1変数関数についての定積分・可積分 :トピック一覧

T. 定積分の定義:分割・分点・幅mesh/リーマン和/リーマン可積/定積分
U. 積分可能性判定条件
 1.使われる概念:過剰和・不足和/振動量・振幅/細分
        下積分・上積分/以上の概念間の関係
 2.積分可能性判定条件:ダルブーの定理/可積分条件 
 3.その帰結:
  閉区間単調関数はそこで可積分/閉区間連続関数はそこで可積分 
  閉区間上有界かつ不連続点が有限個ならばそこで可積分 

1変数関数の定積分関連ページ:
 性質/原始関数/向き付き定積分/積分関数
 解析学の基本定理/置換積分・部分積分
1変数関数の積分関連ページ:
 非有界関数の広義積分/無限区間の広義積分/スチルチェス積分
多変数関数の積分関連ページ:
 矩形上の2変数関数の積分/一般集合上の2変数関数の積分 

総目次


定義:分割 partition、分点、幅mesh

閉区間I[a,b]を、a=x0<x1<x2<…<xn=bを分点としたn個の小区間(ただし、すべて閉区間とする)に分けること、
すなわち、
Iを、I1=[a, x1], I2=[x1,x2],…,In=[xn-1,b] (a=x0<x1<x2<…<xn=b) に分けることを、
Iの分割(partitionあるいはdivision into subintervals)といい、記号で表す。
各小区間の長さxk= xkxk−1 (k=1,2,…,n) の最大値、
すなわち、|處=max xk
を、分割凾フ(mesh)と呼ぶ。

分割 partition、分点、幅mesh


【文献】
 ・杉浦『解析入門I』205-207;
 ・吹田新保『理工系の微分積分学』102;
 ・神谷浦井『経済学のための数学入門』328-9.
 ・『岩波数学辞典(第三版)』202項積分法


定義:リーマン和  Riemann sum


cf.リーマン・スチルチェス和2変数関数のリーマン和。 

 f(x)閉区間I [a,b]上の有界な関数とする。
 閉区間Iの分割によってできた小区間Ik (k=1,2,…,n)の各々から、
 代表点ζkをとり、以下のように、積: fk)・ xkk=1からnまで足し合せる。
  
これを、凵A{ζk }に関するfのリーマン和という。

分割、代表点ζkのとりかたは、いろいろであるから、リーマン和は、分割、代表点ζkのとりかたに応じて、値を変えうる。リーマン和は、分割、代表点ζkのある種の関数となっている。分割を細かくしていったときに、この関数が収束するかどうかという問題が、下記の積分可能の可否の問題に他ならない。 
リーマン和  Riemann sum

【文献】
 ・杉浦『解析入門I』205-207;
 ・吹田新保『理工系の微分積分学』102;
 ・神谷浦井『経済学のための数学入門』328-9;
 ・『岩波数学辞典(第三版)』202項積分法



→[トピック一覧:1変数関数定積分の定義・可積分条件]
総目次

定義:リーマン積分可能(可積) Riemann integrable

定義:定積分 definite integral

[杉浦『解析入門I』205-207; 吹田新保『理工系の微分積分学』102; 神谷浦井『経済学のための数学入門』330.; 『岩波数学辞典(第三版)』202項積分法]

 f(x)閉区間I[a,b]上の有界な関数とする。
 閉区間I分割を限りなく細かくしていくと、
 分割の取り方、それによってできた小区間Ik (k=1,2,…,n)の代表点ζkの取り方によらず、
 凵A{ζk }に関するfリーマン和 R[ f ;;{ζk } ]が値J に収束するとき、
     ※正確を期して書けば、
     任意の(どんな)正の実数εに対して(でも)、
     「 0<|處<δ ならば 
        任意の(分点の取りかたで作れる)分割任意の代表点の取り方{ζk }に対して、
        | R [ f ;;{ζk}]−J|<ε 
       を成り立たせる、ある正の実数δが存在する」とき、
     ※これを、記号で表すと、R [ f ;;{ζk}] J|處→0
                  ないし、
                 
 f閉区間I上で「(リーマン)積分可能」「(リーマン)可積分」である、という。
 また、このとき、
 値Jを「fのI上の定積分definite integral」「(リーマン)積分」などといい、
  
で表す。
また、f(x)を「被積分関数integrand」と呼び、定積分を求めることを「積分するintegrate」という。
向きのついた定積分
Cf. リーマン・スチルチェス積分。 

