Obsession 18" f4.2 UC  その7
46cmの分解能と32cm屈折双眼の光学性能を有する 新生半銀ミラードブ

  公開:2016年1月16日〜
更新:2017年8月2日 *この望遠鏡を 手放しました を追加

 

銀ミラー・主鏡を失う

 
2015年10月のミラー。白い部分は汚れではなく、銀の劣化。

 その6で記載したが、銀蒸着主鏡が昨年、劣化してきて、これは何とかしないと、と探っていた。もちろん使えるのだが、全体の反射率は低下しているだろうし、いざダメになってからではなく、今から道筋を立てておきたい。 また、劣化しているミラー部分は凸凹しているので、これが像に悪影響を及ぼす可能性も考えられる。

 銀ミラーは、再蒸着不可、と聞いていた。きれいに剥離できないのだそうだ。修正研磨のように軽く削って(磨いて)再蒸着はできないものか、いろいろな所に聞いたが、できないか、 できたとしても、新しくアメリカから購入するより遙かに高額だった。しかし、とある研磨職人の所に行き着いたら、蒸着名人、という人を紹介された。彼なら剥離もできるし、再蒸着も何でもできる、という。

 さっそく相談したら、「おそらく落とせる」との事。しかもアルミ増反射蒸着の見積もりも、大手会社の半分以下だった。 また、蒸着も口径105cmまで対応できる、という。日本にこんな会社があったのか !? 銀ミラーがベストだが、常に水にさらされる主鏡には厳しいので、アルミ増反射で妥協するのはやむを得ない。また、今の銀ミラーなら、反射率はアルミ増反射と同等か、それ以下だろう 。

  それなら、今後の大口径ミラーの再蒸着の道になるし、 やってみよう、という事で、銀ミラーを出した。すると、点状に残った所があるもの、ほとんど剥離できた。そのまま再蒸着しても、観望には支障ないレヴェル、との事。さて、再蒸着、という時になったら、増反射はできない。面倒だ。もっと高額になる。当社ではできない、と連絡を受けた。再蒸着を前提とした通常のアルミ蒸着ならできる、と。

 絶句! 頭が真っ白! 急転直下、奈落に落とされてしまった。増反射じゃなかったら、再蒸着をする意味がない。反射率80%台なら、劣化したって銀ミラーの方が遙かに優秀だし、増反射じゃなかったら、当然そのまま使い続けていた。弁償してくれ!と言いたいが、銀蒸着なんかできる訳がない。剥がしてから、何という事を言ってくれるのだろう。強行に単純蒸着し、金額を請求されてはたまったものではないので、なんとかミラー自体は取り戻した。

 この会社Mの説明は、「勘違い」という事だったが、「はあ???」。それにしても、こんなバカで無責任な会社があったなんて、怒りと絶望。私は、こうして大切な銀ミラーを失ってしまった....

 このミラーを研磨したOMI社に再蒸着の問い合わせをする筈だったのだが、「剥離できない、とされていた銀ミラーを剥離し、アルミ増反射も他社の半額」という説明にだまされ、問い合わせしないままとなっていた。気を取り直してメール。

 返事は、96%アルミ増反射で、見積もり$475。納期2週間。今度は、こちらに絶句! 日本の大会社に出す1/10ではないか。という訳で、アメリカに旅立った。担当の方は懇切丁寧に対応してくれ、12月30日まで会社から連絡をくれていた。年末・年始を挟んだというのに、納期もきっちり守って日本に送り返されてきた。剥離ができなくて残っていた点状の部分もきれいに落とし、その分の金額を含めても、$505だった。

 アメリカには大口径ミラーが普及しているとはいえ、あまりの違いに愕然とした。偉そうに理屈を延々と述べる前に、アメリカの事情を少しは学んでいただきたいものだ。さっそく、新品になって帰ってきたミラーを組み込み、蒸着後進国:日本の横浜の自宅で見てみた。あいにくの冬空で星はお団子状態。オリオン大星雲もモノトーンだし、トラペジウムも5個止まり。しかし、元来、このミラーは極めて優秀なのは確認済みなので、「見えない」のは「空」と断言できる。

