その8 (説明4 壁E、F


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 壁E の説明

     「 日々の歩行、日々の線
       重力と反力、地平と足、
       ゼロモーメントポイントと安定余裕
       手と目、紙と筆、軌跡と視覚    」

■ 壁E の作品ページ →  


   「線を描く。散歩と同じ。」

     ある女性作家の問い「毎日線を描くということ」と、歩行/散歩の同質性について。
     大学時代歩行ロボットの研究をしていた立場からと、
     日々の手遊びに落描きするおっさんの立場からの返歌。

■ 作品番号 (E−1) →  
■ 冊子 (E−1)    →  


作品の意図としては冊子に述べた通りなので、ここでの説明は割愛します。
画像の3分の1ほどは本ホームページで既出のものです。
また、今回展示作品のイメージ図に当たるものもかなり紛れ込んでいます。

冊子2ページ目に登場する女性作家さんは福岡市のギャラリーart space tetra
2012年2月22日(水)〜3月4日(日)に行われた3人展「黄色い壁紙」の一人、
小山冴子さんです。
作家というか、ディレクターさんというか、福岡の美術業界では結構有名な方みたい。
先日やっとお会いして、個展のネタに使ったことを詫びました。

前述3人展のときに、小山さんと訥々(とつとつ)とした会話をしたのですが、
小山さんが語られた「毎日、何故だか、線ばかり描いているんです。」との言葉に、
うまく返事が出来ませんでした。
帰り道、自転車を漕ぎながら、一つの返答が頭に浮かびました。

 「ああ、それは散歩と同じだ。」

一年後、この返答/返歌を元に作品に構成しました。

 壁F 「写真の写真、幾ばくの嘘」 の説明

■ 壁F の作品ページ →  

   「写真の写真、幾ばくの嘘」

     作品的に構図を選ばず、対象をど真ん中において、老人の撮る写真のように。
     リストラ直後に買った中古カメラによる、今日までの日記的記録。


■ 作品番号 (F−1)             →  
■ コンパクト版 「写真の写真(幾ばくの嘘)」 →  


タイトルの「写真の写真」とは、写真を選ぶ上での心構えです。
今回の展示では出来るだけ作意無く、パースペクティブや構図に拠らず、対象をど真ん中
に捉えた写真を選ぶことにしました。

普段、私が撮るスナップは超広角レンズを使ったケレン味の強い構図になりがちです。
(下の作例参照。アーカイブから傾向の強いのを選んでみました。)

本作品F−1はギャラリー内の他の作品(壁A壁B壁C壁D)を考えた時々の気分の
変遷を示すこと、すなわち、他の作品の通奏低音であることが展示上の役割です。
(参照 「タイトル構造」)
よって、個々の作品にしても、組写真としても、独立した作品であることを狙わないことに
しました。
「写真の写真」とは写真に過ぎない物であって、芸術作品ではないという意味です。

また、「幾ばくの嘘」とは、幾つかの写真について、画像処理で意図的な変色を行っている
ので付記しました。

枚数の「99」は米の経済学者ジョセフ・E・スティグリッツの著書「世界の99%を貧困
にする経済」から引用。
本個展のネット告示文などでも数字「99」を多用しています。

後から見返して見ると、個々の写真のタイトルを含め本個展で最も「重い」内容かも。
自分が欝な時に撮った写真群なので、見返すと当時の気分を思い出してしまい、
なかなかキツイものがあります。
今でも解決しない問い掛け、悩みも含んでいますし。

