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もとの点列: | P0 , |
P1 , |
P2 , |
P3 , |
P4 , |
P5 , |
… |
部分列: | P1 , |
P3 , |
P5 , |
P7 , |
P9 , |
… |
|
↑ |
↑ | ↑ | ↑ | ↑ | ↑ | ||
Pi(1), | Pi(2), |
Pi(3), |
Pi(4), |
Pi(5), |
… |
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定義:距離空間 ( R2,d ) 上の点列の収束と極限点 |
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※「距離空間(R2,d)上の」の意味がわからない場合→ユークリッド平面上の点列の収束・極限を参照。 なにもことわらずに、「R2上の点列」といえば、それは「ユークリッド平面上の点列」のこと。 なお、距離空間(R2,d)は、ユークリッド平面の一般化。→距離空間のイントロダクション |
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直感的な説明 |
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「点列{Pi}が、点Pに収束する」とは、iが大きくなるにつれて、点列をなす各点Piが点Pに「近づく」こと。 だけど、この「近づく」とは、どういうことなのか … よく考えてみると、はっきりしない。 この点を明確化するために、点列の収束は、次のように、少々面倒くさいかたちで定義されることになる。 |
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はじめによむべき定義 |
【文献】 ・『岩波数学辞典』項目92D(pp.254-255); 項目166E(pp436) ・矢野『距離空間と位相構造』1.1.2(p.10); ・松坂『集合・位相入門』6章§1-C(pp.238-9) ; ・小平『解析入門I』§1.6(p.60); ・吹田新保『理工系の微分積分学』p.155 |
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設定 |
(R2,d) :平面R2に距離dを与えてつくった距離空間 P : R2上の点 { Pi }={P1 , P2 , P3 , …} : R2上の点列 |
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定義 |
「距離空間 (R2, d ) 上の点列{Pi}が、点P∈R2に収束する」 とは、 数列{ d ( P1 , P ) , d ( P2 , P ) , d ( P3 , P ) ,… }が0に収束すること、 すなわち、d ( Pi , P ) →0 ( i→∞ ) ![]() が成り立つこと を言う。 また、点列{ Pi }が点Pに収束するとき、Pを極限limit、極限点などと呼ぶ。 |
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※距離=ユークリッド距離,距離空間=ユークリッド平面上としたときの具体例 →ユークリッド平面上の点列の収束・極限 |
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厳密な定義 |
【文献】 ・松坂『集合・位相入門』6章§1-C(pp.238-9) ; ・斉藤『数学の基礎:集合・数・位相』4.5.11(p.131); ・神谷浦井『経済学のための数学入門』定義4.3.2(p.137) ; ・杉浦『解析入門I』1章§4(pp.38-40) |
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設定 |
(R2,d) :平面R2に距離dを与えてつくった距離空間 P : R2上の点 { Pi }={P1 , P2 , P3 , …} : R2上の点列 |
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定義 |
「距離空間 (R2, d ) 上の点列{Pi}が、点P∈R2に収束する」 とは、 ・ε1> 0に対して、 「N1以上のすべての番号iについて、d ( Pi , P ) <ε1 」 を成立させる番号N1が存在する ・ε2> 0に対して、 「N2以上のすべての番号iについて、d ( Pi , P ) <ε2 」 を成立させる番号N2が存在する ・ε3> 0に対して、 「N3以上のすべての番号iについて、d ( Pi , P ) <ε3 」 を成立させる番号N3が存在する : : といった具合に、 任意のε> 0に対して、ある番号Nが存在して、 「N以上のあらゆる番号iに対して、d ( Pi , P ) <ε」 ないし「N以上のあらゆる番号iに対して、Pi が点Pのε近傍に属す」 を成立させる ということ。 点列{ Pi }が点Pに収束するとき、Pを極限limit、極限点などと呼ぶ。 |
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※距離=ユークリッド距離,距離空間=ユークリッド平面上としたときの具体例 →ユークリッド平面上の点列の収束・極限 |
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論理記号による表現 |
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・「距離空間 (R2, d ) 上の点列{Pi}が、点P∈R2に収束する」 とは、 ∀ε>0 ∃N∈N ∀i∈N ( i≧N⇒ d ( Pi , P ) <ε) ∀ε>0 ∃N∈N ∀i∈N ( i≧N⇒ Pi ∈Uε(P) ) ∀Uε(P) ∃N∈N ∀i∈N ( i≧N⇒ Pi ∈Uε(P) ) ・点列{ Pi }が点Pに収束するとき、Pを極限limit、極限点などと呼ぶ。 |
