2変数二次形式 quadratic form ・二次同次関数― トピック一覧 [数学についてのwebノート] |
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・定義:2変数の二次形式/正値定符号二次
形式/正値定符号行列/半正値定符号二次形式/半正値定符号行列 |
※応用:2変数関数の極値問題 |
定理:2変数二次形式の符号判定 〜 行列を使わずに | ||
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2変数二次形式 Q (x,y) = ax2+2 bxy + c y2 (a,b,cは定数) のプラス/マイナスについて、 以下が成り立つ。 |
[文献] *松坂『解析入門3』14.3-D-補題 (p.172):証明つき。 cf.2次関数の符号と判別式:『高等学校数学I』啓林館。5章4(pp.134-7) |
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[Q(x,y)の係数条件:ケースT] 条件1:ac−b2 >0 かつ 条件2:a>0 かつ 条件3:c>0 ならば、 Q(x,y) = ax2+2 bxy + c y2 は、正値定符号二次形式。 ※主小行列式を用いた表現(n変数の二次形式への拡張に有利) |
※注意:いつでもb2≧0であるから、 「条件1かつ条件2」が成り立っているとき、 条件3はいつも成り立っており、 「条件1かつ条件3」が成り立っているとき、 条件2はいつも成り立っている。 したがって、左記判定条件のうち、 条件2・条件3のいずれか一方は不要。 また、このことから、条件1が成立する場合は、 このケースTと、次のケースUの二通りで全てだとわかる。 |
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[Q(x,y)の係数条件:ケースU] 条件1:ac−b2 >0 かつ 条件2:a<0 かつ 条件3:c<0 ならば、 Q(x,y) = ax2+2 bxy + c y2 は、負値定符号二次形式。 ※主小行列式を用いた表現(n変数の二次形式への拡張に有利) |
※注意:いつでもb2≧0であるから、 「条件1かつ条件2」が成り立っているとき、 条件3はいつも成り立っており、 「条件1かつ条件3」が成り立っているとき、 条件2はいつも成り立っている。 したがって、左記判定条件のうち、 条件2・条件3のいずれか一方は不要。 また、このことから、条件1が成立する場合は、 前のケースTと、このケースUの二通りで全てだとわかる。 |
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[Q(x,y)の係数条件:ケースV] ac−b2 <0 ならば、 Q(x,y) = ax2+2 bxy + c y2 は、不定符号二次形式。 |
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[Q(x,y)の係数条件:ケースW] ac−b2 =0 ならば、 Q(x,y) = ax2+2 bxy + c y2 は、半定符号二次形式。 詳しくみると、 ・「ac−b2=0かつa>0」または「ac−b2=0かつa=0かつc>0」 ならば、 Q(x,y) は半正値定符号二次形式 ・「ac−b2=0かつa<0」または「ac−b2=0かつa=0かつc<0」 ならば、 Q(x,y) は、半負値定符号二次形式 ・「ac−b2=0かつa=0かつc=0」ならば、 恒等的に、Q(x,y) =0。 |
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※活用例:2変数関数の極値問題 |
→[トピック一覧:二次形式] | ||
[証明] |
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[方針] ・1変数の2次関数の符号問題に帰着させる。 ・具体的には、 y=0を満たす点(x,y)と、y≠0を満たす点(x,y)にわけ、 y=0を満たす点(x,y)については、 1変数x の2次関数ax2の符号問題に帰着させる。 y≠0を満たす点(x,y)については、 Q (x,y) = ax2+2 bxy + c y2 = y2 { a (x/y)2+2 b(x/y) + c }として、 a≠0ならば、 (x/y) という1変数の2次関数の符号問題に帰着させ、 a=0ならば、 (x/y) という1変数の1次関数の符号問題に帰着させる。 |
[文献] *松坂『解析入門3』14.3-D-補題 (p.172) |
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[step1:定義域内を区域別に検討] [step1-0:準備] 二次形式Q(x,y)の符号判定では、原点(0,0)={(x,y)∈R2|x=0かつy=0}におけるQ(x,y)の符号については、関心がもたれていない。 →正値定符号・負値定符号等の定義(x=0かつy=0を満たす点でのQ(x,y)の値が、定義から除外されていることに注意)、 だから、原点を除く平面{(x,y)∈R2| ¬(x=0かつy=0)}={(x,y)∈R2| x≠0またはy≠0)}においてだけ、Q(x,y)の符号について考える。 便宜上、原点を除く平面{(x,y)∈R2| ¬(x=0かつy=0)}={(x,y)∈R2| x≠0またはy≠0)}を、次の二つの区域に分割する。 区域A={(x,y)∈R2|y=0かつx≠0} [→下図のピンクの領域] 区域B={(x,y)∈R2|y≠0} [→下図の緑の領域] ![]() [step1-1:区域AでのQ(x,y)の符号判定] 区域A={(x,y)∈R2|y=0かつx≠0}においては、 a>0ならば、Q(x,y) = ax2+2 bxy + c y2>0 a=0ならば、Q(x,y) = ax2+2 bxy + c y2=0 a<0ならば、Q(x,y) = ax2+2 bxy + c y2<0 なぜなら、 ・y=0を満たす各点においては、Q(x,y)=Q(x,0)=ax2+2 bx・0+ c・02=ax2 ・x≠0を満たす各点においては、x2 >0 (∵) であるので、 区域A={(x,y)∈R2|y=0かつx≠0}においては、 a>0ならば、Q(x,y)=Q(x,0)==ax2 >0 (∵) a=0ならば、Q(x,y)=Q(x,0)==ax2 =0 a<0ならば、Q(x,y)=Q(x,0)==ax2 <0 (∵) が成り立つ。 [step1-2:区域BでのQ(x,y)の符号判定―ケース1] 区域B={(x,y)∈R2|y≠0}において、a≠0 ならば、 Q(x,y)の符号は、t=x/y として定義される変数tの2次関数f(t)=a t2+2 bt + c の符号判定に依存する。 つまり、区域B={(x,y)∈R2|y≠0}において、a≠0 ならば、 b2−ac <0 かつ a>0 ならば、tの値にかかわらず常にf(t)は正であるから、Q(x,y)もtの値にかかわらず常に正。 b2−ac <0 かつ a<0 ならば、tの値にかかわらず常にf(t)は負であるから、Q(x,y)もtの値にかかわらず常に負。 b2−ac >0 ならば、f(t)は正負ともにとるので、Q(x,y)も正負ともにとる。 b2−ac =0 かつ a>0 ならば、f(t)≧0なので、Q(x,y)≧0。 b2−ac =0 かつ a<0 ならば、f(t)≦0なので、Q(x,y)≦0。 なぜなら… ・区域B={(x,y)∈R2|y≠0}においては、y≠0だから、yで割ることも可能なので、 Q (x,y) = ax2+2 bxy + c y2 = y2 { a (x/y)2+2 b(x/y) + c } と書いてよい。 ここで、t=x/y と置くと、 Q (x,y) = y2 { a t2+2 bt + c } 区域B={(x,y)∈R2|y≠0}においては、y≠0だから、y2 >0となるので、 Q (x,y) = y2 { a t2+2 bt + c } 全体の正負は、変数tの2次関数f(t)=a t2+2 bt + c の正負を反映する。(∵) ・二次関数の符号判定に従うと、 b2−ac <0 かつ a>0 ならば、tの値にかかわらず常にf(t)は正。 b2−ac <0 かつ a<0 ならば、tの値にかかわらず常にf(t)は負。 b2−ac >0 ならば、f(t)>0になるtの値の範囲も、f(t)=0になるtの値の範囲も、f(t)<0になるtの値の範囲も存在する。 b2−ac =0 かつ a>0 ならば、f(t)=0になるtの値と、f(t)>0となるtの値の範囲が存在する。 b2−ac =0 かつ a<0 ならば、f(t)=0になるtの値と、f(t)<0となるtの値の範囲が存在する。 ・したがって、 b2−ac <0 かつ a>0 ならば、区域Bにおいて常にQ(x,y)は正。 b2−ac <0 かつ a<0 ならば、区域Bにおいて常にQ(x,y)は負。 b2−ac >0 ならば、区域Bには、Q(x,y)を正にする点も、Q(x,y)を負にする点も存在する。 b2−ac =0 かつ a>0 ならば、区域Bでは、Q(x,y)≧0。 b2−ac =0 かつ a<0 ならば、区域Bでは、Q(x,y)≦0。 [step1-3:区域BでのQ(x,y)の符号判定―ケース3] 区域B={(x,y)∈R2|y≠0}において、a=0ならば、 Q(x,y)の符号は、t=x/y として定義される変数tの1次関数g(t)=2b t+ c の符号判定に依存する。 つまり、区域B={(x,y)∈R2|y≠0}において、 ・a=0かつb≠0ならば、 g(t)>0になるtの値の範囲も、g(t)=0になるtの値も、g(t)<0になるtの値の範囲も存在するから、 Q(x,y)>0になる点も、Q(x,y)=0になる点も、Q(x,y)<0になる点も、区域Bに存在する。 ・a=0かつb=0かつc>0ならば、区域BのどこでもQ(x,y)>0 ・a=0かつb=0かつc<0ならば、区域BのどこでもQ(x,y)<0 ・a=0かつb=0かつc=0ならば、区域BのどこでもQ(x,y)=0 なぜなら… ・区域B={(x,y)∈R2|y≠0}においては、y≠0だから、yで割ることも可能なので、 Q (x,y) = ax2+2 bxy + c y2 = y2 { a (x/y)2+2 b(x/y) + c } と書いてよい。 ここで、t=x/y と置くと、 Q (x,y) = y2 { a t2+2 bt + c } ・だから、区域B={(x,y)∈R2|y≠0}において、a=0ならば、 Q (x,y) = y2 { 2 bt + c } となる。 区域B={(x,y)∈R2|y≠0}においては、y≠0だから、y2 >0となるので、 a=0ならば、 Q (x,y) = y2 { 2 bt + c } 全体の正負は、変数tの1次関数g(t)=2b t+ cの正負を反映する。(∵) ・1次関数g(t)=2b t+ cの正負について、以下が成り立つ。 ・b≠0ならば、1次関数g(t)は、傾き2b≠0の直線だから、 g(t)>0になるtの値の範囲も、g(t)=0になるtの値も、g(t)<0になるtの値の範囲も存在する ・b=0ならば、1次関数g(t)は、傾き2b=0で、ずっと、定数cのままだから、 c>0ならば、tの値にかかわらず、g(t)>0 c<0ならば、tの値にかかわらず、g(t)<0 c=0ならば、tの値にかかわらず、g(t)=0 ・したがって、 ・a=0かつb≠0ならば、 Q(x,y)>0になる点も、Q(x,y)=0になる点も、Q(x,y)<0になる点も、区域Bに存在する。 ・a=0かつb=0かつc>0ならば、区域BのどこでもQ(x,y)>0 ・a=0かつb=0かつc<0ならば、区域BのどこでもQ(x,y)<0 ・a=0かつb=0かつc=0ならば、区域BのどこでもQ(x,y)=0 [step2:上記結果をQ(x,y)の係数条件別に再検討] [step2-1:係数条件ケースTのもとでのQ(x,y)の符号判定] ・Q(x,y)の係数条件:ケースT 条件1:ac−b2 >0 かつ 条件2:a>0 かつ 条件3:c>0 のもとでのQ(x,y)の符号を検討する。 ・ケースTのもとでは、区域A={(x,y)∈R2|y=0かつx≠0}において、Q(x,y)>0 となる。 なぜなら、 step1-1より、 区域A={(x,y)∈R2|y=0かつx≠0}においては、 a>0ならば、常にQ(x,y)>0 となるから、 ケースTのもとでは、条件2がa>0が満すので、区域A={(x,y)∈R2|y=0かつx≠0}において常に、Q(x,y)>0 ・ケースTのもとでは、区域B={(x,y)∈R2|y≠0}において、Q(x,y)>0 となる。 なぜなら、 step1-2より、区域B={(x,y)∈R2|y≠0}においては、 b2−ac <0 かつ a>0 ならば、区域Bにおいて常にQ(x,y)>0 となるから、 ケースTのもとでは、条件1がb2−ac<0を満たし、条件2がa>0を満たすので、区域Bにおいて常にQ(x,y)>0となる。 ・区域Aと区域Bで、原点を除く平面R2 をすべて網羅しているので、 ケースTのもとでは、原点を除く平面R2 上のどこでも、Q(x,y)>0 つまり、ケースTのもとでは、Q(x,y)は正値定符号二次形式。 [step2-2:係数条件ケースUのもとでのQ(x,y)の符号判定] ・Q(x,y)の係数条件:ケースU 条件1:ac−b2 >0 かつ 条件2:a<0 かつ 条件3:c<0 のもとでのQ(x,y)の符号を検討する。 ・ケースUのもとでは、区域A={(x,y)∈R2|y=0かつx≠0}において、Q(x,y)<0 となる。 なぜなら、 step1-1より、 区域A={(x,y)∈R2|y=0かつx≠0}においては、 a<0ならば、Q(x,y)<0 となるから、 ケースUのもとでは、条件2がa<0が満すので、区域A={(x,y)∈R2|y=0かつx≠0}において常に、Q(x,y)<0 ・ケースUのもとでは、区域B={(x,y)∈R2|y≠0}において、Q(x,y)<0 となる。 なぜなら、 step1-2より、区域B={(x,y)∈R2|y≠0}においては、 b2−ac <0 かつ a<0 ならば、区域Bにおいて常にQ(x,y)<0 となるから、 ケースUのもとでは、条件1がb2−ac<0を満たし、条件2がa<0を満たすので、区域Bにおいて常にQ(x,y)<0となる。 ・区域Aと区域Bで、原点を除く平面R2 をすべて網羅しているので、 ケースUのもとでは、原点を除く平面R2 上のどこでも、Q(x,y)<0 つまり、ケースUのもとでは、Q(x,y)は負値定符号二次形式。 [step2-3:係数条件ケースVのもとでのQ(x,y)の符号判定] ・Q(x,y)の係数条件:ケースV ac−b2<0 のもとでのQ(x,y)の符号を検討する。 便宜上、ケースVを、 ケースV-1:ac−b2<0かつa>0 ケースV-2:ac−b2<0かつa<0 ケースV-3:ac−b2<0かつa=0 (このとき、b2>0になっていることにも注意) の三つに分ける。 [係数条件ケースV-1] ・ケースV-1「ac−b2<0かつa<0」のもとでは、区域A={(x,y)∈R2|y=0かつx≠0}において、 step1-1より、Q(x,y) >0 となる。 ・ケースV-1「ac−b2<0かつa<0」のもとでは、区域B={(x,y)∈R2|y≠0}において、 step1-2より、Q(x,y) が正になる点も、Q(x,y) が負になる点も存在する。 ・区域Aと区域Bで、原点を除く平面R2 をすべて網羅しているので、 以上から、ケースV-1のもとでは、 原点を除く平面R2上での、Q(x,y) の正負は決まっておらず、 原点を除く平面R2上には、Q(x,y) が正になる点も、Q(x,y) が負になる点もある、 という結論になる。 つまり、ケースV-1のもとでは、Q(x,y) は、不定符号二次形式である。 [係数条件ケースV-2] ・ケースV-2「ac−b2<0かつa<0」のもとでは、区域A={(x,y)∈R2|y=0かつx≠0}において、 step1-1より、Q(x,y) <0 となる。 ・ケースV-2「ac−b2<0かつa<0」のもとでは、区域B={(x,y)∈R2|y≠0}において、 step1-2より、Q(x,y) が正になる点も、Q(x,y) が負になる点も存在する。 となる。 ・区域Aと区域Bで、原点を除く平面R2 をすべて網羅しているので、 以上から、ケースV-2のもとでは、 原点を除く平面R2上での、Q(x,y) の正負は決まっておらず、 原点を除く平面R2上には、Q(x,y) が正になる点も、Q(x,y) が負になる点もある、 という結論になる。 つまり、ケースV-2のもとでは、Q(x,y) は、不定符号二次形式である。 [係数条件ケースV-3] ・ケースV-3「ac−b2<0かつa=0」のもとでは、区域A={(x,y)∈R2|y=0かつx≠0}において、 step1-1より、 Q(x,y) =0 となる。 ・ケースV-3「ac−b2<0かつa=0」のもとでは、区域B={(x,y)∈R2|y≠0}において、 Q(x,y) が正になる点も、Q(x,y) が負になる点も存在する 。 なぜなら、 ケースV-3「ac−b2<0かつa=0」のもとでは、b2>0だから、b≠0。 すると、この条件下では、step1-3より、Q(x,y) が正になる点も、Q(x,y) が負になる点も区域Bに存在する。 ・区域Aと区域Bで、原点を除く平面R2 をすべて網羅しているので、 以上から、ケースV-3のもとでは、 原点を除く平面R2上での、Q(x,y) の正負は決まっておらず、 原点を除く平面R2上には、Q(x,y) が正になる点も、Q(x,y) が負になる点もある、 という結論になる。 つまり、ケースV-3のもとでは、Q(x,y) は、不定符号二次形式である。 [係数条件ケースV総論] ・Q(x,y)の係数条件-ケースV「ac−b2<0」は、 ケースV-1「ac−b2<0かつa>0」 ケースV-2「ac−b2<0かつa<0」 ケースV-3「ac−b2<0かつa=0」 で網羅されている。 ・上記検討から、 ケースV-1、ケースV-2、ケースV-3のいずれにおいても、Q(x,y) は不定符号二次形式である と、明らかにされた。 ・したがって、Q(x,y)の係数条件-ケースV「ac−b2<0」全般において、Q(x,y) は不定符号二次形式であると結論づけられる。 [step2-4:係数条件ケースWのもとでのQ(x,y)の符号判定] ・Q(x,y)の係数条件:ケースW ac−b2=0 のもとでのQ(x,y)の符号を検討する。 便宜上、ケースWを、 ケースW-1:ac−b2=0かつa>0 (b2≧0だから、このとき、c≧0になっていることがわかる) ケースW-2:ac−b2=0かつa<0 (b2≧0だから、このとき、c≦0になっていることがわかる) ケースW-3:ac−b2=0かつa=0 (このとき、b2=0、したがって、b=0) の三つに分ける。 [ケースW-1] ・ケースW-1「ac−b2=0かつa>0」のもとでは、区域A={(x,y)∈R2|y=0かつx≠0}において、 step1-1より、Q(x,y)>0 ・ケースW-1「ac−b2=0かつa>0」のもとでは、区域B={(x,y)∈R2|y≠0}において、 step1-2より、Q(x,y)≧0 ・区域Aと区域Bで、原点を除く平面R2 をすべて網羅しているので、 以上から、ケースW-1のもとでは、 原点を除く平面R2上のどこでも、Q(x,y)≧0 という結論になる。 