二次形式 ― トピック一覧
[数学についてのwebノート] |
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・定義:二次形式/正値定符号二次形式/正値定符号行列/半正値定符号二次形式/半正値定符号行列 負値定符号二次形式/負値定符号行列/半負値定符号二次形式/半負値定符号行列 同値な二次形式/二次形式の標準形 ・定理:単位ベクトル化の二次形式の計算/単位ベクトル化の二次形式の最大値・最小値定理 二次形式の基底変換公式/二次形式の標準化 正値定の必要十分条件-固有値/負値定の必要十分条件-固有値/正値定の必要条件-行列式/負値定の必要条件-行列式/ 正値定の必要条件-小行列/負値定の必要条件-小行列/正値定の必要十分条件-主小行列式/負値定の必要十分条件-主小行列式 |
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※応用:2変数関数の極値問題/ n変数関数の極値問題 ※関連:主小行列/主小行列式/固有値 →線形代数目次・総目次 |
定理:二次形式の基底変換公式 定義:対称行列・二次形式の同値 |
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要旨 |
・実n次元数ベクトルx=(x1, x2, …, xn)についての対称行列Aによって定まる二次形式 A[x] は、 「xの《Rnの基底 { p1, p2, …, pn }》に関する座標ベクトル」x'=(x'1, x'2, …, x'n)についての、 「『《Rnの標準基底 { e1, e2, …, en }》から《Rnの基底 { p1, p2, …, pn }》へ の基底変換行列』Pを用いて作った対称行列」 tPAP によって定まる二次形式 tPAP[x'] としても表せる。 すなわち、A[x]=tPAP[x'] 。 ・対称行列AとtPAP 、および、 二次形式 A[x] とtPAP[x'] とは、同値であるといわれる。 |
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設定 |
この定理は、以下の舞台設定上で、成り立つ。 R:実数体(実数をすべて集めた集合) Rn:実n次元数ベクトル空間。 すなわち、Rn=R×R×…×R={ ( v1, v2, …, vn )|v1∈Rかつv2∈Rかつ…かつvn∈R }に、 ベクトルの加法とスカラー乗法を定義したもの。 ただし、Rnに属すすべての実n次元数ベクトルは、 n次元縦ベクトルの形式で表されているものとする。 |
[文献−線型代数] ・佐武『線型代数学』W§4 (pp.158-9)。「同値」 *斎藤『線形代数入門』5章§4[4.1]の前段(p.154); ・永田『理系のための線形代数の基礎』系5.3.3の後(p.145):対称双一次形式一般について。「同値」; ・川久保『線形代数学』11.3定理11.3.1の前段(p.289) ・木村『線形代数:数理科学の基礎』2.1(p.36);4.6(pp.93-98) [文献−解析] *杉浦『解析入門1』U§8定理8.2-2(p.154) *松坂『解析入門4』18.2-E 命題9(p.106);。 [文献−数理経済] ・岡田『経済学・経営学のための数学』2.7定理2.33(p.113) |
詳細 |
step1―設定 (1) 「Rnの基底」として、 { p1, p2, …, pn } をとる。 (2) すると、 『《Rnの標準基底 { e1, e2, …, en }》から《Rnの基底 { p1, p2, …, pn }》へ の基底変換行列』は、 第1列をp1, その第2列をp2, …, その第n列をpnとする実n次正方行列となる。 この実n次正方行列をP で表すことにする。 |
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(3) 基底変換行列の性質から、 実n次元数ベクトルx と「xの《Rnの基底 { p1, p2, …, pn }》に関する座標ベクトル」x'とのあいだに、 Px'=x という関係が成立する。(ただし、x,x'は縦ベクトルとする) step2―展開 (0) 以上の設定を使って、 「実n次元数ベクトルxについての対称行列Aによって定まる二次形式」 A[x] について、ほかの表し方ができないか、考えてみよう。 (1) まず、step1-(3)で得られた関係を使うと、 「xの《Rnの基底 { p1, p2, …, pn }》に関する座標ベクトル(縦ベクトル)」x'を用いて 次のように、表しなおすことができる。 