Triple Pundit 2015年3月26日
モンサント ラウンドアップが
がんに関連するとする WHO の報告書を攻撃


情報源:Triple Pundit, Mar 26th, 2015
Monsanto Attacks WHO Over Report Linking Roundup to Cancer
By Leon Kaye
http://www.triplepundit.com/2015/03/
monsanto-attacks-who-over-report-linking-roundup-to-cancer/


訳:安間 武/化学物質問題市民研究会
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2015年4月6日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/news/
Triple_Pundit_150326_Monsanto_Attacks_WHO_Roundup.html


 世界保健機関(WHO)のがん研究部門は、モンサント社の最も人気のある製品、ラウンドアップ中の化学物質は、ヒトに対する発がん性がおそらくある (probably carcinogenic to humans) と示唆する報告書を発表した(訳注1)。これに対し、農薬とバイオテク会社であるモンサントは、科学の恣意的な選択であり偏見であると非難して、この国際組織に対しする攻撃を開始した。

 この騒ぎは、がんの原因を研究する任務を負い、がん審査のための政策を提案し、がんに関連する統計を編集する国際がん研究機関 IARC(訳注2)により実施された研究から生じている。ラウンドアップ中で使用されている除草成分グリホサートに加えて、IARC はまた、他の4つの除草剤も、おそらくがんを引き起こすであろうことを示唆した。それらの化学物質のひとつであるマラチオンは、チチュウカイミバエ(訳注:幼虫が果樹に大害を与える)の拡がりを止めるために1980年代初期にカリフォルニア州全土で散布された。

 現在、モンサント社は WHO と IARC を非難する論争を展開して、この調査を撤回することを要求している。

 モンサント社によれば、IARC の研究は、一連の欠陥、すなわち、すで存在するデータの分析;グリホサートは健康リスクではないことを示唆するデータの排除;科学的データにより支持されていない結論;この化学物質とがんとの確固とした、確立した関連性の欠如−を持っている。

 グリホサートは、モンサント社が同社のラウンドアップ除草剤に耐性を持つよう遺伝子を組み換えたラウンドアップ耐性作物を導入して以来20年間、その人気は上昇している。しかし近年、グリホサートに耐性を持つ雑草が増大しており、その結果、農民は除草剤をもっと頻繁に、そしてもっと多量に使用するようになっている。実際に、米国地質調査所は、グリホサートの使用は1990年代初期以来、1992年の約2,000万ポンド(約9,000トン)から2012年の約3億ポンド(約14万トン)にまで急上昇していることを見出した。その結果は特に、大豆、小麦、及びトウモロコシの穀倉地帯である米・中西部(訳注3)で懸念があることを示している。グリホサートは、米環境保護庁(EPA)による飲料水のための最大汚染許容レベル(MCL)より十分に低いレベルではあるが、同地域のいたるところの水路で検出されている。

 米農務省(USDA)は定期的に様々な食品中の残留農薬に関して報告している。そして、昨年12月に発表された様に、農薬は多くの食品中で検出されているが、それらは EPA が安全であるとみなす範囲内にあると同省は結論付けた。しかし、同省の報道担当官によるロイターへの説明によれば、EPA は、テストは”極めて高価につく”ので、グリホサートのテストは実施していない。商用作物に使用されている多くの農薬と同様、そのような食品は店の棚に置かれるまでに厳しく処理されているので、どのような残留農薬も通常は除去されている。この調査の多くに落とし穴があるのか、又実際にこれら調査はどのくらい透明性があるのか(又は不透明なのか)、不透明さの不満はしばしばモンサントに向けられる

 ある科学者たちや、もちろん消費者らはグリホサートが安全であるという仮定には与しない。除草剤とがんの間の関連を示唆する他の調査は科学的文献中に存在する。ソーク生物学調査研究所の教授、デービッド・シューベルトは、グリホサートの環境中の蓄積は非常に多くの健康リスクを及ぼすと主張する。シューベルトは、グリホサートはがんと腫瘍の生成をもたらすリスクがあるので禁止されるべきであると述べたとロイターに引用された。

 来月にはもっと白熱するであろう戦いに注目しよう。グリホサートの使用を制限できる、又は禁止すらできる EPA は、最終的な規制の決定をする時に、IARC 報告書を評価する。モンサント及び議会におけるその盟友は、どの様な戦いの準備もできているのであろう。


訳注1
IARC 20 March 2015 / IARC Monographs Volume 112: evaluation of five organophosphate insecticides and herbicides
  • What were the results of the IARC evaluations?
    The herbicide glyphosate and the insecticides malathion and diazinon were classified as probably carcinogenic to humans (Group 2A).


  • What was the scientific basis of the IARC evaluations?
    For the herbicide glyphosate, there was limited evidence of carcinogenicity in humans for non-Hodgkin lymphoma. The evidence in humans is from studies of exposures, mostly agricultural, in the USA, Canada, and Sweden published since 2001. In addition, there is convincing evidence that glyphosate also can cause cancer in laboratory animals. On the basis of tumours in mice, the United States Environmental Protection Agency (US EPA) originally classified glyphosate as possibly carcinogenic to humans (Group C) in 1985. After a re-evaluation of that mouse study, the US EPA changed its classification to evidence of non-carcinogenicity in humans (Group E) in 1991. The US EPA Scientific Advisory Panel noted that the re-evaluated glyphosate results were still significant using two statistical tests recommended in the IARC Preamble. The IARC Working Group that conducted the evaluation considered the significant findings from the US EPA report and several more recent positive results in concluding that there is sufficient evidence of carcinogenicity in experimental animals. Glyphosate also caused DNA and chromosomal damage in human cells, although it gave negative results in tests using bacteria. One study in community residents reported increases in blood markers of chromosomal damage (micronuclei) after glyphosate formulations were sprayed nearby.

訳注2
 発がん性分類 (国際がん研究機関(IARC)、米環境保護庁(EPA)、欧州連合(EU))

訳注3
アメリカ合衆国中西部 - Wikipedia


化学物質問題市民研究会
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