早朝の暗いうちに目覚め、風呂に入る。出てくるとあでりーも起きていたので、続けて入ってもらう。しっかり深く寝られたので、すこぶる体調がよい。調べものなどをして朝を迎える。
　今日は、昨日よりもさらにいい天気だ。ランゲン駅周辺が静かで驚いたが、すぐに今日が日曜だと気づく。市内へ向かうＳバーンは１時間に１本しか動いていない。自動券売機で、迷いながらも空港までのグループ用１日乗車券を購入。運良く、それほど待たずにやってきた電車に乗る。今日は郊外のマインツという街に向かうのだ。以前にはサッカーの岡崎選手が、今は武藤選手が在籍するクラブがある。

　中央駅でいったん降り、明日の特急の座席を予約する。同時に今日の空港〜マインツ間のチケットを買おうとするが、かなりの高額を提示される。おかしいと思って確認すると、それは中央駅〜マインツの値段だった。ここではそれしか買えないらしいので、空港まで向かい、そこで買うことにする。
　あでりーは駅構内の売店で、カフェ・マキアートを買って飲んでいた。カフェ・マキアートとは、エスプレッソに泡立てたミルクを混ぜたもので、カプチーノよりもミルクの量が少ない。あでりーはこれがいたくお気に入りで、今回の旅行中、何度も飲んでいた。僕も分けてもらったが、本当に美味しい。ミルクの味がいいせいだと思う。

　空港のDB（国鉄）窓口がとても混んでいてびびるが、隣の自動券売機が空いていることに気づき、無事に購入。構内を散策中のあでりーと合流し、マインツへ向かう。が、ここでちょっとしたミス。僕が選んで乗りこんだ路線が間違っていて、別の方向へ向かっていたのだ。２駅ほどで気づき、いったん降りる。なかなかのどかな駅で、戻りの電車を待つ間ぶらぶらしていたら、ロビン（ヨーロッパコマドリ）を発見。さらに、シジュウカラ、クロウタドリもいる。撮影を続けていたら、最後の最後に、アンテナの上に見事な体勢でとまっているカササギを発見。寄り道もいいものだ。
　中央駅まで戻り、あらためてマインツを目指す。窓外にはきれいな緑の大地が広がり、フランクフルト市内よりも見ごたえがある。ライン河を渡るとき、一段ときれいな風景が見えて感動する。ほどなくマインツに到着。
　すでに昼近くになっていたので、持参した弁当を食べられる場所を探す。地図からして近くにあるはずの緑地に行きたいのだが、よくわからない。そばにあった売店で、弁当を食べられる場所がないか聞いてみると、教会や飲食店を勧められる。調べていた緑地の名前を出すと、それは遠すぎる、と言われた。ならば別の場所にしようと、ライン川に向かって歩き出す。
　川べりに出ると、とても気持ちがよくて見晴らしもいい。ベンチ状になった階段で食べられそうだったので、腰を下ろし、二種類のサンドイッチを取り出す。昨日市場で買ったパンに、同じく買ったマスタードをつけた野菜ソーセージを挟んだもの、それからパンにチーズを挟んだものを、朝あでりーが用意してくれたのだ。さらには、ずっと食べているビーツ、マッシュルーム、オリーブ、ニンジンもある。食後には、ケーキ＆ほうじ茶でデザート。景色の良さもあいまって、とても美味しくいただいた。
　川には遊覧船は見あたらないが、輸送の船が多く行きかっている。水面には白鳥、マガモなどがぷかぷか浮いている。と、突然大声で鳴きながらガチョウが２羽やってきて、白鳥を蹴散らしてしまった。その後も何度か白鳥にちょっかいを出していた。

　食後、あでりーは絵を描き、僕は周辺をぶらぶら見て回る。次に向かう大聖堂へのだいたいのルートを確認し、鳥のビデオを撮ったりしてから戻る。
　大聖堂へと歩く途中、ホルツ塔という目立つ建物を通る。なかなかに道が入り組んでいて、何度も突き当りに阻まれたりしながら、ようやく到着する。大聖堂の前に立つと、その大きさに圧倒される。中に入ると、やはり教会の荘厳な雰囲気にのまれ、身が引き締まる。そのうちパイプオルガンも響き始めた。壁の絵なども見ながら回廊を歩き、外に出た。
　またぶらりと歩きはじめる。周辺の景色がとにかく素晴らしい。しばらく進んだあたりで、さらに魅力的な路地を発見。歩いているだけで楽しくなるような、中世の面影を残す町並みに感動する。そこから、今日の目玉、ザンクトステファン教会を目指す。ここは、シャガールがステンドグラスを手掛けたことで有名だ。しかし、なかなか見つからず、人に聞きながらなんとか近くまでやってきた。と、ここでいったんリフレッシュするため、ティーブレイクをとることにする。
　通りがかりのカフェに入ると、若者の集まる雰囲気の店だった。ここであでりーは絵日記のつづきを描き、僕はしっかりと寝る。かなりゆっくりと時間を過ごし、歩き続けた疲労から回復した。
　その後、もう一度人に聞いて教会の場所を確認する。坂を上ってカーブした先にそれはあった。中に入り、遂にシャガールのステンドグラスを見る。青が印象的で、写真で見るよりも渋い。中央、メインのステンドグラスは正にシャガールの絵の色合いで、教会にとてもよく合っている。何度も感嘆しながら見て回る。あでりーはここでポストカードのセットを購入。しっかり堪能して教会を出る。