A[x]=A[Px'] (2) ここから、二次形式の定義式に遡り、さらに、転置行列の性質などをつかって、どんどん書き換えていってみよう。 A[x]=A[Px'] ∵step1-(3) =t(Px')A(Px') ∵二次形式の定義 =(tx' tP ) A (Px') ∵転置行列と積の性質 =tx' (tPAP) x' ∵行列積の結合則 (3) だから、結局、 「実n次元数ベクトルxについての対称行列Aによって定まる二次形式」 A[x] は、 「xの《Rnの基底 { p1, p2, …, pn }》に関する座標ベクトル」x'(ただし、縦ベクトル) 「《Rnの標準基底 { e1, e2, …, en }》から《Rnの基底 { p1, p2, …, pn }》へ の基底変換行列」P を用いて、 tx' (tPAP) x' と表せることになる。 つまり、A[x]=tx' (tPAP) x' step3―結論 (1) 二次形式の定義式と見比べてみると、 tx' (tPAP) x' とは、 「x'についての対称行列(tPAP)によって定まる二次形式」tPAP[x']に他ならないことに気づく。 (2) なお、(tPAP)が対称行列であることは、(tPAP)の転置をとってみると、(tPAP)自身であることからわかる。 実際、 t(tPAP)=tP tA t(tP) ∵転置行列と積の性質 =tP tA P ∵転置の転置 =tPAP ∵対称行列の定義から tA=A (3) step2-(3)とstep3-(1)とをあわせると、 「実n次元数ベクトルxについての対称行列Aによって定まる二次形式」 A[x] は、 「xの《Rnの基底 { p1, p2, …, pn }》に関する座標ベクトル」x' 「《Rnの標準基底 { e1, e2, …, en }》から《Rnの基底 { p1, p2, …, pn }》へ の基底変換行列」P を用いて、 「x'についての対称行列(tPAP)によって定まる二次形式」 としても表せることになる。 すなわち、A[x]=tPAP[x'] |
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・ベクトルの中身を開いた状態で、議論すると… ・ベクトル・行列を使わずに、議論すると… |
→[トピック一覧:二次形式の標準化] →線形代数目次・総目次 |
定理・定義:二次形式の標準形 |
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要旨 | ・うまく、実n次元数ベクトルx'=(x'1, x'2, …, x'n) を決めてあげると、 「実n次元数ベクトルx=(x1, x2, …, xn)についての対称行列Aによって定まる二次形式」A[x]は、 「『対称行列Aの固有値λ1,λ2,…,λnを対角成分とする対角行列diag(λ1,λ2,…,λn)』 によって定まる 実n次元数ベクトルx'についての二次形式」 diag(λ1,λ2,…,λn)[x']=λ1x'12+λ2x'22+λ3x'32+…+λnx'n2 として表現しなおすことができる。 つまり、 A[x]=diag(λ1,λ2,…,λn)[x']=λ1x'12+λ2x'22+λ3x'32+…+λnx'n2 を満たすx'=(x'1, x'2, …, x'n) の決め方が存在する。 ・diag(λ1,λ2,…,λn)[x']=λ1x'12+λ2x'22+λ3x'32+…+λnx'n2 を、 二次形式A[x]の標準形と呼ぶ。 |
[文献−線型代数] ・佐武『線型代数学』W§4定理4'';定理5 (pp.159-161) ・斎藤『線形代数入門』5章§4[4.1](pp.154-155); ・永田『理系のための線形代数の基礎』定理5.3.9(p.148); *川久保『線形代数学』11.3定理11.3.1(p.289) ・木村『線形代数:数理科学の基礎』2.1(p.36);4.6(pp.93-98) [文献−解析] *杉浦『解析入門1』U§8定理8.2-2(p.154) *松坂『解析入門4』18.2-E 命題9(p.106);。 [文献−数理経済] ・岡田『経済学・経営学のための数学』2.7定理2.33(p.113) *戸田・山田『計量経済学の基礎:統計的手法の理論とプログラミング』2.9.2(pp.117-8) ※活用例:正値定符号行列になるための必要十分条件 ※関連:対称行列の対角化,対称変換の対角化, |