各写真グループタイトル(写真上表示)、写真ごとのタイトル(写真下表示)、被写体について説明します。


グループタイトル 写真タイトル 解 説
風が吹き、
目を覚ますと別の場所

(工場閉鎖、リストラなった頃)
めだかのいた川で続く
工事現場の上を飛び交う鴎
福岡市内の河川。
市長が自民党系の人に代った途端に河川
工事が始まり、メダカのいた川も掘り起こされて
しまいました。
めだかの居た川辺の
番号付きの袋
同上。工事中の河川に積み上げられた
番号付きの土嚢。
故郷の川の泥に落ちた鳥の羽 故郷の川の河口で見つけた泥の上の鳥の羽。
冬の日のこと。
作品C−1下部の蛆虫の回りに散らばる
羽の元イメージ。
画像処理で色を変換。
荒波で打ち上げられた小さな鰯 ペットボトルキャップ色分別装置の事件で
2回目の転職先を辞める羽目になる直前に
福岡市の人口の浜辺で見つけた鰯の死骸。
冬の頃、大風の後。
画像処理で色を変換。
絶滅の手前。
日向の道の上に出てみる。
20年近く勤めていた会社をリーマンショック後の
工場閉鎖で辞めて、最初の転職をした頃。
家族旅行で行った山村の農道の上でへたり込む
トノサマガエル(種の特定に自信なし)。
ちょうど全世界でツボカビが流行っていた頃。
リストラと不況が蔓延する世界に出て、
へたり込む20年井戸の中に居た蛙。
祖母の喪主を務める筈だった
叔父が葬儀を前に
逝ってしまう前日の彼の庭
祖母の喪主を務めるはずの長男の叔父が
葬儀の前夜に急死してしまいました。
親族にびっくりだが、彼らしい大往生でした。
彼の庭に咲いた、枯れかけた椿。
あなたは要らない人間です。

(一度目の転職先を経営不振
 により辞めたが、大震災など
 により雇用市場が硬直。
 長期の無職状態に。)
あと4日でさようならを言う。 最初の転職先のマイクロ企業が経営不振。
元上司である社長にこれ以上借金をさせない
ため、会社を畳む事を進言し、退職しました。
退職4日前に撮った白い山茶花の花
あなたは要らない人間です。 その後、本HPを作るなどして、コンシューマ向け
メーカーなどへの転職を企てましたが、
雇用条件が折り合わず断わられた。
写真はその会社の近くの川に
捨てられていた自転車。
一つの終わり、空っぽの始まり その後、大震災発生で景気が悪化。
再就職は更に困難に。
再び、白い山茶花の花。
10 うしろめたさと後ろ髪

(過去の仕事への未練と、
新しい仕事をする上での
何とも言えない罪悪感と覚悟)
この椿の花は
明日には地に落ちる
咲ききることも出来ずに樹上で枯れて、
首を落とす椿の花。
次の日の朝、この花は地面に落ちていた。
11 三個の無精卵 家族3人。
仕事を生み出す力の無い自分への苛立ち。
作品A−3の土の無い種子と同じ。
12 使用済みの塵紙めいた
白い花弁
腐りかけた白い山茶花の花。
奇妙に未練たらしく。
13 小さなものが彼を食べる。 夏の終わりに地に落ちたの上の蟻。
個人事業主になった私の、
大きな会社に対する職業的抗いと
それに対する微妙な心の痛み。
14 台所で現場の匂いを
思い出す。
金属たわしの匂いは、
昔いた精密機械工場の鉄の匂い。
15 濁った流れに身を任せる 付き合い先のある企業の工場の前の川。
過去の仕事上の付き合い範囲を超えて、
仕事先が広がっていくことの、
何とも言えない苦笑い。
16 鉄を削った手の匂いを
思い出す。
散歩先で見つけた金属加工工場前に
捨ててあった鉄屑に足を止め、懐かしむ。
17 踏んでしまった蝸牛が、
樹上で眠る
昔、踏みつけて殻を割ってしまったカタツムリが
まだ生きて、庭木の上に居た。
18 百合の鞘が
口先だけの私を嗤う。
商品開発、製品製造に関わる手段を失い、
コンサルティングや、企画、設計だけの仕事を
している自分を蛆虫だと罵りたくなる気持ち。
庭に生えた百合の鞘が種を落とした後。
作品C−1下部の蛆虫の口先に使用。
19 薬を撒いた地面に寝て、
私に怯える子猫
椿の木の毛虫よけに撒いた農薬の上で鳴く
野良猫の子猫。母猫は先に逃げた。
農薬は不安感など神経障害を起こす可能性
があるもの。
20 林の陰の食事の後 近所の公園の林の影で、
野良猫が鳥を襲って食べた痕跡。
画像処理で色を変換。
21 林の奥の食餌の痕 上記と同じ公演の林の奥で、
誰かが自慰をした後、
撒き散らしたエロ本の残骸。
画像処理で色を変換。
22 うろうろ道の行ったり来たり。

