NYTimes.com 2008年10月30日
FDA科学委員会
プラスチック中の化学物質は
安全であるとするFDAの姿勢を非難
情報源 NYTimes.com, October 30, 2008
Panel Faults F.D.A. on Stance That Chemical in Plastic Is Safe
http://www.nytimes.com/2008/10/30/health/policy/30plastic.html?_r=1&partner=permalink&exprod=permalink&oref=slogin
訳:安間 武 (
化学物質問題市民研究会
)
掲載日:2008年11月9日
FDA科学委員会は、食品医薬品局(FDA)が議論ある化学物質ビスフェノールAの安全性について消費者の不安をなくす重要な証拠を無視したとするFDAに対する辛らつな報告書を発表した。
今週発表された報告書の中で科学委員会は、BPAとして知られる化学物質の安全性についてはどのような結論も出さなかった。しかし、同委員会はFDAが重要な研究を無視し、その結論にいたるいわゆる欠陥のある手法を用いたとしてFDAを批判した。
FDAのBPA評価は、”偽りの安全を作り出し”、”広範な潜在的に重大な発見を見落としている”と同報告書は述べた。
声明の中でFDAは、同報告書は”重要な問いを提起した”とし、もっと多くの研究が必要であると認めたが、BPAが安全であるとした主張は撤回しないと述べた。FDAは同報告書を金曜日(10月31日)にレビューする。
BPAは、硬くて透明なプラスチックの飲料容器や哺乳びんを作るために広く使用されおり、またほとんど全てのソフトドリンクや缶詰食品の缶容器内面ライニングに使用されている。BPAはエストロゲン様効果を持っているように見え、動物実験では成熟を早め、がんリスクをもたらすように見える。
BPAについてのほとんどの懸念は子どもに向けられているが、ある報告書ではBPAは化学療法を妨げるかもしれず、成人については心臓疾患と糖尿病の高いリスクに関連していたということを示唆している。FDAは、子どもたちや成人が暴露するBPAのレベルは有意なリスクを及ぼさないと述べていた。
この秋にFDAは、BPAに関する結論のレビューを独立科学諮問委員会に要請した。七人委員会は3つの主要大学、環境保護局(EPA)、疾病管理予防センター(CDC)からの環境健康、毒性学、及び統計学の専門家からなる。
同委員会によって提起された懸念には下記のようなものがある。
FDAの評価は、赤ちゃん用粉ミルクのサンプル数が適切ではなく、またサンプル中の変化を説明するよりむしろ平均値に過度に依存している。
FDAは、BPAの安全性について疑いを提起するいくつかの重要な動物研究を除外している。
ヒト成人と動物におけるBPAに関する新たな研究がFDAドラフト報告書の後に発表されており、それも含めるべきである。
FDAによって使用されたBPA暴露の安全マージンは”不適切”である。
声明の中でFDAは、”全ての入手可能な証拠に基づけば、アメリカ、カナダ、ヨーロッパ及び日本の規制機関の現在の合意は、食品容器を通じてのBPAへの暴露レベルが幼児や赤ちゃんを含む一般集団に対して直ちに健康リスクを及ぼすことはない”ということであることを消費者は知るべきである。
訳注1:FDA科学委員会のレポート関連情報
FDA SCIENCE BOARD SUBCOMMITTEE ON BISPHENOL A
C&EN November 3, 2008 Risks Of Bisphenol A / FDA's draft assessment of the controversial chemical is inadequate, a new report says
訳注2:FDAのBPA 評価レポート関連情報
BPAの安全性評価に関するFDAのウェブサイト
DRAFT ASSESSMENT OF BISPHENOL A FOR USE IN FOOD CONTACT APPLICATIONS
(FDAによる食品へ接触する製品に使用されているBPAの安全性評価書草案(原文))
C&EN August 25, 2008 FDA Calls BPA Safe
EXECUTIVE SUMMARYの日本語全訳(ビスフェノールA安全性研究会)
ビスフェノールA安全性研究会/ニュース
訳注3:その他の関連情報
NYTimes.com 2008年10月30日 FDA科学委員会 プラスチック中の化学物質は安全であるとするFDAの姿勢を非難
EHN 2008年10月30日論文解説 ビスフェノールAに関する FDAの決定案には重大な欠陥がある(解説:ジョン・ピーターソン・マイヤーズ)
EHN 2008年9月16日論文解説 ビスフェノールAはヒトの糖尿病と心臓疾患に関係がある(解説:マーラ・コーン)
EWG ニュース リリース 2008年8月15日 FDA のビスフェノールAに関する決定はカリフォルニア州の議員に影響を与えることを意図している
C&EN 2008年9月8日 カリフォルニア州 化学物質法案採択 連邦政府の TSCA への行動の前兆となるか
SB 1713:有害物質フリー幼児と赤ちゃん法(Toxin-Free Toddlers and Babies Act)ビスフェノールAの哺乳瓶等での使用禁止を求める下記法案は8月29日に否決
AP Aug 15, 2008 FDA says chemical found in plastic bottles is safe
米化学会2008年7月17日ウェブ掲載記事紹介/ビスフェノールAに関する国家毒性計画(NTP)概要草稿 異なる意見の入り混じったピアレビューを受ける
Our Stolen Future (OSF)による解説 2008年4月6日/ビスフェノールA 欠陥あるレビューは安全を保証しない
ビスフェノールAに関するNTP概要草稿に対するNTP 科学諮問委員会(BSC)の勧告 2008年6月11日
CBCニュース 4月15日/カナダ保健省 ビスフェノールAを危険物質と分類 発表間近
EWG 2008年1月/国立健康研究所(NIH)はBPA暴露影響に関する欠陥報告書を見直す
米化学会 C&EN 2007年9月3日/ビスフェノールAの悩み 二つの政府諮問委員会が健康リスクに関しほとんど正反対の結論
EHN 2007年8月10日による論文解説/チャペルヒル ビスフェノールA専門家委員会合意声明メカニズム、動物での影響及び現状の暴露レベルでのヒトの健康への潜在的な影響の統合
国家毒性計画会議概要 2007年3月8日/ヒト生殖リスク評価センター(CERHR) ビスフェノールAに関する専門家委員会評価 2007年3月5-7日
EWG プレスリリース 2007年2月28日/化学産業コンサルタント会社が連邦政府の生殖健康機関(CERHR)を運営
化学物質問題市民研究会
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