Rock Listner's Guide To Jazz Music


Donald Byrd


Off To The Races

曲:★★★
演奏:★★★☆
ジャズ入門度:★★★★☆
評価:★★★

ドナルド・バードのトランペットの特徴を言葉で表現するのは難しい。も
ちろん一定水準以上の技量があることに疑いはなく、同業者からも理
知的と評されているのに僕にはこれと言った個性を感じられない。一
方で音楽家としてどうかといえば、少なくとも50年代のバードは典型的
なハード・バッパーで、特にこのアルバムはそのままのイメージ。特徴と
言えば盟友ペッパー・アダムスを含む3管編成であることで確かにバリ
トン・サックスの音はアクセントになっているものの、アレンジやハーモニ
ーの点ではそれほど3管編成が有効に生かされているとも思えない。1
曲目に有名スタンダードを持ってくるあたりもブルーノートらしからぬ没
個性的な選択。アルフレッド・ライオンがこの曲を演れということはあり
得ず、コルトレーン名義の「Black Pearls」でも取り上げていることから
恐らくバードお得意のレパートリーだったのでしょう。ロリンズの [4] や、
ブレイキーのブルース・マーチのドラムパターンを拝借するところなどもオ
リジナリティを重視するブルーノートらしからぬ構成。逆にいえばオーソ
ドックスなハード・バップが聴きたい人には安心できる内容で、質は水
準をクリア。また、バードのトランペットが実に気持ちよく歌っているのは
間違いなく、その点でリーダーとしての存在感は十分示しているので
「ドナルド・バードってどんなトランペッターなんだろう」という人への名刺
代わりにはなっている。マクリーンは出番こそ多くないものの、あの哀愁
のトーンで気持ちよくソロを放っていてその助演ぶりは隠れた聴きどこ
ろ。(2007年12月22日)
[Recording Date]
1958/12/2

[1] Lover Come Back To Me
[2] When Your Love Has Gone
[3] Sudwest Funk
[4] Paul's Pal
[5] Off To The Races
[6] Down Tempo

Donald Byrd (tp)
Jackie McLean (as)
Pepper Adams (bs)
Wynton Kelly (p)
Sam Jones (b)
Art Taylor (ds)

Byrd In Hand

曲:★★★☆
演奏:★★★★
ジャズ入門度:★★★★
評価:★★★

マイルス・デイヴィスの、リー・モーガンの、あるいはフレディ・ハバードの
トランペットが好きでたまらないというジャズ・ファンはかなり多いんじゃ
ないかと思う反面、知名度があるにもかかわらずバードのトランペット
が好きでたまらないという人はあまり見かけないのは、飛び抜けた個
性を持ち合わせていないからだと思う。このアルバムでも、そんなイメー
ジ通りの演奏で [1] から伸びやかでリラックスしたトランペットが聴ける
ものの極めてオーソドックス。音楽的にはやはり適度なリラックス・ムー
ドを備えた典型的なハード・バップで、オリジナル曲の3曲を含めて特
に「バードならではの」というムードがないところがなんとも凡庸という印
象に結びつく。視点を変えれば地味ながら良質のハード・バップ・アル
バムでもあるので、そこに重きを置くのであれば好盤として推奨でき
る。同じ3管編成という点も含めて「Off To The Races」と似たムー
ドですが、スタンダードを1曲だけに抑えて、オリジナル度が高い分だけ
こちらをほんの少し上と評価。(2008年1月5日)
[Recording Date]
1959/5/31

[1] Whichcraft
[2] Here Am I
[3] Devil Whip
[4] Bronze Dance
[5] Clarion Calls
[6] The Injuns

Donald Byrd (tp)
Charlie Rouse (ts)
Pepper Adams (bs)
Walter Davis Jr. (p)
Sam Jones (b)
Art Taylor (ds)