 斜鏡は銀。これはいい。再び活動の道は開けた。春が楽しみだ。

 *私は、天文のみならず、各分野で日本の職人達とのつき合いが長い。皆、世界に誇れる日本の宝だ。一を言えば十理解し、それ以上の回答、結果を出してくる。今回も、そのつもりでいたが、違う人もいるので過信は禁物だ。

 **送料について。日本からはヤマト運輸が2万円少々、と安かった。ただし、申請金額は、ミラー本来の金額ではなく、修理代金にしないと受け付けない。また、アメリカからはUPSで送られてきた。こちらは$1033.9と高額だった。これは、他にもオプションがあったと思うが、各種、安全を取って、先方推奨のものとした(DHL等で送られてきたら、まず届かないし、税金の手続きもどうなるか、不安要素が大きすぎる)。また、日本に送られてきた時の税金は\2600だった。こちらもInvoiceには修理代金を記入してもらうようリクエストしないと(新品の商品代金などを書かれてしまうと)、関税は、相当高額になってしまうので、注意。

  

片倉ダム(湖)へ小遠征 (2016年4月1日)

 年末に楓林舎に遠征してから、超多忙であったのと、20何年かぶりに高熱で倒れた中、公私ともにストレスを与える人達とのやりとりをしなければならなかったりと、星を見るどころでなかったが、3月30日に少し時間が取れた事と、前日のAstro GPVで快晴だったので、観望時間は3時間少々だったけれど、行ってきた。目的は、新ミラーとSkySafari 5 の動作テスト。

 日没時に到着したら、風が強い。すぐ近くの亀山湖でも、風の強さは同じだった。今は、亀山湖の街頭は消灯しなくなったので、ここ、片倉ダムで観望する事にした。風が強いので、シュラウドは被せず設置。それでも強い風が吹くと、あっという間に、あっちを向いてしまう。前日のAstro GPVでは全日快晴だったが、「21時から晴れ」に変わっていて、所々に薄雲のある中、まずは木星から。N&SEB、TBの濃淡のコントラストの良さは、さすが大口径だ。後で再び見たら、大赤斑が赤くきれいだった。今度のミラーはアルミ増反射だけど、赤色の反射も良好なようだ。

 いつものように、リゲルの伴星で大気の状態をチェックし (いいんだなあ、これが)、SkySafari 5 をAlign。SkySafari 5 のテストについては、こちらを参照の事。春の銀河群を見ていったが、SkySafari 5 が最高のアシストをしてくれた。しかし、薄雲のせいか、感動的には見えない。エスキモーなどは見事に見せるが、銀河も星雲も、何だかなあ 、で、意欲が湧いてこない。マウナケアでは、12.5cm双眼でも驚異的に見えたのが、懐かしい。 やっぱり機材より何より空だ。1000mを超えると、抜けが一歩抜きん出る。2000mを超えると、さらに抜きん出る。で、3300〜3700mになると、もう別世界! 途端に宇宙が近くなる。ガスは、見慣れた写真より見えるし(写真だと、濃い部分だけ強調される)、銀河の渦だって、グルグルだ。

 余興で、手持ち星座撮影をやってみた。これは、その一部拡大のもの。レンズは防振のない35mm f1.4開放 1/4秒 ISO12800。以前なら考えられない。
使用しているアイピースと実視界、倍率、等をまとめてみた(2016年3月末日現在)。

