ルネ・カーディフ・獅子王

 国際犯罪組織バイオネットによるパリ破壊作戦を経て得た数々の出会いと絆によって忌避していた父、獅子王雷牙博士の姓を名乗るようになった、フランス対特殊犯罪組織・シャッセールの「豪腕」捜査官、ルネ・カーディフを指す。もっともいつしかこのように名乗るようになっていたため、その心境の変化がいかなるものであったのかを知る者は、友人であるパピヨン・ノワールをおいて他にはいない。
 常に何かに苛立ち、自身の存在すら忌避していたルネは、同じ境遇にあるガイに対してさえ「完全サイボーグ」、あるいは「機械人形」といった罵声を浴びせるほどに、社交性において攻撃的であった。絶対神聖視していた母を捨てた上に母の死の原因をつくった(少なくともルネはそう信じていた)父に命を救われ、更にはそれによって授けられた力に拠る事でしか戦うことのできない、自身の現状に対してルネが肯定感を得られないのも無理からぬ事であったに違いない。しかし、パートナーであった”ジェントルマン”ことエリック・フォーラーを失った事を契機に、周囲との関係性を再構築する必要に迫られた事によって、ルネは両親の間に秘められていた真実と新たな仲間たちを得、そして初めて獅子王の名を名乗る心を獲得したのである。それこそがパリ破壊作戦の終局においてハイパーツールモレキュルプラーネを稼動させる大きな原動力となったとは言えないだろうか。
 実際には母、フレール・カーディフと父、獅子王雷牙は法的な婚姻関係を結んでおらず、所謂事実婚のカップルであったために、ルネが獅子王の姓を名乗る事に法的な根拠や正当性は存在しない。だが、それだけに彼女が獅子王の姓を名乗る事は、父の存在を受け入れるその証明として、大きな意義をもつのである。しかしそれでも雷牙博士を直接「父」と呼ぶ事は憚られるのか、「じじい」呼ばわりするのがせいぜいであるが、それでも大きな進歩を見せているといっていいだろう。
 獅子王の姓を名乗って以後も、「獅子の女王」のコードネームが示すとおり美しくも苛烈で誇り高い戦いは健在であり、ポルコート光竜闇竜という新たな仲間を率いて、バイオネットとの戦いに奔走する。
 その彼女に更なる転機をもたらしたのはQパーツを強奪したギムレット追撃作戦であった。ここにおいてシャッセールがGGGと共同戦線を展開したことで、これに続くソール11遊星種によるパスキューマシン強奪事件に否応なくルネも関与していく事となるが、ここでルネは唯一無二の友であったパピヨン・ノワールを失い、その真相を知るためにGGG機動部隊による三重連太陽系探査に強引に参画する。法治国家の裏面において非合法活動によって治安を維持する特務諜報組織に所属する者にとって、死は極めて近しい現象であるには違いない。それでも2005年から立て続けに公私のパートナーを失ったことはルネを少なからず落胆させたようだ。加えて積年の仇敵であったバイオネットの高級幹部、メビウスラプラス、ギムレットを倒した事によってバイオネットに対する復讐に一つの区切りがついたことも彼女を後押ししたのであろう。パピヨンの生命を奪い、そして「獅子の女王」を一蹴した存在、ソール11遊星主に対する復讐の念が、新たに彼女を突き動かした。地球の平和と人類の生存のために戦うガイとは異なり、彼女を動かすのは常に個人的な復讐心や悲しみであった。その対象は最早地球上にとどまらず、まだ見ぬ謎の存在へと向けられていっただけの事である。ガイを平和のために戦う者とするならば、ルネはやはり非常の人であった。良くも悪くも、彼女は闘争の世界の住人なのである。
 しかし三重連太陽系で彼女を待ち受けていたソール11遊星主は、その純粋な戦闘力において明らかにルネを凌駕していた。なす術なく遊星種に翻弄される中でルネが出会ったのは、かつて三重連太陽系で最強の戦士と讃えられたソルダート・J―002ソルダートJZマスター消滅と共に、なかば自発的に姿を消した彼もまた非常の人であり、そしてそれに対する深い自覚があったことは、彼が自身を幾度となく「戦士」と称した事で裏付けられるだろう。ルネもソルダートJも自身が根源的なあり方として暴力の世界の住人であり、それ以外に生きる道がないという思いがあった。それは、基本的には暴力組織でありながらも最終的に平和を志向するGGGにおいて、自身が「異端」であるという自覚と言い換えても良い。ふたりは互いが唯一に共感を得られる存在である事を戦いの中で感じ取っていったのである。無限に再生を繰り返すソール11遊星主に対して、すべてが不利な状況下での戦いは皮肉にも闘争の世界に生きるふたりにとって「生」を実感し、抗う力を発揮する時間でもあった。そしてそれは「戦う事がすべて」というふたりが戦いの中において、戦い以外の生き方を発見するという一種の転倒した心の軌跡を描く事となるのである。
 戦闘においてはサイボーグ・ガイ、あるいはエヴォリュダー・ガイほどの安定した戦闘能力を発揮できないために、格闘戦よりも「無数」の銃火器を使用した物量作戦的銃撃戦闘を得意とするが、感情が激すると思わず手足が破壊行為を生むのは彼女なりのご愛嬌というところだろう。特技は破壊活動と武器を「大量に」隠し持つ事。休日は壊れた(壊した)テレビを前に一日中ぼんやりと過ごすのが定番。多少性格は丸くなったといえるが、それでも怒りっぽいところと喧嘩っ早いところは変わっておらず、ブリティッシュジョークは大嫌い。
 声優はかかずゆみさん。