Fuego

曲:★★★★
演奏:★★★★☆
ジャズ入門度:★★★★
評価:★★★★

ハード・バップ時代のバードの代表作として真っ先に挙がるのがこのア
ルバム。というわけで、バードのアルバムとして最初に入手していたもの
の、さして感銘を受けたわけでもなく決して愛聴盤というわけではなかっ
た。最近になって、他のリーダー・アルバムをいろいろ聴くようになった結
果、なるほど、ムードが他とは違うことが、独自のカラーがあることがわ
かってきた。ゴスペルやブルースの落ち着いたフィーリングに溢れたオリジ
ナル曲で固められていることから全体の統一感があるし、そのムードが
どこか冷めているようで演奏は熱く、「Kind Of Blue」のように聴きこむ
ジャズとしての深みがあると言ったら褒めすぎか。ここではデューク・ピア
ソンの洗練されたピアノとジャッキー・マクリーンの哀愁のトーンが冴え
渡り、その相性がいいことも美点。バードはポケット・トランペットを吹い
ているせいか、微妙に軽い音色であることも他のアルバムとの差別化
になっている。いずれにしても洗練されたムードのジャズを聴きたいとい
う人は試してみる価値があるでしょう。完成度と質の高さを認めつつ、
前後のアルバムと連続性をを感じないのもまたバードらしいのかも。個
人的にはピアソンがMVP。(2007年10月27日)
[Recording Date]
1959/10/4

[1] Fuego
[2] Bup A Loup
[3] Funky Mama
[4] Low Life
[5] Lament
[6] Amen

Donald Byrd (tp)
Jackie McLean (as)
Duke Pearson (p)
Doug Watkins (b)
Lex Humphries (ds)

The Cat Walk

曲:★★★★
演奏:★★★★
ジャズ入門度:★★★★
評価:★★★☆

「Fuego」 は、ドナルド・バードの日常の活動メンバーというよりは、一
回きりの録音のためにメンバーを集めて、曲もある種のコンセプトを持
たせたスペシャルなアルバムだったように思える。本作では、その
「Fuego」 で素晴らしい働きをしているデューク・ピアソンをそのままに、
レギュラー・グループで活動を共にしているペッパー・アダムスを再度迎
え入れるという編成でスペシャル感はやや減退。バードのオリジナルが
2曲に対してピアソンが3曲という構成の通り、全体的にピアソンのカラ
ーが強く、黒さと洗練のバランスが絶妙なピアソンのピアノがやはり耳を
惹く。バード、アダムスのプレイも伸びやかで実に気持ちよく歌ってい
て、60年代のハード・バップとしてなかなか楽しめる内容。2曲で披露さ
れているバードのミュート・トランペットも哀愁があっていい。あと、やっぱ
りフィリー・ジョー・ジョーンズのルーズでラフなリズム感がなんとも魅力
的。リーダーとしてのバードの存在感は?という疑問は浮かぶものの、
なかなかの好盤。(2007年5月31日)
[Recording Date]
1961/5/2

[1] Say You're Mine
[2] Duke's Mixture
[3] Each Time I Think Of You
[4] The Cat Walk
[5] Cute
[6] Hello Bright Sunflower

Donald Byrd (tp)
Pepper Adams (bs)
Duke Pearson (p)
Laymon Jackson (b)
Philly Joe Jones (ds)

