オーディオ日記 第34章 ブレークスルー(その1) 2014年2月5日


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4wayへの移行を視野に最適なミッドローユニットを探しているが、想像もしていなかったようなユニットに出会った。FPS社というところのその名も Flat Panel Speaker である。これはホームユースを目的としたオーディオスピーカーユニットではないので、いままで全く選択肢の範疇にはなかったし、そもそもが初めて聞く名前である。オフ会で相互訪問させていただいたT氏がメインシステムにて中低域に使用しているユニットで、その表現力は非常に素晴らしく、特にクラッシク系の音楽においては自然な響きの再現に特筆すべき能力をも持っていると感銘を受けた。当方が4way化へのチャレンジに際してミッドローユニットを探していることをご存知のこともあって、今般予備用にお持ちのユニットをご好意により借用することとなった。

外観はおよそスピーカーユニットのイメージではない:


このユニットの動作原理の詳細などはFPS社の ホームページ に詳しいのでそちらに譲るが、とにかく音が良く飛ぶ。音量を絞っても細かい音が欠落しない。そもそもの目的が「音を飛ばす」ことにあるユニットなのでこれは当然かもしれない。ある意味ではホーンドライバーと組み合わせるミッドローユニットとして非常に親和性が高いのではないかとも思う。

しかし能率がやたらに高いということはなく、生産している一番大きなサイズのユニット(今回借用したものと同じ)でも能率は90dB程度と平均的でである。音の到達力が高く、明瞭度が失われないという利点がありながら、音が粗いとかクオリティが低いということは全く無い。平面スピーカーであることによる振動板の大きさも影響しているものと思うが、歪感はほとんど無くてむしろとても聴き易いのだ。ただし、このユニットは動作原理、設計目的から云っても高域に向かって指向性が強くなる。従ってホームオーディオ用として考えた場合、1KHzを超えるような周波数で使用することはあまり向いていないと思う。また、距離に応じた音圧の減衰が少ないようなので、他のユニット(特にウーファ)とのリスニングポイントでのレベル合わせは重要であろう。

現在はまだまだ設定などは試行中であり、まずは200Hz~800Hzの受持ち帯域でテストを開始しているが、クラシック系の音楽では空間の表現力が抜群で、演奏会場、録音会場の雰囲気の再現性にとても優れている。また特筆すべきは鮮度感の高さと音の肌触りの良さ、柔らかさを同時にあわせもつ、という点である。今までに聴いたことのあるユニットの範囲ではこの両立がなかなか難しいと感じているのであるが、このユニットでは相反する要素の表現力も高く、その結果として弦楽器の透明感なども絶品なのだ。

低域は現状200Hzでのクロスオーバー設定であるが、このユニットでは音楽のファンダメンタル部分にも解像力と力感が出て好ましい。ユニット自体の再生周波数帯域は90Hz~10KHzなので、あまり低い音までは出ないと思うが160~180Hz辺りでウーファとクロスさせても良いかもしれない。今までミッドローのテスト用に使用してきたELAC BS404の低域用ユニットはバスレフなので、低い周波数でクロスさせようとするとバスレフ起因の音が入るのか、すっきり感が失われてしまうのである。このユニットは平面スピーカーでありそのような心配もないので、今後いろいろと受持ち帯域を変えて試聴を続けてみようと思う。

ただし、不得意が全く無い、という訳でもない。DAW編集によって音を作り上げたようなハイファイ指向のソースでは付加された効果が手に取るように判ってしまい、ちょっとやりすぎだなぁ~という気分になってしまう。これは難しいところだ。クラッシク系の音楽をゆったりと聴きたい当方としてはこのような再生は求めていないのでそれほど問題にはならないが、オールラウンドの再生を行わせるためには相当シビアなチューニングを行う必要がありそうだと感じている。使いこなしの容易なユニットではないが、チャレンジ精神を燃え立たせてくれるユニットでもある。

また、悩ましいのはその鉄板のような外観である。そもそも家庭用としての利用を考えていないだろうし、ホールや建物と一体となるように設計、組み込むユニットであるため、見かけは甚だしく無骨である。テスト用としてはともかく、リスニングルームに常設するためには見栄えも考え、しっかりとお化粧などの工夫をしてあげないと家人の不評を買うこと間違いない。

既存3wayの内側に設置してテスト中:


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