現場日記3【月桂樹】
きょう電話かけてきた客の息子は、庭いじりが高じて精神に変調を来たした。庭がきちがいのようになった。収集がつかなくなったのでほとんどコンクリでつぶした。それで少し落ち着いたので梅の木を抜きたい。梅の木が低いので二階の窓から見ると空を飛んでいるような気になる。窓に少しかかるくらいの常緑樹が欲しい。
で、おれは武者立ちの月桂樹ををすすめた。息子をクルマに乗せて畑まで連れてゆき現物を見せた。葉の匂いをかがせた。息子はいいですねえ、いいですねと言った。息子は庭石の位置の微妙なあり具合で、精神のリズムが変動するのだ。
言葉が剥落する。そうして生活が積み重なる。おれは刃物を研いで木の葉をはさみビールにありつく。妻の手料理。息子の母はおれに親切にしてくれた礼にと新潟の米をくれた。所帯を持つと真実コメがありがたい。おれは息子を幸福にする庭がつくれるだろうか。
2000/04/17(月)
|