オーディオ日記 第37章 夢の旅路は続く(その1) 2016年1月2日


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CDからリッピングした音源とPCオーディオにて、我が家のシステムからここまでの音が出る、ということに改めて感激している。かく鳴らしたい、と思っていたような音楽がやっと奏でられている。そして音楽が優しい。いつまでも浸っていたいと思わせられる。最近は音量もほどほどで聴くことが多いのであるが、それでも音楽を聴いていることの充実感と満足感がある。これが長い道のりの果てだとはまだまだ思わない。けれど、ひたすら目指してきた自分の音にやっとめぐり合えたのかもしれないと、ふっと思うことがある、、、

ここ数年間にわたりいろいろなチャレンジを続けて来た訳であるが、その中で目指す方向に繋がってきたと思う内容を整理、総括しておこうと思う。

1.スピーカー周り

(1)基本のユニット
SONYのユニットに出会ったのはいつの頃か記憶が定かではない。ずっとあこがれ続け、ようやっと手に入れたのは2002年であった。このユニット(SUP-L11とSUP-T11)は2way構成でもボーカルや弦に充実した音を聴かせてくれる稀有なユニットだと思う。また、ホーンドライバーらしからぬ清楚な音が特徴でもある。これにリボンツィータ(PT-R9)を足した 2way+スーパーツィータ方式 がその後長い間当方の基本構成となっていた。

(2)エンクロージャーとホーンの整備
断捨離を兼ねた転居によってリスニングルーム環境が大きく変わったことが転機になって、当時の最新のスピーカーシステム(B&W、PIEGA、ELACなど)を聴いて回った。しかし、悩みつつもこのSONYのユニットで彷徨い果てようと決心し、新たに エンクロージャと木製円形ホーンWoody&Allen工房 に製作していただいた。今や我が家の家宝と云って差し支えないものとなった。

(3)4wayへの移行とユニット選び
オーディオ仲間の素晴らしい音を聴かせていただく機会が増えた中で、この2way+スーパーツィータ方式ではどうやっても出せない音がある現実を認識させれらてしまった。SONYのユニットは使い続けたい、されど我がオーディオの音をもっとブラッシュアップしたい、その軋轢の中での自分なりの解が4wayへの移行であった。そして、一番ポイントとなると考えたのは中低域のユニット。200~800Hz、あるいは280~1000Hzあたりを受け持たせる想定とすれば、音楽の重要な部分を大きくカバーすることとなるので、ここを担当するユニットのポテンシャルが音楽再生におけるキーファクターとなる。そして、高域ユニットも然り。SONYのドライバーを4KHzあるいは5KHzあたりまでの使用と考え、それ以上の楽器の倍音成分となる帯域をすべて高域ユニットに受け持たせる想定である。たが、基本はSONYの15インチウーファーとホーンドライバーであることには変わりない。このユニットと対等に渡り合える能力と能率が必須なのである。スピーカーユニットとの出会いには不思議さも付き纏う。本来であれば選択肢にはならなかったような FPS という平面型のユニットを聴かせていただき、またお借りしたことから中低域用のユニットとして迎え入れることとなり、さらには ベリリゥムツィータ が遠く北欧からやってきた。 (なお、FPSとツィータとも Woody&Allen工房のエンクロージャ に収まっている)

2.デジタル・チャネル・デバイダーとマルチ・チャネル・マスターボリューム

2way+スーパーツィータ構成はアナログのチャンデバによるマルチアンプ方式で駆動していたが、上記エンクロージャーの製作と前後して デジタル・チャンデバ への移行を決心した。設定の自由度と音の観点から結果として、このデジタル・チャンデバが無ければ今の我が家の音は存在し得なかったと思うほどのキーデバイスである。ただし、その使いこなしにおいてはいくつかのポイントを学び、クリアーして行かねばならなかった。

(1)デジタル入力方式
アナログチャンデバの方式を踏襲すれば、DACからのアナログ出力をデジチャンに入力することになるのであるが、その構成ではD/A変換を2度行うことになり論理的にも納得できなかったので、DACを介さずPCM信号をそのままデジチャンに入力する方式を希求した。結果として、この選択は音質の観点からは正解だったと思っているが、デジチャンの後段で全チャネルの音量調節を一括して行う必要が出てくるため、(4wayでは8ch分の)マスター・ボリューム機能が必須となる。この手の市販の機器はほとんど無いこともあり、この点が最後まで苦労の種となった。

(2)マルチ・チャネル・マスターボリューム
8chマスターボリュームが手に入らず、しばらくは6chマスターボリューム(市販AVプリアンプ)をベースにあれこれと試行を続けていたが、これでは3way分にしかならずデジチャンにデジタル入力するスタイルの4way構成は実現できない。一時的にアナログ入力に戻して4wayを試行したがこれではとても満足できなかった。運の良いことにL-PAD型パッシブプリスタイルの 10chマスターボリューム を譲ってもらえることとなり、一気に目指す4way構成が進むこととなった。このマスターボリュームはロータリータイプのアッテネータを縦に3つ連結してあるという特殊な構造のもの。L-PAD型の抵抗だけで音量調節しているために鮮度感は抜群である。

3.4wayの調整

(1)タイムアライメント
ユニットの形状がコーン、平面、ホーン、ドームとばらばらであるため、4wayとして音を纏めるためにはまずタイムアライメントがぴたっと取れていなければ話にならない。これにはデジチャンのディレイ設定機能が大いにその能力を発揮してくれるのだが、それでもきちんとした測定が必須で状況を確かめつつ調整を進めねばならない。幸いにもOmni Micという測定ツールが(無償の)バージョンアップで Wavelet Spectrogram というタイムアライメント測定機能をサポートしてくれるようになり、視覚的にタイムアライメントの状況が把握できてとても調整しやすくなった。従来のImpulse Response測定だけでは4way全体の調整はなかなか難しく、これは非常にありがたかった。また、物理的なユニットの前後位置と測定結果は微妙に一致しないので測定なしでの調整は不可能だと思う。

