The Independent 2018年10月16日
広告会社ががんに関連する除草剤の促進のために
タバコ会社の戦術を使用していると非難される

ラウンドアップの製造者モンサントがその製品を守るために
そのキャンペーンに資金を提供していると言われている
ジェームス・ムーア

情報源:The Independent, 16 October 2018
PR company accused of using 'tobacco lobbyist tactics' to promote weedkiller linked to cancer
Roundup maker Monsanto reportedly funded campaign to defend chemical
James Moore
https://www.independent.co.uk/news/business/news/weedkiller-cancer-
red-flag-glyphosate-roundup-dewayne-johnson-a8587471.html#r3z-addoor


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2018年10月26日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kaigai/kaigai_18/181016_Independent_PR_company_
accused_of_using_tobacco_lobbyist_tactics_to_promote_weedkiller_linked_to_cancer.html

 環境活動家らは、問題のある除草剤を守るために、石油会社やタバコ会社のロビイストの手口をそっくりまねた、 6桁(訳注:数十万ポンド=数千万円)のロビーイング・キャンペーンの企画者を非難している。

 モンサントにより市場に出されている除草剤ラウンドアップは、農民や園芸業者によって広く使用されている化学物質であるグリホサートの最もよく知られた商品名である。

 欧州で重要な8カ国で活発に行われている”農場に自由を(Freedom to Farm)”キャンペーンは、世界保健機関により”ヒトに対する発がん性がおそらくある”(訳注1)とみなされている除草剤を擁護するために、農民による草の根主導の取り組みであるとして、自らを売り込んでいる。

 今年、 660 億ドル(500憶ポンド)(約7兆2,600億円)でバイエルに吸収されたモンサントは、活性成分グリホサートがミツバチの気がかりな個体数減少に関連していると示唆する研究(訳注2)とともに、発がん性との関連に異議を唱えている。

 同社はまた、米国の裁判で、グリホサートへの暴露が非ホジキンリンパ−腫血液のがん−の原因であると主張する、現在末期症状にある学校の運動場保全者、ドウェイン・ジョンソンへの賠償金 2憶8,900万ドル(2憶1,900万ポンド)(約318憶円)という陪審員の評決と戦っている(訳注3)。

 ”農場に自由を(Freedom to Farm)”は、ヨーロッパ中の拠点とする場所で農業ショーを開催し、伝えられるところによれば、批判者からその化学物質を守るために農民が署名することを期待してホステスを雇った。

 農場に自由を(Freedom to Farm)は、グリホサートの使用を制限することを求める人々によって引き起こされる”農業への脅威”をウェブサイト及びソーシャルメディア上で警告した。

 しかし、インディペンデント(The Independent)とグリーンピースによる調査が、そのキャンペーンは、ドナルド・トランプの選挙キャンペーンに密接に関連するアメリカの一団”リンカーン戦略(Lincoln Strategy)の支援を受けて、ダブリンを拠点とする広告及びロビーイング会社レッド・フラッグ(Red Flag)によって運営されていたことを明らかにした。

 モンサントの名前は同社が作成した資料にはなく、そのキャンペーンは農業生産者によって支援されたと彼らは述べている。農業ショーのひとつに参加したあるジャーナリストは、展示マネージャーが彼女にそのショーはモンサントと他の3社により資金提供されたと説明したと報告した。

 ラウンドアップは、世界で最も広く使用されている農薬のひとつであり、園芸センターや DIY ショップなどで簡単に手に入る。それは昨年末、EUによって再認可されたが、フランスのエマニュエル・マクロン政府はそれはフランスでは禁止されることを望むと述べた。

 グリーンピースは、その広告会社により企画された戦術を非難している。グリーンピース UK の報道担当はインディペンデントに次のように述べた。”グリホサートは世界で最も大量に使用されている除草剤であり、その痕跡は食品、飲料、そして人々の尿中にも発見されている”。

 ”最近の研究は、グリホサートがミツバチに有害となりえることを示しており訳注2)、世界の主導的な専門家らは、それは恐らくヒト発がん性がある訳注1)と記述している”。

 彼らは次のように加えた。”もし”イギリスの大臣らが我々の国土と野生生物を保護することについて言うなら、イギリスは、問題ある化学物質に過度に依存する工業的農業をやめて、環境にやさしい農業に向かうべきである”。

 レッド・フラッグ(Red Flag)の創設者カール・ブロフィーは、”レッド・フラッグは食品と農業分野の多くの顧客の代理店であり、農業コミュニティにおける広範な人脈である”と述べて、同社のキャンペーンの仕事を正当化した。我々は、潜在的なグリホサート禁止により、最も影響を受けるであろう人々、すなわちヨーロッパの食料を生産する農民を支援するために、我々の多くの顧客及び人のつながりを取りまとめるために働いた。

 彼は次のように付け加えた。”我々はいくつかの顧客がそのプロジェクトを支持してくれたことに感謝している。しかし、科学、関係する全ての EU 規制当局の立場、及び欧州委員会の立場を無視して活動家が主導するグリホサートを禁止するためのキャンペーンが成功したなら、最も多くを失うのは農民である。そしてその脅威に対応したのは農民であった”。

 ”昨年11月、大多数の欧州連合加盟国はグリホサートを再認可(訳注4)することに賛成投票をした。我々は、自分たちの生活手段、地域社会、そしてヨーロッパの食料供給の将来のために立ち上がった多くの献身的な人々によって使用される情報を提供することにささやかな貢献をしたことを誇りに思う”。


訳注1:グリホサートの発がん性
訳注2:グリホサートのミツバチへの影響
  • Glyphosate perturbs the gut microbiota of honey bees by Erick V. S. Motta, Kasie Raymann, and Nancy A. Moran; PNAS published ahead of print September 24, 2018 https://doi.org/10.1073/pnas.1803880115
    (グリホサートがミツバチの腸内微生物を混乱させる)

  • Monsanto's global weedkiller harms honeybees, research finds
    Glyphosate - the most used pesticide ever - damages the good bacteria in honeybee guts, making them more prone to deadly infections (The Guardian, 24 Sep 2018)
    (モンサントの世界中で使用されている除草剤はミツバチに有害であることを研究が発見/最も使用されている農薬グリホサートはミツバチの腸内の善玉菌にダメージを与え、致死的感染症に罹りやすくする)

  • Effects of sublethal doses of glyphosate on honeybee navigation by Maria Sol Balbuena, Lea Tison, Marie-Luise Hahn, Uwe Greggers, Randolf Menzel, Walter M. Farina; (Journal of Experimental Biology 2015 218: 2799-2805; doi: 10.1242/jeb.117291 )
    (グリホサートの致死未満量がミツバチ飛行に及ぼす影響)
訳注3:ドウェイン・ジョンソン訴訟
訳注4:グリホサート再認可
訳注:当研究会が紹介したモンサント関連記事


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