つまり、ケースW-1のもとでは、Q(x,y) は、半正値定符号二次形式である。 [ケースW-2] ・ケースW-2「ac−b2=0かつa<0」のもとでは、区域A={(x,y)∈R2|y=0かつx≠0}において、 step1-1より、Q(x,y)<0 ・ケースW-2「ac−b2=0かつa<0」のもとでは、区域B={(x,y)∈R2|y≠0}において、 step1-2より、Q(x,y)≦0 ・区域Aと区域Bで、原点を除く平面R2 をすべて網羅しているので、 以上から、ケースW-2のもとでは、 原点を除く平面R2上のどこでも、Q(x,y)≦0 という結論になる。 つまり、ケースW-2のもとでは、Q(x,y) は、半負値定符号二次形式である。 [ケースW-3] ・ケースW-3「ac−b2=0かつa=0」のもとでは、区域A={(x,y)∈R2|y=0かつx≠0}において、 step1-1より、Q(x,y)=0 ・ケースW-3「ac−b2=0かつa=0」のもとでは、区域B={(x,y)∈R2|y≠0}において、 c>0ならば、区域BのどこでもQ(x,y)>0 c<0ならば、区域BのどこでもQ(x,y)<0 c=0ならば、区域BのどこでもQ(x,y)=0 なぜなら… 「ac−b2=0かつa=0」のもとでは、b2=0、したがって、b=0。 だから、step1-3より、ケースW-3「ac−b2=0かつa=0(かつb=0)」のもとでは、区域B={(x,y)∈R2|y≠0}において、 c>0ならば、区域BのどこでもQ(x,y)>0 c<0ならば、区域BのどこでもQ(x,y)<0 c=0ならば、区域BのどこでもQ(x,y)=0 となる。 ・区域Aと区域Bで、原点を除く平面R2 をすべて網羅しているので、 以上から、ケースW-3のもとでは、 c>0ならば、原点を除く平面R2上のどこでも、Q(x,y)≧0 c<0ならば、原点を除く平面R2上のどこでも、Q(x,y)≦0 c=0ならば、原点を除く平面R2上のどこでも、Q(x,y)=0 という結論になる。 つまり、ケースW-3のもとでは、 c>0ならば、Q(x,y)は半正値定符号二次形式 c<0ならば、Q(x,y)は半負値定符号二次形式 c=0ならば、原点を除く平面R2上のどこでも、Q(x,y)=0 ざっくり言えば、ケースW-2のもとでは、Q(x,y) は、半定符号二次形式である。 ※次の説明のほうが、簡単ではある。 ケースW-3「ac−b2=0かつa=0」のもとでは、b2=0、したがって、b=0。 だから、ケースW-3のもとでは、Q(x,y) = ax2+2 bxy + c y2=cy2 すると、ケースW-3のもとでは、 c>0ならば、Q(x,y)=cy2≧0 (等号は、y=0のときのみ ) c<0ならば、Q(x,y)=cy2≦0 (等号は、y=0のときのみ ) c=0ならば、Q(x,y)=cy2=0 (すべてのyの値に対して) [係数条件ケースW総論] ・Q(x,y)の係数条件-ケースW「ac−b2=0」は、 ケースW-1「ac−b2=0かつa>0」 ケースW-2「ac−b2=0かつa<0」 ケースW-3「ac−b2=0かつa=0」 で網羅されている。 ・上記検討から、 ケースW-1、ケースW-2、ケースW-3のいずれにおいても、Q(x,y) は半定符号二次形式である と、明らかにされた。 ・したがって、Q(x,y)の係数条件-ケースV「ac−b2<0」全般において、Q(x,y) は半定符号二次形式であると結論づけられる。 ・もう少し詳しく分類すると、 ・ケースW-1「ac−b2=0かつa>0」またはケースW-3-1「ac−b2=0かつa=0かつc>0」ならば、 Q(x,y) は、半正値定符号二次形式 ・ケースW-2「ac−b2=0かつa<0」またはケースW-3-1「ac−b2=0かつa=0かつc<0」ならば、 Q(x,y) は、半負値定符号二次形式 ・ケースW-3-3「ac−b2=0かつa=0かつc=0」ならば、 恒等的に、Q(x,y) =0。 |
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→[トピック一覧:二次形式] →[線形代数目次/総目次] |
定理:正値定符号行列になるための必要十分条件〜固有値に関連して | ||
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命題S:対称行列A= |
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証明 |
n変数二次形式のケースの証明を参照。 |
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→[トピック一覧:二次形式] →[線形代数目次/総目次] |
定理:負値定符号行列になるための必要十分条件〜固有値に関連して | ||
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[文献−線型代数] |
証明 | n変数二次形式のケースの証明を参照。 | |
→[トピック一覧:二次形式] |
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定理:正値定符号行列になるための必要条件〜行列式に関連して | ||
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→[トピック一覧:二次形式] |
定理:負値定符号行列になるための必要条件〜行列式に関連して | ||
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→[トピック一覧:二次形式] |
定理:正値定符号行列になるための必要十分条件〜主小行列式に関連して | ||
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次の二つの命題は、同値。 |
cf. n変数の二次形式への拡張 |
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(「命題Q⇒命題P」の証明) |
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「2変数二次形式の符号判定〜行列を使わずに」ケースIより。 |
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(「命題P⇒命題Q」の証明) | ||