(仕事の無い時の閉塞感)
始末の手前の風の無い日 最初の転職先のマイクロ企業が経営不振。
元上司である社長にこれ以上借金をさせない
ため、会社を畳む事を進言し、退職。
退職前日に撮ったススキの穂。
23 捨てられた鉢の中の
観葉植物の根
仕事が無い日の散歩道に観葉植物の鉢が
捨てられていました。行き場の無い根っこが
みっちりと詰まっていました。
この根を乾燥させて、作品D−1の触手
として使用。
24 職業安定所に通う道の途中、
夏の終わりの動かない蝉
二度目のハロワ通いの道すがら、街路樹に
寿命切れ間近のセミ達が居ました。
つついてもノソノソと動くだけ。
25 足の下で形と色を失う。 仕事の無い日の散歩道。
アスファルトの上で壊れていく落ち葉。
26 冬の居場所を失う。 最初の転職先を辞め、人材開発銀行より
帰る道すがら。再就職決まらず。
27 曇り空の下の
虫喰いのある白い山茶花
最初の転職先を辞めた初冬の頃からしばらく、
再就職は決まらずに年を越しました。
花弁が痛み始めた白い山茶花。
28 こんなところにいて
良いはずがない。

(仕事探しをする日々で
 会社員としての生活の
 リズムを喪失すること。
 居場所の無い不安。)
だれもいない植物園の、
ちがう生きもの
再就職結果連絡の前日。自室で待つのが
辛くなり出かけた植物園のサボテン。
結果不合格。
29 自分を材料として登録した日の
二百円の昼食を狙う鴎
人材開発銀行に登録しに行った帰り道に寄った
大濠公園。お金を使いたくなくて、200円の
パンを買って公園で食べました。
30 喪主の庭の上 No.6の叔父の庭に落ちていた
夏みかんと椿の花の残骸。
31 男たち 福岡市東区の川の河口。
流れ着いたのか、誰か植えたのか、
沢山の観葉植物が根をはっていました。
男根の群れのような姿。
32 百合と蜘蛛 美しい百合の花の中で獲物を待つ小さな蜘蛛
33 糞便を撒き散らした冬の河馬 閉塞し、気が狂った中年男のような河馬が
自らの存在、テリトリーを示すために、糞を
撒き散らしていました。
再就職結果連絡の前日。結果不合格。
冬の日。
34 平日の昼に小さな禿山に登る 仕事の無い日々が続き、自宅に居るのが
辛くなって出かけた先の工事現場。
35 流れ着いて冬を過ごす
砂州の上の観葉植物
福岡市東区の川の河口。
流れ着いたのか、誰か植えたのか、
沢山の観葉植物が根をはっていました。
冬を越し、枯れた葉で化け物のような
姿になって。
36 流動する砂をくい止めようとする
無意味な扉
福岡市東区雁ノ巣海岸。
どう考えても無駄な抵抗をしている
砂止めの板。
37 すみっこで生きていくよ。

(就職を狙っていた企業は
 実は大人のおもちゃの
 メーカーだった。この仕事は
 自分には無理だけど、
 彼らは魂を込めて物を作って、
 利益も上げている
 立派な企業人)
もっともましな手段 仕事上、お会いした中小企業の中で、もっとも
安定した経営状態の企業。
しかも、是非にと言ってもらえた。
その企業の近所の造成地に生えた雑草。
38 意外なほどに立派な 売り上げ、利益率も素晴らしく、海外の大手
ブランド企業ともライセンス契約を結んでいる。
その企業の近所の造成地に生えた雑草。
39 枯れた判断をすべきです。 和田さん。自分で経営するのは似合わないよ。
ここに就職しなよと、同い年の社長に言われた。
その企業の近所の造成地に生えた雑草。
40 好きであること 大人のおもちゃを作っているが、それは社長が
固有の技術的課題に面白みを感じているから。
副社長はオーディオ好きで、だから、大手
ブランド向けのこの商品は音質にこだわる。
その企業の近所の造成地に生えた雑草。
41 大人のおもちゃは難しい。 大人のおもちゃの仕事をするのに
踏み切れない私。
その企業の近所の造成地に生えた雑草。
42 二人の経営者 社長と副社長の製造メーカーとしての
美しい生き方。
その企業の近所の造成地に生えた雑草。
43 ふたなりの生殖器

(両性具有、雌雄同体の
 蝸牛について考える。)
椿の花の奥 蝸牛と同様に、多くの植物の花には
めしべとおしべが有り、すなわち両性具有。
花は美しいが、生物体としてみると
剥き出しの生殖器。
44 百合の花の中
45 木蓮の花の中
46 蘭の花の中
47 蓮の花の中
48 芍薬の花の中
49 犬が怖くてそちらに行けない。
僅かにのけぞる。

