オーディオ日記 第36章 歩き来た道の果て(その12) 2015年12月30日


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前回の各種シールド対策(LANケーブル、USBケーブル、USB拡張カードなど)に続いて、電源ラインへのノイズフィルターの対策を実施した。

対策実施の順番を以下のように想定した。現時点では下記の1~3まで実施済みである。

1.(NAS)電源ライン(ACアダプタからの12V/2A電源ライン)
2.(PC)ケースファン
3.(PC)USB拡張ボードの電源
4.(PC)CPUファン
5.(PC)CPU電源ライン

効果を確認しつつ徐々に対策を行っていく想定であるが、PC内部に先立ってまずはNASの電源ラインからやってみた。ファインメットビーズとフェライトを組み合わせてノイズフィルターとするのであるが、使用したパーツはケンさんからご教授いただいたもの。

ファインメットビーズとフェライト:


当方のNASは結構古いごく廉価なものをずっと使用しているのであるが、昨今はDELAのNASが結構評判良いので、これに対抗してみようと考えた。となれば、まずはDELA N1ZならびにN1Aの実力を確認せねばならない。ノイズフィルターの対策を実施するために秋葉原へパーツを購入しに行ったついでに、試聴させていただいた。(環境はDELA N1ZをNAS兼ネットワークプレイヤーとして使用し、DACはTAD、スピーカーはB&W 802D3。B&Wの試聴の感想は後述する)

もちろん、個々の機器が随分と異なるのでNASのみの音質に言及することは難しいのであるが、トータルな出音は非常に素直で優しく、広がり感も充分ある。高域の質感も高い。B&Wの新しいシリーズについては今回が初めての試聴なので、各機器との相性による変化などはまだわからない。NAS兼ネットワークプレイヤーとしてのDELA N1Zの評価もこの試聴での印象で云えばとても良い。気になるようなデジタル臭など皆無、音楽が自然である。楽器の背景も透明感、S/N感とも高く秀逸。

このNASは正直欲しいな~と思った。N1Zが良いのは当然であろうけれどN1Aでも充分かもしれないな、、、と当初の目的を離れて別のことを考え始めてしまった。ところが、そういう面でこの機器を評価すると、リモコンソフト(今回の試聴で使用したのはLINN KINSKY)との組み合わせにおいて、どうしても「駄目」が出てしまう。DLNAベース(正確にはOpenHome)のネットワークプレーヤーは総じてリモコンソフトの反応がもっさりと遅い。MPD系のリモコンソフト(MPad、MPod)に慣れてしまっている当方としてはこの遅さがとても気になる。楽曲DBの情報を再生プレーヤーとタブレット端末上のリモコンアプリ双方に保持していることがMPD系の特徴なのであるが、反応速度(楽曲検索、カバーアート表示など)がまるで違うのだ。DLNA系のネットワークプレーヤでもLUMIN App(ただしこちらは汎用性はない)は例外で反応はシャープである。ということは最初からこのような設計デザインにすればNASへのアクセスにDLNAを使用していたとしてもスピーディさは担保できると思うのだが、、、、

本題に戻る。DELAはおそらくいままでのNASのあり方をオーディオの観点から基本に立ち返って見直したものと思われる。当方のPCオーディオの構成はNAS、HUB、PC本体、USB DDC/DACというものであるが、DELAは本機とUSB DDC/DACだけで済んでしまう。つまりHUBなどの余分な機器やLANケーブルが不要になるというメリットも大きいのだ。Simple is the best! というのはここでも真理であると思う。なれどもう少し我が家の現状のNASに手を加え、試行錯誤を続けてから改めて考えようと思う。その手始めが電源ラインへのノイズフィルター挿入でもある。本来的にはNASへ良質の電源を供給したいのであるが、手持ちの電源では容量不足で起動できないため、ACアダプタ(スイッチング電源)を使用している。しかし、結論から云えば、NASの電源ラインにノイズフィルターを入れた単体での効果はほとんど感知できなかった。NASに関してはLANケーブルのシールドが我が家の環境では効果が感じられたのだが、二匹目の泥鰌は期待に反して小物だったようだ。

