JSOnline 2009年12月29日
FDAは BPA裁定に関する
3度目の期限も守らない

メグ・キッシンジャー(Journal Interactive)

情報源:JSOnline December 29, 2009
FDA to miss third deadline on BPA ruling
By Meg Kissinger of the Journal Sentinel
http://www.jsonline.com/watchdog/watchdogreports/80318597.html

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2010年1月1日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kaigai/kaigai_09/09_12/091229_JSOnline_FDA_BPA.html

 米食品医薬品局(FDA)は、ほとんどの食品及び飲料の缶の内面コーティングに含まれる化学成分であるビスフェノールAで出来た製品を使用することが安全かどうかを消費者に知らせるために自ら設定した3度目の期限をまたまた破ろうとしている。

 FDAの広報担当ミカエル・ヘルドンは火曜日(12月29日)、FDAが11月30日の期限を破ったときに改めて宣言した期限である今年中には決定をしないであろうと述べた。

 繰り返される遅れは、この化学物質が人の健康に対する脅威であると考える健康団体らを怒らせた。

 ”私はFDAの遅れに極めて苛立っおり、さらにこの遅れに対する彼らの沈黙でさらに苛立っている”とブレスト・キャンサー・ファンドの政策ディレクターであるジャネット・ヌードルマンは述べた。”FDAはさらに遅らせれば、それだ多くの新生児、子ども、妊婦が、乳がんと出生異常に関連するこのホルモンかく乱物質からの保護から取り残される”。

 BPAへの消費者の暴露を測定するためにいくつかのテストを実施してきたエンバイロンメンタル・ワーキング・グループの広報担当アレックス・フォルムジスは、この化学物質のリスクを示す証拠は”圧倒的である”として”我々は行動を起こすべき時であると信じる”と述べた。

 化学産業側のロビーストは火曜日、コメントすることを拒否した。

 テストしたアメリカ人の93%に、新生児の90%に見出されたこの化学物質は、たとえ極端に低容量であっても体内の内分泌系をかく乱すると信じられている。

 研究によればBPAは乳がんや精巣がん、肥満、性的機能障害、神経及び行動障害、糖尿病、心臓疾患などをもたらす細胞変化と関係がある。

 2008年8月、FDAの科学者らはBPAは国家毒性計画(NTP)による発見を否定して、全ての使用に付いて安全であると宣言した。NTPの科学者らは懸念の根拠を見出していた。

Journal Interactiveは、FDA科学者と化学産業ロビーストとの間の電子メールをレビューし、FDAが FDAの意見の全てを化学産業が書くことを許したことを発見した。FDAの決定は BPAメーカーが金を支払った二つの研究に基づいている。

 FDA 自身の科学委員会は、有害であることを見つけた研究を FDAが不当に無視したことに後に気がついた。同委員会はFDAが再度、BPAの安全性をレビューするよう勧告した。(訳注1

 6月3日の議会証言で、FDAディレクター、マーガレット・ハンバーグはBPAについて非常に深刻に懸念していると述べ、FDAはBPAを取り巻く科学を”新たな目で”見ることを約束した。結果は秋には出るであろうと彼女は述べた。(訳注2

 FDAは後に結論を11月30日まで延期した。

 11月30日、FDA報道担当官ヘルンドンは、FDAは、”まもなく”発表すると述べた。その発表時、健康団体はその遅延に苛立ったが、ヘルンドンは、”我々はある決定について早く発表するよう強く圧力をかけているが、誰もが早くと苛立っている”と述べた。

 その時彼は、結論は2009年中に出ると述べた。

 それ以来、ヘルンドンは今週はまだ発表がないと言うだけになった。

 彼は火曜日、消費者はこの化学物質が全ての使用に安全であると仮定し続けるべきかどうかを含む質問に答えることを拒否した。

専門家は警告を発する

 この化学物質を扱っている数十人の科学者らはFDAに食物接触するBPAの使用を禁止するよう要求した。彼らは、特にその発達がこの化学物質の影響に過敏であると信じられている胎児と新生児について懸念している。BPAは加熱されると食物及び液体中に漏れ出す。

 この化学物質は、歯科詰め物、眼鏡のガラス、水ボトル、コンパクトディスク、食器類などを含む数千の家庭用品を作るのに使用されている。毎年米国だけで、60億ポンド(約270万トン)以上が製造されており、70億ドル(630億円)以上販売されている。

 BPAメーカーは、この化学物質は安全であるという立場をとり続けている。しかし、過去数年間に数百の研究がBPAは実験動物に有害であることを見出している。最近、ヒトにも問題があることを研究が見出している。

 様々な規制当局がこの化学物質の安全性に関して相反する信号を発して、消費者を混乱させている。

 10月に、オバマ政権はBPAの影響を調査するために国立環境健康科学研究所に3,000万ドル(約27億円)を出すと発表した。

 同研究所のディレクター、リンダ・バーンバウムは12月11日、特に妊婦と赤ちゃん、及び子ども達はこの化学物質の摂取を避けるべきであると、Journal Sentinel(歩哨)に話した。

 彼女は代替品を探すよう人々に強く促した。

 消費者はBPAについて心配すべきかどうかと問われて、バーンバウムは”もちろん”と答えた。

 広く公表されたバーンバウムの言及はFDAの結論の緊急性を伝えていると健康団体は述べている。

 カナダは2008年に哺乳瓶でのBPA使用を禁止した。同様に、ミネソタ、コネチカット、シカゴ、及びいくつかのニューヨーク州の郡でも採択されている。

 食品接触のBPA禁止法案は議会で保留中である。先週、多くの議員が禁止の支持に回った。


Chemical Fallout: A Journal Sentinel Watchdog Report
化学物質がふりかかる:Journal Sentineの監視レポート
http://www.jsonline.com/watchdog/34405049.html
警告:多くの製品の容器、表面、又は内部の化学物質は、乳がん、脳腫瘍、精巣がん;精子数の減少、早熟及びその他の生殖系障害;糖尿病;注意欠陥多動症、ぜん息、自閉症などを含む長期的な健康影響を引き起こすかもしれない。10年前、政府はこれらの化学物質をテストすると約束したが、まだ終っていない。


訳注1
ビスフェノールAに関するFDA 科学委員会小委員会2008年10月31日 食品接触用途のためのビスフェノールA評価草稿の科学的ピアレビュー/エグゼクティブサマリー

訳注2
米食品医薬品局(FDA)2009年6月3日 FDA長官が言明 ビスフェノールAを安全とする決定を見直す

訳注:BPA関連情報


化学物質問題市民研究会
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