Free Form

曲:★★★★
演奏:★★★★☆
ジャズ入門度:★★★
評価:★★★★

バードは、少なくとも50年代にはハード・バップ・スタイルのグッド・トラン
ペッター以上の存在ではなかったと思う。しかし、このアルバムでサイド
を務めるのは「合っていないのでは?」という不安を抱かせるいわゆる
新主流派のショーターとハンコックに、60年代のブルーノート・ハウス・リ
ズム・セクション。[1] でいきなり、リー・モーガンやハンク・モブレーのア
ルバムを思わせる、既聴感タップリの典型的な60年代ブルーノート・サ
ウンドが聴こえてくると、「バードもそうなのか」という思いを抱いてしま
う。乱暴に言えば他の曲も全体的にはその傾向にあって、ハンコック作
の [2] (とボーナストラックの [6])を除く全曲をバードが書き下ろしてい
るにもかかわらず、サイド・メンのフレッシュな演奏が展開されると、ショ
ーターかハンコックのアルバムではないかと思いそうになってしまう。た
だ、そのスタイリッシュな曲とバードのトランペットに違和感はない。バー
ドのコンボでデビューさせてもらったハンコックは、[2] のモーダルな美しい
バラードで恩返し、ショーターはそれほどハメを外しているわけではない
のに期待を裏切らない存在感。最大の聴きどころはフリーキーな [5]
で、クールなスリルがたまらなくカッコいい。でも、それがバードの個性か
ら来るものとは思えないところがまた微妙。(2007年10月20日)
[Recording Date]
1961/12/11

[1] Pentacostal Feeling
[2] Night Flower
[3] Nai Nai
[4] French Spice
[5] Free Form
[6] Three Wighes (bonus track)

Donald Byrd (tp)
Wayne Shorter (ts)
Herbie Hancock (p)
Butch Warren (b)
Billy Higgins (ds)

Mustang!

曲:★★★☆
演奏:★★★★
ジャズ入門度:★★★
評価:★★★☆

66年という時代背景通りにジャズ・ロック的な軽快なリズムで [1] が始
まると、なんだかリー・モーガンのアルバムを連想してしまう。一転、スピ
ーディーなマッコイ・タイナーのピアノに導かれて疾走する [2] もこの時
代らしいムード。でもカッコイイ。ソニー・レッド、モブレー、バードのプレイ
にもキレがある。実は60年代のモーガンのアルバムと印象が大きく異な
るところがひとつあって、それはドラマー。ビリー・ヒギンズよりも骨太なフ
レディ・ウェイツのドラミングはとても気持ちよく、改めてドラムの重要性
を認識させてくれる。3管編成という部分をそれほど強調しているわけ
でなく例によってサウンド的に特筆すべき点がないバードのリーダー・ア
ルバムですが、ちょっと俗っぽいソウル/ファンキーさが聴き手を選びそう
な [4] 、のんびりムードの [5] 、[3] のようなバラードも織り交ぜたバラ
エティに富んだ曲構成とバードの伸びやかなプレイ、キレ味も流麗さも
遺憾なく発揮しているマッコイの好演が印象的。ただ、アレンジやフレ
ーズにどこかで聴いたことがあるものがチラホラ出てくるのは意図的なも
のなのかどうかよくわからず、僕はあんまり面白いとは感じない。

64年録音のボーナストラック [7] [8] はメンバーの違いがそのまま音に
も出ている印象。[7] は「Miles Smiles」に収録されている演奏と比べ
るとなんともフツーに聴こえ、やっぱりマイル・クインテットは凄かったんだ
なと思うものの、ここでの軽快な演奏とよく歌っているバードのトランペッ
トは悪くないとも思う。[8] は [6] との聴き比べで、こちらはメンバー、編
成の違いがそのまま出ている程度でごくまっとうなジャズであるところが
バードという人の資質だったんだろうなと改めて思わせてくれる。(2009
年3月20日)
[Recording Date]
1966/6/24 [1]-[6]
1964/11/18 [7] [8]

[1] Mustang
[2] Fly Little Bird Fly
[3] I Got It Bad And
                  That Ain't Good
[4] Dixie Lee
[5] On The Trail
[6] I'm So Excited By You
[7] Gingerbread Boy
[8] I'm So Excited By You

[1]-[6]
Donald Byrd (tp)
Hank Mobley (ts)
Sonny Red (as)
McCoy Tyner (p)
Walter Booker (b)
Freddie Waits (ds)

[7] [8]
Donald Byrd (tp)
Jimmy Heath (ts)
McCoy Tyner (p)
Walter Booker (b)
Joe Chambers (ds)