→[トピック一覧:1変数関数定積分の定義・可積分条件]
総目次


II. 積分可能性判定条件

リーマン和、そして、リーマン積分可能性は、その定義上、1. 分割の取り方と、2.小区間Ik (k=1,2,,n)の代表点ζkの取り方の両方に依存し、面倒である。2. 小区間の代表点ζkの取り方を用いずに、1. 分割の取り方のみから、リーマン積分可能性を考えられないだろうか。そんな意図から展開されるのが、以下の議論。[杉浦『解析入門I』212]


定義:過剰和・不足和


I閉区間[a,b]f(x)I上の有界な関数とする。
 閉区間I分割によって生じた各小区間Ik (k=1,2,…,n)でのf下限mk上限Mkとおく。
 すなわち、
  
・各小区間Ik (k=1,2,…,n)の長さxkと、そこでのf下限mkとの積を、
 全ての区間について足し合わせたものを
 不足和と呼び、s[]で表す。すなわち、
  
 不足和  

・各小区間Ik (k=1,2,…,n)の長さxkと、そこでのf上限Mkとの積を、
 全ての区間について足し合わせたものを
 過剰和と呼び、S[]で表す。すなわち、
  
 過剰和 

不足和過剰和は、リーマン和との間に以下の関係が成り立つ。
   s[]≦R [ f ;;{ζk}]≦S[] 

   (どのように小区間の代表点{ζk}をとっても、これは成立する)

【文献】
 ・杉浦『解析入門I』212.
 ・吹田新保『理工系の微分積分学』103.



→[トピック一覧:1変数関数定積分の定義・可積分条件]
総目次


定義:振動量・振幅 oscillation

[杉浦『解析入門I』212; 吹田新保『理工系の微分積分学』105.]

 I閉区間[a,b]f(x)I上の有界な関数とする。

 Iにおけるf上限下限との差を、f(x)のIにおける振幅といい、a ( f , I )で表す。
 すなわち、
  
 f(x)のIにおける振幅 

 また、Iの分割によって生じた各小区間Ik (k=1,2,,n)でのf上限下限との差を
 f(x)のIkにおける振幅・振動量などといい、ωk 、ω (Ik ; f )a ( f, Ik )などと表す。
すなわち、
  
とおくと、
  
あるいは、
  
 f(x)のIkにおける振幅・振動量 

f(x)のIkにおける振動量は、不足和・過剰和との間に以下の関係が成り立つ
  
 なぜなら、
   
      
=(M1x1M2x2+…+Mnxn)(m1x1m2x2+…+mnxn)
      =(M1x1m1x1)(M2x2m2x2)+…+(Mnxnmnxn)
      =(M1m1) x1(M2m2) x2+…+(Mnmn) xn
      
=ω1 x1+ω2 x2+…+ωn xn
      =右辺 



→[トピック一覧:1変数関数定積分の定義・可積分条件]
総目次


定義:細分

[杉浦『解析入門I』212; 吹田新保『理工系の微分積分学』103.]

 ・閉区間 Iの二つの分割、' があって、凾フ分点はすべて、'の分点でもあるとき、'は凾フ細分であるという。
  凵'と記す。

 ・細分してゆくほど、不足和は大きくなり、過剰和は小さくなる。
   すなわち、凵'なら、s[]≦s[']、S[]≧S[']。
  細分すると不足和は増える
  細分すると、過剰和は減る。  
 


→[トピック一覧:1変数関数定積分の定義・可積分条件]
総目次

定義:下積分lower integral、上積分upper integral

[杉浦『解析入門I』213; 吹田新保『理工系の微分積分学』103.]

分割の採り方によって、閉区間 Iにおけるf(x) の不足和s[]・過剰和S[]の大きさは変わってくる。
特に、「細分」でみたように、分割細分して行くほど、不足和s[]は大きくなり、過剰和S[]は小さくなる。
このような不足和s[]の上限を、閉区間 Iにおけるf(x) の下積分と呼び、sで表す。
過剰和S[]の下限を、閉区間 Iにおけるf(x) の上積分と呼び、Sで表す。
すなわち、閉区間 Iの分割全体の集合をDと表すと、
  