【文献】 ・杉浦『解析入門I』1章§4(pp.38-40) |
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記法 |
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Pi→ P (i→∞) ![]() と記す。 |
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※(はじめに読むべき定義)と(厳密な定義)は同じもの | |||
【はじめに読むべき定義】「d ( Pi , P ) →0 ( i→∞ )」は、数列の収束の厳密な定義より、次のように言い換えても同じこと。 ∀ε> 0 ∃N∈N ∀i∈N ( i≧N⇒ | d ( Pi , P )−0 |< ε) …(1) 距離dの定義より、 d ( Pi , P ) ≧0だから、| d ( Pi , P )−0 |< ε⇔ d ( Pi , P )< ε したがって、(1)は、【厳密な定義】「∀ε>0 ∃N∈N ∀i∈N ( i≧N⇒ d ( Pi , P ) <ε)」 に言い換えても同じこと。 |
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点列の収束の必要十分条件 | |||
数列との関連、コーシー列との関連 | |||
他の収束・極限概念 | |||
数列の収束と極限値、Rn上の点列の収束・極限、一般の距離空間上の点列の収束・極限 | |||
2変数関数の極限定義 |
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※ここでは、特に、距離がユークリッド距離で定義されたユークリッド平面の上で、点列の収束について考える。
はじめに読むべき定義【設定】 (R2,d):平面R2にユークリッド距離を与えてつくったユークリッド平面 【定義】 |
【文献】 ・『岩波数学辞典』項目92D(pp.254-255); 項目166E(pp436) |
ユークリッド平面(R2, d )上の点列
{ Pi } i∈N ={ (x1,y1), (x2,y2), (x3,y3) ,… }が、点P (x,y)に収束するとは、 が成り立つことをいい、
これを、 または、Pi→P (i→∞) で表す。 また、点列{ Pi }が点Pに収束するとき、Pを極限limit、極限点などと呼ぶ。 |
厳密な定義:ε-N論法【設定】 (R2,d):平面R2にユークリッド距離を与えてつくったユークリッド平面 【定義】 |
【文献】 ・高木『解析概論』p.14.; |
ユークリッド平面(R2,d)上の点列 { Pi } i∈N ={ (x1,y1), (x2,y2), (x3,y3) ,… }が、点P (x,y)に収束する ※以上を、論理記号で表すと、 |
厳密な定義:ε近傍をもちいて【設定】 (R2,d):平面R2にユークリッド距離を与えてつくったユークリッド平面 【定義】 |
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ユークリッド平面(R2,d)上の点列 { Pi } i∈N ={ (x1,y1), (x2,y2), (x3,y3) ,… }が、点P(x,y)に収束する ・ε2 > 0に対して、 ・ε3 > 0に対して、 どんなε> 0に対してでも、ある番号Nが存在して、 |
論理記号による表現「 Pi→P (i→∞) 」 ないし 「 ⇔ ∀ε>0 ∃N∈N ∀i∈N
ベクトル表現 |
【文献】杉浦『解析入門I』1章§4(pp.38-40) |
R2 : |
実数を2個並べた組 (x,y) をすべてあつめた集合。すなわち、「実数全体の集合R」と「実数全体の集合R」の直積 R×R={ (x,y) | x∈R かつ y∈R } |
実2次元数ベクトル空間R2 : |
|
ノルム空間( R2, ‖‖ ) : |
実2次元数ベクトル空間R2にたいして、「自然な内積(標準内積)・」「ユークリッドノルム‖‖」を定義したもの。 |
ユークリッド空間(R2,d) : |
ノルム空間( R2, ‖‖ )にたいして、ユークリッドノルムから定めた距離d(x, y)=‖x−y‖を定義したもの。 |
P : |
ユークリッド平面 (R2,d)上の点(x,y)。「平面R2上の点(x,y)」は、実2次元数ベクトルであるから、この実2次元数ベクトル(x,y)をPで表すことにする。 |
{ Pi } i∈N : | ユークリッド平面 (R2,d)上の点列。すなわち実2次元数ベクトルの列。 |
{ P1 , P2 , P3 , … } : | { (x1,y1), (x2,y2), (x3,y3) ,… } |
・ユークリッド空間(R2,d)上の点列 { Pi } i∈N ={ (x1,y1), (x2,y2), (x3,y3) ,… }が、点P (x,y)に収束するとは、
数列{ d ( P1 , P ) =‖P1 −P‖, d ( P2 , P )=‖P2 −P‖ , d ( P3 , P )=‖P3 −P‖ ,… }が0に収束すること、
(図解1) |
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![]() ε=ε1をとった場合、P1からP4までは、Pのε1近傍に入らないが、 P5以降のすべての点は、Pのε1近傍のなかにおさまる。 つまり、ε1にたいして、(∀i∈N) ( i≧N⇒ Pi∈Uε(P) ) を満たすN=5が存在する。 ε=ε2をとった場合でも、P1からP6までは、Pのε2近傍に入らないが、 P7以降のすべての点は、Pのε2近傍のなかにおさまる。 つまり、ε2にたいして、(∀i∈N) ( i≧N⇒ Pi∈Uε(P) ) を満たすN=7が存在する。 ε=ε3をとった場合でも、P1からP8までは、Pのε3近傍に入らないが、 P9以降のすべての点は、Pのε3近傍のなかにおさまる。 つまり、ε3にたいして、(∀i∈N) ( i≧N⇒ Pi∈Uε(P) ) を満たすN=9が存在する。 : : この例では、 このように、どこまでεを小さくとっていっても、 そのεにたいして、(∀i∈N) ( i≧N⇒ Pi∈Uε(P) ) を満たすNが存在するから、 点列{Pi}i∈N={ (x1,y1), (x2,y2), (x3,y3) ,… }は点P (x , y )に収束するといえる。 |
