・行列式の定義:行列式の公理的定義/公理的定義の同値条件/行列式の展開形(具体的定義) ・行列式の性質:列基本変形タイプ1に対する不変性/一次従属一次独立との関連/転置不変性/行列積の行列式 |
※小行列式/主小行列式 ※線形代数目次・総目次 |
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正方行列の行列式determinantの公理的定義・行列式写像 | ||
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[文献] *松坂『解析入門4』16.1-C〜F (pp.33-41):体上の行列一般の行列式について公理的に定義。部分行列、小行列式は、16.2-E(p.51). *神谷浦井『経済学のための数学入門』§5.2.3〜5.2.4(pp.170-181):体上の行列一般の行列式について公理的に定義。小行列式は、p.179; ・志賀『線形代数30講』22〜23講(pp.138〜148); ・木村『線形代数:数理科学の基礎』1.3(p.9): 公理的に定義。具体的な数値の入った行列ならば、この定義だけでも、行列式の値が計算できることも示されている。 ・二階堂『経済のための線型代数』I§3(pp.24-32):体上の行列一般の行列式について公理的に定義。小行列・小行列式はp.46 ・草場『線形代数』1.8(pp.26-28); |
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定義 |
「n次正方行列Aの行列式」 det A |A| とは、 n次正方行列Aに対して実数を対応付ける写像 f : Mn(R)→R (記号Mn(R)は、実数体上のn次全行列環を表す) であって、 次の三要件を満たすもののことをいう。 [要件1: 単位行列] n次単位行列Inに対して、 f( In )=1 [要件2: 交代性] n次正方行列Aの二つの列を入れ替えて、 n次正方行列A'をつくる[→列基本変形2]。 すると、f(A')=−f(A) になる。 つまり、 |
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![]() [→この要件と同値な条件] |
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[要件3: 多重線形性] |
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以上の要件を満たす写像は、下記の展開形だけであると、証明される。 |
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行列式の交代性の同値条件 |
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行列式の定義の要件2は、次の条件と同値。 |
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正方行列の行列式は、列基本変形type1に対して、不変。 |
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[文献] ・草場『線形代数』1.10(p.30); ・松坂『解析入門4』16.1-C定理2(pp.35). ・神谷浦井『経済学のための数学入門』定理5.2.1(p.172). |
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n次正方行列Aのある列をスカラー倍したものを、Aの他の列に加えて、 |
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正方行列の行列式と一次従属・一次独立 | ||
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[文献] ・松坂『解析入門4』16.1-C定理2-(c)(pp.35) :証明つき. ・二階堂『経済のための線型代数』I§3(p.28):証明つき。 |
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・n次正方行列Aを構成する各列が一次従属ならば、detA=0 ・detA≠0ならば、n次正方行列Aを構成する各列は一次独立。 |
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定義:正方行列の行列式determinantの展開形 (具体的定義) | ||
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[文献-全般] ・『岩波数学辞典』84行列式A定義(p.224); [文献-線型代数] ・佐武『線型代数学』U§2(p.47); ・斎藤『線型代数入門』3章§2(p.78); ・永田『理系のための線型代数の基礎』2.2(p.59); ・砂田『行列と行列式』§3.3a定義3.17 (p.105); [第(i,j)小行列式→定義3.35,p.114] ・志賀『線形代数30講』22〜23講(pp.138〜148); ・木村『線形代数:数理科学の基礎』1.3(p.11): ・草場『線形代数』定理1.5(p.28); [文献-解析] ・松坂『解析入門4』16.1-C〜F (pp.33-41):体上の行列一般の行列式について公理的に定義。部分行列、小行列式は、16.2-E(p.51) [文献-数理経済] ・西村『経済数学早わかり』2章§2.3(pp.58-61).諸行列式は、5.1(p.86) ・神谷浦井『経済学のための数学入門』§5.2.3〜5.2.4(pp.170-181) :体上の行列一般の行列式について公理的に定義。; ・二階堂『経済のための線型代数』I§3(pp.29-31)。小行列・小行列式はp.46 ・グリーン『計量経済分析』2.4.6(p.30):面積としての解釈を定義としてしまっている;小行列は、p.33 |