→[トピック一覧:1変数関数定積分の定義・可積分条件]
総目次


定理:以上の基本概念間の関係について

[杉浦『解析入門I』213; 吹田新保『理工系の微分積分学』102-5; 高木『解析概論』91-97..]
Iを閉区間 [a,b]、f(x)をI上の有界な関数とする。
1. Iにおけるfの上限をM、下限をmと書くと、
  m ( b−a )≦s[]≦S[]≦M( b−a )
2. 凵'なら、s[]≦s ['] ≦S['] ≦S[]
3. 任意の二つの分割凵A凵fに対し、s[]≦S[']
4. s≦S.
5. g≦fならば、s(g)≦s(f)、S(g)≦S(f)
6. f(x)のIkにおける振動量は、不足和・過剰和との間に以下の関係が成り立つ
  


(1:証明)[杉浦『解析入門I』213;高木『解析概論』91;]

f(x)閉区間I=[a,b]上の有界な関数とする。
Iにおけるf上限M下限m
閉区間I分割によって生じた各小区間Ik (k=1,2,,n)でのf下限m k上限Mkとおく。
また、各小区間
Ikの長さをxkとおく。
すべての各小区間
Ik (k=1,2,,n)において、mm kMkM
よって、すべての各小区間
Ik (k=1,2,,n)において、
 
mxkm kxkMkxkMxk (xk >0だから)
ゆえに、
  
 最左辺
=mΣxk =m(ba)、最右辺= MΣxk =M(ba)過剰和・不足和の定義より、
  m ( ba )s[]S[]M( ba )
図:m ( ba )≦s[]
 
図: S[]≦M( b−a )
  
(2:証明)

(3:証明) [杉浦『解析入門I』214; 吹田新保『理工系の微分積分学』103. を参照せよ。]

(4:証明) [杉浦『解析入門I』214; 吹田新保『理工系の微分積分学』103. を参照せよ。]

(5:証明) [杉浦『解析入門I』214を参照せよ。]




→[トピック一覧:1変数関数定積分の定義・可積分条件]
総目次


定理:ダルブーDarbouxの定理

fを閉区間 Iの有界関数とし、Iの分割を考える。
このとき、閉区間Iの分割を限りなく細かくしていくと、
分割の取り方(つまり、区間Iをn個の小区間にわける際の分点のとりかた)によらず、
Iにおけるfの過剰和S[]上積分S収束し、Iにおけるfの不足和s[]下積分s収束する
これを記号で表すと、
  |處→0のとき、S[]Ss[]s
あるいは、
  
   ※ε-δ法による極限定義を用いて正確に書くと、
     任意の(どんな)正の実数εに対して(でも)、
     「 0<|處<δ ならば 
        任意の(分点の取りかたで作れる)分割に対して、
        | S[]S|<ε、 |s[]s|<ε  
       を成り立たせる、ある正の実数δが存在する」
     となる。上積分下積分の定義から、常にS≦S[], s[]s なので、絶対値をはずして書くと、
     任意の(どんな)正の実数εに対して(でも)、
     「 0<|處<δ ならば 
        任意の(分点の取りかたで作れる)分割に対して、
       0≦S[]S<ε、0≦ss[]<ε  
       を成り立たせる、ある正の実数δが存在する」
     となる。移項して、不等式を変形すると、
     任意の(どんな)正の実数εに対して(でも)、
     「 0<|處<δ ならば 
        任意の(分点の取りかたで作れる)分割に対して、
       SS[]S+ε、s−ε<s[]s  
       を成り立たせる、ある正の実数δが存在する」

 Cf.スチルチェス積分ではダルブーの定理は成立しない。

(証明)
 杉浦『解析入門I』214-216; 吹田新保『理工系の微分積分学』104. 
 を参照せよ。

 

→[トピック一覧:1変数関数定積分の定義・可積分条件]
総目次

定理:可積分条件

以下の命題(1)〜(5)は、同値である。
 ※これらはダルブーの定理を用いて可積分の定義を言い換えたものになっている。
 Cf.スチルチェス積分では、
    命題(1)-(3)が同値、命題(4)-(5)が同値だが、命題(1)-(3)と命題(4)-(5)は同値ではなくなる。
fを閉区間I上の有界な関数とする。
命題(1) fはI上リーマン可積分
命題(2) 閉区間Iの分割を限りなく細かくしていくと、
分割の取り方(つまり、区間Iをn個の小区間にわける際の分点のとりかた)によらず、
Iにおけるfの(過剰和不足和)はゼロに収束する
 すなわち、|處→0のとき、S[]s[]0
 あるいは、
     
