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■ 湖水地方と石の力 1/24(日)

■サプライズ!な場所

 昨夜は日記を書いて23時前に就寝。直後の記憶がない。深夜2時に目が覚めてからは寝つけず、MP3プレイヤーを聞く。4時半にあでりーが起きてきて、二段ベッドの下段に寝ている僕の隣に入ってきた。ひとしきり話をする。毎朝同じことをやっているが、この時間が心地よい。それにしても昨日、いったんへばった後にしっかり回復できたことが、相当大きな自信になった。今日も元気満々。6時前に起き出し、体操をしてから、風呂場で洗濯。今日は同じ場所で宿泊だから、いつもより準備が楽だ。

 7時にキッチンが開いたので、あでりーがほうじ茶を入れてポットに詰めてくれる。7時半に階下に降り、朝食バイキングを覗く。ぎとぎとベーコンや卵料理だったりしたらパスするつもりだったけれど、野菜系のメニューも豊富なので、食べてみることに。とは言っても僕らは朝食はとらないので、テイクアウトして昼食にするのだ。パン2種類、ポテト、焼きトマト、豆の煮物、マッシュルームなどをいったん皿に取り、奥のテーブルでタッパーに詰める。オレンジジュースだけはその場で飲んでから、食堂を出る。
 フロントで再度、ストーンサークルとサプライズビューの場所をしっかり確認。まずはサプライズビューを目指す。

 車はすこし離れた先に停めてあったのでそこまで歩く。小鳥が道路に降りている。きっとスズメだろうと思うが、ロビンだと嬉しい。ロビンとは和名をヨーロッパコマドリといい、ヨーロッパでは日常的によく見られる鳥だが、こちらに来てまだしっかり見ていない。ロビンだったらいいな。外はまだ薄暗いのでシルエットでしか見えない。近づいていく。首元のオレンジ色が見えてきた。やった、ロビンだ! しかも彼(または彼女)は逃げることなく、逆に向こうから近づいてきてくれる。たくさんの人が餌をあげているのだろう。しっかり姿を僕らに見せて、サービスしてくれた。なんだかこれだけで一大イベントだ。

 車に乗り、昨日さんざん通った道を走る。左に抜ける分岐路は一つだけだから、と教えられた通りに分岐路を探す。昨日はホテルの入り口かと思っていた道にさしかかる。これだ、とハンドルを切る。登り道となり、見晴らしがよくなっていく。特徴的な石の橋が見えた。昨日尋ねた時も、橋の近くだから、と教えられていた。確信は深まる。やがて山すそが左に開けていき、小さなトレッキングロードが見えた。
 車を停め、トレッキングロードを登っていく。眼下に湖が見えてきた。ここだ! ようやくたどり着いたのだ。
 長く延びる石垣の柵に突き当たり、扉を抜けてさらに先に行く。山すそに沿って、ずんずんと登る。次第に景色が広がっていく。途中から、わざと湖側を見ないようにして登り、適当なところで止まる。あでりーと一緒に目をつぶって振り返り、せーので目を開ける。
 飛び出る風景。おーっ!! サプライズ。まったくのサプライズビューだ!
 来たよ来たよ来たんだよーっ! 二人で叫ぶ。何度も叫ぶ。呼吸のたびに叡智が全身を駆けめぐっていく。風景が僕らの体に迫り、突き抜けていく。興奮していながら、心はどんどん穏やかになっていく。あでりーと二人、ひとしきり感嘆の言葉を吐き出し合う。気温は2℃をさしているが、寒さはまったく感じない。小雨が降っているが、それもまったく気にならない。
 

 たっぷり撮影をし、気の済んだところで風景に別れを告げ、トレッキングロードを引き返す。あの橋のそばで写真を撮ってから、車へと戻る。また明日の朝来られれば来てみたいね、と話す。


■石!

