようになっため、シュラウドがここの部分で覆いきれず、いつのまにか外れて内側に飛び出してしまう事がしばしばあった。そこで、専用新型ブラケットを作る事にした。製作は、例によって松本さん。超多忙の合間に作ってもらった。届いたのは、年を越して、1月。

   

 ポイントは、ブラケット取り付け部に台座を履かせて、シュラウドを全周、トップ・リングの上で絞れるようにする事、アングルの長さを若干長めにして、スコープの重心を下げる事(あまり長くすると、剛性が失われ、またアイピースとの距離が離れ、見にくくなる)、すでにトップ・リングには穴が3つ開いており、これを利用して取り付ける事、トラス・ポールとの干渉を避ける事、等々。綿密に計測し、方眼紙に書いた紙を切り取って実際に幾度も合わせて、慎重に寸法を決めた。

  

 それが、これ。バッチリ目標を達成できた。錘も、1個減らしてもバランスが取れるようになった。光軸調整は、上下方向は前回と同じ。左右方向は、クイック・シューとアングルの間に塩ビ・シートを挟んで粗の調整、微調整は、クイック・シュー自体に紙を挟んで行っている。また、Sky Surfer III の台座は、インシュロック・タイで固定していたが、装着の度に位置がずれるので、取り付けている筒にタップを立て、これをキッチリ固定した。これで、取り付けの度に、光軸が狂わなくなった。

 あれ、フォーカサーに刺さっているアイピースは? そう、やっとAPM からLeica Vario Zoom-eyepiece ASPH. 17.8 - 8.9mm が届いた。注文した当初は、「1週間位で送ります」との事だったが、何の何の、2ヵ月半もかかってしまった。でも、日本で買うより随分安いし(税金19%もかからない)、何といっても 2”アイピース・アダプターが付属するのがありがたい。2”アイピース・アダプターは、3箇所を六角レンチで固定するもの。 固定は、光軸がずれないよう、慎重に行う必要がある。肝心の見え味は? まだ気流が悪くて...

  しかし、夕方からAPM-Bino (単眼-右側使用)で、地上風景でチェックしてみた。このアイピースは、Docter UWA 同様、驚くほど像に歪がない。マンションの壁のタイルが、碁盤の目のようにキッチリ並ぶ。400m程離れたマンションに設置されれたガス 給湯器を見ると、Ethos 8mm ではわからなかったが、Leica Zoom では、しっかりNoritsu と読める。いつもチェックしている高圧線の鉄塔のガイシの質感も申し分ない。コントラストも良い。双望会で球状星団で圧倒された性能は、やはり本物だった。壁のランプシェードの虫による汚れも、きれいに描出される。

 で、最後にNAV-HW 17mm で双眼で見てみた。何と別次元の世界! 別にアイピースを換えて見てみようと言う気すら全く起きない。中心を見れば、まるでズームしたように見えるし、見渡せば、あきれる位広視野だし、これ自体でズームレンズのようだ。Ethos 8mm にしたら、単眼で読めなかったNoritsu が、いとも簡単に読めてしまう。双眼望遠鏡の威力をあらためて認識した次第。時が経つのも忘れ、しばし夜景を楽しんだ。やはり、Obsession APM-Bino は、私の宝だ!

  

遮光フードを再作しました (2012年1月19日)

  昨年、遮光フードを作成したが、湿気を帯びる度に植毛紙が縮み、徐々にシワができてしまった。遮光性能には全く問題無く、性能は抜群なのだが、家内には「みすぼらしい、みっともない。」と不評だ。という訳で、再作する事にした。

 東急ハンズに行ったら、ポリセームの黒色シート(1000×880×0.38mm、\782)を見つけた。しかも片面はしっかりツヤ消し仕上げになっている。これなら軽量遮光フードが作れる! 今度は、これを2枚接着して超尺1枚とし、ヴェルクロの使用を1箇所にして筒を作る事にした。ポリセームの接着は、最初、スコッチの超強力両面テープ(粗面用)を使ってみたが、すぐに剥がれた。そこで、これが接着できる接着剤(注:ポリセームはポリプロピレンなので、これに対応できる接着剤は少ない):コニシボンド GPクリヤーで繋げた。

 

 

 前回の遮光フードの長さは40cmだったが、今度は35cmにした。また、植毛紙は、今度は全周には貼らず、フォーカサーの前後部に30cmだけ貼った。鏡筒先端の重量が減ったので(測定する前に組み立ててしまって、重さは不明。おそらく150g位のダイエットか?)、操作性は、向上すると思う。
 完成して喜んでいたら、「どうせ暗い所で使うんだから、前のでも良かったんじゃないの?」等と笑いながら言う人がいて、「う〜ん...」

 

アームの破損修理 (2012年1月29日)

 

  ミラー・ボックスをちょっと長い距離を持ち歩くと、さすがに応える。やっとの思いでロッカー(ミラー・ボックスの下の回転部分)の上に置いたら、片方がガイド用の金属円盤の上に載ってしまい、破損してしまった。最後まで気を抜かず、しっかり置かないと、こうなるのでご注意を!

 最初、アラルダイドで接着を試みたら、剥がれた木には適さないのか、うまく付かない。そこで、木工ボンドで接着、修理をした。剥がれるかもしれないが、一応修理完了。

  

SkySafari 3 + NEXUS導入! (2012年2月5日)

 現時点で、最強かつ理想的な導入装置が稼動を始めた。詳細は、こちらへ。なお、昨年の転倒事故後、Argo Navis の導入誤差が非常に大きくなったが、これは、転倒で水平方向のエンコーダーの取り付けが緩んだため、と判明した。SkySafari 3 + NEXUS での導入は極めて正確で、エンコーダーの損傷は無かった。

 

エンコーダー取り付けの補強 (2012年2月12日)

 SkySafari 3 + NEXUS を使う時に気付いたが、水平軸のエンコーダーの取り付けが緩んでいた。昨年11月の転倒事故で一気に緩んだと思われるが、それ以前に、たまに起きていた導入誤差も、ここが原因だったかもしれない。エンコーダーを時計回りに回転させて しっかり固定し、さらに両面テープ(手持ちのスコッチ超強力 スーパー多用途粗面用)で固定した。

 垂直軸の取り付け方は、ここにも少し書いたが、 まず、エンコーダー本体アームを鏡筒ベースのマークに合わせてきっちり固定。外側のエンコーダー軸固定アームは、まず最初に、金色の固定ネジを適度に緩めた状態で鏡筒を上下に1〜2回動かし、 そして、ほんの少しだけネジを締め、再び鏡筒を上下にしっかり動かす。 これを2〜3回繰り返しながら、ネジを少しずつ締めるようにする。つまり、鏡筒を上下動させる事で、エンコーダー軸固定アームに円運動の中心を出させるようにした。といっても、触ったら緩む位の強度でネジは固定。ネジが緩すぎると、エンコーダー軸固定アームがずれて、エンコーダーがスリップする。きつくても緩くてもエンコーダーは空回りするので注意が必要 だ。

 

エンコーダー・ケーブルの修理 (2012年3月25日)

 

  昨年11月の転倒事故の後、水平軸エンコーダーからケーブルが抜けなくなった、と報告したが、それはストッパーがエンコーダーの中で破損したためだった。年始に、これを除去。このままだと、少しの力でケーブルが抜けてしまうため、ソケットを交換した。 交換には、専用の工具が必要だ。

 交換後、天城へ遠征に行ってきた。ケーブルの接続も従来通り問題無く、SkySafari + NEXUS の導入はバッチリ! しっかり楽しめた。

続く...

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