(自分を変え、
 一歩を踏み出すべきだけど、
 勇気を失う様々なこと。)
意外と向こうは遠くない。 仕事を一緒にした、新潟の企業の近所。
この年になると、いつ死ぬかは分からない。
仕事もいつ無くなるか分からない。
この会社、経営が傾いて私の担当者2名も
辞めてしまった。
50 雨の後の女郎蜘蛛 ガラスのビーズをまとった様な女郎蜘蛛。
現代美術作家の名和晃平さんの作品のよう。
自分に美術の個展をやる資格なんかあるのか。
ど素人のクズが。と、悩んでいた頃。
51 干潟の端で半分潮に浸った
網に包まれた瓦礫
ペットボトルキャップ色分別装置の機械が
組み上がった頃。本機に絡む大学准教授の
業績捏造事件により、会社を辞める羽目に。
波に崩されないためとはいえ、干潟の端に、
違和感のある人工物が。
52 吸い込むことを望む口 大人のおもちゃの会社への就職を諦めたこと。
福岡市の友泉亭公園。
53 橋の下、河口の水底 最初の転職先を辞めた頃。
橋の下の海草が人の髪の毛みたいに。
ああ、未練が沈んでいると思いました。
54 僅かに腐臭のする
橋の下の水溜り
福岡市の室見川中流に架かる橋の下。
姿は美しいが、少し淀んだような腐臭が。
55 泥の浅瀬で動けない水母 ペットボトルキャップ色分別装置の機械が
組み上がった頃。本機に絡む大学准教授の
業績捏造事件により、会社を辞める羽目に。
干潟の泥の上で動けなくなったクラゲ。
画像処理で色を変換。
56 毒の有る実を手にとってしまう。 祖父祖母の眠る墓がある山村にて。
ヤマゴボウの若い実。
アルカロイド系の毒(フィトラクシン)がある。
ペットボトルキャップ色分別装置に絡む会社に
就職することになった頃。
この就職により上記装置に絡むゴタゴタ、悪意
に対峙する羽目になる。
57 濡れた殻の内側 カタツムリの殻の内側が透けて見える。
固い殻の内側のねっとり濡れた思惑。
58 斑紋の向こうの蛾 窓ガラスの向こう側に模様に重なって蛾が居る。
不幸の予感。
59 鼻先を失った亀がこちらを伺う ペットボトルキャップ色分別装置に絡む
大学准教授の業績捏造事件により、
会社を辞める羽目になる10日前。
本機はマスコミに取り上げられ、私もインタビュー
を受けた。そして、准教授より和田ばかり
目立って気に入らないとの電話が社長に。
鼻先を失う=プライドを挫かれ気に入らない。
60 網に包まれ砂に埋まる ペットボトルキャップ色分別装置の機械が
組み上がった頃。私は網タイツが苦手。。
61 交接の始まり

(個人事業主として、
 人の誘いに、仕事に流され、
 出来ることをすることにしたら、
 社会との関係が回復。)
まぐわいの半身を失う 個人事業主としての仕事が企画などに移行
し始めた頃。東京でのグループ展の直前。
自ら壊していく設計士としての自分。
会社員だった自分。
海辺の町の海岸にて。
交尾中の相手が死んでしまったスズメガ。
62 汚れを喰らい水を澄ます 水の汚れを喰らい、水を澄ます力を持つ牡蠣。
濁った水(問題点)のあるところには仕事がある。
63 群れるがばらばらに在る。 個人事業主を始めて2ヶ月目にして、仕事を
失注。仕事が無い状態になった頃。
群れても、群れを作らない、必要に応じて
集まるような就業形態もあるのかなと、
河口に浮かぶ渡り鳥を見て考える。
64 隙間に根をはる 近所の丘の崩れた岩肌に走る木の根。
ニッチを攻める生き方。
65 交接の始まり 展覧会をしてみようと決めた頃。
日帰りで行った玉名温泉の近く。
同い年の天才芸術家、会田誠さんの
絵画そっくりのカラスの群れ。
初春の頃に群れるのは交尾のためかしらん。
グループ展と個展で人の付き合いが
色々増えました。
美術だけでなく、仕事上のことも含め。
66 昔の手管を思い出す。 「三号倉庫」という福岡のアートスペースに、
池田龍雄さんの展覧会を見に行きました。
上記写真はそのとき入り口にあった木片です。
個展をすることを思いついたのはその時でした。
67 口を濁す。目を伏せる。