※なぜ? 対称行列の対角化により、 対称行列Aにたいして、ある直交行列Pが存在して、A = P diag(λ1,λ2,…,λn) P−1を満たす。 したがって、この直交行列Pをつかって、A[x]を書き換えると、 A[x]=txAx ∵二次形式の定義 =tx ( P diag(λ1,λ2,…,λn) P−1 )x ∵ A = P diag(λ1,λ2,…,λn) P−1 =(tx P) diag(λ1,λ2,…,λn) ( P−1 x) ∵行列積の結合則 =t(tP x ) diag(λ1,λ2,…,λn) ( P−1 x) ∵行列積と転置の性質 =t(P−1x ) diag(λ1,λ2,…,λn) ( P−1 x) ∵直交行列の性質 tP=P−1 すると、x'=P−1x と決めてあげれば、 A[x]=tx' diag(λ1,λ2,…,λn) x' = diag(λ1,λ2,…,λn)[x'] が成り立つことになる。 ※この説明では、あまりに表面的で、理論的に納得がいかない、というのであれば、 下記説明参照。 |
[文献] ・川久保『線形代数学』11.3定理11.3.1(p.289); ・戸田・山田『計量経済学の基礎:統計的手法の理論とプログラミング』2.9.2(pp.117-8) |
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設定
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この定理は、以下の舞台設定上で、成り立つ。 R:実数体(実数をすべて集めた集合) Rn:実n次元数ベクトル空間。 すなわち、Rn=R×R×…×R={ ( v1, v2, …, vn )|v1∈Rかつv2∈Rかつ…かつvn∈R }に、 ベクトルの加法とスカラー乗法を定義したもの。 ただし、Rnに属すすべての実n次元数ベクトルは、 n次元縦ベクトルの形式で表されているものとする。 ・:自然な内積。これによって、Rnは計量実ベクトル空間となる。 ‖‖:計量実ベクトル空間Rnにおけるユークリッドノルム(自然な内積を用いて定義される) d ( , ):ユークリッドノルムから定められたユークリッド距離 (Rn,d):n次元ユークリッド空間 | |
詳細
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「対称行列Aによって定まる実n次元数ベクトルx=(x1, x2, …, xn)についての二次形式」 A[x] =txAx は、 《Rnの正規直交基底》」{ p1,p2,…,pn }をうまくとると、 この《Rnの正規直交基底{p1,p2,…,pn}》に関する「xの座標ベクトル」x'=(x'1,x'2,…,x'n) をつかって、 「『対称行列Aの固有値λ1,λ2,…,λnを対角成分とする対角行列diag(λ1,λ2,…,λn)』 によって定まる x'についての二次形式」 diag(λ1,λ2,…,λn)[x']=tx' diag(λ1,λ2,…,λn) x' =λ1x'12+λ2x'22+λ3x'32+…+λnx'n2 として表すことができる。 すなわち、 任意の対称行列Aにたいして、ある《Rnの正規直交基底{p1,p2,…,pn}》が存在して、 この《Rnの正規直交基底{p1,p2,…,pn}》に関する「xの座標ベクトル」x'=(x'1,x'2,…,x'n) が、 A[x]=diag(λ1,λ2,…,λn)[x']=λ1x'12+λ2x'22+λ3x'32+…+λnx'n2 を満たす。 ・diag(λ1,λ2,…,λn)[x']=λ1x'12+λ2x'22+λ3x'32+…+λnx'n2 を、 二次形式A[x]の標準形と呼ぶ。 |
[文献] ・杉浦『解析入門1』U§8定理8.2-2(p.154) ・松坂『解析入門4』18.2-E 命題9(p.106); ・斎藤『線形代数入門』5章§4[4.1](pp.154-155); |
証明 |
・対称行列の対角化より、 対称行列Aにたいして、 ある直交行列Pが存在して、 diag(λ1,λ2,…,λn)= tPAP …(1) を満たす。 ・この直交行列Pの各列{ p1, p2, …, pn }は《Rnの正規直交基底》をなす。∵直交行列の性質 ・そこで、 A[x]を「《Rnの正規直交基底{p1,p2,…,pn}》に関する『xの座標ベクトル』」を使って表現しなおす。 「《Rnの標準基底 { e1, e2, …, en }》から《Rnの正規直交基底 { p1, p2, …, pn }》へ の基底変換行列」は、直交行列Pになるから、 二次形式の基底変換公式より、 A[x]=tPAP[x'] ところが、 直交行列Pは(1)を満たすから、 A[x]=tPAP[x']=diag(λ1,λ2,…,λn)[x'] |
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