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[1次正方行列の行列式の展開形] | ||
1次正方行列 a11 の行列式は、 a11 と表される。 |
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[2次正方行列の行列式の展開形] | ||
2次正方行列![]() の行列式は、 a11a22−a12a21 と表される。 |
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[3次正方行列の行列式の展開形] | ||
3次正方行列![]() の行列式は、 a11a22a33+a12a23a31+a13a21a32−a11a23a32−a12a21a33−a13a22a31 と表される。 |
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[n次正方行列の行列式の展開形] | ||
右記文献参照。 |
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行列式であるための要件を満たすのは、上記の展開形だけである。 |
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PCでの行列式の計算 |
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行列式の転置不変性 | ||
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定理 |
n次正方行列Aに対して、detA=det(tA)。 つまり、転置しても、行列式は変わらない。 |
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証明 |
行列式の展開形から。 |
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行列積の行列式 |
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→[トピック一覧:行列式] |
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(reference)
日本数学会編集『岩波数学辞典(第三版)』 岩波書店、1985年、項目210線形空間(pp.570-576)
線形代数のテキスト
ホフマン・クンツェ『線形代数学I』培風館、1976年、2.1ベクトル空間(pp.28-34)。
永田雅宜『理系のための線形代数の基礎』紀伊国屋書店、1986年、1.3ベクトル空間(pp.14-6)。
佐武一郎『線形代数学(第44版)』裳華房、1987年、Vベクトル空間§6ベクトル空間の公理化(p.115)。
砂田利一『現代数学への入門:行列と行列式』2003年、§5.1-b(p.155).
志賀浩二『数学30講シリーズ:線形代数30講』朝倉書店、1988年、13講ベクトル空間へ(p.83);14講ベクトル空間の例と基本概念(p.88)。
藤原毅夫『理工系の基礎数学2:線形代数』岩波書店、1996年、1.1ベクトルとベクトルの演算(p.4)、4.1線形空間と写像(p.91)。
斎藤正彦『線形代数入門』東京大学出版会、1966年、第2章§1行列の定義と演算(p.31);§3(p.46);§6(p.61)第4章§2線形空間(p.96):実線形空間・複素線形空間のみ;附録V§2体(p.249)。
代数学のテキスト
本部均『新しい数学へのアプローチ5:新しい代数』共立出版、1969年、5.2-Aベクトル空間(p.132)。
酒井文雄『共立講座21世紀の数学8:環と体の理論』共立出版、1997年、1.6ベクトル空間(p.22)。
解析学のテキスト
杉浦光夫『解析入門I』東京大学出版会、1980年、I章§4(pp.33-4)
数理経済学のテキスト
神谷和也・浦井憲『経済学のための数学入門』東京大学出版会、1996年、§3.1ベクトル空間とは何か(p.105)。
西村和雄『経済数学早わかり』日本評論社、1982年、2章線形代数§1ベクトル(pp.26-)。
Chiang, Fundamental Methods of Mathematical Economics: Third Edition, McGraw Hill,1984,1.
布川昊,谷野哲三,中山弘隆『線形代数と凸解析』コロナ社、1991年、2.4基底と次元(pp.36-41)。
高橋一『経済学とファイナンスのための数学』新世社、1999年、1.2V定義1.2.2(p.10)。
二階堂副包『経済のための線型代数』培風館、1961年、I§1(pp.18-9)。
数理統計学のテキスト
William H. Greene(斯波・中妻・浅井訳) 『経済学体系シリーズ:グリーン計量経済分析I:改訂4版』エコノミスト社、2000年、第2章行列代数2.2行列の用語(pp.10-12);2.3行列の算法(pp.12-21)。
岩田暁一『経済分析のための統計的方法(第2版)』東洋経済新報社、1983年、12.1行列の演算(pp.269-277);12.4.2逆行列(pp.294-5)。
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