    (記号|處→0は、分割の幅が→0なら、そのようなすべての分割の取り方に対して、という意味。
      ダルブーの定理を参照のこと。)
   ※ε-δ法による極限定義を用いて正確に書くと、
     任意の(どんな)正の実数εに対して(でも)、
     「 0<|處<δ ならば 
        任意の(分点の取りかたで作れる)分割に対して、
        | S[]s[]|<ε 
       を成り立たせる、ある正の実数δが存在する」
     となる。ここでつねにs[]≦S[]であるから()、絶対値を外して書くと、
     任意の(どんな)正の実数εに対して(でも)、
     「 0<|處<δ ならば 
        任意の(分点の取りかたで作れる)分割に対して、
       0≦S[]s[]<ε 
       を成り立たせる、ある正の実数δが存在する」
     となる。
命題(3)リーマンの可積分条件
閉区間Iの分割によって生じた各小区間Ik (k=1,2,…,n) におけるfの振幅をωkと置く。
分割を限りなく細かくしていくと、
分割の取り方(つまり、区間Iをn個の小区間にわける際の分点のとりかた)によらず、
小区間Ikの幅とそこでの振幅との積(凅k・ωk)をk=1からnまで足し合せた和は0に収束する。
すなわち、
  
  ※利用例:単調関数は可積分可積分な関数の積も可積分積分の三角不等式、。
命題(4)ダルブーの可積分条件 上積分S=下積分s
命題(5) 任意のε>0に対し、
    S[]s[]<ε 
    すなわち、
    
    を満たすIの分割が存在する。 
  
(2:証明) (1)⇒(2)[杉浦『解析入門I』217;. を参照せよ。]
(3:証明) (2)⇔(3)[杉浦『解析入門I』217を参照せよ。]
 小区間の振幅ωk 、過剰和S[兢 、不足和s[兢)の定義から、 
   
 が成立する故に。
(4:証明)
 (1)⇔(4)[吹田新保『理工系の微分積分学』104-5.]
 (4)⇒(1) [杉浦『解析入門I』217; を参照せよ。]
 (5)⇒(4) [杉浦『解析入門I』218; を参照せよ。] 
(5:証明) [杉浦『解析入門I』218; を参照せよ。]

 

 

→[トピック一覧:1変数関数定積分の定義・可積分条件]
総目次


定理:閉区間I[a,b]上の単調関数は(無数の点で不連続でも)積分可能

  [杉浦『解析入門I』218; 吹田新保理工系の微分積分学』106;
  高木『解析概論』定理32(p.96.)証明付;小平『解析入門I』158証明ナシ]

証明1:リーマンの可積分条件の利用

  [杉浦『解析入門I』218; 吹田新保理工系の微分積分学』』106.]

 f閉区間[a,b]上の単調増加関数、凾ヘ、Iの任意の分割であるとする。
 また、分割凾ノよってできたn個の小区間を、Ik (k=1,2,…,n)、それぞれの幅をxkで表し、
 分割の幅を|處で、Ikにおける振幅をωkで表す。

  ・ f単調増加関数であるから、各小区間の振幅の和は、区間全体の振幅に等しくなる。
   すなわち、Σωk = f(b)f(a) …@
        
         閉区間上の単調関数は可積分 
  ・          ∵meshの定義:|處 = maxxk
         ∵@ 
  ゆえに、
   
  となり、可積分条件を満たす。


→[トピック一覧:1変数関数定積分の定義・可積分条件]
総目次


定理:閉区間 I上の連続関数はI上積分可能

 証明:一様連続性リーマンの可積分条件の利用

  [杉浦『解析入門I』227; 吹田新保『理工系の微分積分学』106.]

 
f閉区間[a,b]上の連続関数、凾ヘ、Iの任意の分割であるとする。
 また、
分割凾ノよってできたn個の小区間を、Ik (k=1,2,,n)Ikそれぞれの幅をxkで表し、
 
分割の幅||で、Ikにおける振幅をωkで表す。
 ・
定理より、閉区間 I[a,b]上の連続関数一様連続である。
  すなわち、
  
任意の正数εを決めると、それに応じて、点x0Iの選び方に関わり無く、
     
| f(x)f(x0)|<ε   ( | xx0| δ、 x,x0I )…@
  を満たす「
ある」正数δが存在する
 ・@を満たす正数δよりも、
meshが細かい分割
  すなわち、
||<δとなるような任意の分割凾考える。
  すると、小区間
Ik (k=1,2,,n)に含まれる任意の2 xk , x k 0について、 
  
