オーディオ編


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1.ゴンザエモンのマルチアンプ実践(2012年12月13日)

デジタルチャネルデバイダーの導入によって、マルチアンプシステムの構成が大分変更となったので、この実践編に追加しておこうと思う。チャネルデバイダーをアナログからデジタルに変更することとなった一番大きな要素は、何よりも「音」であった。エンクロージャー、ホーンの変更により多少の設定変更を覚悟していたので、確かにデジチャンの設定の自由度は魅力ではあった。だがオーディオとしては当たり前かもしれないが、最終的に導入を決定付けたのは、その観点よりも音であった。中域から高域にかけての音の透明度や素直さが当方所有のアナログチャンデバよりも秀逸と感じられたからである。

一方で、従来のようなプリアンプ、パワーアンプの間にチャネルデバイダーを置く構成では余分なA/D変換、D/A変換が加わることもあって、この音の良さを完全に発揮させることができない。また、当然ながらDACにも拘ってきた訳であるが、そのアナログ出力を再度デジタル化してしまうことには心理的な抵抗もあった。結局いくつかの実験的構成を経て、新しい構成に落ち着くことになったが、この辺りのについては DF-55に関する日記 と新たな システム構成 に詳細を記した。

従ってここでは、主としてスピーカーの設定についてまとめておこうと思う。なお、スピーカーシステムのユニットについては変更がないが、ユニットに匹敵するくらい エンクロージャーとホーン の影響は大きいので、その辺りをどう活かし纏めていくかが課題でもあった。

ユニットは左からPioneer PT-R9、Sony SUP-T11、SUP-L11である。
Pioneer PT-R9 SONY SUP-T11 SONY SUP-L11
ユニットの諸元:
PT-R9  97.5dB  7KHz以上を推奨
SUP-T11 110dB  600Hz以上(-12dB/OCTの場合)を推奨
SUP-L11  98dB  800Hz以下を推奨

マルチアンプの構成図: (全体はこちらに)
Drive Section Diagram

調整過程においては、設置位置の微調整や周波数測定など行いながら、行きつ戻りつしながらの追い込みとなるが、
1.低域、中域の繋げ方
2.その後に高域の乗せ方
という順番での追い込みを行ってきた。なお、設定ポイントはクロスオーバー周波数、スロープ特性、出力レベルが基本の3点となる。

まずは低域、中域の繋げ方がやはりスピーカーシステムの基本となるので、ここから固めていく必要がある。候補となるクロスオーバー周波数はユニットの特性から、500Hz、560Hz、630Hz、710Hz、800Hzの5通りである。狙いは低域の充実度とボーカル帯域のクリアーさの両方を実現したい、というもの。中域のホーンは低域限界があるので、あまり低いところまで使用することは難しいが、さりとてウーファーの受け持ち帯域はなるべく低くとどめて、ホーンのトランジェントの良さを活用できる帯域を増やしたい、という二律背反・ジレンマが存在する。また、ちょうど声の(基音の)帯域が200Hzから800Hzくらいにあり、ここにクロスオーバー周波数が来ることになるので、再生音に対しても支配的になり、この設定の塩梅(塩加減)が非常に重要なのである。
(注記)上記の悩ましい点を根本手的に避けるためには4way化して、200Hz~800Hzあたりを単独のミッドバスユニットで受け持たせる方法があるが、システムの構成がさらに大きくなってしまうことになる。

デジチャンの利点のひとつは高次のスロープ特性(-48dBあるいは-98dB)を使用することによって、この二律背反する点を緩衝できることにある。一般にホーンはカットオフ特性の二倍の周波数を低域限界とする。例として、カットオフが350Hzのホーンに対して700Hz以下のクロスオーバーで使用すると、ホーンの特性によって再生音圧に山谷が出てしまうのである。特に低次のスロープ特性(-12dBあるいは-18dBなど)ではクロスオーバー周波数を越えた帯域でもかなりの音圧が残るため、その影響は大きく、カットオフ特性における低域限界の約束事を守ることが望ましいのである。
(注記)スロープ特性とは1オクターブ離れた周波数(倍または二分の一)の減衰量を示すものである。また、このスロープ特性によって位相の回転が発生するが、24dBの倍数(24、48、96dB)であれば位相回転を0度に抑えることが可能である。

だが、高次のスロープ特性を使うことによって、このクロスオーバーを越えた帯域を大きく減衰させることができるので、上記の悪影響をミニマイズすることが可能となる。高次のスロープ特性はまた、ユニットの得意領域を越えた周波数の再生はなるべく避け、美味しい領域だけを使うことが出来る、とも云えるであろう。ただし、当然ながら良いことばかりではない。高次のスロープ特性はまた帯域の繋がりに滑らかさを欠くことにもなり、特にユニットの音質が、例えば振動盤素材の違い等によって、大きく異なっている場合は、音色的な違和感も出やすいのである。従って、再生される音が「心地よい音楽」となるように繰り返しヒアリングして設定を確定して行くことになる。
New Speaker New Speaker