ベジタブルレストランのレジ前
 ケズウィックの市内に戻り、中心街に車を停める。郵便局のある建物に入るが、今日は日曜なので、奥にある郵便局は開いていない。両替もやっていない。ポストカードを買い、店を出る。
 インフォメーションまで歩くも、オープンする9時半までしばらく時間がある。昨日見つけたコーヒー豆店2つのうちどちらかでコーヒーを買おうとしたが、第一希望の店はどうやら今日は開いてないらしい。第二希望の店は明かりはついているものの、まだ準備中の模様。コーヒーを入れるためのボトルを車に忘れたので取りに行く。戻ってしばらくするとインフォメーションが開いた。まずはT/C(トラベラーズチェック)の件だ。今回、お金は基本的にポンドのT/Cで持ってきている。T/Cをそのまま使うのが一番効率的なのだが、そうでない場合はどこかで現金に両替をする必要がある。ところが聞いてみると、今日は日曜なので両替をしてくれる所は全て閉まっているらしい。準備中のコーヒー店は10時かららしく、あきらめて先にストーンサークルへ向かうことにする。
 ここで、適当に細い路地を歩いているうち、昨日のベジタブルレストランの前に出た。しかも開いている! 喜んで中に入る。おいしそうなメニューが並んでいて迷ってしまう。ベジタブルベーコンのパニーニ、ベジミートのサンド、サラダを買う。さらに、コーヒーを買って、持ってきたボトルに入れてもらった。

 フロントで聞いたところによると、ストーンサークルは、昨日行ったのとはまるで方向が違っていた。どこまで行ってもたどり着けないわけだ。少し迷ったすえ、看板を発見。脇道に入り、上り坂にさしかかる。景色が開けていき、それらしい風景になっていく。
 着いた。僕らは高台の頂上に立ち、古びた木の柵の向こうに緑の草原が広がっている。牧場ともグラウンドとも思える場所だが、ゲートを抜けて柵の向こう側に出ると、異様な石の光景が現れる。円形に並んだ岩。聖なる場所として遺された理由がわかる気がする。とても厳かな気持ちになる。
 昨日あんなに苦労した場所の両方に来られた。昨日のことがあったせいで、達成感がより高まる。すべてこの筋書きで良かったんだと思う。見渡す風景は確かに何かを感じさせる。ストーンヘンジよりも規模は小さいのだろうが、この高台で、周りには雪山を配し、静かに円形に並ぶ石の群れには、畏敬の念を感じざるをえない。
 

 気づくとそばに、同じく観光客らしいおじさんがきていたので、あいさつを交わす。彼の持っていたカメラを見てあでりーが、僕らのと同じじゃないかと言う。確かにCANONの、見た目はそっくりなカメラである。「Same camera?」と聞いてみると、おじさんは機種名を答え、それは僕らのよりずっといい物だった。「It's much better than mine.」と返し、笑う。会話が楽しい。
 三脚を持ち出し、いろんな角度で二人で写真を撮っていると、そばから、「一緒に撮りましょうか?」との声。日本語だ。なんと、さっきのおじさんの連れの女性は日本人だった。マンチェスターの北のあたりに住んでいて、ここまで車で来たらしい。すこし話してから、写真を撮ってもらう。おじさんと話している時には、彼女の存在にまったく気づかなかった。
 ここでもたくさんのエネルギーをもらった。体が風景と一体になる。体が透き通っていく感じだ。あでりーが隣で心から嬉しそうにしている。やはり昨日からの一連の流れには意味があったのだと思う。
 


 車の中で食前のバナナを食べ、さて続いてランチを、と思ったら箸を持っていないことに気づく。取りに帰ったついでに、YHAの食堂で食べようということになった。持ち出した朝食バイキングは、ほとんどが悪くない味だった。いっぽう、ベジタブルレストランで買ってきたパニーニ、サンドイッチ、サラダはすべて抜群に美味しかった。コーヒーは豆乳を入れた豆乳カフェオレだが、これもうまい。なかなか大量で心配したが、二人ともぺろりと食べきってしまった。いい食事だった。


