昨晩は早めに床に入り、しっかり寝られたので、二人して早朝に起きる。洗濯物がたまったので宿の洗濯機を使おうとしたら、デビッド（宿のオーナー）の服が入っていた。昨日、使ってもいいよと言われていたので、中に入っていたものをいったん取り出し、自分たちのものを入れて回す。風呂に入り、洗濯物を干して出発する。

　外は霧雨が降っていて、傘をさすかどうか迷うところ。まずは中央駅に出向き、グループ1日乗車券を買うため、インフォメーションで確認する。DB（ドイツ国鉄）ではなく、エッセン市経営の会社の窓口があるようだ。言われた場所まで歩き、無事に購入。3日分を全部買えたので、明日以降は安心してトラムに乗れる。全ての交通機関が使えて、一人一日700円弱なので、安い。

　Ｕバーン（地下鉄）に乗り、今日の第一目的である朝市へと向かう。最寄りの駅で降りて地上に出たとたん、方角がわからなくなり、通りがかりの若い女性に聞いてみた。彼女が、「こっちに来て」と言うのでついていくと、さっき降りたＵバーン乗り場に着く。これに乗れ、ということらしい。どうもうまく通じていないようなので、離れていったん元の場所に戻る。
　もう一度別の人に確認し、ようやくルートがわかる。実はすぐそばだった。雨がやや強くなったので、傘をさして見て回る。雨のせいか、店も客も少ないようだ。ソーセージ、野菜、パンなどを一通り見て歩く。旅行前にテレビの番組でエッセンを紹介していたのをしっかりチェックしてきたのだが、その時あでりーが「ここに行きたい」と言っていたハーブ屋さんを、奥のほうに発見する。ただ、店主の女性は英語が話せないようで、聞きたいことがなかなか聞けず、少なめに購入する。 　その後、魚屋さんで、前から気になっていた魚のくん製、そしてあでりー熱望のすり身コロッケを買う。八百屋さんでは、コールラビ（カブのような野菜）、試食して美味しかった小粒のブドウ、りんご、果肉の赤いオレンジなどを購入。さらにパン屋さんで、シード付のドイツパン、ベルリーナ（ベルリン発祥のジャム入り揚げパン）、パン・オ・ショコラ（チョコ入りパイ）、さらには三角形の謎のパンを購入。最後に肉屋さんで、念願のソーセージ！　満足して帰路につく。

　ベルリナー・プラッツ駅でＵバーンを降り、トラムに乗り換えると宿のそばまで行ける。と思っていたら乗り換えがよくわからない。人に聞いて探してようやく、Ｕバーンのさらにもう一階ぶん地下に、トラム乗り場を発見する。乗り込んでから降りる駅を確認していると、そばに座ったおばさんが親切にドイツ語で話しかけてきてくれた。言葉はわからないものの、身振りで降りる場所を教えてもらえた。本当に親切な人が多い。お礼を言って外に出る。

　帰り道で５リットルの水を購入する。帰宅後、買ってきたもので昼食にする。魚のくん製もすり身コロッケもパンも、どれも美味しい。フランクフルトで買ったマスタードをつけて食べる。そして食後にはコーヒー。昨日は持参した器具を使って淹れたのだが、今回は宿に備え付けのコーヒーメイカーを使ってみた。意外に美味しくて、デザートにも手が伸びる。ベルリーナは思ったとおり甘くて日本のジャムパンのような味。パン・オ・ショコラは普通。謎の三角のパンは、クッキー地にパンとチョコの３層になった感じ。これもまあいける。満足の食事だった。