Obsession 18" UC

焦点距離   倍率 実視界 見掛視界 アイ・レリーフ 射出瞳径 備考
 口径457(454)mm f4.2 1905mm            
EWV 32mm 60 1.4° 85° 20mm 7.6mm  
谷エルフレ 25mm 76 0.8° 62° 21mm 6.0mm 馬頭用
Brandon EFL 24mm 79 0.7° 53°   5.7mm 馬頭用
NAV-HW 17mm 112 0.9° 102° 16mm 4.1mm  
NAV-HW 12.5mm 152 0.7° 102° 16mm 3.0mm  
NAV-HW + EiC 10mm 191 0.5° 102° 16mm 2.4mm  
Leica Vario Zoom ASPH. 17.8mm 107 0. 60° 18mm 4.2mm  
8.9mm 214 0. 80° 18mm 2.1mm  
Ethos 8mm 238 0.4° 100° 15mm 1.9mm  
Ethos 6mm 318 0. 100° 15mm 1.4mm  
NAV 12.5mm + Powermate 6.25mm 305 0.3° 102° 16mm 1.5mm  
Nagler Type 6 5mm 381 0.2° 82° 12mm 1.2mm  
Pentax XW 5mm 381 0.2° 70° 20mm 1.2mm  
Pentax XO 5mm 381 0.1° 44° 3.6mm 1.2mm  
Zeiss ABBE II 4mm 476 0.1° 43°   1.0mm  
Ethos 3.7mm 515 0.2° 11 15mm 0.9mm  
Pentax XW 3.5mm 544 0.1° 70° 20mm 0.8mm  
               
 + 双眼装置 (f=7.14 換算) 3238.5mm            
Panoptic 24mm 135 0.5° 68° 15mm 3.4mm  
Pentax XW 20mm 161 0.4° 70° 20mm 2.8mm  
               
TeleVue Powermate 2"            
Zeiss Abbe-Barlow 2-2.2-

2.6-2.8

×

       
TMB Supermonocentric ED 1.8×

 

 

       

 
眼のこと (2016年4月26日)


写真は、今回の題材とは無関係 (大島の椿)

  今年の1月下旬、仕事中にいきなり視野の真ん中に大きな糸くずが出現した。しかも、とても濃くて太い。右眼だった。飛蚊症にしては、程度が酷すぎる。すぐに消えるだろうと思いきや、2、3日経っても変化無し。あわてて眼科を受診した。幸い深刻な病気では無く、加齢による硝子体剥離、出血だ、との事だった。しかし、「治りませんから、なるべくそこに焦点を合わせないで下さい。よけいに煩わしく見えますから。」と言われた。50過ぎても血管年齢が28歳、特に頭も薄くならない、足の筋肉20台、血圧正常等々、ずっと老化と無縁だったのに、60近くなってきたら、昨年秋から半年経つのに右の五十肩が全くだめ。そして眼と、一気に来た。また、同世代の人も逝ってしまった。いつまで趣味ができるのかわからないけれど、やれるとこまでやっておかないと。

 あれから3ヶ月経過。糸くずは無くならないけれど薄くなり、焦点を合わせないコツを自然に会得し、視野の真ん中から外れるようになってきた。とはいうものの、毎朝PSTで見る太陽は、いきなり右眼で見ると中央に糸くずが横たわり、そこの部分はプロミネンスもダークフィラメントも黒点も何も見えないから、実に始末が悪い。という訳で、左眼が活躍。幸いこちらはばっちり見えている。考えてみれば、左右で見え方に差があった。昨年、M57の中心星が見える時と見えない時が交互している時があったが、すでに兆候があったのかもしれない。今度は左眼でしっかり見るようにしよう。

 
この望遠鏡をお譲りします (2017年2月20日)

 この望遠鏡一式お譲りします。本体+再蒸着したOMI高精度ミラー、斜鏡銀ミラー、エンコーダー一式、シュラウド、斜鏡ヒーター、トラスポール(単眼用、双眼装置用2種)、特注ケース、自作トップリング遮光円筒(標準、及び遠征用)等々一式です。ファインダーは付属しません。
 18”では最強の1台で、自宅で惑星も凄いです。
 

この望遠鏡を手放しました (2018年8月2日)

 新しいアプローチを始めたため、この望遠鏡を手放した。こんなに素晴らしい望遠鏡なので、できれば手元に置いておきたかったのだけれど、さすがに置き場所も資金も限られているので、仕方が無い。しかし、この望遠鏡を存分に活用してくれる人に渡るなら、こんな嬉しい事は無い。という訳で、若者の所へ旅立って行った。

 でも、あんなに数多くの感動を与えたくれた望遠鏡だから、やはりいなくなると寂しいなあ...

本当に沢山の素晴らしい思い出をありがとう!!

 
   
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