■近くの街まで

 車に乗り、湖水地方の南側の街に向かうため、ふたたびストーンサークル方面を目指す。さっき迷ったところが今回たどるべき方向だったので、スムーズに進む。迷ったことで、かえって恩恵を受けている。
 しばらくは家もない道を走る。雪山がどんどんそばに迫ってくる。切り立ったすそ野を快調に駆け抜ける。なんと美しいこと。
 湖が見えてくる。山と山の間を抜けると、その先にもまた重なり合うように緑と土と石垣と雪の景色が続く。僕らは感嘆の声をあげ続けてやまない。あでりーは明らかに写真を撮り過ぎている。気に入った場所で車を停めて撮影、を何度もくりかえす。
 


 しばらく走ると、ガイドブックにあった町々が現れてくる。グラスミア、アンブルサイド、それぞれに趣がある。アンブルサイドは、僕らの泊まっているケズウィックと似ているが、こちらのほうが町の規模は大きい。前にも書いたとおり、最初はこのアンブルサイドに泊まる予定だった。こちらはこちらでまた歩いてみたい。
 途中にあったビジターセンターに立ち寄ってみた。玄関口まで行くと、冬季は休みという案内が出ていた。さらにまた走り、お目当ての「ビアトリクス・ポターの世界」館のある、ボウネスという町に到着。ビアトリクス・ポターは、有名なピーターラビットの作者で、湖水地方を愛し、居を構えていた女性である。ここは彼女の資料館で、あでりーの母親も来たがっていた場所だった。
 有料駐車場に車を停める。1ポンド20の料金で、1ポンド50を入れたらお釣りが出てこなかった。先に進み、「ビアトリクス・ポターの世界」館に着く。しかし、なんだか様子がおかしい。よく見ると、メンテナンスのため2月半ばまで休みという貼り紙があった。湖水地方では、ここが当初のメインだった。それでも二人ともなぜか落ち着いている。ここまでに充分すぎるほど楽しめているし、ここはまた来るための目的にしておける、ということで、あでりーも納得しているようだ。あとから聞くと、あでりーはこの時、ラッキーだとさえ思っていたという。駐車場は1時間で出ないといけなくて、これだと町中を歩く時間が取れないと思っていたが、これでゆっくり歩けるじゃないか、と。

 とりあえずインフォメーション方面に歩く。ケズウィックよりも大きな町で、そのぶん風情は薄い。それでもウィンダミア湖が見えると風景は一変する。白鳥が見えた。日本の地元で見るのと同じ、コブハクチョウだ。カモやユリカモメがたくさんいる。カナダガンもいる。一気にテンションが上がる。餌付けされているようで、みんな逃げずに寄ってくる。マガモの中に、見慣れないカモがいる。黒くて胸が白い。名前はわからない。このカモとマガモの交雑種もいる。
 すこし歩いた先でもまた白鳥がかたまっていた。水辺でひとしきり遊ぶ。
 湖のそばにあるインフォメーションは、こちらもまた閉まっていた。トイレに入り、引き返す。別の通りを抜け、大通り沿いを一通り見てまわる。T/Cの両替はどこでも断られた。

