EWG プレスリリース 2007年2月28日
化学産業コンサルタント会社が
連邦政府の生殖健康機関(CERHR)を運営

ダウケミカル、R. J. レイノルズと関係を持つ会社がビスフェノールAのレビューを主導

情報源:EWG Press Release, February 28, 2007
Chemical Industry Consultant Runs
Federal Reproductive Health Agency
Firm Tied to Dow, R. J. Reynolds Leads Review of Plastics Compound

http://ewg.org/issues/bisphenola/20070228/index.php

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2007年3月22日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/ewg/07_02_28_ewg_CERHR_SI.html


 【ワシントン 2月28日】 出生障害とその他の生殖系障害の原因を評価する連邦政府機関は、同機関がレビューしている化学物質を製造している会社と関係があるコンサルタント会社によって運営されていたことがエンバイロンメンタル・ワーキング・グループ(EWG)の調査でわかった。上院及び下院の委員会の議長は調査を開始した。
Los Angeles Times Archive for Sunday, March 04, 2007
Agency linked to chemical industry

ロサンゼルス・タイムス2007年3月4日
「公衆衛生機関が化学産業と関係」
 国立健康研究所(NIH)管轄のヒト生殖リスク評価センター(CERHR)の諮問委員会はバージニア州アレキサンドリアのサイエンス・インターナショナル(SI)社によって運営されていた。同社は CERHR が来週(3月5日)評価を実施しようとしているビスフェノールAの主要製造会社であるダウケミカル社と協力関係にあり、また巨大タバコ会社R. J. レイノルズのために働いていたこ EWG が突き止めた。

 ”連邦政府機関はしばしばコンサルタント会社と契約するということは事実であるが、公衆健康機関のほとんど全ての機能が深刻な利害抵触を有する民間会社に委託契約された例を我々は聞いたことがない”とEWGの代表リチャード・ワイルは述べた。”政府の健康評価が、レビュー対象の化学物質を製造している企業と関係している民間会社によって管理されてよいものであろうか。”

 EWG は本日、国家毒性計画(NTP)ヒト生殖リスク評価センター(CERHR)を統括する国立環境健康科学研究所(NIEHS)所長のデービッド・シュワルツ博士に、ビスフェノールA(BPA)によって引き起こされる生殖系ハザードを評価する予定となっている3月5日の CERHR 専門家委員会の会議に先立ち、SI社と従業員に産業側との関係の全て開示させるよう要求する手紙を送った。同専門家委員会は SI社が準備した300ページの報告書を決定のベースとする。

 BPA は硬プラスチック製造に不可欠な化学物質として大量に使用されており、食品用金属缶のライニングや硬プラスチック容器で使用されている。200以上の動物実験が BPA は非常に低用量で毒性があることを示しており、一方疾病管理予防センターはテストした95%の人々から健康への懸念を引き起こすレベルで BPA を検出している。ピアレビューされた科学は、BPA は人の集団中で乳がん、精巣がん、インシュリン耐性等を含む多くの有害健康障害の増加に寄与しているかもしれないということを示唆している。

 ”ヒト生殖リスク評価センター(CERHR)とSI社の組み合わせは、CERHR によるレビュー対象となっている物質を製造または使用している化学物質製造者及びその他の産業との金銭及び研究の関係を早急に明らかにすべき深刻な倫理的疑念を提起するものである”とワイルはシュワルツ博士に書いた。”このレビューのプロセスとレビュー実施者の客観性及び適切性についての疑念は BPA に関する最終的な決定に至る前に解決されなくてはならない。”

シュワルツ博士への書簡

EWGの調査で分ったこと
  • CERHR のマネージャーである SI社の従業員アンソニー・シャリーは2004年にダウケミカル社の従業員と共著で動物テスト結果はいかにヒトの健康リスク評価に適用することができるかという科学論文を発表した。この研究は欧州化学工業協会から金が出ていた。

  • BPA の研究において、SI社は産業側からの資金の出所の公表と、BPA を製造または使用する会社を会員とする欧州化学工業協会及びプラスチック産業協会のためにしばしば働いている科学者らによる二つの主要な研究を共同で行ったことの公表を怠った。

  • SI社の科学者らは1998年に巨大タバコ会社R.J. レイノルズ社とある研究で協力し、また環境保護庁(EPA)がタバコ用農薬に関する規制を強化しないようにするためのロビーイングにも協力した。

訳注

日本における類似事例
事例1
 環境省の下記委託業務を農水省の外郭団体である(社)農林水産航空協会が実施した。
 平成18年度農薬飛散リスク評価手法確立調査業務

 農林水産航空協会は無人ヘリコプターによる農薬散布を実施・推進している団体であり、下記のような文書がウェブに掲載されている。

 農林水産航空事業/(社)農林水産航空協会会長 関口 洋一
 無人ヘリ用農薬の適用拡大を促進へ
 「・・・特に、近年、本作に位置付けられている だいず、麦類を対象とした無人ヘリ用農薬の登録数が少なく、生産者やオペレーターからは早急な適用拡大が望まれている。これらの問題点を解決するため、(社)農林水産航空協会では、関係者の要望をお聞きし、とくに登録農薬が少ない無人ヘリ用農薬について、無人ヘリ製造メーカーの協力と農薬メーカーとの緊密な連携によって解決するため、「無人ヘリコプター用農薬の登録促進事業」を推進しているので、関係の皆様のご理解と積極的なご協力をお願いしたい。・・・」

事例2
(毎日2007年3月13日)
タミフル研究班長 教授の講座に200万円 中外製薬 ほぼ毎年、研究費に

 インフルエンザ治療薬の「タミフル」 (一般名オセルタミビル)の副作用について研究する厚生労働小研究班の班長を務めている横田俊平・横浜市立大教授(小児科)の研究室に、タミフルの輸入販売元の中外製薬からここ数年、ほぼ毎年のよ与に200万円前後の研究費が同大学を通じて渡っていたことが、12日分かった。



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