　また少し迷いながら、駅へと戻る。すぐに電車が来るはずが、１０分ほど遅れて到着した。これでフランクフルト市内に戻り、ハウプトヴァッヘのデパートを目指す。乗り換えなしに３０分ほど乗るので、ここでもゆっくり体を休める。電車を降り、あてずっぽうで地上に上がったら、ちょうど目指すデパートの入口に出た。すごい、と思っていると、どうも人気がない。そういえば今日は日曜だった。休みだ……。
　落胆しながらも、近くにあったエッシェンハイマー塔を見に行き、そこからＵバーン（地下鉄）に乗る。今回、Ｕバーンは初めてだ。構内に降りてみると、なんだか日本でも見かける地下鉄の雰囲気と似ていて面白い。南に数駅下り、本日の夕食をとるレストランを目指す。駅から歩いてほどなく、お店が見つかった。

　店内は活気にあふれていた。広い店の奥で、みんなが騒いでいる。見れば、大スクリーンでサッカーが映し出されていた。どうやら正に今、試合が行われているらしい。カードはフランクフルト対ケルン。僕らが今日いる場所と、明日いる場所の対戦だ。なんだか僕らの旅行を暗示している。
　奥は一杯だが、手前側の広いテーブルは空いていたので、そこに陣取る。近くにあったメニューを持ってきて眺めるが、ドイツ語だ。ガイドブックに名物として載っていた料理はなんとか見つかったが、それ以外はよくわからない。それでも大体の目星をつけ、注文をしに厨房のほうへ向かう。年配の女性店員がいて、英語メニューがあるか聞いてみたら、すぐに渡してもらえた。それを手にもう一度二人で検討。スモークソーセージとザワークラフトとパン、グリーンサラダ、本日のスープ、チーズ料理、りんご酒を頼む。その後、あでりーがアップルジュースを見つけてくれたので、それを追加で注文する。
　店内は本当に地元の店といった感じで、雰囲気がある、かなり待たされるかと思いきや、すぐにりんご酒とアップルジュースが出てきた。飲んでみる。ジュースは味わいがあってうまい。りんご酒も、甘さ控えめでいい感じだとあでりーが言う。僕も少し飲んでみるが、まったくいやな感じがなくておいしい。これなら結構飲めるかも。
　そして次々に料理も運ばれてくる。最初にスープが来た。と思ったら、酸味がよくきいていてどろっとしているから、これがサラダなのだろうか。ちょっと変わった感じだが悪くない。（後から考えれば、サラダだと思って注文したものは「グリーンソース」という名前で、ソーセージやパンにつけるソースだったと気づく。スープでもサラダでもなかったのだ！）
　ソーセージはぱりっとした皮で、これぞドイツ、というさすがの味だ。ザワークラフトはしっかり酢がきいていて、いくらでも食べられそう。パンはライ麦のドイツパン。塩みとスパイシーな風味でいける。チーズは玉ねぎソースがかかっていて、食べたことのない味だったが、これまた絶品。すべてがうまい。

　さらに追加でフランクフルターというのを頼むと、細めで二本つながったソーセージが来た。これこそが、いわゆる「フランクフルト」だ。こちらはまたさっきのソーセージと違った味で美味しい。ただ、ついているはずのパンがついていないので、通りがかった店員に聞くと、なぜか「リミット」と言われてしまった。一人分のもらえるパンの量が決まっているのだろうか。よくわからない。
　結局、スープは来そうにないが、すでにお腹いっぱいなのでよしとし、清算をしてもらう。合計額を計算し、スープ代が入っていないことを確認し、支払う。最後に女性店員が素敵な笑顔をくれた。僕らもとても満足だった。
　さきほどのＵバーンの駅に引き返す。ズット駅でいつものＳバーンに乗り換え、今日は素直に宿に戻る。昨日買ったコーヒーをドリップで淹れてみたが、かなり細かく挽いてあったようで、なかなかコーヒーが下に落ちていかない。結局、すごく濃く入ってしまい、お湯で薄めて飲む。最初はいまいちかと思いきや、そこそこ美味しかった。日本から持ってきたケーキの最後の２切れずつを食べる。食後、二人とも風呂に入り、22時に就寝。