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(図解2) |
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![]() ε=ε1をとった場合、P1からP2までは、Pのε1近傍に入らないが、 P3以降のすべての点は、Pのε1近傍のなかにおさまる。 つまり、ε1にたいして、(∀i∈N) ( i≧N⇒ Pi∈Uε(P) ) を満たすN=3が存在する。 ε=ε2をとった場合でも、P1からP5までは、Pのε2近傍に入らないが、 P6以降のすべての点は、Pのε2近傍のなかにおさまる。 つまり、ε2にたいして、(∀i∈N) ( i≧N⇒ Pi∈Uε(P) ) を満たすN=6が存在する。 ε=ε3をとった場合でも、P1からP8までは、Pのε3近傍に入らないが、 P9以降のすべての点は、Pのε3近傍のなかにおさまる。 つまり、ε3にたいして、(∀i∈N) ( i≧N⇒ Pi∈Uε(P) ) を満たすN=9が存在する。 : : この例では、 このように、どこまでεを小さくとっていっても、 そのεにたいして、(∀i∈N) ( i≧N⇒ Pi∈Uε(P) ) を満たすNが存在するから、 点列{Pi}i∈N={ (x1,y1), (x2,y2), (x3,y3) ,… }は点P (x , y )に収束するといえる。 |
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※ | 以上は、距離空間(R2,d)一般の点列の収束・極限の定義における距離dに、ユークリッド距離を与えるだけで得られる。 | |||
※ |
ユークリッド距離と位相的に同値である距離をR2に与えてつくった距離空間でどうなるか |
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(点列の収束の必要十分条件) |
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数列との関連、コーシー列との関連 |
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設定 |
(R2,d) : R2にユークリッド距離を与えてつくったユークリッド平面 |
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定理 |
以下の二つの命題は同値である。 命題1: 点列{Pi}i∈N={ (x1 , y1), (x2 , y2) , (x3 , y3) ,… }が、点P=(x,y)へ収束する。 つまり、 ![]() 命題2: 数列{xi}i∈Nがxに収束し、かつ、数列{yi}i∈Nがyに収束する。 ![]() ※なぜ?→証明 ![]() ![]() |
[文献] 高木『解析概論』p.14:R2上のユークリッド空間; 小平『解析入門I』§1.6-d(p.60) :R2上のユークリッド空間; 矢野『距離空間と位相構造』例1.9(p.12) :Rnにおいて; 志賀『位相への30講』第13講(pp.91-2):Rnにおいて; 神谷浦井『経済学のための数学入門』定理4.3.1(p.138) :n次元ユークリッド空間において; 杉浦『解析入門I』1章§4定理4.5-1(p.38):n次元ユークリッド空間において; 吹田新保『理工系の微分積分学』p.155-6 |
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※ | 活用例:点列のベクトル和の極限、点列と数列のスカラー積の極限 | ||
※ |
ユークリッド距離と位相的に同値である距離をR2に与えてつくった距離空間でどうなるか →矢野『距離空間と位相構造』例1.9(p.12) |
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・点列{Pn}の各点と原点O(0,0)との距離が、nによらない一定の実数を超えないとき、 点列{Pn}は「有界」であるという。[ 小平邦彦『解析入門I』 p. 65。 ] ・点列{Pn}の各点の各座標が有界なるとき、点列が有界であるという。 [杉浦『解析入門I』p.38;高木貞二『解析概論』p.14.] |
※有界, 平面R2における「有界」な点集合 |
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定理 |
ユークリッド空間(R2,d)において、 |
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定理 |
ユークリッド空間(R2,d)において、 点列{ P1 , P2 , P3 , … }={ (xP1,yP1), (xP2,yP2 ) , (xP3,yP3 ) ,…}が点P=(xP , yP)に収束し、 かつ、 数列{ a1 , a2 , a3 , … }がaに収束する ならば、 P1のスカラーa1倍、P2のスカラーa2倍、P3のスカラーa3倍、… と並べた点列 { a1P1 , a2P2 , a3P3 , … } ={ a1(xP1,yP1), a2(xP2,yP2 ), a3(xP3,yP3 ) ,…} ={ (a1xP1,a1yP1), (a2xP2,a2yP2), (a3xP3,a3yP3) ,…} は、Pのスカラーa倍として表される点 aP=a(xP,yP)=(axP , ayP ) に収束する。 つまり、 ![]() |
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