矩形上の2重積分 double integral


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V. 閉矩形における重積分の性質


【文献】

 ・杉浦『解析入門I』209-210;220-222: n変数関数全般;
 ・吹田新保『理工系の微分積分学』191
 ・高木『解析概論』p.332
 ・小平『解析入門II』321-323
 ・Lang, Undergraduate Analysis,471-482.


定理:区間加法性

   cf.1変数関数の定積分についての区間加法性  
(舞台設定)
 
K : Kは、R2上の閉区間(閉矩形) { (x ,y ) | axb, cyd }=[a,b]×[c,d]を表すとする。
 
Kij : Kを下図のように分割してできたmn個の小閉矩形
      
Kij ={ (x ,y ) | xi1xxi , yj1yyj }=[ xi1, xi ]×[ yj1, yj ] (i=1,2,,m, j=1,2,,n )
        ただし、x0= a, xm=b, y0= c, yn =d
   で表すとする。
     
 f (x,y) : ここでは、関数 f (x,y) として、Kの上で定義された有界関数のみを考える。
(本題)
1.  f (x,y)閉矩形 K上リーマン積分可能ならば
   f (x,y) は、すべての小閉矩形Kij (i=1,2,,m, j=1,2,,n )上でもリーマン積分可能となって、
   
  ※上式は、以下のように書いても同じ。
    
2.   f (x,y) がすべての小閉矩形Kij (i=1,2,,m, j=1,2,,n )上でリーマン積分可能ならば
   f (x,y) は、閉矩形 K上でもリーマン積分可能となって、
   
  ※上式は、以下のように書いても同じ。
    
  [小平『解析入門II』321-323;詳細な証明付。吹田新保『理工系の微分積分学』191:簡単な証明付;
    杉浦『解析入門I』220-222: n変数関数全般・詳細な証明付。;
    高木『解析概論』332:矩形上に限定せず有界集合上の積分全般について。 ]
(証明) 小平『解析入門II』321-323;杉浦『解析入門I』220-222.を参照せよ。 


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定理:線形性 

  cf.1変数関数の定積分についての線形性
(舞台設定)
 
K : Kは、R2上の閉区間(閉矩形) { (x ,y ) | axb, cyd }=[a,b]×[c,d]を表すとする。
 
f (x ,y ) , g (x ,y ) : ここでは、関数f (x ,y ) , g (x ,y )として、Kの上で定義された有界関数のみを考える。
 
h : 定数をhh1h2で表す。  
(本題)
1. f ( x ,y ) 閉矩形 Kリーマン積分可能ならば
  
h f ( x ,y )閉矩形 Kリーマン積分可能となって、
  
 
  ※上式は、以下のように書いても同じ。
    

2. f ( x ,y ) , g (x ,y )閉矩形 K上リーマン積分可能ならば
  f ( x ,y ) ± g (x ,y )閉矩形 K上リーマン積分可能となって、
   
  ※上式は、以下のように書いても同じ。
    
3. f ( x ,y ) , g (x ,y )閉矩形 K上リーマン積分可能ならば
  h1 f ( x ,y ) ± h2 g (x ,y )閉矩形 K上リーマン積分可能となって、
   
  ※上式は、以下のように書いても同じ。
    
[小平『解析入門II』321-323;吹田新保『理工系の微分積分学』191:証明なし;
 杉浦『解析入門I』209: n変数関数全般・証明付。;
 高木『解析概論』332:矩形上に限定せず有界集合上の積分全般について。]
(証明)   


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定理:可積分関数の積 

  cf.1変数可積分関数の積も可積分
(舞台設定)
 
K : Kは、R2上の閉区間(閉矩形) { (x ,y ) | axb, cyd }=[a,b]×[c,d]を表すとする。
 
f (x ,y ) , g (x ,y ) : ここでは、関数f (x ,y ) , g (x ,y )として、Kの上で定義された有界関数のみを考える。
(本題)
 f ( x ,y ) , g (x ,y ) がそれぞれ閉矩形 Kリーマン積分可能ならば
 その積
f ( x ,y ) g (x ,y )閉矩形 Kリーマン積分可能となる。
[吹田新保『理工系の微分積分学』191:証明なし;杉浦『解析入門I』221:n変数関数全般・証明付。]
   
(証明)   


定理:積分の単調性 

  cf.1変数関数の定積分についての単調性
(舞台設定)
 