(2)スロープ特性(遮断特性)
2way、3wayの構成では基本-12dB/oct以上のスロープ特性とすることが多く時に-24dB/octあるいは-48dB/octを使ったこともあった。ただ、4wayにおいてはこのような高次のスロープ特性では音がうまく溶け合ってくれない。また、-12dB/octではユニット間を正相、逆相という接続をせねばならず、どうにも音楽が気持ちが良くないのだ。散々迷った挙句ではあるが、-6dB/octのスロープ特性に統一し、すべてのユニットを正相接続とした。ホーンユニット構成のマルチユーザーで特に4way以上でエールやゴトーのユニットをお使いの方にこのような設定をされている方が多いこともあり、それを参考にさせていただいた。実のところ、-6dB/octというスロープ特性はいままで全く使ってきておらず、うまく使いこなせるか心配だったがそれも杞憂であったようだ。このスロープ特性での設定では音楽が自然に感じられて好ましい方向になる。

(3)出力レベルの設定(デジタル絞りの排除からプラス方向へ)
各チャネルの出力レベル設定は周波数レスポンスを測定しながら行えばそれほど難しくはないのだが、デジチャン上で出力レベルの設定を減衰方向にすると(デジタル絞りを使うと)どうも音が鈍るように感じられて望む方向の音にはならず、デジチャンでの出力レベル設定は±0dBを原則としてきた。所謂デジタル絞りを排除して、個々のレベル設定は後段のパワーアンプ側で行うようにしていたもの。オーディオ仲間のアドバイスによって、これをさらに推し進めて、デジチャン上の出力レベルを 中高域で+3dB、高域で+9dB に変更した。差分はパワーアンプ側の設定変更で吸収している。一般的な音楽における中高域、高域のレベルは相対的に低いため、デジチャンにおけるPCMの演算処理では(ビット数の少ない)極小の信号レベルを扱わねばならなくなってしまう。これを避けるために中高域、高域に向かって出力レベルを大きくして、D/A変換の際のデメリットをミニマイズすべきというもの。この効果は存外に大きいと思う。

(4)リスニングポイント
ホーンや平面スピーカー(FPS)を使用していることもあり、我が家の4way構成では各ユニットの投影面積が結構大きい。また、設置上の問題からFPSをインラインに配置できていないため、各ユニットからの音を溶け合わせる、ということが課題のひとつでもあった。現時点では最終解ではないのであるが、リスニングポイントを従来位置より 1m程度後ろにずらす ことによって、ある程度音の溶け合いに納得感が得られるようになり、音像、広がりという観点もそこそこというようになった。家具などのレイアウト上の制約もあって従来のリスニングポイントを決めていたが、これを無視して音楽優先とした訳である。スピーカーからの距離は約4.5mとなりリスニングポイントの背後には3m以上の距離がとれているという状態である。

4.PCオーディオ周り

PCオーディオの基本構成は自作PC上のVoyageMPD(Linux)である。これをタブレット端末からのリモコンアプリで操作している。

(1)USB DDC/DAC
早くからUSB~S/PDIFの変換チップとしてXMOSに注目し、 評価ボード を試し、後に製品として登場した JAVS X-DDC を使用してきた。XMOSには概ね満足していたのであるが、この時点ではアナログに比してデジタルファイル音源の再生にはまだまだビハインドがあることを痛感していた。ある時オフ会にてFPGAベースのUSB DDCの音を聴かせていただき、かなり差があることを認識。我儘を云ってこのFPGAベースの USB DDC/DAC を製作していただいた。このUSB DDC/DACはデジタル出力の他、PCMtoDSD対応、DSD音源の11.2MHzへのアップコンバート機能などを併せ持つ優れもので、DSDを含む多様な音源への対応に非常に重宝している。(なお、最近はUSB DDC機能に徹した製品はほぼなくなってしまっているのがちょっと寂しい気がする)

(2)ノイズフィルーターとシールド
自作したオーディオ用PCは、OS起動ドライブのSSD化やモニター、キーボード、マウス、CDドライブ無しなど一般的な音質上の工夫はしていたが、それ以上の特段の対策はしていなかった。こちらもやはり電源周りにノイズフィルターを入れたPCの音を聴かせていただき、その音質にノックアウト。PCオーディオによるデジタルファイル再生のビハインド感を払拭するような音がするのだ。PCによる再生に少し限界を感じていたところもあったのだが、目から鱗。まだすべての対策は終わっていないが、LANケーブル、USBケーブルの シールド 、PC内部の主要なパーツへの ノイズフィルター の挿入やUSB拡張ボードに対するシールドケースなど順次対応を進めている。合わせて、NASの電源に対してもノイズフィルター挿入と電源ラインへのシールドを実施した。一連の対策によって、PCオーディオからの音が一皮剥けた(以上の)効果があったと実感している。

振り返ってみれば、これらのひとつひとつは多くの方々の知見の結晶やアドバイスを参考にさせていただいたもの、また機器の借用だったり製作していただくことなどの好意にも恵まれたもので、とても自分ひとりではここまで辿り着けなかったと痛感する。音楽を聴くことやオーディオという趣味自体は最終的には一個人の心の中のものかもしれないが、切磋琢磨、ノウハウの共有など盟友とも云うべき仲間の大切さもとても大きいと思う。改めて感謝するとともに、今年もさらに、少しでも、前進を続けたいと思う。


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