(会社員であることを
 辞めたことを家族、知人に
 黙っていること。)
お終いの予感に泡が立つ。 ペットボトルキャップ色分別装置の仕事に
本格的に絡み始めた頃。
この仕事に絡むと、まずいことになるという予感は
既にあり、不安な気分のまま、海岸をうろついて
いた日に撮影。
当日、作品B−2の貝殻と作品C−1
鳥の羽と骨の一部を拾った。
68 言いたい気持ちが破けてしまう。 会社員を辞めることになった月に、実家の
父と母にそれを告げられず。
実家の近くの畑に咲く黄色いカンナ。
69 山林に囲まれ、夜の手前。 最初の転職先のマイクロ企業が経営不振。
元上司である社長にこれ以上借金をさせない
ため、会社を畳む事を進言し、退職。
妻の実家にも状況を伝えられず。
妻の実家の近くの山林。
70 口は閉ざす。
詳しい話は伏せておく。
同上。
71 服を着ることを
諦めたことを黙っている。
ペットボトルキャップ色分別装置に絡む
大学准教授の業績捏造事件により、
会社を辞めた2週後。実家にて。
サラリーマンを辞め、個人事業主になることを
決めたが、告げられず。
実家の倉庫の脇で脱皮をした女郎蜘蛛。
72 平日の昼にこんな所に
居て良いはずもない。
最初の転職先のマイクロ企業が経営不振。
元上司である社長にこれ以上借金をさせない
ため、会社を畳む事を進言し、退職。
その次の日の公園にて。
73 墓石の真上。
老いた姉妹が残るのみ。
ペットボトルキャップ色分別装置に絡む
会社に転職した頃、前社退職も再就職も
告げられず。
写真は私が生まれた山村にある祖父母の
墓の真上。竹が茂る。
山村は既に限界集落化し、山道入り口に
老いた姉妹が二人住むのみ。
自分の両親の老いも感じる頃。
74 盆の迎え火 同上のころ。
実家の前で母と焚く、盆の迎え火。
75 鳴き終わって横たわる
油蝉の僅かな腐臭
サラリーマンであることを辞め、個人事業主と
なることを決めた頃。
家に両親、兄弟が来ていたが事実は告げず。
盆過ぎの庭で死んでいた油蝉。
76 油虫の温室 ペットボトルキャップ色分別装置の仕事に
本格的に絡み始めた頃。
両親の老いを強く感じた日。
実家の観葉植物にたかるアブラムシ。
77 老いた両親の庭には、
蝸牛の殻が幾つも幾つも
同上の頃。
実家の庭にカタツムリの殻がたくさん落ちていた。
作品A−1A−2D−1D−2で使用。
78 老いを認めて口を閉ざす。 最初の転職先のマイクロ企業が経営不振。
元上司である社長にこれ以上借金をさせない
ため、会社を畳む事を進言し、退職。
その1ヵ月後実家にて。椿の花。
両親の体調が悪く、二人の老いを感じ、
告げることは出来ず。
79 怠惰が身に付く