K : Kは、R2上の閉区間(閉矩形) { (x ,y ) | axb, cyd }=[a,b]×[c,d]を表すとする。
 
f (x ,y ) , g (x ,y ) : ここでは、関数f (x ,y ) , g (x ,y )として、Kの上で定義された有界関数のみを考える。
(本題)
 f ( x ,y ) , g (x ,y ) 閉矩形 K上リーマン積分可能で、
 閉矩形 Kにおいては常に、f ( x ,y ) g (x ,y ) が成り立つ 
 ならば
   
 なお、 等号になるのは、f ( x ,y ) = g (x ,y ) である場合のみ。 
   
  [小平『解析入門II』321-323;杉浦『解析入門I』209- 210:n変数関数全般・証明付。
   吹田新保『理工系の微分積分学』194;高木『解析概論』332:矩形上に限定せず有界集合上の積分全般。]
     
(証明)  


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定理:積分の三角不等式 

  cf.1変数の定積分についての三角不等式 
(舞台設定)
 
K : Kは、R2上の閉区間(閉矩形) { (x ,y ) | axb, cyd }=[a,b]×[c,d]を表すとする。
 
f (x ,y ) : ここでは、関数f (x ,y )として、Kの上で定義された有界関数のみを考える。
(本題)
 f ( x ,y ) 閉矩形 Kリーマン積分可能ならば
 
  
   
  [小平『解析入門II』321-323;詳細な証明付。杉浦『解析入門I』220-221: n変数関数全般・詳細な証明付。;
   吹田新保『理工系の微分積分学』194;高木『解析概論』332:矩形上に限定せず有界集合上の積分全般。]
     
(証明)   



定理:積分の第一平均値定理 

   [高木『解析概論』定理77-4(p.332):矩形上に限定せず有界集合上の積分全般;
    杉浦『解析入門I』定理2.3(p.210): n変数関数全般・詳細な証明付。]
cf.1変数関数の場合
(舞台設定)
 
K   : Kは、R2上の閉区間(閉矩形) { (x ,y ) | axb, cyd }=[a,b]×[c,d]を表すとする。
 
f(x ,y ) : ここでは、関数f(x ,y )として、Kで定義されたリーマン積分可能有界関数のみを考える。
 
mM :Kでのf下限m上限Mであらわす。
       すなわち、
Kにおいてmf(x ,y )M
(本題)
1
 
を満たすλが存在する。 
要するに、
        

2
f(x ,y )K上連続であるという条件を加えると、
 
を満たす点
P( s , t )K (つまり、asb, ctdなるs,t)が存在する。 
 
(証明) 杉浦『解析入門I』定理2.3(p.210)を参照せよ。 


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(reference)

日本数学会編集『岩波数学辞典(第三版)』 岩波書店、1985年、202項積分法(pp.520-525)→リーマン積分、
高木貞治『解析概論:改訂第3版』岩波書店、1983年、第8章90-92節pp.325-332. .
吹田・新保『理工系の微分積分学』学術図書出版社、1987年、第7章1節(pp.189-196).
小平邦彦『解析入門II』 (軽装版)岩波書店、2003年、第7章(pp.317-330.)。連続関数に限定
黒田成俊『21世紀の数学1:微分積分』共立出版、2002年、第10章1節(pp.346-352.)。連続関数に限定。
高橋一『経済学とファイナンスのための数学』新世社、1999年、第3章3.8節I(pp. 106-108):矩形上ではなく、いきなり一般の積分範囲上。
杉浦光夫『解析入門I』東京大学出版会、1980年、pp.205-229:矩形上;pp.254-279:一般の積分範囲。(2重積分についてというよりもむしろ、主にn変数関数全般についてリーマン積分を論じている。)
Walter Rudin,Principles of Mathematical Analysis,Mcgraw-Hill,1953-1976.
=ウォ−ルタ−・ルディン『現代解析学』共立出版、1971年、第9章9.28-: n変数関数。
高橋陽一郎『岩波講座現代数学への入門:微分と積分2』 岩波書店、1995年、5章2節(pp.138-146.):。このテキストは、リーマン積分とルベーク積分の間という特殊な立場を進んで行っている気がする。ついていってよいのかどうか。
和達三樹『理工系の数学入門コース1:微分積分』岩波書店、1988年、pp.138-9. アイデアだけ。厳密な議論なし。
小形正男『理工系数学のキーポイント7:多変数の微分積分』岩波書店、1996、87-89. アイデアだけ。厳密な議論なし。
Lang,Serge.Undergraduate Analysis(Undergraduate Texts in Mathematics),Springer-Verlag New York Berlin Heidelberg Tokyo,1983,Chapter 19. Multiple Integrals. (pp.468-482.)。