低域、中域の最終的な設定は
低域ユニット:クロスオーバー周波数500Hz、スロープ特性-24dB 出力レベル±0.0dB
中域ユニット:クロスオーバー周波数500Hz、スロープ特性-48dB、出力レベル-14.7dB
となった。
低域を630Hz以上とすると声の帯域の一体感、充実感はあるのだが、かろやかさや透明感がやや損なわれる。女性ボーカルを聴くことも多い当方としてはここはやはり500Hzか560Hzであろう。560Hzとする場合、中域のスロープ特性は-24dBで繋がりは良さそうである。ただ音の芯の出方と広がり(オーラの出方)で比較するとやはり500Hzにしたいと感じる。この場合は-48dBのスロープ特性の方が違和感が無く、音の広がりにも影響がない。ちなみに400Hzを試してみたが、これは流石に駄目であった。やはりこの辺りの周波数が40cm円形ホーンの低域限界かもしれない。また、出力レベルであるが、公称の能率は低域ユニット98dB、中域ユニット110dBと12dBの差なのだが、聴感上はこれではバランスが取れず、さらに-2.7dBほど絞り込む結果となった。

さて、中低域の繋ぎが定まったところで、3wayとして高域を乗せていくことになる。候補となるクロスオーバー周波数は7KHz、8KHz、9KHz、10KHz、11.2KHzとこちらも5通りである。アナログデバイダーの時代は2way+スーパーツィータ(16KHzでアドオン)という使用方法であったので、それを踏襲するか、3wayとするか、と若干悩んだ点でもある。中域用のドライバーは高域レンジがかなり伸びていることもあり、ツィータを必要としない使い方がSONYオリジナルである。ただし、プロユースと当方のような狭小空間では音量も相当違うので、同一とする必要はないし、できれば高域ユニットであるリボンツィータが持つ空間再現能力をうまく活かしたいと考えて、3wayとする判断とした。実際に3wayであれば中域用ドライバーの高域側の分割振動を抑えることが出来るし、聴感上もオーケストラのホール感、エコー感がナチュラルで好ましいと感じた。なお、一般的に中域にホーン/ドライバーを使用する3wayでは7KHz、8KHzのクロスオーバー周波数設定が古典的でもあるので、まずはその辺りから試してみたが、このクロスオーバー周波数ではツィータの存在がはっきりしてしまい、音色的にも中域のアルミダイアフラムとベリリウムのリボンが溶け合わないように感じる。徐々にクロスオーバー周波数を上げていくこととなり、結局は以下のように11.2KHzの設定に落ち着いた。まさにリボンツィータの得意領域に専念させる、という設定になったが、出しゃばらずかと云って高域不足にもならない、という微妙なポイントかもしれない。また、出力レベルは公称の能率が97.5dBであり、低域ユニットよりはわずかに低いのであるが、こちらも少し絞り込む結果となった。結局のところ低域ユニットの能率は公称値(98dB)より2dBくらいは低いということであろう。なお、ユニットの設置ポジションの観点から、高域ユニットについては15cm分のディレイをかけているがこれは厳密なものではなく、えいやの設定値である。
New Speaker

中域、高域の最終的な設定は
中域ユニット:クロスオーバー周波数11.2KHz、スロープ特性-24dB 出力レベル-14.7dB
高域ユニット:クロスオーバー周波数11.2KHz、スロープ特性-24dB、出力レベル- 1.0dB Delay 15cm
(注記)出力レベルの設定はすべてチャネルデバイダーの設定とし、パワーアンプ側での個別の絞り込みは実施していない。

さて、このような設定により既製品のスピーカーでは得られない自分だけの「究極のマイベストサウンド」が実現したのであろうか。現実には、それができたとの確信には至らないし、今後もまだまだ紆余曲折はあろう。欲を云えば音楽の深遠を感じさせるような低域の空気感を望みたいが、これについてはまだまだ不足。この辺りは現状のユニット構成だけでは実現が難しく、サブウーファや部屋を含めた調整が必要だと思う。また、チャンデバの後段にて音量調節を行う構成としていることから、6chの一括ボリュームが必須なのであるが、現在は暫定措置に留まっており、これをもっと音の良い仕掛けに変更すべきであるが、現時点ではその方式や構成の研究中である。
それでもこの構成・設定で聴くモーツアルトに自分自身心から納得できるようになってきたことは、何にも代え難い幸せである。

いつの日か、この夢の彼方に「究極のマイベストサウンド」の実現が確信できたならばさらに大きな喜びをもたらしてくれるものと信じ、彷徨い果てるまでこのオーディオ道を突き進もうと思う。
New Speaer Setting


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