ペットボトルキャップ色分別装置


2011年11月〜2012年6月

顛末 その1

 何ですの? いったい何ですの???

妙なものを作ってしまったのですよ。色んな意味で。

2012年6月の産業展のときには、福岡局のテレビニュースでもとり上げられたりして、
それなりに注目も集めたものの、

やはり何というか。 「妙。。。。。」

何を作ったのかと申しますと、
ペットボトルのキャップを色ごとに分別(選別?)するリサイクル用途の機械装置。
投入口にキャップを放り込むと0.15秒に1個のスピードで色ごとに分別します。

以下動画の装置ですよ。
(画像をクリックすると動画が立ち上がります。)


ペットボトル キャップ 色 分別 選別 装置 機械 PET bottle cap color sorterPET_bottle_cap_color_sorter_movie.wmv
ペットボトル色分別装置 初号機


装置の外観は下の写真を見てね。

ペットボトル キャップ 色 分別 選別 装置 機械 PET bottle cap color sorter ペットボトル キャップ 色 分別 選別 装置 機械 PET bottle cap color sorter
ペットボトル色分別装置 初号機 3DCADの図
一品料理の製作で板金塗装のカバーを
作るのは結構面倒くさいので、アルミ板で
カバーしました。よってギンギラギン。
下に敷いてある緑とベージュのシートの上で
組み立てた。
IRONCADで設計しました。
ほとんどを、お家のパソコンで作業。



 コトの始まり。私は一人。

私が勤めている会社は基板設計、ファームウェアなどハード、ソフト設計が業務の
中心でメカ設計は私一人です。

装置開発の前任者はいましたが、配線設計、配線作業が専門の方で、機械の
知識は十分とは言えませんでした。
制御系のハード設計、ファームウェア、PLCのプログラム等を除く、以下に関して、
会社からの技術継承は無い状態。

 ・ 機械工学 (材料工学、機械力学、剛体の運動、素材など)
 ・ 機械設計 (3DCAD、2DCAD、機械製図)
 ・ バルク搬送、整列など部品供給装置に関するノウハウ
   (一般的には文献化されていない内容がほとんど。)
 ・ 市販品についての諸知識
   (メーカー品機械要素の選定、使える調達ルート)
 ・ 近隣機械加工業者についての知識 (保有設備、知人在否)
 ・ 機械組立 (工具もろくに無いのでほとんどを自宅より持ち込み)

すなわち、私一人で構想、設計、組立。

加えて本件の発注者様側にも機械系技術者はいません。
県のリサイクル支援団体と、
画像認識を専門とする大学研究室と、
装置を使うことにになるリサイクル業者。
以上がが発注元ですから、当然機械設備についての具体的な仕様、アイデアは
出てきません。
「全てお任せ」です。

本件設計に本格的に関わる直前、前任者の装置についての打ち合わせの際、
関係者各位の会話を初めて聞いたのですが、「機械技術が分かる人はいない」
というのが私の印象でした。

かくして。やっぱりというか、何というか。

今回の関係者の中で機械技術者は私一人。

制御技術の力は社内で事足りるものの、基本のアイデア、機械関連技術、
整列搬送技術については、たった一人で取り組むことになりました。

そして、機械技術こそが本件実現の主たる課題。
(ばらばらのバルク状態で、サイズにもバラツキのある廃品キャップを如何にして
 整列、搬送し、一つづつ検査と仕分け処理を行うか?)

会社および発注側より提示された要求は以下の通りです。

 @ 0.1秒/個の能力で分別したい。(無理。。。。)

 A キャップの素材色選定には既存特許(※1)を使う。
   センサーは既にある現品(※2)を使うこと。
 
 ※1: 特開2011-16040(P2011-16040A)

 ※2 キーエンスのカラーセンサー

 B 納期と予算

以上のみを出発点として、本件は始まリました。
「機械は分からないから。」、「全て任せたから。」、
「和田さんの言うことは専門的だけど、リスクを並べて不安がらせないでよ。」
などと言う「分からない」という語を発するばかりの人々の中に、
ぽつねんと。

会社には残業代を支払う経営体力も無く、
本格的な2DCADを買い足す体力も無く、
(よって、自宅で設計。)

要素技術の検証を行う時間も、工具など工作環境も無く、
(よって、自腹工具と素材でモックアップ作成、実験。)

前任者を含む関係各位が使いつぶした結果、納期までの残り時間も無く、
サクサク設計できるほどの能力も体力も無く、誰の技術的助言も無く、
(まあ、職業的孤立感には慣れているよ。)

部品供給の専門知識は自分の寝ぼけた頭の中にしか無く、
よって、土日も夜も昼も無く、
自宅PCのCAD環境にて、引きこもって設計しました。

(まあ、土日の時々は「うきゃー」となって、
 現代美術画廊のIAF shopなんぞに行って、息抜きなどしましたが。)

次のページへ 
製造業界で作った物のトップページへ  このページのトップへ