「命題P⇒命題Q」を示すために、「命題P⇒命題Q」の対偶「『命題Qが成り立たない』⇒『命題Pが成り立たない』」を示す。 step1:「命題P⇒命題Q」の対偶「『命題Qが成り立たない』⇒『命題Pが成り立たない』」の分析 「命題P⇒命題Q」の対偶「『命題Qが成り立たない』⇒『命題Pが成り立たない』」とは、 命題R1「ac−b2≦0⇒『命題Pが成り立たない』」 かつ 命題R2「『ac−b2>0かつa≦0』⇒『命題Pが成り立たない』」 かつ 命題R3「『ac−b2>0かつc≦0』」⇒『命題Pが成り立たない』」 であるから(そのわけは、step1-1,step1-2)、 この命題R1、命題R2、命題R3を、全て示せば、 「命題P⇒命題Q」を証明したことになる。 step1-1:『命題Qが成り立たない』ということの分析 「命題Qが成り立たない」とは、 「ac−b2≦0または『ac−b2>0かつa≦0』または『ac−b2>0かつc≦0』」を意味する。 なぜなら、 ・「命題Qが成り立たない」とは、 「『ac−b2>0かつa>0かつc>0』が成り立たない」ということ。 ・「『ac−b2>0かつa>0かつc>0』が成り立たない」とは、 「ac−b2≦0またはa≦0またはc≦0」ということ。(∵) ・「ac−b2≦0またはa≦0またはc≦0」とは、 「ac−b2≦0または『ac−b2>0かつa≦0』または『ac−b2≦0かつa≦0』または『ac−b2>0かつc≦0』または『ac−b2≦0かつc≦0』」 である。 なぜなら、 「a≦0」は、「『ac−b2>0かつa≦0』または『ac−b2≦0かつa≦0』」であり、 「c≦0」は、「『ac−b2>0かつc≦0』または『ac−b2≦0かつc≦0』」であるから。 ・「ac−b2≦0または『ac−b2>0かつa≦0』または『ac−b2≦0かつa≦0』または『ac−b2>0かつc≦0』または『ac−b2≦0かつc≦0』」 とは、 「ac−b2≦0または『ac−b2≦0かつa≦0』または『ac−b2≦0かつc≦0』または『ac−b2>0かつa≦0』または『ac−b2>0かつc≦0』」 である(∵結合律) ・「ac−b2≦0または『ac−b2≦0かつa≦0』または『ac−b2≦0かつc≦0』または『ac−b2>0かつa≦0』または『ac−b2>0かつc≦0』」 とは、 「ac−b2≦0または『ac−b2≦0かつc≦0』または『ac−b2>0かつa≦0』または『ac−b2>0かつc≦0』」 である。(∵吸収律) ・「ac−b2≦0または『ac−b2≦0かつc≦0』または『ac−b2>0かつa≦0』または『ac−b2>0かつc≦0』」 とは、 「ac−b2≦0または『ac−b2>0かつa≦0』または『ac−b2>0かつc≦0』」 である。(∵吸収律) step1-2:「命題P⇒命題Q」の対偶「『命題Qが成り立たない』⇒『命題Pが成り立たない』」の分析 「命題P⇒命題Q」の対偶「『命題Qが成り立たない』⇒『命題Pが成り立たない』」とは、 命題R1「ac−b2≦0⇒『命題Pが成り立たない』」 かつ 命題R2「『ac−b2>0かつa≦0』⇒『命題Pが成り立たない』」 かつ 命題R3「『ac−b2>0かつc≦0』」⇒『命題Pが成り立たない』」 である。 なぜなら、 ・「『命題Qが成り立たない』⇒『命題Pが成り立たない』」とは、 step1-1より、 「ac−b2≦0または『ac−b2>0かつa≦0』または『ac−b2>0かつc≦0』」⇒『命題Pが成り立たない』 である。 ・「ac−b2≦0または『ac−b2>0かつa≦0』または『ac−b2>0かつc≦0』」⇒『命題Pが成り立たない』 とは、 「ac−b2≦0⇒『命題Pが成り立たない』」 かつ 「『ac−b2>0かつa≦0』⇒『命題Pが成り立たない』」 かつ 「『ac−b2>0かつc≦0』」⇒『命題Pが成り立たない』」 である。(∵) step1-3:結論 以上より、 「命題P⇒命題Q」の対偶「『命題Qが成り立たない』⇒『命題Pが成り立たない』」とは、 命題R1「ac−b2≦0⇒『命題Pが成り立たない』」 かつ 命題R2「『ac−b2>0かつa≦0』⇒『命題Pが成り立たない』」 かつ 命題R3「『ac−b2>0かつc≦0』」⇒『命題Pが成り立たない』」 であるから、 この命題R1が真であること、命題R2が真であること、命題R3が真であることを、全て示せば、 「命題P⇒命題Q」を証明したことになる。 step2:命題R1 命題R1「ac−b2≦0⇒『命題Pが成り立たない』」が成立することは、 「2変数二次形式の符号判定〜行列を使わずに」のケースV,ケースWで、示されている。 step3:命題R2「『ac−b2>0かつa≦0』⇒『命題Pが成り立たない』」が真であることの証明 step3-1:「ac−b2>0かつa≦0」の分析 「ac−b2>0かつa≦0」とは、 「『ac−b2>0かつa=0』または『ac−b2>0かつa<0』」であることに他ならない。 なぜなら、 ・「ac−b2>0かつa≦0」とは、「ac−b2>0かつ『a=0またはa<0』」ということである。(∵a≦0⇔『a=0またはa<0』) ・「ac−b2>0かつ『a=0またはa<0』」とは、 「『ac−b2>0かつa=0』または『ac−b2>0かつa<0』」ということである。(∵分配律) step3-2:命題R2「『ac−b2>0かつa≦0』⇒『命題Pが成り立たない』」の分析 命題R2「『ac−b2>0かつa≦0』⇒『命題Pが成り立たない』」とは、 命題R2-1「『ac−b2>0かつa=0』⇒ 『命題Pが成り立たない』」 かつ 命題R2-2「ac−b2>0かつa<0』⇒ 『命題Pが成り立たない』」 である。 なぜなら、 ・step3-1より、「ac−b2>0かつa≦0」⇔「『ac−b2>0かつa=0』または『ac−b2>0かつa<0』」 ・「『(ac−b2>0かつa=0)または(ac−b2>0かつa<0)』⇒ 『命題Pが成り立たない』」 とは、 命題R2-1「『ac−b2>0かつa=0』⇒ 『命題Pが成り立たない』」 かつ 命題R2-2「ac−b2>0かつa<0』⇒ 『命題Pが成り立たない』」 ということである。(∵) step3-3:命題R2「『ac−b2>0かつa≦0』⇒『命題Pが成り立たない』」の証明 ・step3-2より、命題R2「『ac−b2>0かつa≦0』⇒『命題Pが成り立たない』」が真であることを証明するためには、 ・命題R2-1「『ac−b2>0かつa=0』⇒『命題Pが成り立たない』」が真であること ・命題R2-2「ac−b2>0かつa<0』⇒『命題Pが成り立たない』」が真であること を示せばよい。 ・命題R2-1「『ac−b2>0かつa=0』⇒『命題Pが成り立たない』」は真である。 なぜなら、 ・「ならば⇒」の真理値表をみるとわかるように、 命題Pが偽にしかならないとき、「命題P⇒命題Q」は真になるように、「命題P⇒命題Q」は定義されている。 ・『ac−b2>0かつa=0』は偽である。 実際、 a=0のとき、ac−b2=0−b2=−b2≦0(∵∀b∈R に対してb2≧0) つまり、a=0とac−b2>0の同時達成は不可能。 ・上記2点より、命題R2-1「『ac−b2>0かつa=0』⇒『命題Pが成り立たない』」は真であると示された。 ・命題R2-2「『ac−b2>0かつa<0』⇒『命題Pが成り立たない』」は真である。 なぜなら、 『ac−b2>0かつa<0』⇒『ac−b2>0かつa<0かつc<0』⇒『命題Pが成り立たない』であるから。 ・「『ac−b2>0かつa<0』⇒『ac−b2>0かつa<0かつc<0』」は、 『ac−b2>0かつa<0』⇒ 『c<0』だからだが、 これは、次の手順で示せる。 ・「ac−b2>0かつa<0」⇒「ac>b2かつa<0」 なぜなら、「ac−b2>0」⇒「ac−b2+b2>0+b2」 (∵)であるから。 ・「ac>b2かつa<0」⇒「ac>b2かつ 1/a<0」 なぜなら、a<0⇒ 1/a<0(∵)だから。 ・「ac>b2かつ 1/a<0」⇒「c<b2/a≦0」 なぜなら、次の二点から。 ・「ac>b2かつ 1/a<0」⇒ 「(1/a)ac<(1/a)b2」すなわち「c<b2/a」(∵) ・「 1/a<0」⇒ b2/a≦0 ∵ ∀b∈R に対してb2≧0 ・「c<b2/a≦0」⇒「c<0」(∵狭義順序の推移律) ・「『ac−b2>0かつa<0かつc<0』⇒『命題Pが成り立たない』」は、 「2変数二次形式の符号判定〜行列を使わずに」のケースUで、示されている。 step4:命題R3「『ac−b2>0かつc≦0』」⇒『命題Pが成り立たない』」が真であることの証明 step4-1:「ac−b2>0かつc≦0」の分析 「ac−b2>0かつc≦0」とは、 「『ac−b2>0かつc=0』または『ac−b2>0かつc<0』」であることに他ならない。 なぜなら、 ・「ac−b2>0かつc≦0」とは、「ac−b2>0かつ『c=0またはc<0』」ということである。(∵c≦0⇔『c=0またはc<0』) ・「ac−b2>0かつ『c=0またはc<0』」とは、 「『ac−b2>0かつc=0』または『ac−b2>0かつc<0』」ということである。(∵分配律) step4-2:命題R3「『ac−b2>0かつc≦0』⇒『命題Pが成り立たない』」の分析 命題R3「『ac−b2>0かつc≦0』⇒『命題Pが成り立たない』」とは、 命題R3-1「『ac−b2>0かつc=0』⇒ 『命題Pが成り立たない』」 かつ 命題R3-2「ac−b2>0かつc<0』⇒ 『命題Pが成り立たない』」 である。 なぜなら、 ・step4-1より、「ac−b2>0かつc≦0」⇔「『ac−b2>0かつc=0』または『ac−b2>0かつc<0』」 ・「『(ac−b2>0かつc=0)または(ac−b2>0かつc<0)』⇒ 『命題Pが成り立たない』」 とは、 命題R3-1「『ac−b2>0かつc=0』⇒ 『命題Pが成り立たない』」 かつ 命題R3-2「ac−b2>0かつc<0』⇒ 『命題Pが成り立たない』」 ということである。(∵) step4-3:命題R3「『ac−b2>0かつc≦0』⇒『命題Pが成り立たない』」の証明 ・step3-2より、命題R3「『ac−b2>0かつc≦0』⇒『命題Pが成り立たない』」が真であることを証明するためには、 ・命題R3-1「『ac−b2>0かつc=0』⇒『命題Pが成り立たない』」が真であること ・命題R3-2「ac−b2>0かつc<0』⇒『命題Pが成り立たない』」が真であること を示せばよい。 ・命題R3-1「『ac−b2>0かつc=0』⇒『命題Pが成り立たない』」は真である。 なぜなら、 ・「ならば⇒」の真理値表をみるとわかるように、 命題Pが偽にしかならないとき、「命題P⇒命題Q」は真になるように、「命題P⇒命題Q」は定義されている。 ・『ac−b2>0かつc=0』は偽である。 実際、 c=0のとき、ac−b2=0−b2=−b2≦0(∵∀b∈R に対してb2≧0) つまり、c=0とac−b2>0の同時達成は不可能。 ・上記2点より、命題R3-1「『ac−b2>0かつc=0』⇒『命題Pが成り立たない』」は真であると示された。 ・命題R3-2「『ac−b2>0かつc<0』⇒『命題Pが成り立たない』」は真である。 なぜなら、 『ac−b2>0かつc<0』⇒『ac−b2>0かつa<0かつc<0』⇒『命題Pが成り立たない』であるから。 ・「『ac−b2>0かつc<0』⇒『ac−b2>0かつa<0かつc<0』」は、 『ac−b2>0かつc<0』⇒ 『a<0』だからだが、 これは、次の手順で示せる。 ・「ac−b2>0かつc<0」⇒「ac>b2かつc<0」 なぜなら、「ac−b2>0」⇒「ac−b2+b2>0+b2」 (∵)であるから。 ・「ac>b2かつc<0」⇒「ac>b2かつ 1/c<0」 なぜなら、c<0⇒ 1/c<0(∵)だから。 ・「ac>b2かつ 1/c<0」⇒「a<b2/c≦0」 なぜなら、次の二点から。 ・「ac>b2かつ 1/c<0」⇒ 「(1/c)ac<(1/c)b2」すなわち「a<b2/c」(∵) ・「 1/c<0」⇒ b2/c≦0 ∵ ∀b∈R に対してb2≧0 ・「a<b2/c≦0」⇒「a<0」(∵狭義順序の推移律) ・「『ac−b2>0かつa<0かつc<0』⇒『命題Pが成り立たない』」は、 「2変数二次形式の符号判定〜行列を使わずに」のケースUで、示されている。 |
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→[トピック一覧:二次形式] |
定理:負値定符号行列になるための必要十分条件〜主小行列式に関連して |
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次の二つの命題は、同値。 命題P:対称行列A= ![]() つまり、Q(x,y) = ax2+2 bxy + c y2 は、負値定符号二次形式。 命題Q:対称行列Aの第二次主小行列の行列式が正 かつ 対称行列Aの第一次主小行列の行列式が負。 つまり、 ・対称行列A= ![]() ![]() の行列式 ac−b2が正。 かつ ・対称行列A= ![]() かつ ・対称行列A= ![]() →[トピック一覧:二次形式] |