| xk x k 0|xk|| δ、 x,x0 Ik 
  ゆえに@より、
  
| f( xk )f( x k 0 )|<ε
  これと、
Ikにおける振幅がωk=sup| f( xk )f( x k 0 )|となることから、
  ω
k≦ε …A←なぜ等号?わからないが、どちらのテキストも等号付。
 ・|處<δとなるような(|處=δよりも細かい)任意の分割凾ゥら生じた
  小区間の振幅ωk(k=1,2,,n)を考えると、
     ∵A
        …B
   が成り立つ。 
 ・以上を整理すると、
  [手順1]任意の正数εを決める、
  [手順2]それに応じて、@を満たす「ある正数」δが存在する。(一様連続だから)
  [手順3]そのδよりも細かいmesh分割では、
      小区間の振幅が、最初に決めたε以下になり(A)、
      ゆえに、Σωkxkε( b-a ) (B)も成り立つ。
  ということだから、最初に、任意の正数εを小さくすれば、Σωkxkは、どこまでも小さく出来る。
  
S[]s[]=Σωkxkだから、(
  Bから、
  任意のε(b-a)>0にたいして 
  S[]s[]<ε(b-a)を満たすIの分割凾ェ存在するということになり、
  可積分条件命題5を満たす。  

  



→[トピック一覧:1変数関数定積分の定義・可積分条件]
総目次


定理:不連続点をもつ関数の可積分条件(1)〔十分条件〕

 f(x)閉区間 [a,b]上の有界な関数であるとする。
 f(x)閉区間 [a,b]上に、有限個数の不連続点しかもたないならば
  (有限個の点を除いてすべて連続ならば
 f(x)閉区間 [a,b]積分可能

[高木『解析概論』p.96.、小平『解析入門I』158.]

(証明) 高木『解析概論』p.96.をみよ。
 

定理:不連続点をもつ関数の可積分条件(2)

 f(x) は閉区間 [a,b]上の有界な関数であるとする。
 f(x) が閉区間 [a,b]上に、不連続点を含む区間の長さの合計を限りなく小さくできるならば
 f(x) は積分可能

 [高木『解析概論』p.96.、小平『解析入門I』158.]

〔証明〕
 本質的だが、ここでは省略。
 測度論とルベーグ積分から入るとよい。  

定理:

高橋『経済学とファイナンスのための数学』79ページには、
閉区間[a,b]上で有界な関数は積分可能」とあるが、
高木『解析概論』p.96.、小平『解析入門I』158.によれば、
この高橋一『経済学とファイナンスのための数学』の記述は間違い。
正しくは、「閉区間Iにおいて、f(x)が有限個数の不連続点を持ち、有界ならば、積分可能」ということらしい。
[注意1]で「もちろん有界だけでは積分可能ではない。」として、高木は例まで示している。
無数の不連続点をもつ関数の積分を考えるには、ルベーク積分論を勉強したほうがよいらしい。
 



→[トピック一覧:1変数関数定積分の定義・可積分条件]
総目次


reference

日本数学会編集『岩波数学辞典(第三版)』 岩波書店、1985年、202項積分法(pp.520-525)→リーマン積分、204項積分論(pp.530-533)→ルベーク積分。
吹田・新保『理工系の微分積分学』学術図書出版社、1987年。pp.102-106.
高橋一『経済学とファイナンスのための数学』新世社、1999年、pp.75-79.
小平邦彦『解析入門I』 (軽装版)岩波書店、2003年 pp.153-158。あらかじめ閉区間上の連続関数に限定して議論を進めている。
杉浦光夫『解析入門I』東京大学出版会、1980年、pp.205-229: n次元一般での定義;229-247:1変数関数の積分に特殊な性質(原始関数、…)。
高木貞治『解析概論:改訂第3版』岩波書店、1983年、p. 91-97.
青本和彦『岩波講座現代数学への入門:微分と積分1』岩波書店、1995年、122-126.軽く説明。
高橋陽一郎『岩波講座現代数学への入門:微分と積分2』 岩波書店、1995年、pp.1-11:単関数を用いてかなり厳密(ルベーク積分までは行かない);pp.115-117。
矢野健太郎・田代嘉宏『社会科学者のための基礎数学 改訂版』裳華房、1993年、pp.106-9.
和達三樹『理工系の数学入門コース1:微分積分』岩波書店、1988年、pp.88-91. あらかじめ閉区間上の連続関数に限定して議論を進めている。
神谷和也・浦井憲『経済学のための数学入門』東京大学出版会、1996年、pp.328-334.
小形正男『理工系数学のキーポイント7:多変数の微分積分』岩波書店、1996、87-89.