次にPC周りであるが、現時点では上記順番で記載した「2.ケースファン」、「3.USB拡張ボードの電源ライン」、この二つへのノイズフィルターの適用にとどめて、その結果を試聴している。ノイズフィルターのなし、あり状態を入れ替えながらの比較はかなり面倒なので、今までの環境の音と印象が変わるか、というレベルにとどめている。こちらもこの対策だけで効果は顕著であるとは云えないかな、という感じである。率直に云えば当方の駄耳と表現力ではこの差を明確に検知した上で言葉にすることは困難。ただし精神衛生上の観点からは対策をやったという安心感がある(弊害はおそらくないと思う)ので、予定通り最後までやってみようと考えている。この対策リストには入っていないのだが、マザーボードの24PIN電源ケーブルに対するノイズフィルター対策が実は一番効果があるのかもしれない。ただしこちらはちょっと24本と数も多くて大仕事なので、まだ予定は立てていないのだが、まあしばらくは「5.CPU電源ラインへ」のノイズフィルター挿入までやってみた上で、聴き続けて様子をみようと思う。

なお、今までのシールド系の対策と今回のノイズフィルターと両方の効果確認として、じっくりと音楽を聴きこむと、音楽の背景が静かで見通しが良くなったという印象のみならず、低域の質感に変化があることがわかる。低域の曖昧さが減少し、どこからどのような低域が出ているのかということが明確になり、実体感とともによりソリッドになった印象なのだ。これは新しい発見であり、望ましい方向への変化だと評価している。

さて、少し違う観点の話なのだが、デジタルファイル音源のベストな再生環境を考えた時に、どのような構成が良いのかあれこれと思案している。先に述べたようにPC、HUB、NASという構成は関与機器が多く、やはりベストではないのかもしれないとも思う。単純な機器構成の方がベターとするならば、SONY HAP-Z1ESのようなオールインワンのHDDプレイヤーがベストだとも思う。そして次点はDELAのようなNAS+ネットワークプレーヤーのような構成だろうか。もし、SONY HAP-Z1ESに「PCMデジタル出力」があれば、当方もこれを選択していたかもしれないが、幸か不幸かデジタル出力はない。この先もPCベースで続けるか、違うタイプの機器へ移行するか少し悩んでもおり、一皮向けたような新たなタイプの機器が出て来ないものかと密かに期待している。ただ、現在のデジタルファイル再生は音質とタブレット端末での操作性、その両方での評価となってしまうことは論を待たない。音質と操作性、この二つはどちらももはや妥協できないものなのだ。

(追記)B&W 802D3の試聴

DELA N1Zとあわせて試聴したB&W 802D3についてであるが、一聴でこのスピーカーの音の良さ、素性の良さが良く判った。試聴室が広く音響対策もしてあり、背面、側面との距離も充分とれていることにも関係があるとは思うが、音がふわっと広がり心地良い。ダイアモンドツィータの音の良さは改めて言及の要も無いであろう。一方でケブラーから素材変更となったミッドレンジユニットであるが、ここは評価が分かれる。新しいスピーカーなのでまだまだエージングが充分ではないこともあるかな、とは思うがすこしカサつくような感じで気になるのだ。もともとケブラーでもその傾向があったのではあるが、それに比すれば大分良くなっているような気はする。もっと自然さと透明感があれば、と思わせられる部分がまだあるのだ。また作りも決して悪くはないのだが、この価格に相応するようなオーラが足りないと当方は感じた。この下の803D3もあわせて試聴したが、こちらもそこそこ結構な価格なのにこの作りで所有する喜びが生まれるのかな、と素朴な疑問が生じてしまう。B&W社のスピーカーは言うなれば趣味の品というよりは、れっきとした工業製品というべきものなのかもしれない。その観点からみれば水準以上の良いスピーカーだとは思うのだが「欲しい」とは思わせられない、、、ちょっと不思議でもある。蓼食う虫も好き好き、というがこれは単に当方の好みの問題だけだろうか。


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