cf. n変数の二次形式への拡張 [文献−線型代数] ・佐武『線型代数学』W§4 定理6-注意(p.164) 主小行列式:対角線上にある小行列式 ・斎藤『線形代数入門』156. Chiang322-326. |
(「命題Q⇒命題P」の証明) | ||
「2変数二次形式の符号判定 〜行列を使わずに」ケースUより。 | ||
(「命題P⇒命題Q」の証明) | ||
「命題P⇒命題Q」を示すために、「命題P⇒命題Q」の対偶「『命題Qが成り立たない』⇒『命題Pが成り立たない』」を示す。 step1:「命題P⇒命題Q」の対偶「『命題Qが成り立たない』⇒『命題Pが成り立たない』」の分析 「命題P⇒命題Q」の対偶「『命題Qが成り立たない』⇒『命題Pが成り立たない』」とは、 命題R1「ac−b2≦0⇒『命題Pが成り立たない』」 かつ 命題R2「『ac−b2>0かつa≧0』⇒『命題Pが成り立たない』」 かつ 命題R3「『ac−b2>0かつc≧0』」⇒『命題Pが成り立たない』」 であるから(そのわけは、step1-1,step1-2)、 この命題R1、命題R2、命題R3を、全て示せば、 「命題P⇒命題Q」を証明したことになる。 step1-1:『命題Qが成り立たない』ということの分析 「命題Qが成り立たない」とは、 「ac−b2≦0または『ac−b2>0かつa≧0』または『ac−b2>0かつc≧0』」を意味する。 なぜなら、 ・「命題Qが成り立たない」とは、 「『ac−b2>0かつa<0かつc<0』が成り立たない」ということ。 ・「『ac−b2>0かつa<0かつc<0』が成り立たない」とは、 「ac−b2≦0またはa≧0またはc≧0」ということ。(∵) ・「ac−b2≦0またはa≧0またはc≧0」とは、 「ac−b2≦0または『ac−b2>0かつa≧0』または『ac−b2≦0かつa≧0』または『ac−b2>0かつc≧0』または『ac−b2≦0かつc≧0』」 である。 なぜなら、 「a≧0」は、「『ac−b2>0かつa≧0』または『ac−b2≦0かつa≧0』」であり、 「c≧0」は、「『ac−b2>0かつc≧0』または『ac−b2≦0かつc≧0』」であるから。 ・「ac−b2≦0または『ac−b2>0かつa≧0』または『ac−b2≦0かつa≧0』または『ac−b2>0かつc≧0』または『ac−b2≦0かつc≧0』」 とは、 「ac−b2≦0または『ac−b2≦0かつa≧0』または『ac−b2≦0かつc≧0』または『ac−b2>0かつa≧0』または『ac−b2>0かつc≧0』」 である(∵結合律) ・「ac−b2≦0または『ac−b2≦0かつa≧0』または『ac−b2≦0かつc≧0』または『ac−b2>0かつa≧0』または『ac−b2>0かつc≧0』」 とは、 「ac−b2≦0または 『ac−b2≦0かつc≧0』または『ac−b2>0かつa≧0』または『ac−b2>0かつc≧0』」 である。(∵吸収律) ・「ac−b2≦0または 『ac−b2≦0かつc≧0』または『ac−b2>0かつa≧0』または『ac−b2>0かつc≧0』」 とは、 「ac−b2≦0または 『ac−b2>0かつa≧0』または『ac−b2>0かつc≧0』」 である。(∵吸収律) step1-2:「命題P⇒命題Q」の対偶「『命題Qが成り立たない』⇒『命題Pが成り立たない』」の分析 「命題P⇒命題Q」の対偶「『命題Qが成り立たない』⇒『命題Pが成り立たない』」とは、 命題R1「ac−b2≦0⇒『命題Pが成り立たない』」 かつ 命題R2「『ac−b2>0かつa≧0』⇒『命題Pが成り立たない』」 かつ 命題R3「『ac−b2>0かつc≧0』」⇒『命題Pが成り立たない』」 である。 なぜなら、 ・「『命題Qが成り立たない』⇒『命題Pが成り立たない』」とは、 step1-1より、 「ac−b2≦0または『ac−b2>0かつa≧0』または『ac−b2>0かつc≧0』」⇒『命題Pが成り立たない』 である。 ・「ac−b2≦0または『ac−b2>0かつa≧0』または『ac−b2>0かつc≧0』」⇒『命題Pが成り立たない』 とは、 「ac−b2≦0⇒『命題Pが成り立たない』」 かつ 「『ac−b2>0かつa≧0』⇒『命題Pが成り立たない』」 かつ 「『ac−b2>0かつc≧0』」⇒『命題Pが成り立たない』」 である。(∵) step1-3:結論 以上より、 「命題P⇒命題Q」の対偶「『命題Qが成り立たない』⇒『命題Pが成り立たない』」とは、 命題R1「ac−b2≦0⇒『命題Pが成り立たない』」 かつ 命題R2「『ac−b2>0かつa≧0』⇒『命題Pが成り立たない』」 かつ 命題R3「『ac−b2>0かつc≧0』」⇒『命題Pが成り立たない』」 であるから、 この命題R1が真であること、命題R2が真であること、命題R3が真であることを、全て示せば、 「命題P⇒命題Q」を証明したことになる。 step2:命題R1 命題R1「ac−b2≦0⇒『命題Pが成り立たない』」が成立することは、 「2変数二次形式の符号判定〜行列を使わずに」のケースV,ケースWで、示されている。 step3:命題R2「『ac−b2>0かつa≧0』⇒『命題Pが成り立たない』」が真であることの証明 step3-1:「ac−b2>0かつa≧0」の分析 「ac−b2>0かつa≧0」とは、 「『ac−b2>0かつa=0』または『ac−b2>0かつa>0』」であることに他ならない。 なぜなら、 ・「ac−b2>0かつa≧0」とは、「ac−b2>0かつ『a=0またはa>0』」ということである。(∵a≧0⇔『a=0またはa>0』) ・「ac−b2>0かつ『a=0またはa>0』」とは、 「『ac−b2>0かつa=0』または『ac−b2>0かつa>0』」ということである。(∵分配律) step3-2:命題R2「『ac−b2>0かつa≧0』⇒『命題Pが成り立たない』」の分析 命題R2「『ac−b2>0かつa≧0』⇒『命題Pが成り立たない』」とは、 命題R2-1「『ac−b2>0かつa=0』⇒ 『命題Pが成り立たない』」 かつ 命題R2-2「ac−b2>0かつa>0』⇒ 『命題Pが成り立たない』」 である。 なぜなら、 ・step3-1より、「ac−b2>0かつa≧0」⇔「『ac−b2>0かつa=0』または『ac−b2>0かつa>0』」 ・「『(ac−b2>0かつa=0)または(ac−b2>0かつa>0)』⇒ 『命題Pが成り立たない』」 とは、 命題R2-1「『ac−b2>0かつa=0』⇒ 『命題Pが成り立たない』」 かつ 命題R2-2「ac−b2>0かつa>0』⇒ 『命題Pが成り立たない』」 ということである。