(平日、休日、昼夜の
 境が無くなり、
 日々のリズムを失うことの
 不安、怯え。諦め。)
外に出るのが僅かに怖い。 最初の転職先のマイクロ企業が経営不振。
元上司である社長にこれ以上借金をさせない
ため、会社を畳む事を進言し、退職届け。
自宅で残務を行うが、無職になる自分を恥じて
外で人と出会うのが怖くなる。
家の中、障子に映る朝の木漏れ日。
今も心に残る、非難への不安。
80 狭い桶の中 バケツの中の稲の根。
行き場を無くして一塊に。
81 沙蚕の巣 海に棲むゴカイの巣。
カルシウム質の硬いチューブ状の巣を作り、
そこに引き篭もる。塊は脳髄のよう。
作品C−1の上部、鳥の頭部に使用。
作中では乱視の目。
82 砂の中の気泡 波を被った砂の中に閉じ込められた空気が
弾けて模様を作る。
83 砂を喰らい砂を吐き出す 砂浜のカニの巣穴。
カニは砂の中の有機物をこしとって食べる。
巣穴の回りの砂の玉は、このとき吐き出された
カス。「穴に引き篭もり、砂を噛む。」
84 真水を失い、干からびる 福岡市東区の雁ノ巣海岸に打ち上げられた
植物の根。あらぬ所に流れ着いて、死んだ者。
85 怠惰の末に居場所を移す 伊勢の水族館のラッコの人形。
メンテナンスを怠ったのか、ボロボロで、
建物の裏に押し込めてあった。
86 泥の上で拡がる海藻 故郷の川の泥の上に広がる海藻。
構造が無く、根も無く、怠惰な感じ。
87 泥の上の円環。 近所のドブ川の泥の上に落ちていた、
照明用配線。泥の上のどうどう巡り。
88 泥濘の上の水溜り 故郷の川の河口の干潟。
作品C−1冊子2ページ目背景。
89 土の手前。 平日の朝、通勤代わりに歩く散歩道の土の上。
落ちて、何もせず、土に帰る。
90 冬の紫陽花 剪定を怠ったまま冬を越した紫陽花の花弁。
腐食し、レース状になっている。
作品D−1の背景筐体に使用。
91 冬の手前の飛蝗 冬の初め、動けなくなっていた、老いた飛蝗。
92 冬の初めの蓮 冬の初め、水面に落ち、形を変える蓮の葉。
福岡市の大濠公園外堀。
93 冬の蝿 冬、陽だまりで暖を取る蝿。
実家の庭。
94 透明な傘を忘れる。 福岡市室見川。
会社の与える様々な庇護、同僚との協業の
感覚を忘れつつある自分。
95 同じ場所で円を描く。 福岡市東区雁ノ巣海岸。
砂の上にコンパスのように
無意味な円を描く枯れ草。
96 配管にしがみつく海藻 流動する砂の上を逃れ、少しでも安定した
場所に海藻をは定着する。
海水浴場設備のパイプ。
97 肌が乾く 雨の後、日照りの中に取り残された蝸牛
作品E−1の一部である本HP既出作品の
タイトルと同じ。(落書き 色々 4、右下
年を取ってしまった者の乾燥した肌。
先に進めず取り残された中高年である自分。
98 落ちて平たく均される。 平日の朝、通勤代わりに歩く散歩道の土の上。
捨てられた植物の根。
99 流れの無い場所に居を構える。 流動する砂の上を逃れ、少しでも安定した
場所に定着する海藻やフジツボ。
海水浴場に置かれたタイヤ。

 本展を終えてのまとめ

とりあえず、長年、心中に溜め込んだ愚痴は吐き出した。
見に来てくれた方々、ご協力いただいたギャラリーの方々、ありがとうございました。

素人がこんな展示に手を出して、何がどーなるもんでもありませんが、何にもならない訳でもありません。

福岡の美術、芸術関係のヒトビトとお付き合いさせて頂けたし。
大学時代の美術部諸先輩方、同期の人とのつながりも回復したし。
仕事上も、キッチンパーツメーカーの顧客には受けたようだし、別の会社からメールも来たし。

でも、まあ、次はゴミがあんまり出ないように企画しようかと。
            
展覧会を終えての作品の山。家庭生活の邪魔。
引き取り先があるわけでもなく、売れるはずも無く、既に粗大ゴミ。

個展最終日にクロージングパーティー代わりのソロコンサートをして
くださったtomiさんと美術家の江上計太さんとの会話。

  tomiさん 「良かったよ。」
  私     「でも、置いておくことは出来ないので捨てるしか
         ないんですよ。捨てるのもデカイから大変。」
  tomiさん 「買ってもらえばいいじゃん。」
  私     「誰にです?」
  tomiさん 「美術館とか。」
  私     「むりむりむり。江上さんは作品どうしています?」
  江上さん 「ん。売れないのは基本捨てる。基本売れないし。」

とは言っても、捨てきれない。。。。。。。

 展示最終日のゲストコンサート

私は酒が飲めないし、福岡に美術関係の知り合いもいないし、知り合いはみんな製造業の人々だし。
と、いうことで、本ギャラリー恒例のオープニングパーティーもクロージングパーティーも無し。
だらだらーと始まって、だらだらーと終わる予定だったのですが、最終日に急遽、地元のボイスパフォーマー
の方がコンサートをしてくれました。
トミオカさんという方で、福岡のアンダーグラウンド美術界隈ではそれなりに有名な方みたい。

 ギャラリーブログの紹介ページ: Solo for EggArmy/tomiさんソロ・コンサート

ついでにコンサート来場者のダンサーの方、2名まで踊ってくれました。(山本泰輔さん、小林ナヲさん)

皆様、本当にありがとうございました。
愚痴の始末として、本当に良い終劇になりました。

歌うtomiさん(最奥右)。
踊る山本泰輔さん、小林ナヲさん。
当日ダイソーの習字用紙とスプレー塗料で作った
投げ銭用の箱。


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