　洗濯が終わっていたので、部屋に干す。ふたたび街に出ようとトラムの乗り場に来たが、バスでも行けそうなので、試してみる。トラムもバスも、同じ場所が停留所になっているのだ。結果、問題なく中央駅に到着する。これで駅へ向かう選択肢が増えた。
　線路の下をくぐり、反対側へ抜けると、以前にテレビ番組で見た歩行者天国が広がっている。広くてとても気持ちがいい。すでに雨は上がり、日も差してきている。と、目の前に、フランクフルトで見つけたが休みだったデパート「ガレリア・カウフホーフ」を発見。中に入ると、情報どおり、ボードゲームが大量に安く売っている。が、めぼしいものはほとんどなく、1個だけ600円ほどで買う。あでりーはペンギンの大きなぬいぐるみを見つけ、持って帰りたそうだったが、断念した。写真だけ撮影し、替わりに小さなペンギンのぬいぐるみを購入。しっかりした造りのぬいぐるみだ。 　デパートを後にし、他にもいくつか店に入りながら歩く。あでりーが買った、BIO（有機食材）だけど正体不明のフルーツドリンクは、まあそこそこの味だった。それから、カレーヴルスト（ソーセージにカレーソースをかけたもの。ベルリン名物として有名）を売っている肉屋さんを発見。ここも、テレビ番組で見たところだ。おいしそうだが、買うのはまた後日にする。
　そしてさらに先には、これまたテレビ番組でチェックしていた、「basic」という自然食品店があった。想像以上に巨大な店で、値段も安い。僕は少し見たところで疲れてしまい、椅子で休む。あでりーはしっかりと見て歩き、ハンドクリームを買っていた。店を出てから、離れた店までポストカードを買いに行くあでりーと離れ、僕は近くを散策する。ふたたび合流し、近くにあった駅からトラムで宿に戻る。

　しばらく部屋で休み、本日三度目の外出。夕食をとりに、街の北にあるビアレストランへ向かうのだ。こちらもテレビ番組で見た店である。宿のそばの停留所から、１０３番のトラムに乗る。町中を大きく横切り、夕暮れの景色を窓外に映しながら、トラムは進む。降りた場所は、Ｓバーン（国鉄）やロータリーのあるような、やや大きめの駅だった。周辺を探すと、すぐにビアレストランの特徴的な煙突を発見する。近寄り、写真とビデオを撮る。 　敷地内に入ると、すでに雰囲気たっぷりのたたずまいだ。店の中もまたかなり広く、大変に混み合っている。それでも意外にすぐ案内してもらい、席につく。給仕の女性がとてもいい人で、まずはドイツ語か英語かを尋ねてくれて、英語だと伝えると英語のメニューを持ってきてくれた。
　あでりーはもちろん、ビールを頼む。３種類ほどあるうち、ライトを選択したようだ。僕は事前からの予定どおり、ノンアルコールビールを注文。料理は、シュニッツェル（ドイツ風トンカツ）、そして30cmのソーセージを選ぶ。サラダも欲しかったのだが、あでりーが野菜メニューの中から、チーズとヌードルとミニサラダのセットをみつけ、それに決める。先ほどの女性給仕に伝えると、３つは多いからやめたほうがよい、と言われる。僕らはタッパー持参なので多ければ持って帰りますよ、と答えると、笑顔で納得してくれた。

　まずはビール＆ノンアルコールビールで乾杯。僕も少しビールを飲ませてもらったが、まずまず飲みやすい味。ノンアルコールのほうは、確かにアルコール分はないが風味はビールそのものだ。これなら安心して飲める。その後、料理が一気に来た。ソーセージは旨みたっぷりで変な添加物も入っていない、確かな味。これはちょっと日本で食べられない旨さだ。ザウアークラフトには魚の燻製らしきものが入っており、ビネガーがきつすぎず、フランクフルトで食べたより美味しかった。そして今回初のシュニッツェル。肉の味が素晴らしくて、変な味もせず、あっさりしているのに食べ応えがある。これにもたっぷりサラダがついていた。それから、チーズとヌードル、つまりチーズパスタ。チーズに癖がなく、味付けもほどよい。これがいくらでも食べられる味なのだ。これにボウル大の皿に入ったサラダがつく。野菜も本当においしい。 　あでりーは結局、ライト、ハード、シーズナブルと３種類のビールを飲み干し、僕が飲み切れなかったノンアルコールビールまで飲んでくれた。あでりーが上機嫌で、僕もうれしい。ついてくれた女性給仕が本当に素晴らしく、僕らのたどたどしい英語に笑顔で付き合ってくれて、嫌な顔ひとつしなかった。最後も大きな声で見送ってくれた。店の雰囲気も、店員も、料理も最高。ここは忘れられない店になった。 　帰り道はトラム1本で帰れるはずだったが、いつもの１０３号線がこの時間帯は途中までしか行かないらしい。自信がなかったがベルリナー・プラッツで１０９号線に乗り換えると、これがばっちりうまくいって、無事に宿に戻る。あでりーはすぐにベッドに入り、僕も日記を途中まで書いたところで力尽き、就寝。