(∵) step3-3:命題R2「『ac−b2>0かつa≧0』⇒『命題Pが成り立たない』」の証明 ・step3-2より、命題R2「『ac−b2>0かつa≧0』⇒『命題Pが成り立たない』」が真であることを証明するためには、 ・命題R2-1「『ac−b2>0かつa=0』⇒『命題Pが成り立たない』」が真であること ・命題R2-2「ac−b2>0かつa>0』⇒『命題Pが成り立たない』」が真であること を示せばよい。 ・命題R2-1「『ac−b2>0かつa=0』⇒『命題Pが成り立たない』」は真である。 なぜなら、 ・「ならば⇒」の真理値表をみるとわかるように、 命題Pが偽にしかならないとき、「命題P⇒命題Q」は真になるように、「命題P⇒命題Q」は定義されている。 ・『ac−b2>0かつa=0』は偽である。 実際、 a=0のとき、ac−b2=0−b2=−b2≦0(∵∀b∈R に対してb2≧0) つまり、a=0とac−b2>0の同時達成は不可能。 ・上記2点より、命題R2-1「『ac−b2>0かつa=0』⇒『命題Pが成り立たない』」は真であると示された。 ・命題R2-2「『ac−b2>0かつa>0』⇒『命題Pが成り立たない』」は真である。 なぜなら、 『ac−b2>0かつa>0』⇒『ac−b2>0かつa>0かつc>0』⇒『命題Pが成り立たない』であるから。 ・「『ac−b2>0かつa>0』⇒『ac−b2>0かつa>0かつc>0』」は、 『ac−b2>0かつa>0』⇒ 『c>0』だからだが、 これは、次の手順で示せる。 ・「ac−b2>0かつa>0」⇒「ac>b2かつa>0」 なぜなら、「ac−b2>0」⇒「ac−b2+b2>0+b2」 (∵)であるから。 ・「ac>b2かつa>0」⇒「ac>b2かつ 1/a>0」 なぜなら、a>0⇒ 1/a>0(∵)だから。 ・「ac>b2かつ 1/a>0」⇒「c>b2/a≧0」 なぜなら、次の二点から。 ・「ac>b2かつ 1/a>0」⇒ 「(1/a)ac>(1/a)b2」すなわち「c>b2/a」(∵) ・「 1/a>0」⇒ b2/a≧0 ∵ ∀b∈R に対してb2≧0 ・「c>b2/a≧0」⇒「c>0」(∵狭義順序の推移律) ・「『ac−b2>0かつa>0かつc>0』⇒『命題Pが成り立たない』」は、 「2変数二次形式の符号判定〜行列を使わずに」のケースTで、示されている。 step4:命題R3「『ac−b2>0かつc≧0』」⇒『命題Pが成り立たない』」が真であることの証明 step4-1:「ac−b2>0かつc≧0」の分析 「ac−b2>0かつc≧0」とは、 「『ac−b2>0かつc=0』または『ac−b2>0かつc>0』」であることに他ならない。 なぜなら、 ・「ac−b2>0かつc≧0」とは、「ac−b2>0かつ『c=0またはc>0』」ということである。(∵c≧0⇔『c=0またはc>0』) ・「ac−b2>0かつ『c=0またはc>0』」とは、 「『ac−b2>0かつc=0』または『ac−b2>0かつc>0』」ということである。(∵分配律) step4-2:命題R3「『ac−b2>0かつc≧0』⇒『命題Pが成り立たない』」の分析 命題R3「『ac−b2>0かつc≧0』⇒『命題Pが成り立たない』」とは、 命題R3-1「『ac−b2>0かつc=0』⇒ 『命題Pが成り立たない』」 かつ 命題R3-2「ac−b2>0かつc>0』⇒ 『命題Pが成り立たない』」 である。 なぜなら、 ・step4-1より、「ac−b2>0かつc≧0」⇔「『ac−b2>0かつc=0』または『ac−b2>0かつc>0』」 ・「『(ac−b2>0かつc=0)または(ac−b2>0かつc>0)』⇒ 『命題Pが成り立たない』」 とは、 命題R3-1「『ac−b2>0かつc=0』⇒ 『命題Pが成り立たない』」 かつ 命題R3-2「ac−b2>0かつc>0』⇒ 『命題Pが成り立たない』」 ということである。(∵) step4-3:命題R3「『ac−b2>0かつc≦0』⇒『命題Pが成り立たない』」の証明 ・step3-2より、命題R3「『ac−b2>0かつc≧0』⇒『命題Pが成り立たない』」が真であることを証明するためには、 ・命題R3-1「『ac−b2>0かつc=0』⇒『命題Pが成り立たない』」が真であること ・命題R3-2「ac−b2>0かつc>0』⇒『命題Pが成り立たない』」が真であること を示せばよい。 ・命題R3-1「『ac−b2>0かつc=0』⇒『命題Pが成り立たない』」は真である。 なぜなら、 ・「ならば⇒」の真理値表をみるとわかるように、 命題Pが偽にしかならないとき、「命題P⇒命題Q」は真になるように、「命題P⇒命題Q」は定義されている。 ・『ac−b2>0かつc=0』は偽である。 実際、 c=0のとき、ac−b2=0−b2=−b2≦0(∵∀b∈R に対してb2≧0) つまり、c=0とac−b2>0の同時達成は不可能。 ・上記2点より、命題R2-1「『ac−b2>0かつc=0』⇒『命題Pが成り立たない』」は真であると示された。 ・命題R3-2「『ac−b2>0かつc>0』⇒『命題Pが成り立たない』」は真である。 なぜなら、 『ac−b2>0かつc>0』⇒『ac−b2>0かつa>0かつc>0』⇒『命題Pが成り立たない』であるから。 ・「『ac−b2>0かつc>0』⇒『ac−b2>0かつa>0かつc>0』」は、 『ac−b2>0かつc>0』⇒ 『a>0』だからだが、 これは、次の手順で示せる。 ・「ac−b2>0かつc>0」⇒「ac>b2かつc>0」 なぜなら、「ac−b2>0」⇒「ac−b2+b2>0+b2」 (∵)であるから。 ・「ac>b2かつc>0」⇒「ac>b2かつ 1/c>0」 なぜなら、c>0⇒ 1/c>0(∵)だから。 ・「ac>b2かつ 1/c>0」⇒「a>b2/c≧0」 なぜなら、次の二点から。 ・「ac>b2かつ 1/c>0」⇒ 「(1/c)ac>(1/c)b2」すなわち「a>b2/c」(∵) ・「 1/c>0」⇒ b2/c≧0 ∵ ∀b∈R に対してb2≧0 ・「a>b2/c≧0」⇒「a>0」(∵狭義順序の推移律) ・「『ac−b2>0かつa>0かつc>0』⇒『命題Pが成り立たない』」は、 「2変数二次形式の符号判定〜 行列を使わずに」のケースTで、示されている。 |
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