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松吉
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発行周期:ほぼ毎日

内容: 植木屋松吉のひとりごと。たぶん言葉だけがあるのだろう。

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    日のすきま (松吉)        2005年7月7日(木)
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 ■ 雷雨

  一日、医院の芝刈り。
  夕方雷雨。
  すぐ近くに雷が落ちた。
  庇の下で雨止みを待つ。
  擁壁をカタツムリが這ってゆく。
  角を乗り上げて垂直から水平になり、ツノを片方だけ折り曲げて世界を感知している。
  感じること。
  それが生きることの始まりで終わりだ。
 
  夕方、犬を走らせに自転車を出した。
  里の山々の暗い森から、微かに、金の箔、銀の箔が舞い落ちる。
  ヒグラシが啼き初めたのだ。
  感じること。
  そのことでまた日を繋いでゆく。

 

 

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    日のすきま (松吉)        2005年4月14日(木)
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 ■ 花

  サクラが咲き出した。
  照れちまうな。

  今日も芝山の草を引いた。
  いざり通して膝が軋んだ。

  そばをセキレイが付いて離れなかった。
  根切虫を放ってやると「チイ」と鳴いて啄んだ。

  家に帰ると、周りのレンギョウも咲き出した。
  川の護岸を覆うように咲いている。

 

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    日のすきま (松吉)        2005年3月25日(金)
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 ■ 床屋

  仕事帰りに床屋へ入った。
  汚れた作業服はヤッケで隠した。
  平日カット千円。

  久しぶりに自分の顔をまじまじと眺めた。
  風に灼け乾きくたびれていた。
  目を瞑って鋏の音を聴く。

  隣に作業員風の初老の男が座った。
  おどおどと受け応えている。
  今日も重くきつい仕事が終わったのだ。

  不意に胸が熱くなった。
  なんでもない一日をつなぐこと。
  そこに、どれだけの断層が隠れている?

  昨日きょう明日。
  すきまのない日々を、
  ふと俯瞰するように魂が離れる。

  それが詩だと思うのだけれど。

 

 

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    日のすきま (松吉)        2005年3月19日(土)
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 ■ 離れ木

  永遠にないんじゃないかと思っていた休みが取れて、やっと曜日の感覚が戻った。
  朝から春めいた日差しが降りていた。
  久しぶりに畑に上がって土を起こした。
  鍬を置いて向こうの山を見ると、誰か手を振る人がいる。
  ずいぶん大きな人だなと思った。
  よく見ると風に揺れた離れ木だった。
  あれは私なんだろうな。
  この丘から向こうの山まで、
  天空から他人のような陽光が降りている。
  その距離を浴びて畑を起こした。
  飼い犬はそばで穴掘りに夢中だ。
  ときおりこちらを伺っては笑っている。