定理「2変数連続関数による有界閉集合の像は、有界閉集合 」の証明

要旨

R2上の有界な閉集合Dで連続2変数関数によるDの像は「R上の有界閉集合」。

設定

平面R2実数2個並べた組 (x,y ) をすべてあつめた集合。
    
これは2次元数ベクトルをすべて集めた集合でもある
(R2,d) :平面R2ユークリッド距離dを与えたユークリッド平面 
D 平面R2上の有界な閉集合。つまり、DR2 かつ
   
Dは、「2次元数ベクトルの集合」とも呼べる。 
P=(x, y)平面R2上の点集合D属す。つまり、P=(x, y)DR2 
Q=(x', y')平面R2上の点集合D属す。つまり、Q=(x', y')DR2
   
ある特定の「D属す2次元数ベクトル」といってもよい。

[活用例]
・「
有界閉集合で連続な2変数関数は有界」の証明
最大値最小値定理の証明
[文献]
木『
解析概論』定理13(p.26);
小平『解析入門U』定理6.3(p.263):証明付;
吹田・新保『理工系の微分積分学p. 160.
杉浦『解析入門I』定理7.3(p.68):証明付;
ルディン『現代解析学4.14(p.87)距離空間一般上。

 

f平面R2上の点集合Dで定義された2変数関数。 
   つまり、
f : DR DR2 ) 
       
z=f(P) ( zR, PDR2 ) , z=f(x,y) ( zR, (x, y)DR2 ) 
   
fは「D属す2次元数ベクトルから実数への対応付け」だとも言える。

定理

命題P
 「2変数関数f (P)f (x,y)が、R2上の点集合Dで連続である」
が成り立ち、
かつ
命題
Q
 「R2上の点集合D有界な閉集合である」
が成り立つ
ならば
命題
R
 「2変数関数f による点集合Dの像f (D)
    
R上の点集合として有界閉集合である」
が成り立つ。

[予備情報]
・命題
QR2上の点集合D有界な閉集合である」
 
命題Q'R2上の点集合D点列コンパクト
   
(ハイネ・ボレル・ルベークの被覆定理) 
・命題
R2変数関数f による点集合Dの像f (D)
       
R上の点集合として有界閉集合
 
命題R'2変数関数f による点集合Dの像f (D)
               
R上点列コンパクト
   
(ハイネ・ボレル・ルベークの被覆定理)  

戻る

証明

Step1: 命題Pの分析 
 命題
P2変数関数f (P)f (x,y)が、R2上の点集合Dで連続である」
 
命題P'2変数関数f (P)f (x,y)が、点集合D属す任意ので連続」(∵点集合上の連続性の定義
 
命題P''点集合D属す任意のAについて、
       『
任意のR2上の点列{ Pn }={ P1 , P2 , P3,}={ (x1 ,y1 ) , (x2 ,y2 ), (x3 ,y3 ),}について、
         
PnA (n) ならばf (Pn)f (A) (n→∞) 』 」 
       
(2変数関数の点における連続性の、点列・数列の収束への言い換え)  
Step2: 命題Qの分析 
 命題
QR2上の点集合D有界な閉集合である」
 
命題Q'R2上の点集合D点列コンパクトである」 (ハイネ・ボレル・ルベークの被覆定理)   
 
命題Q''「『点集合D属すばかりを集めた点列{Qn}={ Q1 , Q2 , Q3,}を、どのようにつくってみても、  
        
1.点列{Qn}には、収束する部分列{Qn(k) }が少なくともひとつ存在し、 
         
かつ、 
        
2.この収束部分列{Qn(k) }の極限B点集合D属す』 
       という条件を
点集合Dが満たす」  (点列コンパクトの定義 ) 
Step3: 命題Rの分析 
 命題
R2変数関数f による点集合Dの像f (D)R上の点集合として有界閉集合である」
 
命題R'2変数関数f による点集合Dの像f (D)R上点列コンパクト」 
            
(ハイネ・ボレル・ルベークの被覆定理) 
 
命題R''「『f による点集合Dの像f (D)属す実数ばかりを集めた数列{rn}={r1,r2,r3,…}をどのようにつくってみても、
        
1. 数列{rn}={r1,r2,r3,…}には収束する部分列{rn(k)}が存在し、
         
かつ、 
        
2.この収束部分列{rn(k)}の極限f (D)属す』 
       という条件を
点集合Dが満たす」  (R上点列コンパクトの定義 )   
Step4: 命題P''かつ命題Q''という仮定のもとで、2変数関数f による点集合Dの像f (D)は… 
 
2変数関数f による点集合Dの像f (D)属す実数ばかりを集めた任意の数列{rn}={r1,r2,r3,…}をとる。
 ここから、
 
r1f による逆像f-1(r1) DR2  (複数あるときは、そのどれか一つを選ぶ) 
 
r2f による逆像f-1(r2) DR2  (複数あるときは、そのどれか一つを選ぶ) 
 
r3f による逆像f-1(r3) DR2  (複数あるときは、そのどれか一つを選ぶ) 
 :        :   
 を並べた
点列をつくる。  
 
点列{ f-1(r1) , f-1(r2) , f-1(r3) ,…}は、点集合D属すばかりを集めた点列となるから、
 命題
Q''、命題P''が成り立っているとの仮定下で、
 
点列{ f-1(r1) , f-1(r2) , f-1(r3) ,…}には、
  ある
BD収束する部分列{ f-1(rn(k)) }が存在し、(∵命題Q''
  この
収束部分列の各f R上に写した像数列{ f ( f-1(rn(k)) ) }={rn(k)}は、f (B)f (D)収束する(∵命題P'')。 
 以上の事態を要約すると、次のようになる。
 すなわち、
 
2変数関数f による点集合Dの像f (D)属す実数ばかりを集めた数列{rn}={r1,r2,r3,…}をどのようにつくってみても、
        
1. 数列{rn}={r1,r2,r3,…}には収束部分列{rn(k)}が存在し、
         
かつ、 
        
2.この収束部分列{rn(k)}の極限f (D)属す。  
 以上で、「『命題
P''かつ命題Q''ならば命題R''」が示された。
Step5:   
 
Step1-3より、
 
Step4の結論「『命題P''かつ命題Q''命題R''」は「『命題Pかつ命題Q命題R」と同値であるから、
 「『命題
Pかつ命題Q命題R」も示されたことになる。

     

戻る