現場日記2
今日も草むしり。変電所の中。すぐ上を数万ボルトの電子が走る。雨が降ればジジジ、ジジジ、と鳴く。見えない蝉…。
せっせ、膝と、せっせ、腰が痛い。
根を抜くと「世界」を乱してしまうことがある。だんごむし、むかで、蟻、みみず・・・・。不可思議のものたち。
蟻の巣を壊すと大変だ。卵、羽蟻、女王、兵隊、労働者・・・。死んだものはすぐ捨ておかれる。わらわらわらわら。天よ地よ。
いつか失業中、故郷の河原で、半日、蟻の動きを眺めていた。石の上、草の間、木の根元、蟻とともに移動した。
蟻に「高さ」さはない。世界を「二次元」に変えて平面移動している。彼らは、空を見ないのか。重力の底、「高さ」の底を這いつくばる…。
たまらなくなって空を仰ぐ。子どもの頃から見慣れた遠いもの。石に腰掛け空を受けると、魚のように鳥がゆく。
いくつかの蟻はある時期になると、羽蟻に変態して空を移動すると言う。それが「群れ」の意思なのか、個体の欲求なのか、知らない。けれど身に溢れるものを受けて初めて飛翔する時、彼らは何を感じるのだろう。
今日も草むしり。空を晒した草を抜く。
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