初めて見る、胸元の白いカモ 左のカモとマガモの交雑体。奥は普通のマガモ
カナダガン どこででもよく見かける、ニシコクマルガラス


■ガイアの目覚め

 ケズウィックへの帰り道、あでりーが、石からエネルギーをもらえる、という話をしてくれる。ちょっとした石垣や石造りの家などを見ると、感じるものがあるという。心の中で石にお願いすれば応えてくれて、たとえば「力をちょうだい」と願えば、渦のように巻いた力強いエネルギーが体を満たし、聴力が回復したという。すごい。あでりーは、石と会話ができるのだ。
 こうした超自然的な話を敬遠する人も多いと思うが、僕はけっこう素直に受け入れられる。とはいっても、幽霊話やUFO、ネッシーの類を闇雲に信じているわけではなく、そういった話は99%が嘘だと思っている。
 この旅の前に、龍村仁さんの「ガイアシンフォニー間奏曲」という本を読んだ(感想はこちら)。「ガイア」とは、地球全体を一つの大きな生命体ととらえる考え方であり、その思想に基づいた映画が「ガイアシンフォニー」である。映画を見たり、この本を読んだりする中で、この世のあらゆるものがいろんな形でつながっており、それらがコミュニケーションをとっているということを自然に信じられるようになった。人間と動物、植物、さらには無機物に至るまで、なんらかの方法で“会話”をおこなっている。あでりーには、石に関連する何かの記憶があるのだろう。それは前世や、先祖から受け継いだものかもしれない。
 いっぽう僕は、これまで湖水地方の風景と接する中で、興奮するというより、背中を中心にじわーっと深く静かに癒される感じを受けてきた。あでりーにその話をすると、それは僕なりの会話の仕方じゃないかと言ってくれた。僕もあでりーも、周りの風景との会話がすこしずつできるようになっている。自分たちの中に既に存在しながらこれまで封印されていた力が、呼び覚まされている気がする。正にガイアだ!

 僕らは風景をじゅうぶんに堪能しながら、来た道を戻る。すこし日が差してきて、また違った風景に見える。来た時に車を降りて撮影をしたスポットを過ぎる。湖には周りの山がそっくり逆さまに映り、それがなんとも美しい。去年二人で行った北海道のオンネトー湖とよく似ている。あそこも二人してすごく気に入った場所だった。

 ケズウィックに戻り、10Lだけガソリンを入れる。ディーゼル燃料で、計算するとリッター160円ほどにもなる。かなり高い。YHAまで戻ると、正に「戻ってきた」という懐かしい気持ちになる。まだ滞在24時間にもなっていない街なのに。やはり時間とは長さではなく質であり、そのとらえ方が全てなのだと思い知る。
 部屋で15分ほど横になる。疲れがあったが、これで回復した。町中に出て、まずは昨日見つけたピーターラビットの店へ行く。2階まであって品揃えはよいが、ぴんと来るものは少ない。あでりーはメモ帳セット、僕は台所用品をおみやげに買う。さらにあでりーは、ケズウィックに来た記念にと、朝入った店で写真集を購入。通常12.99ポンドのところ、4.99ポンド(約750円)という破格値。値札の貼り間違えの可能性が高いが、ケズウィックの街から僕らへの優しさだと思うことにする。
 今朝のベジタブルレストランがいたく気に入ったため、明日の昼食用にとふたたび店に向かう。朝と違い、かなりの客で混み合っている。サンドイッチ、サラダ、ケーキなどを購入する。店の人が僕らを覚えていてくれて、笑顔であいさつを交わす。朝買ったものがとても美味しかったと伝えると、嬉しそうな顔で応えてくれた。

 その後は、夕食をとれる店を物色しながら、街を一周する。ほとんどを見尽くした時点で夕方5時20分。夕食にはすこし早いが、食べられないこともないので、パスタの店に入る。一度店の前を通った時、気のいい店主のおじさんが呼び込みをやっていたところだった。
 野菜パスタ、ミックスサラダ、ガーリックトーストを注文。どれもなかなか美味しくて、この店で良かったね、と二人で話す。テーブルのそばに大きなテレビモニターがあって、イングランドのサッカー中継(FAカップのマンチェスター・シティ戦)をやっていた。僕はもう食欲が完全復活していて、しっかり食べたのちにガーリックトーストを追加注文し、3枚をたいらげた。

 店を出て、暗くなった町並をホテルへと引き返す。狭い路地を抜けると、ここにつながっていたのか、と発見するのも楽しい。道がわかってくると、この街に認めてもらえた気がしてくる。まだ丸一日ちょっとしか滞在していないのに、住人になった気分の一端を味わっている。
 YHAに戻ると、さすがに疲れが出た。シャワーを浴びる気力も日記をつける気力もわかず、結局寝ることにする。



■おまけ 〜湖水地方で出会ったペンギンたち〜

   
 
 
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